孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イギリス  選挙制度改革を問う国民投票で否決 連立与党の自民党・クレッグ党首、窮地に

2011-05-07 22:00:48 | 世相

(1年前の総選挙直前の自民党クレッグ党首 この頃の人気は二大政党を脅かすものでしたが・・・ “flickr”より By alibarber  http://www.flickr.com/photos/alibarber/4581976588/

【「政治改革の必要性を信じる我々にとって痛手だ」】
イギリスで5日に行われた、下院選挙を現在の完全小選挙区制から、優先順位付き連記投票(AV)制に変更することの是非を問う国民投票の結果は、変更反対が7割ほどを占め否決されました。

AV制では、候補者に優先順位をつけて投票。1位票で過半数を得る候補者がいれば、その者が当選。いない場合は1位票の最も少ない候補は脱落して、その者の2位票を他候補に回すやり方で、過半数獲得者が出るまで開票を繰り返します。比例代表制ではありませんが、完全小選挙区制より小政党に有利となるとされています。

従来より、イギリスでは完全小選挙区制に基づく保守党と労働党の二大政党制が定着していましたが、死票が多い欠点があり、第3党の自民党は、二大政党に次ぐ得票を得ながら議席数を増やせない状況が続いていました。

今回国民投票は、どの政党も過半数に達しない「ハングパーラメント(宙づり議会)」となった昨年5月の総選挙後の連立交渉で、比例代表制を望む自民党が第1党の保守党と連立政権を組む際の条件としていたものでした。
保守・労働両党の中間に位置する自民党としては、保守・労働両党候補双方の2位票が期待でき、AV制によって議席を増やせるとの狙いがありました。

反対多数での否決によって自民党の期待は潰れましたが、それだけでなく併せて行われた地方選挙でも連立与党の自民党は大敗を喫しています。

****英国・国民投票:下院選挙制度変更反対が7割*****
英国で5日に下院選挙を現在の完全小選挙区制から優先順位付き連記投票(AV)制に変更することの是非を問う国民投票が実施され、翌日開票の結果、反対票が約7割におよび否決された。国民投票を推進した連立与党第2党の自民党は同時に行われた統一地方選でも、与党第1党・保守党への譲歩姿勢を厳しく批判されて惨敗。結果はキャメロン連立政権に深い亀裂をもたらしそうだ。

英国史上2度目となった国民投票の暫定投票率は約42%で、BBC放送は最終結果を反対69%、賛成31%と予測。同キャンペーンでは、2大政党制の基盤である完全小選挙区制を維持したい保守党と、より小政党に有利となるAV制への移行を求める自民党が連立与党間で激烈な非難合戦を繰り広げた。
自民党は、キャメロン首相が反対運動の前面に出ないという「紳士協定」を破ったと不満を強め、アッシュダウン元同党党首は“敗北”を受けて「連立政権は善意と信頼で成り立ってきたが、これからはそうはいかない」と述べ、連立政権の行方に警告を発した。

地方選では、英国を構成する4地域のひとつイングランドで279の議会選を実施。BBCによると、270選挙の開票が終わった段階で、主要3政党の議席の増減は保守党81増、労働党800増、自民党695減。
自民党は、昨年5月の連立交渉で選挙公約を修正して保守党の大胆な歳出削減策に歩みより、中低所得者層の多い支持者から強い反発を買っている。クレッグ党首(副首相)は連立政権維持を表明しているが、連立参加の最大の目玉だった国民投票で惨敗しただけに、同党首は厳しい立場に置かれた。

また、スコットランド議会(定数129)では少数与党の独立派スコットランド民族党(SNP)が23議席増の69議席へ大躍進し、過半数を制覇。同党は独立の是非を問う住民投票の5年以内の実施方針を示している。【5月7日 毎日】
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【「経済を立て直すための仕事は続く」】
世論調査によれば当初は変更賛成派が優勢でしたが、「二流の選挙制度に、あっさりと移行してはならない。そんなことになれば、わが国の民主主義は永遠に損なわれてしまう」と主張するキャメロン首相主導の保守党の反対キャンペーンもあって後半で形勢は逆転。
また、英王室のロイヤルウエディングや国際テロ組織アルカイダのウサマ・ビンラディン容疑者殺害のニュースに挟まれ、国民投票への国民の関心はまったく盛り上がらなかったという事情もあるようです。

自民党は昨年5月の総選挙前、クレッグ党首(現副首相)の人気で一時は労働党、保守党の二大政党と並ぶ3割台の支持率を記録しました。
しかし、選挙での得票率は23%で、前回より得票率を1ポイント増やしたのに死票が多く、議席は逆に5減らして57議席(定数650)にとどまりました。一方で、得票率29%の労働党は約4.5倍の258議席獲得しています。クレッグ党首の不満は十分に理解できます。

連立交渉では保守・労働両党からの連立要請を受けてキング・メーカーともなった自民党・クレッグ党首でしたが、自民党が望む選挙制度改革にも積極的な姿勢を見せ、政策的にも自民党とも近い労働党と、選挙で第1党となって民意を受けた形の保守党の間で、結局保守党との連立を選択しました。2位・3位連合で第1党を排除することへの世論の反発を考慮した選択だったと思われます。その際の条件が今回の国民投票実施でした。

しかし、連立後は保守党の陰で自民党の存在感が薄れ、保守党主導の大胆な歳出削減路線に協力する形となり、急速に支持者離れが進みました。
特に、自民党は選挙公約に「大学授業料無料化」を挙げて多数の学生票を集めたことから、連立政権参加で授業料値上げに合意したことを“裏切り”と強く批判され、クレッグ党首の責任も追及されました。

自民党・クレッグ党首としては、保守党との連立で多くの支持を失いながら、最後のよりどころだった選挙制度改革にも失敗・・・ということで、踏んだり蹴ったりと言うか、お気の毒な結果です。
“一体何のための連立だったのか?”という批判が再燃すると思われますが、ただ、国政混乱につながる連立解消という選択も厳しいものがあります。
今のところ、クレッグ党首は「経済を立て直すための仕事は続く」と述べ、連立にとどまる考えを示しています。

スコットランド独立支持政党躍進
スコットランド議会では、スコットランド独立の是非を問う住民投票の5年以内の実施を掲げる少数与党の独立派スコットランド民族党(SNP)が大躍進して過半数を獲得したとのこと。

スコットランド独立については、07年12月17日ブログ「イギリス スコットランド独立って本当にあるのか・・・」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071217)でも取り上げましたが、どこまで本気なのかよくわかりません。
もちろんスコットランドとイングランドの歴史的経緯はありますが、両者の微妙な感情は外国人には理解できません。ベルギーが分裂するならイギリスが分裂しても不思議ではありませんが・・・・。

なお、スコットランドが財政的にあてにする北海油田はピークを過ぎており、その点では厳しいものがありそうです。


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