孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

「すべての女性が輝く社会」 ニュージーランド首相の産休 ドイツでは異性同僚の給与を知る権利

2018-01-20 22:03:33 | 女性問題

(取材に応じる、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(中央)とパートナーのクラーク・ゲイフォード氏。【1月19日 AFP】)

【「2017年にもなって、最初から女性が子どもか仕事かどちらかを選ぶと決めつけるような質問をすべきではない」】
“「すべての女性が輝く社会づくり本部」が司令塔となり、女性の活躍を阻むあらゆる課題に挑戦し、「すべての女性が輝く社会」を実現します。”【首相官邸HP】ということではありますが、現実問題として、女性が働くうえで最大の障害となっているのが出産・産休の問題でしょう。

出産女性が産休を取ることで、仕事のしわ寄せがくることへの男性などからの不満を含め、日本ではなかなか厳しい現実があります。

そうした日本の状況からすると別世界の話のようにも思えるのが、ニュージーランド首相の産休の話題。

****NZ首相が妊娠、6週間産休へ 副首相が代行務める****
ニュージーランドのアーダーン首相(37)は19日、パートナーの男性との間に子を妊娠し、6月に出産予定と発表した。6週間の産休を取り、その間はピーターズ副首相兼外相が首相代行を務める。

「(妊娠は)予想していなかったが、興奮している」とコメントした。
 
発表によると、アーダーン氏は新首相に就任する13日前の昨年10月13日に妊娠を知った。「多くのカップルと同じように、妊娠初期なので伏せてきた」と説明した。

1月18日にピーターズ氏に妊娠の事実を伝え、首相代行を要請した。「(産休の)6週間の間も必要ならば私はいつも連絡可能だ」としている。
 
アーダーン氏は、テレビの釣り番組の司会者であるパートナーのクラーク・ゲイフォードさんと暮らす。産休が明けた後は、家にいられるゲイフォードさんが主に育児をするという。

「多くの親たちが育児のやりくりに大変だが、私たちはとても幸運だ。私個人として一人の親になることが楽しみだが、首相としての責務にも同等に集中する」とした。
 
アーダーン氏は昨年8月、当時野党だった労働党の党首に就任。9月の総選挙で議席を伸ばし、ピーターズ氏が率いる第3党のニュージーランドファースト党などと協力した連立政権の首相に就いた。
 
党首就任直後にラジオ番組で「多くの女性が子どもか仕事かで悩む。子どもを産むか決めているか」と聞かれ、「2017年にもなって、最初から女性が子どもか仕事かどちらかを選ぶと決めつけるような質問をすべきではない」と答えていた。
 
一国の現役首脳としては、1990年に当時36歳だったパキスタンのブット首相が、女児を出産したケースがある。【1月19日 朝日】
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国内の反応については、“ニュージーランド国内では、国民や与野党も祝福していて、地元メディアも初代の女性首相も母親だったなどと好意的に伝えており、首相が一時、職務を離れることを疑問視する声はこれまでのところ上がっていません。”【1月19日 NHK】

実際問題としては、仕事の大部分は組織で動いていますので、数か月首相が官邸にいなかったとしても支障はないでしょう。

いつでも電話等で連絡もできますし、テレビ会議といった方法もあります。必要なら官邸に駆け付けることも可能でしょう。

独立問題で揺れるスペイン・カタルーニャのプチデモン前州首相などは、逃亡先のベルギーにいながら州首相に復権しようとしているぐらいです。(さすがに、これには反対もありますが、反対理由の本音はスペインにいないことというより、独立運動を主導するプチデモン氏を認めないということでしょう)

****プッチダモン氏、復権なるか 独立派過半数、でも議会出席の壁 カタルーニャ州議会初招集****
昨年12月の選挙でスペインからの独立派が過半数を維持した同国カタルーニャ自治州の州議会が17日、初招集された。まず議長ら議会執行部が選ばれた。月末に州首相選びの手続きに入る

独立への一方的な動きで司法当局から反乱罪などの容疑がかけられ、ベルギーに逃れているプッチダモン前州首相が、外国に身をおいたまま返り咲きを目指すという異例の展開だ。(中略)
 
ただし、州首相に選出されるには「議会に出席して施政方針を示すこと」が必要とされる。帰国すれば当局に逮捕されるプッチダモン氏は、ビデオ演説などの手段を探っている。地元メディアは、無料通話システムのサービスをもじって「スカイプ州首相」などと報じている。
 
議会で、そうした手続きが認められるかどうかが今後の焦点だ。また独立派議員のうちプッチダモン氏ら5人はベルギーに滞在して投票に参加できない可能性もあり、州首相の座はなお流動的だ。
 
中央政府のラホイ首相は、外国に居住したままでの州首相就任は認められないとしており、憲法裁判所に提訴したり、自治権の停止を続けたりする構えを見せている。3月末までに州首相が決まらなければ再選挙となる。【1月18日 朝日】
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話を女性の問題に戻すと、“首相が産休をとっても支障はない”というよりは、出産・育児を経験しない男性ばかりが政治のトップを独占している現在の日本の状況の方が“いびつ”だと言うべきでしょう。

