孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

エボラ出血熱  世界拡散を完全には防止できない現実 アメリカ・スペインの二次感染騒動

2014-10-18 22:25:14 | 疾病・保健衛生

(アメリカで「かわいい」と好評で、売り切れ状態のエボラウイルスのぬいぐるみ この販売会社は、エボラ以外にも炭疽菌、ペスト菌、がん細胞、コレラ菌など100種類以上のぬいぐるみを販売しているそうです。
写真は“flickr”より By Spass Marktplatz https://www.flickr.com/photos/126459582@N04/15373414740/in/photolist-pquLAQ-pGFuvC-oKGsXg-pHcu7S-pqGqf5-pGwpiv-oKXmWZ-pqgqg6-pErkJo-pF8Wpq-pqxvpv-pEPvko-pqqy1r-pqqz74-oL7qv4-pEPwPA-pGUZp6-pqtEQk-pqtDck-pqt26U-pqsYvy-pES9sq-pqjHkS-pq8JUz-pqAReq-pqwqNs-pGTCSx-pqEEd8-oKVdCZ-pqDryJ-pGP2iL-oLh18r-pquCGd-pGCinz-pqLWYm-pEEoUA-pH2KeZ-oLbzK8-oLajTC-pqi5ma-pGCEqc-pEJCtw-pHkEa1-pqfkzH-oL4WbU-ppDLLe-pGFLQ4-pqffAW-pEWpCY-pEVoiL)

いろんな“最悪シナリオ”も
西アフリカで以前猛威をふるうエボラ出血熱は感染が急速に拡大しています。

****エボラ熱感染者9000人突破=死者も急増―WHO****
世界保健機関(WHO)は17日、西アフリカで発生したエボラ出血熱について、14日までの感染者が疑いを含め計9216人、このうち死者は4555人に上ったと発表した。

リベリア、ギニア、シエラレオネの3カ国を中心に感染が急速に増える傾向が続いている。

国別の死者は、リベリアが2484人、ギニア862人、シエラレオネ1200人、ナイジェリア8人、米国1人。医療関係者は計423人が感染し、死者は239人に達した。【10月18日 時事】 
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10月4日ブログ「エボラ出血熱 広がり続ける感染 国際社会は・・・」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20141004)では、米疾病対策センター(CDC)が9月23日、西アフリカのリベリアとシエラレオネでエボラ出血熱の感染者数が最悪の場合、2015年1月までに140万人に急増する恐れがあると推測した報告書を公表したことを紹介しました。

この“最悪シナリオ”については、アメリカが西アフリカでの対策を強化する以前の8月時点の数字を基にしており、現状を正確に反映していないというのが専門家の見解とのことでした。

上記の米疾病対策センター(CDC)報告書よりもっと“最悪”な(おかしな日本語ですが)予測もあります。
“「シエラレオネとリベリアでは全国民に感染が広がり、死者は500万人に達するだろう」 エボラ出血熱(以下エボラ)の感染が広がり、誇張とも思える衝撃的な予測が出されている。これはドイツの著名なウイルス学者ジョナス・シュミット・チャナシット氏が9月、ドイツメディアに発言したものだ。”【10月16日 JB PRESS】

いろんな人がいろんな推測をするのは当然の話ですが、困ったことに現段階ではどのように今後展開するのか定かでないのが実態です。

アメリカ:医療先進国でも後手にまわる対応
更に困ったことには、上記のような“最悪シナリオ”は“シエラレオネとリベリアでは・・・・”というものですが、エボラ出血熱が西アフリカに封じ込められる保証は全くなく、全世界に拡散する可能性も否定できません。

これだけ人の移動が激しい現代社会ですから、西アフリカで感染した者が何らかの事情で入国することは避けられません。問題は、その後の感染拡大を止められるか・・・という点です。

幸い、8月末に感染者の男性1人が見つかったセネガルででは、この男性の治癒が9月5日に確認されて以後、42日間にわたって患者が発生しておらず、WHOはセネガルでの流行の終息宣言を出しています。

しかし、ここ数日のアメリカやスペインの二次感染騒動を見ていると、医療体制が整備された先進国で感染が拡大することはないだろう・・・・と安心もできないようにも思えます。

リベリアから帰国した男性が発症し、その治療にあたったスタッフから2名の2次感染者を出したアメリカでは、(中間選挙も近いこともあって)政府・当局の対応の杜撰さが批判されています。

