孤帆の遠影碧空に尽き

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メキシコ  初の女性大統領 強権的麻薬取締りを避ける現政権を踏襲 女性権利に関する公約なし

2024-06-04 22:32:43 | ラテンアメリカ

(【6月3日 ロイター】 メキシコ初の女性大統領となったシェインバウム氏)

【メキシコ初の女性大統領 麻薬カルテルに対しては強権的に取り締まるよりも、「犯罪の根本に対処する」という現政権の方針を踏襲】
2日に行われたメキシコ大統領選挙では、事実上与野党の女性候補同氏の対決となり、ロペスオブラドール大統領の路線継続を訴えた左派与党「国家再生運動」のクラウディア・シェインバウム前メキシコ市長が当選し、メキシコ初の女性大統領が誕生しました。

*****シェインバウム氏が当選確実=初の女性大統領誕生へ―メキシコ****
メキシコで2日、大統領選が行われ、即日開票の結果、格差是正に取り組んだロペスオブラドール大統領の路線継続を訴えた左派与党「国家再生運動(MORENA)」のクラウディア・シェインバウム前メキシコ市長(61)が当選する見通しとなった。同党が出口調査に基づいて発表した。当選が決まれば、メキシコ初の女性大統領が誕生することになる。任期は10月から6年間。

選挙は事実上、シェインバウム氏と野党連合のソチル・ガルベス上院議員(61)の女性候補同士の一騎打ちとなっていた。シェインバウム氏は最近のX(旧ツイッター)への投稿で「国を平和と安全、民主主義、自由、正義の道に導くことが責務だ」と表明した。

中央選管によると、開票率1%未満の時点で、得票率はシェインバウム氏が59%、ガルベス氏が29%となっている。

選挙戦では、麻薬カルテル同士の抗争で悪化した治安が大きな争点に浮上した。シェインバウム氏は、犯罪組織を強権的に取り締まるよりも、「犯罪の根本に対処する」という現政権の方針を踏襲すると表明。これに対して、ガルベス氏は「犯罪者を抱擁し、市民に銃弾を向けるものだ」と批判した。

問題の深刻さを裏付けるかのように、同時に行われた地方選挙では候補者が殺害される事件が相次いだ。安全な投票が確保できないとして、一部の自治体で投票が中止に追い込まれた。【6月3日 時事】 
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いわゆる“メキシコ麻薬戦争”については、これまでも再三取り上げてきましたが、今回選挙で同時に行われた議会選挙・地方選挙候補者が射殺される事件が相次ぎました。

****メキシコ初の女性大統領誕生の裏で「大規模選挙で候補者38人死亡」血で血を洗う政争****
メキシコ近代史上最も血なまぐさい選挙戦を制し、初の女性大統領が誕生する。メキシコ大統領選が2日投開票され、現職ロペスオブラドール大統領の路線継承を掲げる左派与党「国家再生運動(MORENA)」のシェインバウム前メキシコ市長(61)が当選した。その裏で大規模な選挙戦では38人の候補者が死亡したとみられ、血で血を洗う政争が繰り広げられていた。(中略)

2018年から政権を率いたロペスオブラドール氏は、雇用と職業訓練、年金の拡充などポピュリスト的政策を進めて貧困層を中心に高い支持率を維持。後継のシェインバウム氏が得票につなげた。

上下両院選や地方選も合わせ2万以上のポストを巡って投票が行われ、同国史上最大規模の選挙となったが、最も血なまぐさい選挙にもなった。

メキシコ紙「ユニベルサル」によると、候補者への襲撃が321件も発生し、うち37人が殺害されたという。別のメディアは38人死亡と報じている。また、2日に投票所で2人殺害されたという情報もある。最終的な死者数は増えるかもしれない。

ある市長候補は、集会で支援者に囲まれ笑顔を見せていた時に銃撃され、死亡した。襲撃犯はその場で警備員に射殺されたという。候補者への脅迫は800件を超える。候補者が脅迫、襲撃、誘拐、殺人の標的となった。

