電脳筆写『 心超臨界 』

自分を励ます最良の方法、それは人を励ますこと
( マーク・トウェイン )

生きるための杖ことば 《 松花伴鶴飛——松原泰道 》

2024-09-06 | 03-自己・信念・努力
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“縁は異なもの、味なもの”というが、松花伴鶴飛もまた“浅からぬ縁”である。よく“不思議な縁”ともいう。しかし、本来偶然を意味する不思議はないはずだ。ただ人間の現時点の知識では、そこまで視力が及ばないというだけであろう。すべては因と縁との総和の出合いの必然の結果に外ならない。それでもなお偶然と思える事実に出合ったら、その「偶然」を大切に育てていくことだ。いつの日にか、どうしてもそうならざるを得ない必然性がわかるであろう。


◆松花伴鶴飛
 松花(しょうか)鶴(つる)に伴(ともな)って飛(と)ぶ

『生きるための杖ことば』
( 松原泰道、全国青少年教化協議会 (2001/04)、p126 )

松の花は桜の花のように美しくなく、花被(かひ)もない、雌雄同株の風媒花で風によって受粉するが、昔から長寿や節操を象徴するめでたい植物であり、鶴も寿命の長い瑞鳥(ずいちょう)である。

こうした松の花粉が松の木に止まった鶴につれられて飛んでいく――と。字表だけでも好縁を得ためでたい語であるから、婚約披露や結婚式にふさわしい祝語になる。

小池心叟(こいけしんそう)老師(東京文京区・竜雲院住職)が、某家の結婚式におくられた双幅の墨蹟に「君と相(あい)向かい、転(うたた)相親しまん。君と双(なら)び棲(す)んで一身を共にせん(与君相向転相親、与君雙棲共一身)」とある。松花伴鶴飛も、このように展開も出来よう。

吉川英治氏が、ある年の元旦に夫人に与えた一首に「盃をわが手に触るる君もまた宿世(すくせ)の縁(えにし)浅からめやも」がある。

“縁は異なもの、味なもの”というが、松花伴鶴飛もまた“浅からぬ縁”である。よく“不思議な縁”ともいう。しかし、本来偶然を意味する不思議はないはずだ。ただ人間の現時点の知識では、そこまで視力が及ばないというだけであろう。すべては因と縁との総和の出合いの必然の結果に外ならない。それでもなお偶然と思える事実に出合ったら、その「偶然」を大切に育てていくことだ。いつの日にか、どうしてもそうならざるを得ない必然性がわかるであろう。

因縁は運命とは違う。運命は人間以上の存在から与えられて、人間の自由にはなるぬとされる。因縁は、原因をふまえはするが、縁によって原因を展開出来ると教えられる。縁を因以上に大切にするゆえんである。

ゆえに、仏心という松花にも似た隠れためでたい花粉が、鶴という縁によって広く伝播される法悦を祝福する慶賀の語となる。
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