孤帆の遠影碧空に尽き

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イタリア  「極右」を警戒されたメローニ首相のEUとの協調姿勢 難しい不法移民対策

2024-05-31 22:17:55 | 欧州情勢

(イタリアのメローニ首相(写真右)は来月の欧州議会選挙後に、中道右派のフォンデアライエン欧州委員長(左)の2期目続投を支持すれば、同氏の影響力は増すかもしれない。昨年1月、ローマで撮影【5月31日 ロイター】)

【厳しい状況のイタリア経済・社会】
日本はよその国の状況をとやかく言える立場にありませんが、イタリアも経済・社会情勢はよくありません。

****イタリア貧困人口、昨年は9.8% 統計開始以来最高に*****
イタリアの昨年の貧困人口が過去最高水準に達したことが、国家統計局(ISTAT)が25日発表した統計で分かった。

経済は新型コロナウイルス禍関連の規制解除以後回復しているが、昨年は必需品などを十分購入できない絶対貧困者が人口の9.8%に当たる575万人となり、前年の9.7%から増えたほか、2014年に現在の統計が始まって以来最高となった。

イタリアはドイツやフランスなどに比べてコロナ禍による景気後退(リセッション)からより強く回復し、就業者数も増加したが、貧困者の支援にはほとんどならなかった。

20年の絶対貧困率は9.1%、コロナ流行の最盛期となった21年は政府支援策でリセッションの家計への影響が一部相殺され、9.0%だった。

地域別の絶対貧困率は北部が9.0%、中部が8.0%、伝統的に貧しい南部は12.1%だった。【3月26日 ロイター】
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財政面でもイタリアはEU内では最悪の状態にあります。

****イタリア、昨年の財政赤字対GDP比7.4% EU平均の2倍以上に****
欧州連合(EU)統計局は22日、イタリアの昨年の財政赤字は対国内総生産(GDP)比で7.4%と3月時点の推計7.2%から拡大し、欧州連合(EU)内で群を抜いて高かったと発表した。

この数字はEU加盟27カ国の平均3.5%の2倍以上に当たり、同国の財政課題が浮き彫りとなった。

EU加盟国のうち計11カ国がEUの財政赤字のGDP比の上限である3%を上回っており、その中には5.5%のフランスも含まれる。

イタリアのジョルジェッティ経済財務相は今月、欧州委員会がこれら全ての国に対して財政規律違反に関する手続きを開始すると述べた。

昨年、財政赤字が5%を超えた他の国はいずれもユーロ圏20カ国外の国々で、ハンガリー(6.7%)、ルーマニア(6.6%)、ポーランド(5.1%)の3国のみだった。【4月23日 ロイター】
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なお、日本の財政収支(対GDP比)は2024年は-6.2 %。前期2023年の-11.6 %と比べると大きく改善しています ただし、政府債務残高のGDPに対する比率は2023年で252%と200%を大きく上回り、主要国の中で突出しています。欧州ではギリシャが168%、イタリアが137%。

長期的にも、少子化が深刻なのは日本と同じ。

****イタリア出生数、23年は15年連続減少 過去最低を更新****
イタリア国家統計局(ISTAT)が29日発表した2023年の出生数は前年比3.6%減の37万9000人と、15年連続で減少し、過去最低を更新した。

出生率(女性1人当たりの子ども数)は1.24から1.20に低下。人口の維持に必要とされる2.1を大きく下回った。

総人口は7000人減の5899万人。出生数より死亡者数が約28万2000人多かったが、移民の流入や海外移住からの帰国者がその大部分を補った。

イタリアの人口は14年以来減り続けており、その間の累積減少数は136万人強と、第2の都市ミラノの人口に相当する。

ISTATは昨年9月、基本シナリオでは50年までに人口が5440万人まで減少するとの見通しを示している。【4月1日 ロイター】
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【メローニ首相 「極右」と警戒されたものの、EUとも協調的な政権運営】
こうしたイタリアを牽引するのが、2022年の就任時は「極右」として警戒されたメローニ首相ですが、“思いのほか”EUとも協調した穏健な路線をとっており、欧州政界においても存在感が高まっています。

****メローニ伊首相、欧州の実力者に 「極右」鳴り潜める****
2022年、イタリアでメローニ首相が政権を握ると、欧州各地の極右政党はこれを歓迎し、新しい熱血指導者が民族主義を推し進めて欧州連合(EU)の官僚主義と闘ってくれると期待した。