メキシコ事情通は「ロペスオブラドール大統領は麻薬カルテルとの戦いにはほとんど手を出さず、ポピュリスト政策を推進し人気を保ちました。一方、麻薬カルテル同士が米国への麻薬密輸ルートの領土争いをし、人身売買が増加しました。治安は悪化し、ロペスオブラドール統治下で18万人以上が事件で死んでいます。メキシコ近代史で最多だそうです」と指摘する。

大統領選ではシェインバウム氏と、中道右派「国民行動党(PAN)」など主要野党3党の公認候補ガルベス上院議員(61)の一騎打ちだった。ガルベス氏は、麻薬カルテルとの対決を避けようとするロペスオブラドール大統領および路線継承するシェインバウム氏の「銃弾ではなく抱擁」政策を批判し、犯罪者を積極的に追及することを誓っていた。

「野党側候補が襲われただけでなく、与野党関係なかったそうです。麻薬カルテルと癒着した地方役所、地方議員がおり、麻薬カルテルにとっては癒着相手が変わってほしくないということです。『立候補をやめなければ殺す』という脅迫から、殺害に至るケースが多かったようです」と同事情通は話している。【6月4日 東スポWEB】
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“犯罪組織を強権的に取り締まるよりも、「犯罪の根本に対処する」という現政権の方針を踏襲”、「銃弾ではなく抱擁」政策・・・・以前のカルデロン大統領時代(2006年末~2012年末)、麻薬カルテル鎮圧に軍を投入した強硬策により血で血を洗う抗争状態に陥り、極度の治安悪化を招いたことへの反省があってのことでしょうが、具体的に麻薬カルテルにどのように対処するのかよくわかりません。

現実に、治安状況はカルテルへの融和策に切り替わった後、むしろ悪化しているように見えます。

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カルデロン政権は、麻薬組織に対し極めて厳しい姿勢で対峙しており、逮捕したメンバーには峻烈な拷問が加えられているとも言われ、麻薬組織はメンバーが警察や軍に組織の情報を提供すると、そのメンバーの親族が殺害される等の掟があるが、厳しい拷問に耐えられず多くのメンバーが白状しているという。

また、有益な情報を白状したメンバーには恩赦が与えられたり、刑務所内で好きな物を食べさせたり、携帯電話やアルコール・煙草を与える等、特別待遇で優遇しているとも言われており、捜査当局・司法当局に対する根強い批判があるが、カルデロン政権の犯罪組織に対する壊滅作戦は着実かつ大きな結果を出しており、国内外問わず、高い評価を得ている。

メキシコ政府は「麻薬戦争は終わった」としているが、実際の状況は逆であり、2016年頃から抗争が再び激化し始め、2017年には死者数が過去最多となり、2018年にはそれを20%上回り過去最多を更新、更に2019年もそれ以上のペースで殺人事件が増加し、治安は最悪化している。【ウィキペディア】
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“国内外問わず、高い評価”かどうかは立場・視点によっても異なるでしょうが、前政権はカルデロン政権とは異なり、“麻薬カルテルとの戦いにはほとんど手を出さず、ポピュリスト政策を推進し人気を保ち・・・”というのが実態で、麻薬カルテルと政治・警察当局などとの癒着構造が放置されているようにも思えます。

カルテルを始めとして、麻薬に関わるような人間には殺し合いをさせておけばよい、一般の善良な市民には関係のないこと・・・ということでしょうか。

今回当選したシェインバウム新大統領は、そのカルテルへの不干渉・ポピュリスト政策推進を継承するとのことです。

【「冷静な科学者」との評価も】
シェインバウム新大統領については、「冷静な科学者」との評価も。

****メキシコ初の女性大統領シェインバウム氏、危機にも冷静な科学者****
メキシコ史上初の女性大統領に選出されたクラウディア・シェインバウム前メキシコ市長は、危機に際しても冷静さを失わず指導力を発揮することで知られる。

首都メキシコ市生まれ。ブルガリアとリトアニアのユダヤ系移民を祖父母に持つ。左派与党「国家再生運動」に属し、アンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール現大統領とは盟友関係にある。

ただしロペスオブラドール氏と異なり、「ポピュリストではない」と、南カリフォルニア大学のパメラ・スター教授は指摘する。

メキシコ国立自治大学で学んだ後、米カリフォルニアで研究者として数年過ごし、その間に英語力を磨いた。ノーベル平和賞を受賞した国連の「気候変動に関する政府間パネル」の活動にも貢献した。

