孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

コンゴの住民虐殺 中央アフリカの民兵組織衝突 イエメンではコレラが蔓延・・・世界の現状

2017-06-23 22:17:58 | アフリカ

(コレラが猛威をふるうイエメン 首都サヌアの病院を受診する家族 【5月16日 CNN】

日本から遠く離れており日本との関係も薄く、また、国際政治に与える影響も比較的小さいことから、普段あまりメディアに大きく取り上げられることもないアフリカ中部のコンゴ、中央アフリカ、および中東イエメンの惨状について。

コンゴ・中央カサイ州:治安部隊と地元の民兵組織が約3400人の民間人を虐殺
アフリカ中央に位置する資源大国コンゴでは、カビラ大統領が任期切れを過ぎても“居座り”を続けていますが、そうした政治混乱に加えて、中部・東部では多くの武装勢力が跋扈する状況が続いています。

そのひとつが、4月24日ブログ“コンゴ 中央カサイ州で暴力が横行 住民100万人以上が避難 政府高官・大統領の責任”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20170424でも取り上げた中央カサイ州での政府軍と反政府勢力の衝突です。

“政府軍と反政府勢力の衝突”と言うよりは、正確には“両勢力による住民虐殺”と言うべきでしょう。
現地カトリック教会は、3383人が殺害されたと報告しています。

****コンゴ治安部隊と民兵組織、民間人3000人以上虐殺か ****
(2017年6月21日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)
コンゴ民主共和国のカトリック教会が、同国中部のカサイ地方で治安部隊と地元の民兵組織が約3400人の民間人を虐殺し、20の村を破壊したと告発した。

昨年8月に勃発し、世界最悪の難民危機の一つを引き起こした紛争の実態に関する同教会の報告書は20日、国連のゼイド人権高等弁務官により部分的に事実関係が裏付けられた。

戦闘を繰り広げる治安部隊と民兵組織の双方による残虐行為の一部に関して、ゼイド氏はジュネーブで開かれた国連人権理事会で詳細を報告した。
 
広大な国土に豊富な資源を持つコンゴで最も尊敬される組織の一つであるカトリック教会は、首都キンシャサで公表した報告書の中で、3383人が殺され、20の村が「完全に破壊された」ほか、3698棟の家屋が壊され、34の礼拝所が損壊または閉鎖されたとしている。これまで国連は死者数を400人としていた。

■カトリック教会が情報源
そのうち10の村は治安部隊、4つの村は民兵組織、残り6つは「未確認の主体」によって破壊されたという。

また、こうした数字は「信頼できる教会の情報源」に基づくが、昨年10月13日以降のものだけであり、「完全ではない」と付記されている。報告書について、コンゴ政府や軍関係者のコメントは得られなかった。
 
コンゴは政治危機にも陥っている。昨年12月に憲法上の任期が切れたカビラ大統領が居座ったことが発端だ。
 
戦闘は昨年8月、自身の名を付けた民兵組織を率いるカムウィナ・ンサプ氏が政府軍兵士に殺害されたことから始まった。国連スタッフは、カサイ地方の42カ所で多数の遺体が埋められていたのを発見している。国連の推計では、戦闘の影響で約130万人が避難民となり、毎日数百人が隣国アンゴラに流出している。
 
ゼイド氏は、政府当局がカムウィナ・ンサプと戦うために民兵組織「バナ・ムラ」を創設して武装させたが、この組織は「ルバ族とルルア族の民間人に恐ろしい攻撃」を行ったと述べた。
 
同氏は、民間人の保護も加害者の責任追及もしていないとコンゴ政府を非難し、第三者による暴力の実態調査を要求。「コンゴ民主共和国が、治安部隊や武装集団、民兵組織の要員が人を殺しても罰せられない無差別砲撃地帯になることは許されない」と述べた。【6月21日 日経】By John Aglionby
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中央カサイ州の混乱は、カビラ大統領に対する武力闘争を続ける部族勢力のカムウィナ・ンサプ首長(別名ジャンピエール・ムパンディ)が政府軍に殺害されたことを機に始まりました。
以後、政府軍側及び反政府軍側双方のみさかいのない住民虐殺が続いています。

