孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ウクライナ・ロシア首脳会談  ガス供給再開に向け協議

2014-10-19 22:42:46 | 欧州情勢

(17日、アジア欧州会議(ASEM)首脳会議開会中のイタリア北部ミラノで、ウクライナ危機の解決を目指す欧州主要国首脳との円卓会議に参加したロシアのプーチン大統領とウクライナのポロシェンコ大統領 中央はイタリア・レンツィ首相  “flickr”より By The Speaker https://www.flickr.com/photos/thespeakernews/15568882692/in/photolist-

相互依存のなかでの「最終兵器」】
欧州各国にとってウクライナの問題は、ウクライナ東部がどのように落ち着くのか、現在の国際秩序を力で変えようとするようにも見えるロシア・プーチン大統領の思惑がどこにあるのか・・・そうした政治問題のほかに、ロシアに依存する天然ガス輸入が今後も確保されるのかという国民生活に直結する問題でもあります。

現在行われている欧州(EU)・ロシアの制裁合戦の結果として、ロシアが欧州へのガス供給を停止するという事態になれば、あるいは、代金未払いのためすでに6月から供給が停止しているウクライナ向けガス供給停止がガス需要期の冬にまでずれこんで、ウクライナによるガス抜き取りなどの混乱がおき、結果として欧州各国向け供給にも支障が出るようなことになれば、欧州にとって極めて深刻な事態となります。

****ロシアvs欧州 ガス戦争の行方****
ウクライナ東部ドンバス地方で行われていたウクライナ軍と親ロシア派勢力の戦闘は、膠着状態が続いている。

だが冬が近づくにつれ、ロシアと欧米との代理戦争は新たな戦場へと舞台を移しそうだ。そこで血が流れることはないが、これまでの戦闘に負けず劣らず政治的に重要な戦いになり得る。

新たな戦場での戦いは、既に始まっている。
ロシアは経済制裁によって、欧米からの金融サービスや食料品、技術者の供給を断たれている。一方のヨーロッパは、ロシア国営の巨大エネルギー企業ガスプロムに、天然ガスの3分の1を依存する。その半分はウクライナを通過するパイプラインで運ばれている。

ロシアが欧米の制裁への対抗策として天然ガス供給を止めれば、天然ガス戦争が幕を開けることになるだろう。 ロシア政府はガスを「ヨーロッパを何より恐怖に陥れる最強の最終兵器」と考えていると、モスクワの政府担当記者は語る。

ここ数週間、ロシア高官はこんな会話をしているという。「初雪が降るのを待っていればいい。そのときにヨーロッパが制裁について何と言うか見ものだ」(後略)【10月21日 Newsweek】
******************

EUは、ロシアからのガス供給が停止した場合はパイプラインを逆流させて備蓄ガスを加盟国へ供給するなどの対応策も発表してロシアをけん制しています。

****ロシアガス、停止でも大丈夫 EU想定「政治的武器にならぬ****
欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会は16日、ロシアからの天然ガスの供給が停止した場合を想定した「ストレステスト(耐性評価)」の結果を発表した。

冬季に6カ月にわたってガス供給が停止しても、加盟国間で備蓄を融通し合うなどすれば深刻な影響は免れると結論づけた。

テストでは、9月から2月までロシアからのガス供給が完全に停止した場合を想定。東欧やバルト3国の一部では深刻な供給不足に陥るものの、ガスの備蓄をパイプラインで逆流させるなど、融通し合うことで被害を軽減できるとした。

また、2週間の寒波が続く際にはドイツやイタリアへの影響が予想されるが、ガス価格が上昇し、消費者が使用を控えることを考慮すれば、供給にはほとんど影響は無いと結論づけた。

エネルギー担当のエッティンガー欧州委員は会見で「ストレステストの結果はロシアがガスを政治的な武器として使うことが何の意味も無いことを証明した」と述べた。【10月17日 朝日】
******************

こうした対策が実際にどれほど機能するかは、定かではありませんが。
ただ、ロシアにとっても天然ガス供給を止めるという事態は、自分で自分の首を絞めることにもなりかねない、非常に危険なカードです。

自噴するガスの供給を止めるという技術的問題のほかに、ロシア経済の屋台骨を支えるガスプロムの経営を危うくすることにもなります。

ガスプロム自体はまだ制裁対象になっていませんが、欧州によるロシア企業への制裁のため、ガスプロムもすでに資金調達が困難になっており、収入の中心である欧州向けが停止すれば資金調達が困難となります。

政治的にも欧州との決定的対立を意味しますので、ロシアの完全な政治的・経済的孤立化という返り血を浴びる覚悟ないと切れないカードです。おそらく長引けばロシア経済は持たないでしょう。

結局、相互依存関係にあるロシアも欧州も、双方に大きなダメージを与えるガス供給停止という事態は極力避けたいところです。

ウクライナ向けガス供給再開に道筋?】
しかしながら、先述のようにウクライナ向け供給の問題が整理されないと、ウクライナによる抜き取りなどで大きな混乱をきたす恐れがあります。

****ロシア 許可なく抜き取れば供給削減****
ロシアのプーチン大統領はウクライナを経由するパイプラインを使ってヨーロッパに供給しているロシア産の天然ガスについて、ウクライナが許可なく抜き取った場合にはガスの供給を削減する方針を示しました。
(中略)
ロシアとウクライナのガスを巡る対立では2006年と2009年にもロシアが供給を削減したため、ウクライナ経由でガスを輸入していたヨーロッパの一部の国々にも影響が広がりました。

この冬もロシアとウクライナがガスを巡る価格や債務の問題で合意できなければ再びヨーロッパに影響が出ると指摘されており、プーチン大統領としては責任はあくまでもウクライナ側にあることを強調するねらいとみられます。【10月17日 NHK】
********************

