孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  王毅氏のロシア訪問で連携をアピールするも慎重対応は崩さず 米は中国のロシア接近を牽制

2023-02-24 23:04:02 | 国際情勢


(ロシアのプーチン大統領は、同国を訪問した中国外交担当トップの王毅氏と会談した。【2月23日 ロイター】)

【侵略開始1年のウクライナへの国際社会の連帯】
ロシアのウクライナ侵攻から1年という節目にあたり、国連では欧米主導でロシア軍の即時撤退などを求める決議が採択されました。

****国連総会、露軍撤退求める和平決議案を採択 賛成141カ国****
国連総会(加盟193カ国)は23日、ロシアのウクライナ侵略を巡る緊急特別会合で、領土保全や主権の尊重など国連憲章の原則に基づく永続的な和平を目指し、露軍の即時撤退などを求める決議案を141カ国の賛成で採択した。

反対はロシアなど7カ国。中国など32カ国が棄権した。賛成国の数は、国連総会が昨年採択したウクライナ侵略を巡る決議5本で最多の143カ国とほぼ同数で、24日で侵略開始1年のウクライナへの国際社会の連帯を示した。

決議は、公正な和平の早期達成に向け、露軍の即時撤退のほか、電力施設などの重要インフラや民間人への意図的な攻撃の即時停止▽ロシアへ強制移送された子供ら抑留者の帰還などを求めている。

また、ウクライナで起きた国際法上の重大犯罪を調査・訴追し、責任を追及する必要性を強調し、侵略に伴う食糧・エネルギー価格高騰などに深い懸念を示している。【2月24日 産経】
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欧米ではロシア批判が“当たり前”のことともみなされていますが、世界全体では必ずしもそうしたロシア批判一色ではなく、“グローバルサウス”と呼ばれるアフリカ・南米などの途上国には欧米主張とも一線を画する国が少なくないことも以前から指摘されています。

決議には法的拘束力はありませんが、そうした状況でロシア軍撤退決議がどのくらいの賛成国を集められるか注目されていましたが、141ヶ国ということで“国際社会の中でロシアの孤立を浮き彫りにすることに成功した”【日系メディア】という評価がなされているようです。

ウクライナのクレバ外相は決議採択後、報道陣に「我々は結果に満足している。(賛成に)141票は、(支援が)西側諸国以上ということを示している。(主に南半球の新興国や発展途上国を指す)グローバルサウスが、ウクライナの側に立っていないという議論も覆した」と語っています。

【王毅氏のロシア訪問 ロシア側の「期待」は大きいものの、中国は慎重姿勢を堅持】
採決でロシアの他に反対したのは、ベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、マリ、ニカラグア、シリア。
中国やインド、イラン、南アフリカなど32カ国は棄権票を投じ、13カ国は投票しませんでした。

ほぼ、これまでと同じ顔ぶれで、中国の「棄権」もこれまで同様です。

ロシアにとってアメリカに対抗できる「大国」中国の支援が極めて重要なものとなっていますが、中国はロシアに寄り添う姿勢はみせ、経済取引でも欧米の穴を埋める役割を担っているものの、軍事支援は行っておらず、ロシアとの経済関係も中国の利益優先の側面があるなど、欧米からロシア支援の批判を受けないよう、一線を越えない範囲にとどまる慎重な姿勢を続けています。

中国としても、ロシアとのパートナーシップを強調してアメリカを牽制するのはいいとして、ロシア・プーチン大統領の出口の見えない“泥船”に不用意に乗るのは、避けたいところでしょう。

その中国の外交担当トップの王毅氏がロシアを訪問し、プーチン大統領とも会談したということで、その動向が注目されています。今回訪問は習近平国家主席のロシアへの公式訪問に向けて調整を図る意味合いがあるとも指摘されています。

****プーチン氏が中国外交トップと会談、習氏訪ロに期待 関係「新境地」****
ロシアのプーチン大統領は、同国を訪問した中国外交担当トップの王毅氏と会談した。中ロ関係が「新境地」に達したと指摘し、習近平国家主席の訪ロに期待を示した。

プーチン大統領は王氏に「国家主席のロシア訪問を待っている。このことでわれわれは合意している」と言及。「全てが前進し発展している。われわれは新境地に到達している」と述べた。

また、二国間貿易が予想以上に好調で、2022年の1850億ドルから、近く年間2000億ドルに達する可能性があると伝えた。

一方、王氏は、中ロ関係は不安定な国際情勢の圧力に耐えたとし、危機は一定の機会を提供すると指摘。
中ロ関係は、いかなる第三者に対抗するものでなく、同時に「第三者からの圧力に屈しない」と述べた。

「われわれは共に国際関係における多極化と民主化を支持している」とし「これは時代と歴史の流れに完全に合致しており、大多数の国の利益にも合致している」と説明した。

またタス通信によると、王氏はプーチン大統領に対し、ウクライナ情勢を巡り「中国はこれまでと同様、客観的で公平な立場を堅持し、危機の政治的解決に建設的な役割を果たす」と述べた。

