映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

「三岸節子」展

2010年05月08日 | 美術(10年)
 このところ、松井えり菜氏とか喜多順子氏といった若い世代の展覧会を取り上げてきましたので、ここらで日本洋画界の重鎮であった三岸節子の展覧会に触れておきましょう。
 この展覧会は高島屋日本橋店で開催されており、勤務先に近いこともあって昼休みを利用して見てきました。

 さて、朝日新聞の記事によれば、今回の展覧会は、「94歳で亡くなってから10年になるのを記念」し、特に、「63歳からフランスに渡って風景画に挑戦した日々をつづった数十冊の日記帳が発見され」、「その日記の内容をもとに、節子の心の旅路をたどりながら、代表作約80点で画業を紹介」する、とのことです。
 例えば、下記のような絵(「ブルゴーニュの麦畑」)の傍らには、次のような日記の記述がパネルで添えられています。
 「黄色い風景を描きたくなり、もう麦畑も大体刈り終えたところであるが、まだ残されている麦畑を訪ねて夕方ドライブに出る。今年は天候が麦にたいへん悪く、雨が長く降り続いた上、寒い位。ちょうど実りの時期につづいたため美しい黄金色にならず、うす汚い土色であるため描く気にならず。まだそれでも、ところどころ刈取りのおくれたところをさがす」〔展覧会カタログP.64〕。



 タイトルも何も見ずにこの絵だけを見ますと、かなり抽象度が高く、面白い絵だなと思わせます。
 それが、タイトルを見ると漠然とながら具体的な様子が伝わってき、さらにこうした日記の記述が添えられると、絵の上部の方は麦畑で、下部の方は人家なのだなと明確に見えてきます。ただ、そうなると、なんだか当たり前の絵のような気もしてきてしまいます。
 こうした添え物は、果たして絵画を見る際に助けになるのだろうか、むしろ絵そのものの鑑賞を妨げてしまうのではないか、などと考えてしまいました。

 そんなことはともかく、私としては、下記の「作品 Ⅰ」と題された86歳の時の絵の方に惹かれます。
 というのも、先日の「小野竹喬」展で見た「奥の細道句抄絵」の内の「暑き日を 海にいれたり 最上川」と通じるところがあるように思われたからですが。奇しくも、竹喬の最上川の絵は、画家が87歳の時に制作されたものです。