孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

カンボジア 大虐殺の悲劇を乗り越える国民を表現するサーカス「SOKHA」

2017-12-06 22:36:23 | 東南アジア

(弓を引いているのは、逆立ち状態の両足です)

カンボジア・シェムリアップを旅行中です。
3日夜に到着し、実質二日目の5日(火)は“休息日”

軽く市内のマーケットなどを散策し、マッサージで体をほぐしたのち、夕方はバルーンでアンコールワットと夕日を・・・と予定していたのですが、天候が今一つでバルーンが上がらないとのこと。

そこで、夜のカンボジアサーカス「Phare(ファー)」のショーを観に行ってきましたが、これが思いのほか面白かったので、その話を。

カンボジアサーカス「Phare(ファー)」は職業訓練校のNGOが母体となっているサーカスショーですが、単なる「雑技」ではなく、テーマに沿った物語性を持った形に編成されている 「シルクド・ソレイユ」に近いもので、サーカスというよりは”肉体を使ったパフォーマンス劇”といった趣です。

その演目はいくつかあって、1週間から10日ぐらいで変わるようですが、私が観たのが「SOHKA(ソカ)」というもの。

おそらく演目のなかでは、最もカンボジアの内面に迫る、重いテーマ・物語でしょう。

ソカという一人の女性の、楽しい学生時代、内戦の勃発、悲惨な体験、内戦終了後も残存する恐怖、恐怖から解放、劇団での若者の指導者としての新しい人生、やがて避けられない老いと死・・・・というのが、その物語です。

ポルポトによる恐怖政治・内戦で国民の3人に一人とか4人に一人が亡くなった、それもつい40~50年前の話です。ですから、ほとんどのカンボジア人が身内に大虐殺の犠牲者を抱えており、自身が忘れがたい悲劇を経験した者も少なからず生存しています。

このサーカス自体が、、カンボジアの内戦時のトラウマを乗り越えるために、当時難民キャンプにいた若者たちが始めたサーカス団だとのことですから、「Phare(ファー)」自身の成立をも表現する演目です。

もちろんサーカス・パフォーマンスですから、全体としては極力明るく、軽快に、リズミカル・コミカルに演出されていますが、内戦時代の恐怖、その恐怖のトラウマに関しては、真っ向から向き合ったカンボジアならでは、「Phare(ファー)」ならではの作品となっています。

特に印象的だったのが、内戦・殺戮を象徴するような真っ黒な衣装に髑髏の仮面を着けた「死神」のようなキャラクター。

この「死神」が手にする杖を激しく舞台に打ち付けると、その音は銃声となり、半裸の縛られた男たちが、その銃声に合わせて一人一人崩れ落ちていきます。

内戦を生き残ったソカですが、恐怖は消えず、夢の中でこの「死神」と格闘します。
軽快・リズミカルなサーカスパフォーマンスが多い中で、この部分は真っ赤な衣装のソカと真っ黒な衣装の「死神」の二人によりゆっくりとした流れの、体操競技で言えば、吊り輪や床の静止演技のような「力技」です。


(どういう状態か判然としないとは思いますが、非常にアクロバティックな二人によるパフォーマンスです)

その重厚なパフォーマンスで舞台上はぎりぎりに緊張した雰囲気になります。

このシーンは、逆立ちをしたソカが両足で矢をつがえた弓を引き絞り、恐怖の象徴みたいな光る物体を射貫いて破壊することで終わります。(距離にすれば2m程度でしょうが、逆立ちして足で引く弓です。)(冒頭写真)

舞台上で行われる音楽や絵もパフォーマンスの一部です。

暗い色に塗られたキャンバスに、メンバーが両手に絵具をつけて、白いものを描きます。その上部には今度は赤で・・・・「何を描いているのか・・・?」と訝しんでいるときに、出来上がった絵を上下逆さまにすると、白い物体は髑髏に、赤いのは炎に・・・・炎に浮か髑髏が出現するという演出です。

繰り返しますが、全体としては明るく、コミカルなパフォーマンスです。そのなかにカンボジアが忘れられない重いものも・・・・という「SOKHA」です。

アンコールワットもいいですが、カンボジアサーカス「Phare(ファー)」のパフォーマンスもカンボジアならではのもので、一見の価値があるものです。








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