公職に就いたのは2000年代初めで、メキシコ市の環境局長に起用された。
メキシコ市で区長を務めていた2017年、マグニチュード7.1の大地震で学校が倒壊し、子ども19人を含む26人が死亡した。この時、シェインバウム氏は、欠陥工事をめぐり区側の責任を否定。翌年にはメキシコ市長に選出された。

新型コロナウイルスの感染が拡大した時期には、多数の死者を出しながらも、科学的な手法とツールを活用して対応に当たった。(中略)

大学の同級生で、37年前からシェインバウム氏を知るギジェルモ・ロブレス氏は、自身の成功は眼中にないはずだと語った。「メキシコ愛が強い。多くの政治家が抱いているような野心はない。典型的な政治家とは全く異なるタイプだ」 【6月4日 AFP】
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“大地震で学校が倒壊し、子ども19人を含む26人が死亡した。この時、シェインバウム氏は、欠陥工事をめぐり区側の責任を否定”・・・・当局の不備を批判する活動家ではないようです。

【“初の女性大統領”ではあるものの、女性の権利拡大に関する公約はなし “男性にとって重要な問題に集中している」上に、中絶へのアクセスというデリケートな問題も避けて通った”】
性暴力が蔓延するメキシコにあって“初の女性大統領”ということで、女性の権利拡大などの面も注目されますが、シェインバウム氏は選挙戦では、家庭内暴力や、人工妊娠中絶へのアクセスを巡る不平等性に取り組む公約はしておらず、「女性大統領だから女性の権利拡大・・・」という話でもないようです。

****メキシコ初の女性大統領、「象徴」に終わるとの懸念も****
クラウディア・シェインバウム氏は、メキシコ大統領に選出された初の女性として歴史に名を刻んだ。だがフェミニスト活動家らは、この勝利が象徴の域を出ない可能性を懸念している。同氏は選挙戦で、家庭内暴力や、人工妊娠中絶へのアクセスを巡る不平等性に取り組むと公約しなかったからだ。

メキシコ市を拠点とするフェミニスト市民団体「シモーヌ・ド・ボーボワール・リーダーシップ・インスティチュート」のディレクター、フリン・サルゲーロ氏は「女性だからといって、女性の権利を推進する存在になるとは限らない」と言う。

気候科学者で前メキシコ市長のシェインバウム氏は、与党・国家再生運動(MORENA)から出馬。もう1人の女性候補者であるソチル・ガルベス上院議員を抑えて勝利したことで、メキシコ政治における女性参加率の高さが印象付けられた。

民主主義を推進する独立組織、列国議会同盟(IPU)のまとめによると、メキシコ議会では女性が議席の半分を占めている。世界で女性比率がこれより高いのは、ルワンダ、キューバ、ニカラグアの3カ国だけだ。

しかし研究者らによれば、メキシコで指導的立場にある女性が、男性よりも女性の権利向上に貢献していることを示す証拠はほとんどない。人口1億2600万人のこの国は、特に農村部で家父長制的な考え方が根強く残っている。

メキシコ国立自治大学の政治学者フラビア・フライデンバーグ氏の調査によると、2014年から19年にかけてメキシコ各地の地方議会で提出された2万4000以上の法案のうち、女性の暮らしを向上させる計画が含まれているものは4000件にとどまった。

「たとえ女性を議員や大統領に据えたとしても、進歩的もしくは実質的な平等という政策課題が守られるわけではない」と同氏は言う。

<男性にとって重要な問題>
それでも2日の選挙結果は、1955年にメキシコで女性に初めて投票権が認められて以来進められてきたフェミニズム運動が成功した証しだ、と女性の権利の専門家らは言う。

もっともシェインバウム氏もガルベス氏も、例えば、麻薬カルテル関連の暴力や気候変動問題に取り組む計画の一部として、ジェンダーを政策課題に挙げていない、とも専門家は指摘する。

「いずれの候補者もトランス女性の権利には言及していない。レズビアンの女性、先住民女性、障害がある女性についてもだ」と、グアナファト大学でジェンダーと民主主義を研究しているエリカ・ロペス・サンチェス教授は言う。

