映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

「松井えり菜」展

2010年05月01日 | 美術(10年)
 ブログ「ART TOUCH 絵画と映画と小説」の4月22日の記事で『松井えり菜展』(「ワンタッチ・タイムマシーーン!」)が取り上げられていたので、なにはともあれ見に行ってみることにしました。

 会場は、地下鉄南北線・白金高輪駅近くの「山本現代」(山本ゆうこ氏が主宰のギャラリー)というので、探し出すのが一苦労でした。首都高速2号線の下を流れる渋谷川に沿った道をしばらく西に歩いて、白金公園のソバのマンション3階にようやく見つけ出すことが出来ました。
 なんだか、山口晃氏の個展があるというので以前行ったことがある「ミズマ・アートギャラリー」(注2)の時と同じような印象を受けてしまいました。実際には中目黒駅のスグ近くの大きな道路沿いなのですが、それにしてもこのようなところで展覧会が開催されるのかしら、というような建物でした〔尤も、今回の「山本現代」の方は、「ミズマ・アートギャラリー」に比べたら遙かに綺麗なマンションに入っているのですが〕。

 そんなことはともかく、松井えり菜氏の絵です。この展覧会に関しては産経新聞で取り上げられましたが、その記事では、会場の真ん中にドーンと置かれている「MEKARA UROKO de MEDETAI!」について、「自身をモデルにした若い女性の顔が大きく描かれる。目はうつろで、口を開けた恍惚の表情。口の中の粘りけのあるツバや口元のうぶ毛、鼻毛さえも描く徹底ぶり」で、「リアル過ぎて嫌悪感を抱く人もいるだろうが、その執拗な描写も松井らしさといっていい」などと述べられています。



 さらに、同記事で、「人間関係がドライになりつつある社会にあって、絵から発するある種のねっとり感は、親しみを抱かせ、安心させてくれる」と書かれていることについて、ブログ「ART TOUCH」の安積桂氏も、「最後の結論にも異論はない。アブジェクトなものが癒しになることはおおいにあるだろう」と述べているところです。

 私としては、上記の絵の全体の感じからキング・クリムゾンの「キングの宮殿」のジャケットのようではないかと思ったり、また「ふすま仕立て」になっていることから〔画像の右端と左端の中央にある小さな円は、実際には「引手」なのです〕、少し前に見た長谷川等伯の襖絵が思い浮かんだりして、「安心させてくれる」というよりも、むしろ様々に刺激を受ける見飽きない絵といったところなのですが。





 さらには、下記のような絵もありました。



 口の中にもう一つの世界があるという感じから、空也上人像とかエイリアンとかが思い浮かんでしまいました〔上記の作品においても、口の中には何か描かれています。また、会場で、上記の作品の裏側に展示されていた絵では、巨大な魚の口の中に人間の口があって、その中にウーパールーパーの顔面が描かれたりしていました!〕。






 松井えり菜氏の絵については、先のフランス大使館で行われていた「No Man’s Land 」展でちらっと目にして、随分と変わった絵を描く人だと思ったのですが、今回新作を何点も見て、安積桂氏は総じて否定的ながらも(注3)、なにかもっと面白い方向に飛躍していきそうな印象を受けてしまったところです。




(注1)この展覧会は本日までです。
 なお、ブログ「ex-chamber museum」の4月29日の記事においては、この展覧会で展示されている作品の殆どの画像が掲載され、かつまた詳細なコメントが記載されているので驚きました(松井えり菜氏のコメントまで投稿されています!)。

(注2)三潴末雄氏が代表で、現在、中目黒のビルは「ミズマ・アクション」とされ、「ミズマ・アートギャラリー」は市ヶ谷に移転しています。このゴールデンウィーク明けには、4月3日の記事で触れた会田誠氏の展覧会が開催されます。

(注3)安積桂氏は、以前、松井えり菜氏の『えびちり大好き!』について、「ただひたすら不快なだけ」で、「これが芸術ではないのはもちろろん、何かコンセプチャルな仕掛けのあるアートとも思えない。せいぜいのところ、いじめられっ子が、起死回生、人気者になろうと、教壇に上がってかました一発芸というところだろう」と酷評しています。