****米、エボラ続く失策 感染不安拡大で政権に打撃****
米国内でエボラ出血熱の感染拡大への不安が広がっている。

治療に当たった後に微熱を発した看護師に、国内線の航空機搭乗を認めていたなどの失策も発覚。米疾病対策センター(CDC)のフリーデン長官の辞任を求める声が噴出するなど、見通しの甘さが批判されるオバマ大統領には手痛い失点となりつつある。
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 ■責任者の辞任要求噴出
「対応のまずさが明らかになるにつれ、オバマ政権への信頼が失われている」。下院エネルギー商業委員会のマーフィー小委員長は16日の公聴会で、厳しく批判した。

9月中旬の段階でオバマ氏は「エボラ出血熱の感染者が米国にたどりつくことはありそうにない」としていたが、現実は逆に向かった。

30日には南部テキサス州ダラスでリベリア人男性、トーマス・ダンカンさん(42)の感染が確認され、その後、治療にあたった看護師ニーナ・ファムさん(26)への院内感染が判明。さらに別の看護師アンバー・ビンソンさん(29)の感染も確認された。

全米の看護師で作る組合は今週、「政府は全ての医療機関に対し、高い安全基準と対応の手順を定める必要がある」との声明を発表。米議会からは「準備態勢作りに失敗したフリーデン長官の辞任を求める」(マリーノ下院議員)との声があがった。

ファムさんやビンソンさんへの感染ルートは不明だが、防護服の使用方法に関する指導が十分ではなく、防護服を脱ぐ際に感染した可能性が指摘されている。

また、ダンカンさんは初めて来院した際、9月20日にリベリアから入国したことを告げたにもかかわらずエボラ出血熱を疑われずに帰宅させられていた。

ダンカンさんはその後、入院したが、今月8日に死亡。親類は地元紙への寄稿で、ダンカンさんは医療保険に加入しておらず、治療費支払い能力がないとみなされて帰宅させられたと訴えた。

一方、ビンソンさんは10日にダラスから中西部オハイオ州クリーブランドに移動し、13日午後の便でダラスに戻っていた。ダラス行きの便への搭乗時には37・5度の熱があったが、事前にビンソンさんから相談を受けたCDCは搭乗を認めていたという。フリーデン氏自身が「搭乗すべきでなかった」と認める失策だ。

ビンソンさんは15日、南部ジョージア州アトランタの病院に移送された。ファムさんも16日、首都ワシントン近郊、メリーランド州ベセスダの国立衛生研究所の医療施設に移された。

一方、西アフリカからの渡航者の入国規制を求める声が強まっていることについてフリーデン氏は、「感染源で拡大を止める必要がある」として否定的だ。【10月18日 産経】
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アメリカ政府は現在、西アフリカからの渡航者を現地出国時と米入国時の2回にわたって検査しています。(もちろん、潜伏期間の者の把握はできませんが)

エボラ熱が流行している国からのアメリカへの入国者は1日約150人と推定されていますが、サキ国務省報道官は16日の記者会見で、西アフリカ地域でのビザ発給を停止する考えがないことを強調しています。

“オバマ大統領は「過去の例から、(入国禁止措置をとった場合)禁止措置を回避して入国するケースが増える可能性がある。その際、入国者は西アフリカに滞在していた事実を正直に申告しない」と説明した。”【10月17日 時事】

また、治療に関わったスタッフが潜伏期間終了前にクルーズ船に乗船しているということで、ベリーズ(そんな国があるのは初めて知りましたが)で入国が拒否されるなどの大騒ぎになっています。

****クルーズ船で米病院職員を隔離 エボラ検体に接触の恐れ****
米テキサス州ダラスの病院でエボラ出血熱患者の検体に接触した可能性のある女性職員が、カリブ海クルーズ船に乗って旅行していることが分かった。職員は船上で隔離された。

同病院では今月8日、米国滞在中に発症したリベリア人患者が死亡した。この患者の治療にかかわったスタッフ76人が経過観察の対象となっている。これまでに看護師2人の感染が確認された。

米国務省が17日に発表したところによると、クルーズ船上の職員は検査部門の責任者。同日の時点で、検体を扱った可能性のある日から19日が経過したが、症状は出ていない。エボラ熱に感染してから発症するまでの潜伏期間は最長で21日間とされる。