「彼女たちの政策課題は、男性にとって重要な問題に集中している」上に、中絶へのアクセスというデリケートな問題も避けて通ったと同教授は指摘した。

メキシコの最高裁判所は2021年、中絶に関する地方の刑事罰は違憲だと宣言し、その2年後には連邦政府が中絶を犯罪とすることも違憲であるとの判決を下した。

13の州では中絶を巡る刑法が廃止されたが、まだ19の刑法では中絶が合法化されていないか憲法上の権利に加えられていない。

シェインバウム、ガルベス両氏は、中絶に対する姿勢について明言していない。シェインバウム氏は、この問題は既に最高裁で解決済みであり、今はその他の女性の権利に集中すべき時だと述べた。

ロペス・サンチェス氏は「中絶について語れば、保守派の票に背くことになる。メキシコ社会はまだおおむね保守的なので、人気につながらないだろう」と語った。

<ジェンダー関連の暴力>
麻薬カルテルによる暴力の横行と闘うことは、新大統領の最優先課題となる。シェインバウム氏の政治的後ろ盾であるロペスオブラドール現大統領の下、ジェンダーに基づく暴力、特に少女と女性の殺害は連日のようにニュースの見出しになった。 

昨年、メキシコで記録された女性の殺人は831件。最新の政府統計によれば、今年に入ってからも246件に達している。

ジェンダー平等センター、EQUISの副ディレクター、マイッサ・ヒューバート氏は「メキシコではジェンダー暴力防止政策が失敗している。全ての責任を、国ではなく女性に課しているからだ」と話す。

シェインバウム氏は、大規模インフラプロジェクトから治安まで、軍の権限を拡大するロペスオブラドール政権の計画を継続する方針だ。ヒューバート氏は、これが女性に悪影響を及ぼすのではないかと懸念している。

「統計によれば、30万人の女性が、地域社会での暴力の加害者として軍人を挙げている。(軍隊が)地域社会に存在することは、女性に大きな影響を与えている」とヒューバート氏は言う。

フェミニスト団体への予算支援が減少していること、特に家庭内暴力の被害者をかくまうシェルターに対する支援が消えたことも、こうした団体から批判を浴びている。

メキシコ市長時代のシェインバウム氏は、フェミニスト団体と緊張関係にあった。彼女の師であるロペスオブラドール大統領は、フェミニスト団体が政府の行動について発言するたびに「反対派」のレッテルを貼った。

フェミニスト団体のサルゲーロ氏は「市民社会団体と政府の間に新たな対話と開放性が生まれ、私たちが興味深いプロジェクトを実施してきたことを認識してもらえることを願っている」と語った。【6月4日 ロイター】
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“「彼女たちの政策課題は、男性にとって重要な問題に集中している」上に、中絶へのアクセスというデリケートな問題も避けて通った”・・・・具体的な行動がなければ、単に大統領が女性になったというだけでは何も変わりません。

****メキシコで女性町長殺害、初の女性大統領選出の翌日****
メキシコ西部ミチョアカン州の町で3日、町長の女性が殺害された。同州政府が発表した。事件は、初の女性大統領にクラウディア・シェインバウム氏が選出されてから1日とたたずに起きた。

ミチョアカン州内務省によると、殺害されたのは同州北部コティハ町のヨランダ・サンチェス・フィゲロア町長。同省は、X(旧ツイッター)への投稿で殺害を強く非難した。

事件は、前メキシコ市長のシェインバウム氏がメキシコ史上初の女性大統領に選出され、性別に基づく暴力がまん延する同国での変革が期待される中で起きた。

現地メディアによると、2021年に町長に選出されたフィゲロア氏は公道で銃撃された。当局は、事件の詳細は明かさず、犯人逮捕に向けた作戦を開始とだけ述べた。

フィゲロア氏は2023年9月にも事件に巻き込まれている。この時は、隣接するハリスコ州グアダラハラのショッピングモールで拉致された。事件発生から3日後、連邦政府が同氏の生還について発表した。

現地メディアは当時、犯罪組織「ハリスコ・カルテル・ニュー・ジェネレーション」による犯行だと報じた。フィゲロア氏は組織の活動にあらがい、脅迫を受けていた。 【6月4日 AFP】
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