プーチン氏との会談に先立ち王氏はラブロフ外相と会談し、訪問中に新たな協定を締結することを楽しみにしていると述べた。協定の詳細は不明。

ロシア外務省は、ウクライナ戦争の解決に向け、中国がより積極的な役割を果たすことを歓迎し、中国の「バランスのとれたアプローチ」を評価すると表明。ただ、別の声明では王・ラブロフ両氏は中国の和平案について協議していないと明かした。

王氏はラブロフ氏に「国際情勢がどのように変化しようとも、中国はロシアとともに、大国間の関係発展における前向きなトレンドを維持する努力を続けてきた。これからもそうすることに引き続きコミットする」と表明。中ロ関係の「強化・深化」に取り組むと述べた。【2月23日 ロイター】
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プーチン大統領は会談で、習近平国家主席の今春のモスクワ訪問に期待を表明したとも報じられています。

ロシア側の中国への「期待」が強いことがうかがえますが、中国・王毅氏の対応はこれまで同様に“慎重”です。

****中国とロシア“接近”に見えて……思惑に「3つのズレ」 専門家「中国は二股をかけて調停役を演じたい」 習主席の訪ロは?****
ロシアを訪れた中国の政治局員に対し、プーチン大統領は、習近平主席の訪露を「期待している」とラブコールを送りました。両国は接近しているようにも見えますが、専門家によると思惑には3つのズレがあります。習主席の訪問はあるのでしょうか?

■ロシアの「期待」に対して中国は?
日テレNEWS有働由美子キャスター
「今注目されているのが、中国の習近平国家主席です。プーチン大統領は、習主席のロシア訪問を『期待している』と、ロシアを訪れた中国の王毅政治局員に伝えました。中国とロシアが、ここに来て一気に接近しているという感じを受けます」

小栗泉・日本テレビ解説委員
「そう見えますが、中国に詳しい神田外語大学の興梠一郎教授は、『ロシアと中国の思惑にはズレがある』と分析しています」

「興梠教授によると、王毅氏の訪露の中で、ズレが大きく分けて3つあります。まず、王毅氏が会ったのは外交担当者だけではありませんでした。プーチン大統領自ら直々に会談して、もてなしました。ロシア側の期待感の大きさが見えます」

「次に、習主席のロシア訪問についてプーチン大統領は『期待している』と言ったのに対し、中国外交部の会談記録にはその記載がありません。つまり、行くとも行かないともコメントしていません」

「さらに、中国側の記録には『ウクライナ問題について深く意見交換した』とあるのに対し、ロシア側の記録には記載が全くありません。

■王毅氏「政治的解決へ建設的な役割
(中略)
有働キャスター 「ロシアはラブコールを送っているのに、中国側は態度がはっきりしない、つれない感じがします」
小栗委員 「そうですね。興梠教授によると中国は今も、欧米とロシア、双方に二股をかけています。もっと言うと、今回のウクライナ侵攻の調停役を演じたい、それによって中国の世界的なイメージを良くしたいと考えているといいます」

「実際、王毅氏はプーチン大統領に『中国はこれからも公正かつ客観的立場を堅持し、ウクライナ問題の政治的解決のために建設的な役割を果たす』と言っています」

■ロシア訪問は「今は前のめりでない」
日テレNEWS有働キャスター 「プーチン大統領は『おいおい』と思ったのではないでしょうか。そうすると、習主席はロシアを訪問しないのでしょうか?」

小栗委員 「興梠教授は『ロシアと中国は、使ったり使われたりする関係なので、ロシア訪問のタイミングは今後の戦況や、アメリカの出方などを見ながら決めるだろう。ただ少なくとも、今は前のめりではない』と話しています」(後略)【2月24日 日テレEWS】
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【アメリカ 中国の「ロシアへの殺傷兵器提供」で警告 ロシア接近を牽制】
この中国・王毅氏のロシア訪問・プーチン大統領との会談と同じ時期に中国・ロシア関係として注目されているのが、中国がロシアに向けて、ひそかに殺傷力のある兵器を提供しようとしているとのアメリカの懸念。

****米国務長官、中国が「ロシアへの殺傷兵器提供を検討」「深刻な結果」もたらすと警告****
アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は19日、ウクライナ侵攻を続けるロシアに対して中国が、「殺傷力のある」兵器と弾薬の提供を検討しているとの見方を示した。

ブリンケン長官は18日、ドイツ・ミュンヘンでの安全保障会議で中国の外交トップの王毅氏と会談後、米CBSニュースのインタビューに応じた。

ロシアへの支援をめぐっては、すでに中国企業がロシアに「殺傷力のない支援」を提供しているものの、ブリンケン氏は中国政府が「殺傷力のある支援」を提供する可能性があると示す新情報を得たと述べた。そして、このようなエスカレーションは中国にとって「深刻な結果」を意味すると警告した。

中国は、軍装備品の提供をロシア政府から要求されているとの報道を否定している。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を支持する中国の習近平国家主席は、ロシアによるウクライナ侵攻をいまだ非難していない。