世の中の半数は、その多くが出産を経験する女性である以上、出産に伴う社会的問題への対策を政治に反映させ、社会を変革していくためにも、女性首相の出産・産休というのはごく自然な話であり、改善のための好機でもあるでしょう。

そこに踏み込んで、女性が働ける社会をつくっていかない限り、日本の少子化に伴う社会変動には対処できませんし、放置すれば、やがて日本社会は衰退・消滅の危機に直面することにもなります。

未だ大きい男女賃金格差 「ジェンダー後進国」の日本
働く女性が直面しているもうひとつの問題が男女間の賃金格差です。
近年、若干は改善されつつあるとは言え、その格差はまだ大きいものがあります。

****女性の賃金、16年は男性の73% 格差解消なお遠く****

女性の賃金が増加を続け、男性との格差が過去最小を更新した。厚生労働省が22日発表した2016年の調査によると、フルタイムで働く女性の平均賃金は月額24万4600円と3年連続で最高となった。

男性の賃金の73%となり、男女格差はこの20年で10ポイント縮まった。

ただ欧州各国などと比べると格差はなお大きく、男女間の「同一賃金」の実現はまだ遠い。(中略)

男女の賃金格差が縮まってきたとはいえ、日本の水準は国際的にはまだ見劣りする。経済協力開発機構(OECD)の14年の調査では、日本の男女格差は加盟国の中で韓国、エストニアに次いで3番目に大きい。ベルギーやハンガリーの男女格差は数%しかなく、賃金面での日本の「女性活躍」は道半ばだ。
 
女性の賃金を底上げするには、管理職への登用をさらに増やしていくことに加え、子育てを機に離職したり、本人の意に反してフルタイムの仕事を諦めたりすることを防ぐ必要がある。
 
厚労省によると働く女性の6割が最初の子どもの出産後に退職する。政府は17年度末の待機児童解消を掲げ、保育所などの施設整備を急ぐ。

ただ、安倍晋三首相が17日の衆院予算委員会で待機児童の解消について「非常に厳しい状況になっている」と語るなど、目標達成は見通せない。【2017年2月22日 日経】
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****男女の賃金に依然、格差 「ジェンダー後進国」の日本 ダイバーシティ進化論(村上由美子****
世界で最も保守的な国のひとつと言われるサウジアラビアの女性にとって、2017年は歴史的転換の年になるかもしれない。女性の自動車運転の解禁が決まったのだ。

原油依存体質の脱出を目指し、石油以外の産業育成を促進して経済活性化を図るサウジアラビア政府。女性の社会進出は国全体の生産性向上の必須条件だと考えたのであろう。
 
これをきっかけに、サウジアラビアの女性活躍は一気に進むかもしれない。すでに高いレベルの教育を受けているサウジ女性は期待と興奮で胸を高鳴らせているに違いない。
 
思い起こせば約30年前、日本女性も歴史的転換を期待した時期があった。男女雇用機会均等法が施行された1986年だ。それまでは女子学生が基幹職として就職する道はほとんど開かれていなかった。
 
当時大学生だった私は社会が変わると意気込んだ。しかし女性総合職1号で入社した先輩を企業訪問すると、なぜか女性だけが制服を着ていた。

結局私は、ニューヨークで米国企業へ就職することになる。そして数年前に帰国した日本では、女性活躍推進が30年前と同様に叫ばれていた。
 
先日発表された経済協力開発機構(OECD)のジェンダーリポートで、日本は相変わらず「ジェンダー後進国」の位置づけだと指摘された。

政府肝いりの女性活躍推進は一定の成果を生んでいるようにも見えるが、実は日本の動きは国際的にはかなり見劣りする。
 
確かに女性の就業率はOECD加盟国平均並みに向上した。子育て世代の女性の離職率を表すM字カーブも、解消されつつある。しかしいくら多くの女性が働いても、いまだに男性同様の昇進や昇給は困難だ。
 
それは先進国最大レベルの25.7%(15年)という男女賃金格差に表れている。80年代後半に総合職採用された女性は幹部候補となる年齢だが、ほとんどが離職している。企業の女性取締役比率は先進国平均の20%に対し、3.4%(16年)と最低水準だ。
 
女性活躍推進の掛け声は素晴らしい。しかしこのままのスピードでは、すでに2周遅れの感がある人材育成の世界レースから日本は完全に脱落してしまう。いずれ中東のイスラム圏にも抜かれてしまうかもしれない。

女性活躍推進は日本経済の死活問題であるという認識が浸透すれば、スピード感を伴った変革が期待できるのだろうか。【2017年10月21日 村上由美子氏 日経】
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個人的には、男女雇用機会均等法が施行された当時、企業内の女性職員の労働条件等の改正に関与したこともあります。

