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(シリア北部アインアルアラブ(クルド名コバニ)を防衛するクルド人勢力を支援するアメリカの空爆 敵も味方も吹き飛ばしてしまいそうな爆撃ですが、当然ピンポイントで行われているのでしょう。 一定に効果はあげているとは言われますが、トルコ軍の支援がない状況で陥落の可能性も高いとも。 “flickr”より By ThreeQuarksForMusterM https://www.flickr.com/photos/114469306@N08/15583282802/in/photolist-przbdA-oMbc3Z-pHK1Ua-pHJWak-oMb8yK-pruaiD-oM868j-pJ3UcC-------oM89bJ-pFT9fy-oM8axb-pGjNeu-psyZyF-ppx8ND-pC1iTw-oMMoQN-pr9Efq-pK3p4G-pq8c7X-pFCq6N-prFiJo-pJ42aW-pHK1yk-przfD9-pHK2r2-pEA8fn-oHYt5G-pF7Ni6-pqpbn9-oKWyXA-pEnuMM-pG5Dx4-oKJawv-pGNdFa-ppN8Ja-pE4moU-oLiKYm-oJF4jn-pECUNM-povjbc-pDQhNJ-pshiAr-oN799V-pGLAwu)
【非常任理事国選出で惨敗 「トルコの外交政策には賛同しないという(国際社会の)強いメッセージ」】
国連安保理は、拒否権を持つ常任理事国5か国(英中仏露米)と、地域別に割り当てられた非常任理事国10か国の計15か国で構成されおり、非常任理事国は毎年5か国ずつ改選され、任期は2年となっています。
16日、国連総会で今年改選される非常任理事国として、アンゴラ、マレーシア、ニュージーランド、スペイン、ベネズエラが選出されましたが、選出が確実視されていた中東の地域大国トルコが落選したことが話題となっています。
****エルドアン外交に懸念 トルコ安保理落選 「イスラム国」へ慎重姿勢、影響****
国連安全保障理事会の非常任理事国選挙でトルコが惨敗し、衝撃が広がっている。目覚ましい経済成長を成し遂げ、国際社会での存在感も高まり、国内では選出が確実視されていた。
「屈辱的敗北」の原因は、周辺国との間で摩擦を生んだ近年の外交政策にあるとして、その見直しを迫る論評も出始めた。(中略)
トルコは「西欧その他」に割り当てられた2議席をスペイン、ニュージーランドと競った。投票は3回までもつれ、トルコは109票、73票、60票と回を重ねるごとに得票を減らし、選出ラインの128~129票(投票国の3分の2)に届くことなく敗退した。
前回立候補した2008年は、1回目の投票で151票を集めて当選。敵をつくらない「ゼロプロブレム外交」を掲げ、欧州偏重を改めて中東諸国と連携を深めた成果と評された。
今回は、エルドアン氏が首相から大統領にくら替えして初めて臨んだ選挙。投票の約1週間前にはチャブシュオール外相がニューヨーク入りし、各国に働きかけるなど力を入れていた。
トルコのメディアによると、トルコはイスラム協力機構諸国、アフリカ連合諸国など計約140カ国の支持を得られると見込んでいたという。
もくろみが外れた理由について、欧州のある外交関係者は、シリアとイラクで勢力を増した過激派組織「イスラム国」へのトルコの対応が「間違いなく影響した」と説明する。
トルコ国境に近いシリアのクルド人居住地域への「イスラム国」侵攻を受けて、シリア内戦の和平調停にあたる国連のデミストゥラ特使は10日、民間人の大量虐殺の恐れを警告。「あらゆる手段を用いて(『イスラム国』)抑止を支援してほしい」と異例の要請をした。
だがトルコは、「イスラム国」を攻撃すれば自国がテロの標的になる恐れがあることなどから、介入には一貫して慎重だ。その結果、今回の選挙に際して、「今のトルコには任せられない」という懸念が国連外交関係者に高まったとみられる。
■アラブ諸国と対立も
米ニューズウィーク誌や米外交誌フォーリン・ポリシーは、エジプトや、サウジアラビアなどのペルシャ湾岸諸国が反対キャンペーンを行ったと指摘する。
これらの国々が警戒するイスラム組織「ムスリム同胞団」に対し、エルドアン氏が肩入れしているためだ。
18日付のトルコ紙トゥデイズ・ザマンは、「たった60票しか取れずに失敗したことは、トルコの外交政策には賛同しないという(国際社会の)強いメッセージであり、トルコの国際的地位の低下を示している」として、外交政策の見直しを訴えた。【10月20日 朝日】