ただ、習氏はこの戦闘をめぐり中立の立場を維持しようとしており、平和を呼びかけている。

中国外務省は、ロシアとの関係についてアメリカから「非難」されたり「強制」されることは受け入れないとしている。

外交トップに「深い懸念」表明
ブリンケン氏は王氏との会談の中で、「中国がロシアに殺傷力のある支援を提供する可能性」について「深い懸念」を表明したという。

「現在に至るまで、我々は複数の中国企業が(中略)ウクライナで使用するための殺傷力のない支援をロシアに提供しているのを確認してきた。それが今では、中国が殺傷力のある支援提供を検討していると情報を得ており、我々はこれを懸念している」と、ブリンケン氏は述べた。

中国の計画についてアメリカがどのような情報を入手したのかは、長官は明らかにしなかった。中国がロシアに具体的に何を提供しそうだと、アメリカとして考えているのか重ねて問われると、ブリンケン氏は主に兵器と弾薬だろうと述べた。

米政府は1月26日、ロシアの雇い兵組織「ワグネル・グループ」にウクライナの人工衛星画像を提供していたとして、中国企業に制裁を科したと発表した。

ブリンケン氏はCBSに対し、「言うまでもなく、中国では民間企業と国家の間に、実質的な区別がない」と述べた。
そして、中国がロシアに兵器を提供すれば、「アメリカにとって、そして米中関係にとって、深刻な問題」を引き起こすことになると付け加えた。【2月20日 BBC】
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NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長も、中国がロシアに武器供与を検討している兆候を確認したと述べ、中国に自制を呼びかけています。

プーチン・王毅会談が22日ですから、時間的にはこのアメリカからの“殺傷兵器供与への懸念表明”の方が先です。

アメリカの疑惑指摘を裏付けるように、中国企業によるロシアへのドローン輸出が報じられています。

****ドイツ有力誌 「ロシアが中国企業とドローン100機購入を協議」****
ウクライナへの侵攻を続けるロシアが「ドローン100機の購入について中国企業と協議中」だとドイツの有力誌「シュピーゲル」が報じました。

ドイツの有力誌「シュピーゲル」の23日付の記事によりますと、ロシア軍は中国の無人機メーカーとドローン取引を協議し、メーカー側は「『ZT─180』というドローン100機を製造し、4月までに提供する用意がある」と伝えたということです。

軍事専門家の話として『ZT─180』は35キログラムから50キログラムの弾頭を搭載することができ、ロシアがウクライナへの攻撃に使用しているイランの無人機に似ているということです。

さらに次の段階として、この中国企業はドローンの部品や製造のためのノウハウをロシア側に提供する計画で、そうすれば、ロシア国内で月におよそ100機のドローン製造が可能だとしています。

また、「シュピーゲル」は去年には、中国の「ある企業」がロシアの戦闘機の部品などを提供することを計画、民間航空機の部品と見せかけて輸出するため書類の偽造も計画されていたとも報じています。

さらに中国政府の管轄下にある貿易会社がUAE=アラブ首長国連邦経由で軍民両用のドローンをロシア側に輸出し、実際にロシア軍がウクライナ前線での偵察に使用しているとしています。

「シュピーゲル」の取材に対し、中国外務省はロシアへの武器提供を否定しているということです。【2月24日 TBS NEWS DIG】
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時期的に王毅氏のロシア訪問と重なったあたりは、中国へのロシア接近を牽制するアメリカ側の警告のようにも思えます。

【中国 ロシア・ウクライナ双方に配慮した全面停戦の呼び掛け 具体策はなし】
王毅氏はプーチン大統領に『中国はこれからも公正かつ客観的立場を堅持し、ウクライナ問題の政治的解決のために建設的な役割を果たす』と語ったそうですが、そうした立場の表明でしょうか、あるいは、調停役を演じて国際評価を高めたいという思惑でしょうか、中国はロシア・ウクライナ双方に全面的停戦を呼び掛けています。

****中国、ロシア・ウクライナに全面的な停戦呼びかけ「早期に直接対話再開を」****
中国外務省は24日、ウクライナ危機に関する中国の立場を示す文書を発表した。ロシアとウクライナの双方に対し「互いに歩み寄り、できるだけ早期に直接対話を再開することを支持する」と表明し、全面的な停戦を目指すよう呼び掛けた。

文書では、ロシアが使用をちらつかせる核兵器について「使用や威嚇には反対すべきだ」と表明。生物化学兵器についても「いかなる国がいかなる状況においても、研究開発や使用することに反対する」との考えを示した。

米国が主導する対露制裁を念頭に「国連安全保障理事会による権限委託を受けていない一方的な制裁に反対する」と牽制(けんせい)した。

文書は「各国の主権、独立、領土保全は適切に保障されなければならない」と指摘し、侵略を受けたウクライナ側の立場に配慮した。

同時に、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大に原因があるとするロシア側の主張を念頭に、「地域の安全は、軍事グループの強化や拡大によって保障することはできない」と主張した。

中国は、米国との対立激化をにらみ、ロシアとの連携を強化する一方で、ウクライナ問題では過度にロシア寄りの姿勢をとって国際的に孤立することを避けようとしている。【2月24日 産経】
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侵攻1年にあたり、中国の“公正かつ客観的立場”をアピールするものですが、停戦に向けた具体策は示されていません。
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