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ンサプ(別名Jean-Pierre Pandi)は昨年6月に、自らを公式に国家元首として認知させる運動を開始。これに呼応する蜂起が相次ぎ、政府はこの地域から撤退を余儀なくされた。

2カ月後、ンサプが治安部隊に殺害されると、その支持者が警察や対立する組織と衝突。BBCニュースによれば、両組織とも民間人を残虐したと相手を非難している。

国際機関は、今月初めに国連人権理事会のチームが発見した集団墓地から推測し、コンゴ治安部隊によって民間人が約99人殺害されたと報告した。

また、ンサプの民兵組織が、近隣に位置する南東部ロマミ州で子どもを含む、少なくとも30人を処刑したことを非難した。

さらに今月21日、国連の専門家組織のメンバーのアメリカ人とスウェーデン人が現地人通訳とともに拉致され、27日に全員が遺体で見つかった。スウェーデン人のメンバーは首が切断されていたという。【3月30日 Newsweek】
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中央アフリカ:「ミッション成功」後も続く衝突 “「ささいな」不一致”で約100人が死亡
そのコンゴの北に隣接する中央アフリカでは、介入していた旧宗主国フランスは「ミッション成功」として撤退しましたが、2013年以来のカトリック系民兵とイスラム系民兵の衝突がおさまりません。

2016年11月12日ブログ“中央アフリカ 「アフリカの憲兵」フランス軍の撤退完了 “見捨てられた”との懸念も”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20161112

****中央アフリカ*****
中央アフリカでは、イスラム過激派が中心の複数の反政府組織が「セレカ」と呼ばれる連合を結成し、2012年12月に国内の広域を掌握。13年3月には当時のフランソワ・ボジゼ大統領政権を打倒した。

その報復として、反政府組織と戦う「反バラカ」(バラカは長刀のなたを意味する)と呼ばれる武装集団が結成された。キリスト教徒を中心に構成される民兵組織で、報復としてイスラム教徒が中心のセレカに攻撃を開始し、これまでに数千人が殺害されている。

13年後半には、旧宗主国のフランスやアフリカ連合が治安維持を目的に軍事介入をし、14年2月に首都バンギの市長であったカトリーヌ・サンバ・パンザ氏が、同国初の女性元首として暫定大統領に就任。16年4月からは、フォースタン・アルシャンジュ・トゥアデラ元首相が大統領を務めている。(中略)

中央アフリカは、アフリカ中央部に位置する内陸国で、面積は日本の約1・7倍の大きさ。人口は約480万人(2014年)。

1960年にフランスから独立するが、その後不安定な情勢が続いている。

宗教は、土着宗教が35パーセント、プロテスタントが25パーセント、カトリックが25パーセント、イスラム教が15パーセントとされている。キリスト教が多数派となっているものの、アニミズムの影響も大きいという。【6月12日 CHRISTIAN TODAY】
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****中央アフリカで武装集団が衝突、100人死亡 「停戦」あえなく破綻****
紛争が続く中央アフリカで武装集団間の衝突が起き、地元当局者によると21日までに約100人が死亡した。イスラム教徒主体の反政府組織の内部抗争とみられる。

衝突が発生する直前に、政府と複数の反政府組織が停戦協定を結んだばかりだった。
 
中央アフリカでは2013年以降、キリスト教徒の民兵組織「反バラカ(anti-balaka)」と、イスラム教徒主体の反政府民兵組織「セレカ(Seleka)」に属していた集団が対立してきたが、組織内でも分裂が進み、過激化する分派が乱立する状態となっている。

激しい戦闘が発生したのは中部の町ブリア。主任司祭も務める町長によると、19日の停戦協定署名からわずか数時間後の20日未明に銃撃が発生。約6時間にわたる全面的な衝突につながったという。町長はAFPの電話取材に「人道状況が憂慮される」と危機感をあらわにした。
 