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【アメリカとの関係で足並みに乱れ】
イスラム主義与党・公正発展党(AKP)出身のエルドアン大統領は、「アラブの春」で中東・北アフリカが不安定化する中、AKPと似た路線をとるイスラム組織「ムスリム同胞団」を支持し、各国のイスラム勢力を通じて影響力を拡大させてきました。
「アラブの春」初期には、イスラム民主主義のモデル国ともみなされていました。
しかし「アラブの春」が破綻した現在は、国内で「ムスリム同胞団」を厳しく弾圧するエジプト・シシ政権や、イスラム主義台頭による王制批判を警戒するサウジアラビアなど湾岸諸国と対立する関係にもなっています。
また、シリア・イラクで勢力を広げるイスラム過激派「イスラム国」への対応については、特に、シリア北部のクルド人居住地域への「イスラム国」の攻勢に対し、速やかな関与を求めるアメリカとの関係がぎくしゃくしています。
アメリカは、「イスラム国」を攻撃する米軍など有志連合の部隊がトルコ国内の施設を使用することを求めていますが、トルコは慎重姿勢を崩していません。
12日には、ライス米大統領補佐官(国家安全保障担当がNBCテレビのインタビューで、トルコ国内の施設を使用することにトルコが同意したと明らかにし、また、AFP通信は、トルコが米軍による空軍基地使用を認めたと報じました。
しかし、トルコ政府は13日、「イスラム国」に対する空爆のため米軍にトルコの空軍基地の使用を許可することで米政府と合意に至った事実はないと否定しています。
更に14日には、ケリー米国務長官がパリ市内で記者会見し、「トルコは(有志連合の部隊に)幾つかの国内施設の使用を許可した」と説明しています。
このように、慎重姿勢というか、トルコ政府の方針がはっきりしない状況が続いています。
トルコの慎重姿勢の背景には、“トルコ国内には「イスラム国」支持の過激派約6千人がいるとみられ、「イスラム国」攻撃に踏み切れば、自国がテロ攻撃にさらされる恐れがある”【10月20日 朝日】ことが指摘されています。
****イスラム国対策で連携確認=米トルコ首脳が電話会談****
米ホワイトハウスは19日、オバマ大統領が18日夜、トルコのエルドアン大統領と電話会談し、過激組織「イスラム国」への対応を協議したと発表した。
特にシリア北部の対トルコ国境沿いの要衝アインアルアラブへのイスラム国の攻勢について意見交換し、連携強化を確認した。【10月19日 時事】
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この電話会談では、後述のアメリカによるPYDへの武器支援も話されたようです。
【クルド人救済を渋るエルドアン政権 国内反政府勢力PKKとの対立も再燃】
現在事態が切迫しているシリア北部のアインアルアラブへの関与をトルコが渋る理由は、先述の自国がテロ攻撃にさらされる恐れ以外にも、もうひとつあると想像されます。
シリア北部のクルド人居住地域で活動し、アインアルアラブ防衛を担っているクルド人組織「民主統一党」(PYD)は、トルコ国内のクルド人反政府武装勢力「クルド労働者党」(PKK)を支援する関係にあります。
トルコ政府としてはPYDを支援して、結果的にPKKを助ける形になるよりは、「イスラム国」がPYDを潰してくれた方がメリットがある・・・と考えているのでは、という話は、
10月6日ブログ“シリア 「イスラム国」のクルド人地域への攻勢 あふれる難民 トルコは対「イスラム国」戦線へ参加”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20141006)
9月21日ブログ“トルコの「イスラム国」対応 難民流入、クルド人問題を抱えるトルコの事情”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140921)
でも取り上げてきました。
また、トルコはシリアは政府勢力を支援しており、「イスラム国」を攻撃することで、結果的にアサド政権を助けることになることも望んでいません。
アメリカと協力関係にありながらも「イスラム国」への慎重姿勢を崩さないトルコの立ち位置は、アフガニスタンでタリバンと戦うアメリカと協力関係にありながらも、裏ではタリバンなどイスラム過激派を支援しているパキスタンとも似たものがあります。