ウクライナに勝手な行動をとらせないよう、欧州側に責任を持つように迫った形です。

こうした状況を受けて、アジア欧州会議(ASEM)首脳会議が開かれたミラノで、17日夜、ロシアのプーチン大統領とウクライナのポロシェンコ大統領の会談が行われ、ガス供給問題が話し合われました。

交渉が欧州首脳を交えた協議とロシア・ポーランドの二国間会談の二段階で行われたことや、出席者の話のニュアンスが異なることなどで、協議を伝える各紙の見出しは
“ガス再供給、合意できず”【時事】
“ウクライナ大統領、ガス「ロシアと基本合意」”【朝日】
“「ガス供給 一定の前進」”【産経】
“ガス問題、最終合意に至らず”【産経】等々、いったいどうなったのかよくわからない感もありましたが、不透明な部分は残っているものの、一定に前進はしたようです。

****ウクライナへのガス供給再開「未払い解消が条件」 ロ大統領****
ロシアからウクライナへのガス供給問題で、ロシアのプーチン大統領は訪問先のイタリア北部ミラノで17日夜、「(需要が高まる)冬季に向けた輸出再開の条件でウクライナ側と合意した」と述べた。

ただ、ウクライナの未払い金支払いを条件としているため、実際に再開するのか、はっきりしない部分も残っている。

プーチン氏は17日夕、ミラノでウクライナのポロシェンコ大統領と約1時間、会談した。同日にあった欧州各国の首脳らを交えた協議に続く二国間会談で、ウクライナの代金未払いが原因で止まっているロシアからのガス供給の再開問題などで意見を交換した。

インタファクス通信によると、プーチン氏は会談後、今年4~6月のガス代金を値引きし、累積の未払い金を約55億ドル(約5900億円)から約45億ドルに圧縮する考えも示した。一方でウクライナから支払いのない場合、ガスを送る考えはないことも強調した。

ただ、ウクライナ大統領府によると、欧州首脳を交えた協議後に基本合意に達したと述べていたポロシェンコ氏は、二国間会談後に「一定の前進があったが、実際的な結果が得られたわけではない」と、一転して慎重な見方を示した。

21日にブリュッセルで、両国と欧州連合(EU)による閣僚級の協議が予定されており、未払い金の支払いスケジュールなどを巡る調整が続く見通しだ。【10月18日 朝日】
*******************

「カネを払えば供給する」という当たり前の結論のようにも思えますが・・・・。

ウクライナ自身には支払能力がありませんので、EU側がどこまで支払いを保証するかにかかっており、結論は21日の協議に持ち越された形ですが、ウクライナ側は、国内向けもあってか、見通しが明るい発表をしています。

****ガス価格でロシアと合意=冬の供給再開へ―ウクライナ大統領****
ウクライナのポロシェンコ大統領は18日、料金の未払いなどを理由にロシアが6月から停止している天然ガス供給について、冬季に限って再開されると語った。イタリアのミラノで17日に開かれたプーチン・ロシア大統領との首脳会談で、価格面で一部合意に達したという。

地元テレビのインタビュー内容をウクライナ大統領府が発表した。21日にブリュッセルで行われる次回ガス協議で、合意文書が署名される見通しという。【10月19日 時事】
******************

プーチン大統領「東部はウクライナの一部だ」】
一方、ウクライナ東部の停戦合意については、“目立った進展はなかった模様”【10月18日 朝日】ですが、これまでの合意を再確認したというところのようです。

******************
同席したファンロンパイEU首脳会議常任議長は記者会見で、9月の停戦合意、特に(1)停戦の維持(2)ウクライナの法律に基づいた選挙の実施(3)ウクライナ・ロシア国境監視――の3点が重要だという考えで一致したと述べた。

ウクライナでは10月26日に議会総選挙が予定されている。平穏に実施することの重要性について、プーチン氏も認めたとみられる。

ただ、ウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州の親ロ派は、11月に自分たち独自の議会選と首長選を行う計画で、ウクライナ政府や欧州各国は「不法な選挙だ」と強く反発している。プーチン氏が親ロ派による「選挙」の強行を容認するかどうかは、はっきりしないままだ。【10月18日 朝日】
******************

******************
プーチン氏はまた、円卓会議で合意したロシア・ウクライナ国境の無人機による監視に関して、ロシアが独仏伊と共同で参加する考えを表明、近日中にウィーンで専門家が協議することを明らかにした。

ポロシェンコ氏が16日に署名した、ウクライナ東部の親ロシア派支配地域に「特別な地位」を認める法律についても、プーチン氏は「理想的ではないが、正しい方向だ」と評価した。【10月18日 毎日】
******************

選挙の扱いなど不明な部分は多々ありますが、“首脳会議前に行われたウクライナ危機をめぐる朝食会で、ロシアのプーチン大統領が「東部(ドネツク、ルガンスク2州)はウクライナの一部だ」と語った”【10月17日 時事】とのことですので、プーチン大統領も事態終息の方向で動いているようです。

なお、停戦監視については、以下のような話も。

****ドイツ無人機、役立たず?=極寒のウクライナで制御困難****
ドイツがウクライナとロシアの国境付近の監視に投入する予定の無人偵察機が17日、極寒では機能しないことが明らかになった。国境は冬の冷え込みが厳しく、役立たない可能性が出てきた。

ドイツはウクライナ東部に流入するロシアの民兵や武器の監視のため、小型無人偵察機「ルナ」を派遣する方針。ところが、同機は「全天候型」をうたいながら、氷点下19度以下では制御が困難になる事実が判明した。【10月18日 時事】 
******************

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« エボラ出血熱  世界拡散を... | トップ | トルコ  対「イスラム国」... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

欧州情勢」カテゴリの最新記事