電脳筆写の記事の中からこれはと思うものを メルマガ『心超臨界』
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★日朝交渉文書欠落を振り返る――阿比留瑠比・論説委員兼政治部編集委員
【「阿比留瑠比の極言御免」産経新聞 H30.06.21 】https://tinyurl.com/yamezxwj
★河野元衆院議長の無情――阿比留瑠比・論説委員兼政治部編集委員
【「阿比留瑠比の極言御免」産経新聞 H30.06.15 】https://tinyurl.com/y9t3ll6q
★玉虫色の米朝合意をどう読むか――西岡力・モラロジー研究所教授/麗澤大学客員教授
【「正論」産経新聞 H30.06.14 】https://tinyurl.com/ybdxaeel━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●トランプは北朝鮮の逆利用を考えたのではないか
『アメリカの「反中」は本気だ』https://tinyurl.com/yakgb2k4
【 宮崎正弘、ビジネス社、2018年06月、p10 】
1871年7月15日のことを筆者は昨日のように覚えている。
米国大統領リチャード・ニクソンはソ連を封じ込める効果的手段として、同盟関係を組み替え、それまで敵対してきた中国を梃子(てこ)とすることを思いつき、突如北京を訪問すると発表した。世界に「ニクソン・ショック」を与えた。
トランプは深くニクソンを尊敬する大統領であり、オバマの「戦略的忍耐」を批判し、「あらゆる選択肢は卓上にある」として北朝鮮制裁を強化してきた。世間は「経済制裁が効いた結果だ」とトランプとの直接対話に乗り出さざるをえなくなった北朝鮮の孤独を言ったが、同時に多くの分析は「中国派の張成沢(チャンソンテク)を処刑し、実兄をマレーシアで殺害した非情な人間が、まじめに非核化などを考えるはずがない。時間稼ぎに騙されるな」という意見が圧倒的だった。
しかしトランプは外交の実績とか道筋とか玄人好みのノウハウとかを度外視して、基本的なことを考えたのだ。
最終的な米国の敵は中国である。
その中国のパワーを減殺させるためには、いたずらに直接的な貿易戦争、技術移転阻止、スパイの摘発、中国企業制裁だけでは効果があがらない。げんに中国は南シナ海を支配し、戦後の世界秩序を大きく変えてしまった。
つまりこういうことである。北朝鮮が核兵器を所有した意味は、対米もさりながら中国からの完全な自立を意味し、米国東海岸にも届くミサイルの完成は、中国の全域を射程に収めたという意味である。金正恩はこれからは中国と対等に口をきき、中国の奴隷でないという意思表示をしたのである。
あまつさえ、米国の議会もメディアに代表される世論も、突然変異のように反中国路線に変貌している。
こうした中国の増長に対して、日米も欧州も、いやアジア諸国もロシアも、決定打を欠いた。ならば状況を変える突破口として、トランプは米朝会談という「トランプ」(切り札)カードを切ったことになる。
●日本は「北朝鮮の核と共存する覚悟はあるか」
【 同、p12 】
ウィリアム・ペリー元国防長官(1994~1997)ほど日本と縁が深い政治家もめずらしい。そもそも黒船来航のペリー提督は5代前の伯父にあたる家系である。
クリントン政権下で国防長官(カーター政権でも国防次官)のときペリーは頻度激しく来日し、引退後は、「日本経済新聞」に「私の履歴書」を連載。勲一等旭日大綬章も授与されているほどだ。
そのペリーは北朝鮮との交渉の責任者だった。もともと数学、工学専門で、ミサイルの軌道の数式などお手のもの、現在はスタンフォード大学で教鞭をとり、重要な政局の節目には独自の見解を披歴する。
ペリーは現職時代、来日した時の記者会見で、「北朝鮮の核と共存する時代がくる」と予言し、「その覚悟はあるのか」と日本の対応を促した。ところが平和ボケの日本の政治家はペリーの言葉を理解しかねた。
ペリーは「ワシントンポスト」(2018年3月12日)に寄稿して、次のような提言をなした。
「北朝鮮との交渉において留意すべき第一は、かれらは体制の維持と延命をあらゆる課題より優先させていること。第二に指導者は残虐で無慈悲であるが、クレージーではない。合理的思考ができる人たちである。第三にかれらはイデオロギーなどまったく信じていない。倫理や道徳に顧慮する気配はないが、思考方法はきわめてフレキシブルである。そして第四にかれらは経済発展に重大な関心を抱いているとはいえ、経済的利益と体制の維持という優先課題とを取引することはない」
したがって米国が北朝鮮に対して、実現不可能な、非現実的な条件を示して交渉に臨むと失敗するだろう。北朝鮮の「非核化」は検証が困難であり、事実上、不可能である。つまりペリーは「北朝鮮の核」と共存を考えるべきだろうと示唆しているのである。
なぜなら米国は核開発凍結、軽水炉援助などを条件に北を援助したが、1985年、1992年、1994年、2005年、そして2010年の交渉でみごとに騙された。