蛇足ながら付け加えれば、働く意欲がある女性に報いるのはそう難しくはありません。当時の経験で一番困ったのは、「男性並みに働く気は全くない。家庭と両立させやすい労働時間で、そこそこの給与がもらえればそれでいい」という意見が女性職員の中に多くあったことです。それを認めることは、女性職員のなかに異なる職種を持ち込むことにもなります。家庭を顧みない男性の“働き方”のほうがおかしい・・・という考えもあるでしょう・・・・。

そのあたりは今も変わっていないでしょう。そうした女性の本音をどのように考えるか・・・難しいものもあります。

賃金格差情報公開を促す動き
格差を是正していくためには、今現在どういう格差があるのかを把握する必要があります。
その面での改革が、ドイツで実施されています。

****独で新法施行、同僚の給与を知る権利 男女の賃金格差是正を目指す****
同僚にいくら稼いでいるかを尋ねることは現代でもタブー視されている事柄の一つだが、男女の賃金格差是正を目的とした新法が施行されたドイツではこれが可能となりそうだ。
 
欧州最大の経済大国ドイツで今月6日に施行された法律は、同様の内容の業務をしている異性の同僚の賃金を知る権利を従業員に与える内容。
 
この法律の制定に向けて尽力してきた社会民主党のカタリナ・バーリー女性相代理は「ドイツではいまだに他人の給与に関する話題はタブーでブラックボックスのままだ」と語った。
 
新法によって賃金体系の透明性が向上し、女性たちの賃金が男性同僚より低いことが判明すれば、女性たちによる賃金引上げ要求の機運が高まり、法的措置への道も開ける可能性がある。
 
しかし、新法の適用対象は従業員数が200人を超える企業で、中小規模の企業で働く女性たちは依然として異性の同僚の賃金を知ることはできない。
 
一方、従業員が500人を超える企業には、定期的に給与体系についての最新状況を公表して、同一労働同一賃金の原則を順守していることを示す義務が課せられる。
 
支持者らは、新法の施行を出発点としてドイツ全土の女性たちが賃金格差の問題を明確にできるようになることを期待している。
 
公式統計によれば、2016年のドイツの女性の賃金は男性の賃金より21%低く、さらに欧州連合(EU)平均の16%よりも低い。【1月14日 AFP】
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賃金格差情報公開はイギリスでも実施されています。

“英国では17年4月、250人以上の従業員がいる企業や公的機関に男女の賃金データ公表が義務付けられた。自社と政府のサイトで年に1度、時給やボーナスの男女差などを開示しなければならない。企業は初回の期限が18年4月4日で、これから報告が本格化する。”【1月10日 日経】

また、企業側にも、株主からの提案で同様の取り組みに動く事例も。

****シティ、男女や人種間の賃金格差を公表へ-格差縮小へ昇給実施の方針****
シティグループは3カ国における男女間および米国のマイノリティーとの賃金格差を調査、公表し、格差縮小に向けた措置を講じると発表した。
  
この動きは、ボストンに拠点を置くアルジュナ・キャピタルからの株主提案を受けたもので、米国の大手銀行では初めて。米国と英国、ドイツで実施する。英国では4月からすべての企業に男女別の賃金データ公表が義務付けられる。
  
シティの発表文によると、女性や米国のマイノリティー、その他格差縮小のために昇給が正当化されるならば賃金を引き上げる。3カ国以外の従業員に対しても、同様の分析を行うと約束した。

シティグループの従業員はほぼ半数が女性だが、上級幹部に占める女性の割合は4分の1にすぎない。米国従業員のうちアフリカ系米国人は11%に上るが、上級幹部ではわずか1.6%だ。
  
アルジュナ・キャピタルではシティのほか、JPモルガン・チェースやウェルズ・ファーゴ、バンク・オブ・アメリカ(BofA)、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)、アアメリカン・エキスプレス、マスターカードなど8社にも男女間の賃金格差縮小のための方針や目標を公表するよう働き掛けている。【1月16日 Bloomberg】
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「アルジュナ・キャピタル」は、ESG(環境、社会およびガバナンス)に焦点を当てている資産運用会社で、近年はこうした資産運用会社の性差別やセクハラに関する企業への影響力が強まっているようです。(アメリカでは)

“ESG志向の資産運用会社アルジュナ・キャピタルは2014年、ハイテク企業に対して、男性従業員と女性従業員の賃金格差を開示するよう圧力を掛け始めた。
同社は同じ年にインターネット競売大手イーベイ( EBAY )に対して、男女の賃金格差とそれを縮小するための目標を開示するよう要求する株主提案を提出したが、2015年の株主総会で賛同した株主はわずか8.5%だった。翌年再提出した提案は、51%の賛成をもって承認された。”【2017年11月7日 WSJ】

“世の中の流れ”というべきものでしょう。
アメリカで動き出した波は、やがては日本にも及ぶでしょう。後れを取る企業は痛い目にあうことも・・・。

ニュージーランド首相の産休、ドイツでは異性同僚の給与を知る権利・・・・“すべての女性が輝く社会づくり”というのは、こういうことを言うのでしょう。
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