孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  共産党結党90周年を前に“犯罪・恋愛ドラマ放映禁止”の時代錯誤

2011-05-06 21:01:48 | 世相

(1921年、コミンテルン主導で、毛沢東ら12名(または13名)が参加して中国共産党の結成会合が開催された上海の「中共一大会址紀念館」 創立党員は57人とされています。 当然ながら“紅色観光”の目玉のひとつでしょう。 “flickr”より  By John S Y Lee http://www.flickr.com/photos/johnsylee/4125737103/ )

【「紅色ビジネス」】
中国共産党は今年7月に結成90周年を迎えるとのことで、“党の求心力向上と国威発揚”を狙った取組が行われているようです。

****紅色ビジネス」で国威発揚を=中国共産党、結成90周年控え―英メディア****
2011年5月3日、英デイリー・テレグラフ紙などによると、今年7月の結成90周年を控え、中国共産党が紅色ビジネスの振興に力を入れている。国旗の赤をイメージカラーにして、観光産業の拡大、関連書籍や記念品の販売で、党の求心力向上と国威発揚を狙う。中国関連の海外報道を紹介する中国のニュースサイト・参考消息が伝えた。

党が特に力を入れているのが、革命ゆかりの地に観光客を誘致する紅色観光だ。中国国家旅行局は全国10地域を「紅色観光拠点」に指定。関連の名所旧跡20カ所、景勝地域100カ所を選定した。中国政府によると、紅色観光拠点への訪問者数は現在、年間50%増のペースで伸びている。6月には毛主席の出生地・湖南省で「紅色観光文化フェスティバル」を開催。革命の聖地・延安では、国共内戦を再現したショーも予定されている。

このほか、党結成当時に着用されていた革命服の販売や、毛主席が好んだ紅焼肉を“革命食品”と命名するアイデアも。紅色ビジネスは雇用200万人を生み出し、経済効果は年間100億元(約1237億円)に達するとの試算もある。【5月6日 Record China】
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5月~7月には“愛国的ドラマ”集中放映
赤をイメージカラーにするのも、革命ゆかりの地に観光客を誘致する紅色観光も結構ですが、結党90周年に合わせてTV番組から娯楽番組を締め出してしまうという、以下の記事には驚きました。

****中国、5~7月は犯罪・恋愛ドラマ放映禁止 共産党創立90周年で****
中国当局がこのほど国内テレビ局に対し、5月~7月に犯罪や恋愛、スパイ活動を扱ったドラマを放映しないようにとの通達を出したと、国営英字紙・環球時報が6日、報じた。

7月1日の中国共産党創立90周年を前に、中国の放送監視機関「国家広播電影電視総局」が4月末に出した通達で、代わりに愛国的ドラマを放映するよう求めている。好ましいドラマとして、創成期の中国共産党を描いた歴史ドラマ「東方」など、40本を奨励しているという。
前月には、中国王朝時代へのタイムトラベルを扱ったドラマの放映を禁じる通達が出されたと報じられたばかり。このとき当局者は、登場人物が過去の時代へ行くタイムトラベル物は「歴史への敬意に欠ける」と説明していたとされる。
環球時報は、浙江(Zhejiang)省の衛星テレビ局職員の話として、全テレビ局は5月から3か月間、中国共産党の創立か人民解放軍に関する番組を集中放映することになると伝えた。【5月6日 AFP】
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実質的一党独裁である中国の社会・政治が日本とは異なる独自のシステムにあって、驚異的な経済成長の一方で、人権問題、民族問題、所得格差などの社会的ひずみ、腐敗・汚職、カネ儲け至上主義、食費安全性軽視、環境破壊等々、さまざまな問題を抱えていることは承知しており、それらに関する日々のニュースは枚挙にいとまがありません。
ただ、文化大革命の時期ではあるまし、いまどきTV番組から犯罪や恋愛、スパイ活動を扱ったドラマを締め出し、共産党の創立か人民解放軍に関する番組に集中するというのは、いかにも時代錯誤の感がします。

一般的国民感情との乖離
あらためて中国社会の特異性を実感しますが、こうした施策は中国の一般国民の感覚からも乖離しているのではないでしょうか?