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★日朝交渉文書欠落を振り返る――阿比留瑠比・論説委員兼政治部編集委員
【「阿比留瑠比の極言御免」産経新聞 H30.06.21 】https://tinyurl.com/yamezxwj
★河野元衆院議長の無情――阿比留瑠比・論説委員兼政治部編集委員
【「阿比留瑠比の極言御免」産経新聞 H30.06.15 】https://tinyurl.com/y9t3ll6q
★玉虫色の米朝合意をどう読むか――西岡力・モラロジー研究所教授/麗澤大学客員教授
【「正論」産経新聞 H30.06.14 】https://tinyurl.com/ybdxaeel━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●トランプは北朝鮮の逆利用を考えたのではないか
『アメリカの「反中」は本気だ』https://tinyurl.com/yakgb2k4
【 宮崎正弘、ビジネス社、2018年06月、p10 】
1871年7月15日のことを筆者は昨日のように覚えている。
米国大統領リチャード・ニクソンはソ連を封じ込める効果的手段として、同盟関係を組み替え、それまで敵対してきた中国を梃子(てこ)とすることを思いつき、突如北京を訪問すると発表した。世界に「ニクソン・ショック」を与えた。
トランプは深くニクソンを尊敬する大統領であり、オバマの「戦略的忍耐」を批判し、「あらゆる選択肢は卓上にある」として北朝鮮制裁を強化してきた。世間は「経済制裁が効いた結果だ」とトランプとの直接対話に乗り出さざるをえなくなった北朝鮮の孤独を言ったが、同時に多くの分析は「中国派の張成沢(チャンソンテク)を処刑し、実兄をマレーシアで殺害した非情な人間が、まじめに非核化などを考えるはずがない。時間稼ぎに騙されるな」という意見が圧倒的だった。
しかしトランプは外交の実績とか道筋とか玄人好みのノウハウとかを度外視して、基本的なことを考えたのだ。
最終的な米国の敵は中国である。
その中国のパワーを減殺させるためには、いたずらに直接的な貿易戦争、技術移転阻止、スパイの摘発、中国企業制裁だけでは効果があがらない。げんに中国は南シナ海を支配し、戦後の世界秩序を大きく変えてしまった。
つまりこういうことである。北朝鮮が核兵器を所有した意味は、対米もさりながら中国からの完全な自立を意味し、米国東海岸にも届くミサイルの完成は、中国の全域を射程に収めたという意味である。金正恩はこれからは中国と対等に口をきき、中国の奴隷でないという意思表示をしたのである。
あまつさえ、米国の議会もメディアに代表される世論も、突然変異のように反中国路線に変貌している。
こうした中国の増長に対して、日米も欧州も、いやアジア諸国もロシアも、決定打を欠いた。ならば状況を変える突破口として、トランプは米朝会談という「トランプ」(切り札)カードを切ったことになる。
●日本は「北朝鮮の核と共存する覚悟はあるか」
【 同、p12 】
ウィリアム・ペリー元国防長官(1994~1997)ほど日本と縁が深い政治家もめずらしい。そもそも黒船来航のペリー提督は5代前の伯父にあたる家系である。
クリントン政権下で国防長官(カーター政権でも国防次官)のときペリーは頻度激しく来日し、引退後は、「日本経済新聞」に「私の履歴書」を連載。勲一等旭日大綬章も授与されているほどだ。
そのペリーは北朝鮮との交渉の責任者だった。もともと数学、工学専門で、ミサイルの軌道の数式などお手のもの、現在はスタンフォード大学で教鞭をとり、重要な政局の節目には独自の見解を披歴する。
ペリーは現職時代、来日した時の記者会見で、「北朝鮮の核と共存する時代がくる」と予言し、「その覚悟はあるのか」と日本の対応を促した。ところが平和ボケの日本の政治家はペリーの言葉を理解しかねた。
ペリーは「ワシントンポスト」(2018年3月12日)に寄稿して、次のような提言をなした。
「北朝鮮との交渉において留意すべき第一は、かれらは体制の維持と延命をあらゆる課題より優先させていること。第二に指導者は残虐で無慈悲であるが、クレージーではない。合理的思考ができる人たちである。第三にかれらはイデオロギーなどまったく信じていない。倫理や道徳に顧慮する気配はないが、思考方法はきわめてフレキシブルである。そして第四にかれらは経済発展に重大な関心を抱いているとはいえ、経済的利益と体制の維持という優先課題とを取引することはない」
したがって米国が北朝鮮に対して、実現不可能な、非現実的な条件を示して交渉に臨むと失敗するだろう。北朝鮮の「非核化」は検証が困難であり、事実上、不可能である。つまりペリーは「北朝鮮の核」と共存を考えるべきだろうと示唆しているのである。
なぜなら米国は核開発凍結、軽水炉援助などを条件に北を援助したが、1985年、1992年、1994年、2005年、そして2010年の交渉でみごとに騙された。