ところがメローニ氏はEUのエリートらと衝突するどころか、緊密に協力することで敵味方双方を驚かせ、主流の中道右派と、自身が属する強固な保守陣営との橋渡し役を果たしてみせた。

来月の欧州議会選挙後に、メローニ氏自身がほのめかした通り中道右派のフォンデアライエン欧州委員長の2期目続投を支持すれば、同氏の影響力は増すかもしれない。

そうなれば同氏はEU新執行部で影響力を高め、イタリアに次期欧州委員会の重要ポストをもたらし、権力を操る「陰の実力者」ぶりを発揮することにもなりそうだ。

同氏が率いる政党「イタリアの同胞」選出の欧州議会議員、カルロ・フィダンツァ氏は「メローニ氏は欧州の右派および中道右派のさまざまな派閥の橋渡し役として最適の人物であり、尊敬され、リーダーとして認められている」と語った。

同氏が率いるイタリア連立与党が多様な右派勢力を束ねているのは確かだ。だが、メローニ氏が次の欧州議会でそれを再現するのは不可能に思われる。

フォンデアライエン委員長とその仲間は既に、メローニ氏の盟友であるイタリアの極右政党「同盟」党首のサルビーニ氏や、フランスのルペン氏率いる極右政党・国民連合(RN)など、より過激な勢力とは協力しない姿勢を表明。これらの政党も委員長に反発している。

一方でフォンデアライエン委員長は、メローニ氏については何の懸念も表明していない。

委員長は23日、「ジョルジア・メローニ氏とは非常にうまく協力している」と述べ、同氏は「明らかに親欧州派」だと付け加えた。

<即座に実績>
メローニ氏は22年に首相に就任すると、初めての外遊先としてブリュッセルのEU本部を訪問し、好印象を残した。

その後数カ月間は欧州委と協力し、EUが10年近く果たせなかった移民・難民規定改革への合意取り付けに貢献した。

また、フォンデアライエン氏と共に北アフリカを3回訪れ、エジプトとチュニジアとの間で、移民の出国を食い止める条項を含む協定に署名した。

重要なのは、メローニ氏がウクライナへの支援とロシアへの断固とした批判を一貫して表明していることだ。これは、長らくロシアのプーチン大統領と緊密な関係を築いてきたルペン氏やサルビーニ氏と一線を画している。

英サリー大学の政治学教授、ダニエレ・アルベルタッツィ氏は「メローニ氏は賢い。彼女はつまり、こう言っている。『国際舞台で主流派になり、責任を果たそう。なぜなら自分にはこの人たちが必要だからだ』」と語った。

あるEU指導者はオフレコにするよう念を押した上で「メローニ氏は依然として『過激な右翼』だが、イタリアは多額の負債を抱えており、財政的に援護してもらっている国々を敵に回すわけにはいかないため、親欧州的な態度を取っている」と語った。

動機が何であれ、メローニ氏は最近のEU首脳会議で自らがかけがえのない存在であることを証明した。民族主義者であるハンガリーのオルバン首相を説得し、ウクライナへの資金援助と、EUの新移民・難民協定を支持させたからだ。

あるEU関係者は、欧州委がオルバン氏との意思疎通の大部分をメローニ氏を通じて行っているため、同氏には「オルバンのささやき声」というニックネームが付いたと明かした。

<続く分裂>
欧州の極右政党や民族主義政党は、欧州議会内で2会派に分かれている。

メローニ氏は、ポーランドの「法と正義(PiS)」を含む「欧州保守改革(ECR)」会派の代表。サルビーニ、ルペン両氏は「アイデンティティーと民主主義(ID)」会派で、オルバン氏の「フィデス・ハンガリー市民連盟」は今のところどの会派にも属していない。

フォンデアライエン氏は欧州最大会派である中道右派、欧州人民党(EPP)出身だ。

メローニ氏といえども、ECR全体の足並みをそろえさせるのは難しいとみられる。例えばPiSの議員らは、国内で敵対するトゥスク首相がEPPの有力人物であるため、ほぼ確実にフォンデアライエン氏の続投に反対するだろう。

メローニ氏はまた、ECRとIDの統合を否定。ECRが欧州議会選で議席を伸ばし、EUにおける自身の影響力が高まることを期待している。

シンクタンク、欧州外交評議会(ローマ)のアルトゥーロ・バルベッリ理事は「会派の勢力が強まれば、メローニ氏はIDとEPPの中央に立てる。私が見るところ、それが彼女の目標だ」と語った。【5月31日 ロイター】
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メローニ首相の穏健な姿勢は、宗旨替えした訳ではなく、冒頭に述べたように厳しい状況にあるイタリアにとってEUからの支援が必要不可欠であるという「現実」があってのこと・・・との評価のようです。