なお、「イスラム国」の攻勢にさらされており、住民虐殺も懸念されるシリア北部アインアルアラブ(クルド名コバニ)へのトルコ関与は、アメリカだけでなく国連も要請しています。
****トルコはクルド人越境容認を=「イスラム国」の虐殺阻止で―国連特使****
デミストゥラ国連シリア平和特使は10日、過激組織「イスラム国」が攻勢を強めるシリア北部のトルコ国境沿いの町アインアルアラブが陥落すれば、「市民は恐らく虐殺される」と強い懸念を表明、シリアからトルコ領に逃れたクルド人が町を守るため、シリアに再び戻ることを容認するよう求めた。
特使はジュネーブの国連欧州本部で記者会見し、アインアルアラブ中心部には500~700人の高齢者が取り残されていると説明。イスラム国が町を制圧すれば、郊外にいる市民約1万2000人を含めて虐殺される事態に陥ると述べた。
その上で特使は、「(クルド人が)自らの装備で自衛するため、シリア側に戻れるようトルコ当局に要請する」と明言。トルコ領にとどまるクルド人の戦闘参加を事実上認める考えを示した。【10月10日 時事】
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シリアとの国境線に戦車部隊を配置しながらアインアルアラブの危機にも動こうとしないトルコ軍、国連要請にもかかわらず自国民のクルド人戦闘員らが「イスラム国」との戦闘に直接関与することを認めず国境を固めるトルコ政府に対し、トルコ国内に1,400~1,950万人いると言われるクルド人は激しい反発を示しています。
国内では、トルコ軍の軍事介入を求めるクルド人のデモが治安部隊と衝突して多くの犠牲者を出しているほか、和平交渉を行ってきたPKK拠点への空爆も行っています。
****トルコ、クルド和平に影 「イスラム国」巡り両者対立****
過激派組織「イスラム国」によるシリアのクルド人居住地域への侵攻が、トルコ内政に深刻な影響を及ぼしている。
軍事介入に慎重なトルコ政府に対し、「同胞救済」を訴えるトルコのクルド人は猛反発。13日にはトルコ軍がクルド人武装組織「クルド労働者党」(PKK)の拠点を空爆し、昨年始まったトルコ政府とPKKの和平プロセスに暗雲が漂い始めた。
トルコのメディアによるとトルコ軍は13日夜、イラク国境に近い南東部ダールジャのPKK軍事拠点2カ所などに対し、F16戦闘機とF4戦闘機で空爆した。死者はいない模様だ。
PKKは、少数民族クルド人の分離独立を求め、1984年にトルコ国内で武装闘争を開始。近年は「自治拡大」に要求を下げ、2013年にはトルコ政府と和平交渉に入っていた。
PKKは14日、「空爆は(トルコ政府の)停戦違反」と非難する声明を発表。一方、ダウトオール首相は同日の会見で「ダールジャのトルコ軍前哨部隊に対する看過できない(PKKの)挑発行為があり、軍は必要な対応をした」と説明した。
対立再燃の背景には、トルコ国境に近いシリアのクルド人居住地域アインアルアラブ(クルド名コバニ)への「イスラム国」侵攻をめぐり、トルコ政府とPKKの立場が大きく異なっている事情がある。
PKKはトルコ政府に対し、コバニ住民を保護し、「イスラム国」と戦闘を続けるクルド人部隊を支援するため、トルコ軍の即時介入を要求。一方、トルコ政府は、「イスラム国」を攻撃すれば自国がテロの標的になる恐れがあることなどから、軍事介入には慎重な姿勢を堅持している。
実際、米国防総省は12日、対「イスラム国」空爆の戦略的拠点として、トルコ南部インジルリク空軍基地の使用許可をトルコ政府から得たと発表したが、トルコ側は「交渉中だが、進展はない」(アルンチ副首相)と即座に否定。足並みの乱れを見せた。
トルコ国内では7日から、トルコ軍の軍事介入を求めるクルド人のデモが各地で発生。治安部隊との衝突などで10日までに少なくとも31人が死亡し、6県に夜間外出禁止令が発令された。
12日付のトルコ英字紙トゥデイズ・ザマンは、コバニでの「イスラム国」とクルド人の戦闘は、「深刻なトルコの国内問題として波及している」と指摘した。【10月16日 朝日】
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【シリア・クルド人勢力に接近するアメリカ 武器支援も】
動けない、あるいは、動かないトルコに対し、アメリカはアインアルアラブ防衛にあたるシリアのクルド人組織「民主統一党」(PYD)との関係を深めています。