衝突はセレカ系の「中央アフリカ復興人民戦線(FPRC)」の対立する派閥間で起きた。FPRCの幹部は指導者らの間で「ささいな」不一致があったと述べ、一種の権力闘争だと説明した。
 
国連(UN)と政府の調査によると、一連の衝突で5月末までに300人が死亡、10万人が避難を余儀なくされている。【6月22日 AFP】
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“「ささいな」不一致”で約100人が死亡・・・なんとも軽い命です。

イエメン:猛威をふるうコレラ 「35秒間に1人の子供が感染している。制御不能だ」】
一方、中東アラビア半島先端に位置するイエメンでは、これまでも何度も取り上げてきたように、イランが支援しているされる反政府勢力フーシ派及びサレハ前大統領派と、サウジアラビアが軍事支援するハディ暫定大統領派の戦いが一向に収まりません。

そうしたなかで、戦闘以上に住民の命を奪っているのは、紛争に伴う衛生環境と栄養状態悪化によるコレラの蔓延です。
2017年5月26日ブログ“イエメン 戦闘・飢餓、更にコレラ感染拡大で世界最悪の人道危機が深刻化”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20170526

日を追うごとに、コレラ犠牲者が増大しています。

****イエメン、コレラの死者1000人に近づく****
国連(UN)のイエメン人道調整官を務めるジェイミー・マクゴールドリック氏は15日、内戦が続く同国で流行しているコレラによる死者が1000人に近づいていると明らかにしさらに、援助が思うように集まらない現状について、「人道が政治に負けようとしている」と強く非難した。

ヨルダンの首都アンマンで記者会見したマクゴールドリック氏は、「殺されるか飢えるかしかない人びとを救える時間はなくなりつつあり、今ではコレラの問題まで加わっている」と述べ、「物資の不足でわれわれは厳しい状況に置かれている。早急に行動が必要だ」と訴えた。
 
マクゴールドリック氏によると、現在コレラの感染が疑われる人々は13万人以上に達し、死者は970人を超え、その約半数は女性と子どもが占めているという。
 
マクゴールドリック氏は、(国連は)2017年のイエメンへの人道的対応のために21億ドル(約2300億円)の拠出を呼び掛けているが、これまではそのうちのわずか29%しか集まっていないと明かし、「イエメンについて心が張り裂けそうな気持ちになるのは、人道が政治に負けようとしていることだ」と語った。【6月16日 AFP】
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****コレラ死者1000人超す=感染者の半数が子供―イエメン****
世界保健機関(WHO)は18日、内戦が続くイエメンで4月以降流行しているコレラによる死者が17日までに1100人に達したと明らかにした。感染が疑われる患者数は15万8960人。感染者は最終的に30万人に上る恐れがあり、国連は「憂慮すべき速さで感染拡大が続いている」と警鐘を鳴らしている。
 
国連によると、感染者の約半数は子供で、大半が栄養失調。国際NGOセーブ・ザ・チルドレンは「35秒間に1人の子供が感染している。制御不能だ」と指摘した。【6月19日 時事】 
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****イエメンのコレラ流行、発症例19万件超 8月末には30万件超も****
国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)は23日、コレラの流行が拡大する内戦下のイエメンで、発症例がおよそ19万3000件近くに達しているとし、8月末までに感染者は30万人を超える見通しだと発表した。
 
ユニセフのメリトセル・レラーノ報道官はスイス・ジュネーブで記者会見し、8月末までに発症例は30万件に達するとの懸念を表明した。同報道官によると、コレラの流行が宣言された今年4月以降、イエメンで1265人が死亡したという。【6月23日 AFP】
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日本や欧米にあっては、数人が犠牲となる事件があっても大騒ぎとなりますが、その一方で、日常的に数千人の命が奪われていく世界もあります。

そうしたなかにあって、自国だけの安全・平和を語ることは欺瞞でもあり、その欺瞞・無関心への失望は容易に怒り・憎しみに変わります。そして難民問題やテロとして自国の安全を揺るがすことにも。
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