【難しい対応を迫られる移民・不法移民対策】
メローニ首相にとって、難しいかじ取りとなっているのは移民・不法移民対策です。
メローニ首相は、地中海を経由して欧州に渡るアフリカからの移民について、不法移民を排除する一方、合法移民の受け入れを進める考えを示しています。

不法移民に対する厳しい姿勢は、「移民船は一切イタリアの海岸に上陸させない」との選挙公約からも当然の方針です。

しかし、昨年1年間で地中海を経由してイタリアに到着した人数は、15~16年にシリア難民が欧州に押し寄せた「難民危機」の時以来の水準になっています。

メローニ政権は昨年7月には、北アフリカ諸国と不法移民の摘発強化で合意し、11月には強制送還を進めるため、(イギリスの不法移民ルワンダ移送に類似した)海上で救助した移民・難民の一時収容施設をアルバニアに建設する計画を発表しています。

更に、アフリカ諸国への資金提供も。

*****アフリカに8千億円拠出へ イタリア、不法移民抑制狙い****
イタリアのメローニ首相は29日、アフリカの開発に55億ユーロ(約8700億円)以上の資金を拠出すると表明した。ローマで開催したアフリカ諸国の首脳らとの国際会議で述べた。エネルギーや農業分野への投資を通じて経済発展を支援し、欧州へ逃れる不法移民の数を抑制する狙いがある。

2022年に発足したメローニ政権は「不法移民排斥」を公約に掲げたが、移民増加に歯止めがかからず、アフリカ諸国の課題に対処する姿勢を示した。メローニ氏は記者会見で、今年の議長国を務める先進7カ国(G7)の会合でもアフリカ支援を主要テーマにする意向を明らかにした。【1月30日 共同】
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その一方で、イタリアは日本と同様の高齢化(22年時点のイタリアの高齢化率は24・1%で、世界で最も高い日本の29・1%に次いでいます)で人手不足が深刻化するなか、外国人労働者なしには社会が立ちゆかない現実があります。

そのため、メローニ政権は、従来の2倍以上の規模で、外国人労働者の受け入れを拡大しています。経済界からは更に大規模な外国人労働者を求める声も出ています。

また、不法移民を排除する一方、合法移民の受け入れを進めるとは言うものの、不法移民と合法移民の線引きは必ずしも明確でないの実情もあるようです。

*****イタリアの移民問題 首相が移民船を止めるのか、移民船が首相を止めるのか****
イタリアで昨年(2022年)9月に行われた総選挙でジョルジャ・メローニ氏が率いる極右連合が地滑り的勝利を収める要因となったのは、これまで誰もなしえなかった公約だった。すなわち、イタリアから欧州への上陸を図る移民船の阻止だ。

当時、メローニ氏のソーシャルメディアには、移民を満載した密輸船の写真とともに「Blocco navale(ただちに海上封鎖!)」の文字が躍っていた。

メローニ氏は選挙遊説で、乗船者が誰であれ、命の危険を冒してまで海を渡る理由が何であれ、移民船は一切イタリアの海岸に上陸させないと約束した。

就任後100日間は順風満帆と思われた。
首相は一部で懸念されていたほど極右に傾くことはなく、マルチリンガルで政界にも精通していたことから、世界各国の首脳にもすんなり溶け込んだ。

移民船阻止というメローニ首相の公約の可能性からリベラル派の欧州各国首脳も得をすることから、大勢が実現に期待を寄せた。ハンガリーのビクトル・オルバン首相をはじめとする保守派もメローニ氏の当選を祝福し、「欧州国境を守ってくれた」ことに感謝した。(中略)

そこへきて、移民船が相次いでイタリアにやってきた。
今月21日までに船でイタリアに到着した移民の数は3万5000人余りで、前年より3倍以上も多い。
(中略)

「メローニ首相が船を止められるかと尋ねれば、専門家の答えは、いいえだろう」と(移民政策研究所(MPI)欧州支部のハナ・ベイレンス)所長は言い、移民流入を食い止めたのは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)だけだったと付け加えた。

欧州に向かう早い段階での亡命申請の機会提供や、移民・難民がもっとも多く出ている国の問題解決など、根幹の問題にどう対処するか欧州の意見がまとまらない限り、移民は今後も続くだろうとベイレンス所長は言う。(後略)【2023年4月24日 CNN】
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