以下のステレオタイプなエリート像への反感、中国で人気のAV女優蒼井そらへの熱狂といった三面記事的なニュースから受ける中国国民の感覚は、日本のそれとも共通するもので、上記の国家指導の仰々しい施策とは大きくかけ離れたものを感じます。

****中国共産党の次世代のホープにバッシング、「中学生なのに役人のよう」―中国****
2011年5月3日、中国共産党の次世代のホープが「良い子すぎる中学生」としてネット上でバッシングを浴びている。現在網が伝えた。

「中学生のくせに役人みたいだ」としてバッシングを浴びているのは、中国少年先鋒隊(少先隊)武漢市副総隊長の黄芸博(ホアン・イーボー)君(13)。「少先隊」とは中国共産党の若手エリート集団「中国共産主義青年団」の下部組織で、満6~14歳で構成。共産主義思想を徹底的に教え込むことが目的とされている。トレードマークは首に巻いた赤いネッカチーフ。

黄君は普段から積極的に老人ホームでボランティア活動を行ったり、ごみ拾いをしたりするなど品行方正な少年として知られ、2007年には全国で100人のみに贈られる「中国好少年」にも選ばれている。その黄君がブログを開設し、自らが少先隊本部で資料を閲覧している写真を載せたところ、「風貌が役人みたいだ」「中学生らしさが全くない」「わざとらしい」など批判のコメントが殺到した。

ブログの序文も「中華民族の復興のため」「漢唐時代の繁栄を今に」などあくまでも役人風。若干13歳の少年のあまりの老成ぶりに「両親の代筆ではないのか」「子どもをこんな風にしてしまったのは社会が悪いのか、親や教師が悪いのか」といった議論も噴出している。これに対し、黄君の父親は「社会に対する不満を息子にぶつけないで欲しい」などと話し、怒りを露わにしている。【5月5日 Record China】
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****変質してしまったモーターショー、蒼井そら出演で盛り上がるも車ファンは置き去りに―中国****
2011年5月1日、中国のネット掲示板・鳳凰網論壇に「南昌国際モーターショーはなぜ蒼井そら見学会になったのか」と題した書き込みが掲載され、注目を集めている。以下はその内容。

4月30日、タレントにして人気AV女優の蒼井そらが江西省南昌市のモーターショーに出演した。現場にはファンが詰めかけ、混乱を避けるために5分も出演しないうちにステージを下りることとなった。その後、蒼井そらは記者会見に出席。多くの中国メディアがその模様を報じている。

蒼井そら人気の陰で完全に忘れ去られたのがモーターショーそのもの。出展した高級車も、あるいは実際の販売台数も話題にならない。大金を稼いだ蒼井そらも、話題をかっさらった主催者もこの結果には満足しているだろう。だが、変質してしまったモーターショーに皆が本当に満足しているのだろうか。蒼井そら同様、遠路はるばるやってきた車ファンや外国の人々は満足したのだろうか?【5月4日 Record China】
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逆に言えば、そうした党のコントロールから離れて変質していく社会風潮に対する共産党指導部の危機感がTV番組管理のような施策となって表れているのでしょう。

現実課題を直視した施策を
話はそれますが、モーターショーつながりで、最近こんな記事もありました。
****貧しい子ども学校行けず…中国前首相が政策批判*****
23日付香港紙・明報によると、中国の朱鎔基・前首相(82)は22日、母校である北京の清華大学で講演し、開催中の上海モーターショーに高級車が展示されている光景を引き合いに出しながら、「多くの貧しい子どもはいまだ学校にも行けない」と基礎教育の格差が広がっている実態を批判した。
元最高指導部が現政権の政策を公然と批判するのは異例。
朱氏はまた、大学に多額の資金が投じられ、学生の数は増えている一方、学術論文の質は低下していると指摘。教育改革は「絵空事だ」と切り捨てた。【4月23日 読売】
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朱鎔基・前首相の苦言はわかります。
人民解放軍に関する番組を押し付け“国威発揚”に走るのではなく、こうした現実課題を直視して対応をとる姿勢が必要かと思われます。



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