****米、クルド組織と会談 「イスラム国」対策、協力模索か****
過激派組織「イスラム国」と交戦を続けるシリアのクルド人組織「民主統一党」(PYD)に、米国が急接近している。
PYDは、米国自身がテロ組織と認定するトルコの武装組織「クルド労働者党」(PKK)と兄弟関係にある。
「イスラム国」打倒でトルコを頼りにできず、「敵」を味方に引き入れたい苦しい事情がうかがえる。
AP通信などによると、米国は10月中旬、パリでPYDと初めて直接会談した。双方とも会談内容は明らかにしていない。
PYDはシリア内戦勃発後、シリア北部のクルド人地域の多くを支配下に置くようになった。「イスラム国」が侵攻を続けるトルコ国境近くのアインアルアラブ(クルド名コバニ)をめぐり、1カ月以上にわたって「イスラム国」と交戦し、防衛している。
「イスラム国」打倒を掲げる米国は、コバニ周辺で空爆を強化。米国務省のサキ報道官は16日の会見で、「PYDと(米国がテロ組織と認定する)PKKの関係は把握している」としつつも、「イスラム国」対策で協力を模索する可能性を示唆した。
一方、トルコは、米国が「イスラム国」打倒を目指して立ち上げた「有志連合」に入ったものの、積極的な軍事貢献ができない苦しい立場にある。(後略)【10月20日 朝日】
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アメリカは、アインアルアラブのPYDなどクルド人勢力への武器弾薬補給も始めました。
****クルド人勢力に武器弾薬補給=シリア北部の町で物資投下―米軍****
米軍は米東部時間の19日夕から夜(日本時間20日早朝から午前)にかけ、シリア北部の町アインアルアラブ近辺で、クルド人勢力へ武器弾薬など空からの補給作戦を初めて実施した。クルド人勢力はイスラム過激派「イスラム国」から町を守っている。
トルコのクルド反政府勢力と近いシリアのクルド人勢力への支援は、トルコ政府を刺激する恐れもある。米高官によれば、オバマ大統領は18日、トルコのエルドアン大統領と電話会談し、補給作戦実施の意図を伝えた。【10月20日 時事】
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アメリカ・オバマ大統領としても、もしアインアルアラブが陥落して懸念されていた住民虐殺などが行われる事態となれば、中間選挙を控えて“オバマ大統領の失策”への批判が一気に高まることが予想されますので、トルコ・エルドアン大統領の意向にかまっていられない事情もあるのでしょう。
米中央軍のオースティン司令官は17日、米国防総省で記者会見し、空爆などの軍事作戦について、「イスラム国」の指揮命令系統や部隊移動、通信などのかく乱に一定の成果が出ているとの認識を示す一方で、インアルアラブについては、「イスラム国」が主要攻撃目標として大量の要員を投入していると指摘し、「陥落する可能性は高い」と述べています。【10月18日 毎日】
一方で、“ シリア北部のトルコ国境に近いタルアブヤドの病院に、この4日間でイスラム過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の戦闘員70人以上の遺体が運ばれていることが分かった。シリア反体制派がCNNに語った。”【10月20日 CNN】というように、「イスラム国」側にも大きな打撃がみられるようです。
アインアルアラブがもし陥落すれば、「イスラム国」は拠点都市ラッカからトルコ国境まで約100キロに及ぶ範囲を完全に掌握することになります。
【追記】
トルコがようやく“動いた”ようです。
****トルコが方針転換、イラク系クルド人部隊のコバニ移動を支援****
トルコ政府は20日、イラク北部クルド人自治区の治安部隊ペシュメルガが自国を経由し、国境を接するシリア北部の町アインアルアラブ(クルド名:コバニ)でイスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国(IS)」と闘うクルド人部隊に合流することを認めていることを明らかにした。(後略)【10月20日 AFP】
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「コバニがISの手に落ちることを我々(トルコ)はまったく望んでいない」(トルコ・チャブシュオール外相)とのことです。
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