国務省報道官によれば、当初はこの職員をカリブ海に面した中米ベリーズに上陸させ、空路米国へ運ぶ計画だったが、ベリーズ政府が感染拡大への懸念からこれを拒否した。ケリー米国務長官がバロー・ベリーズ首相に直接依頼したものの断られたという。

クルーズ船は職員を乗せたまま、帰着予定地のテキサス州ガルベストンへ向かっている。

ケリー長官は「現状に適切に対処しなければ、エボラ熱はエイズやポリオと同様、人類全体が何十年も闘い続ける災禍となるだろう」と述べた。

一方、同病院で2次感染した看護師の1人、アンバー・ビンソンさんが診断前に米フロンティア航空便でダラスとオハイオ州クリーブランドを往復していた経緯を巡り、同航空は接触の可能性が考えられる800人に、米疾病対策センター(CDC)への連絡を呼び掛けている。(中略)

2次感染した1人目の看護師、ニーナ・ファムさんの治療にかかわった別の看護師は16日、CNNとのインタビューで、病院から与えられた防護服では首の部分が覆われていなかったと明かした。

病院側に「どうして口や鼻に近い部分が露出しているのか」と尋ねたが返事はなく、新しい防護服を発注済みだとだけ告げられたという。看護師はさらに、同病院の職員はリベリア人患者が9月に入院するまで、エボラ熱についての訓練を義務付けられていなかったとも語った。

CDCの報道官は17日、医療現場からの懸念に対応するため、防護服などの着脱に関する指針をまもなく更新すると発表した。【10月18日 CNN】
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どこまで厳格に対応するかのマニュアルがなかったために現場で適当に判断し、その後始末に右往左往している・・・という感がありますが、他人事ではなく、日本に感染者が入ってきても同様の騒ぎになるでしょう。現実問題としては、そうそう完璧な対応など無理です。

アメリカでは今後は対応もきちんと整備されるのでしょうが、1日約150人が西アフリカから入国することからして、監視をすり抜けて発症・感染するケースも十分に予想されます。

スペイン「エボラは社会をむしばんだ」】
スペイン当局は17日、エボラウイルス感染が疑われた6人のうち、検査の結果、2人が陰性だったと発表しました。残る4人はこれから検査が行われます。

ただ、こちらも二次感染者の搬送に使用した車両を消毒せずにぞのまま他の患者の搬送に使用して三次感染も懸念される(陰性と判明したようですが)など、対応のまずさが批判されており、社会には動揺が広がっています。

****エボラ熱、いらだつスペイン 情報不足、根拠ないうわさも****
エボラ出血熱の疑い例が相次ぐスペインで、市民は不安と不満を抱いている。

アフリカ以外で初の二次感染となった女性(44)が住んでいたマドリード郊外のアルコルコン。住民は「暮らしはふだん通り」と話すが、近くの薬局では、手指の消毒液を求める客が急増した。

地肌に触れる美容院では予約客25人のうち来店したのは4人だけ。

地元当局によるエボラ熱に関する説明会に出たフアン・マヌエルさん(36)は「ピリピリした雰囲気で、情報不足に不満が相次いだ」と振り返る。感染した女性の知人すら避ける雰囲気だという。地元の医師ラファエル・ガルシアさん(54)は「エボラは社会をむしばんだ」と話した。

ネット上では、「大学が休校になった」「新たな感染者が出た」といった根拠のない話が飛び交った。社会学者のモニカ・ペレイラさんは「不安や不信がうわさを生み、気持ちをみんなで分かち合うスペイン人の気質と、発言の影響に思いがいたりにくいネット社会が増幅する」とみる。

当局の「不手際」にも厳しい視線が向けられる。患者の主要な受け入れ先「カルロス3世病院」は、ユーロ危機に伴う緊縮財政のもと、リストラ対象だった。

二次感染の経緯ははっきりしないが、死亡した神父に触れた手袋のまま顔を触ったり、病室から出た廃棄物などがきちんと仕分けされずに運ばれたりしたなどと伝えられている。職員組合のメンバーらは地元メディアに「感染を防ぐ訓練や教育、装備類も不十分だった」と指摘している。【10月18日 朝日】
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中国:西アフリカに1万人
アメリカは西アフリカからの入国者が1日約150人ほどあるそうですが、近年アフリカへの経済進出を急拡大している中国も“アフリカで暮らす中国人は数百万人。シエラレオネ、ギニア、リベリアにいる中国人は1万人”【10月18日 Searchina】とのことです。

この1万人が中国へ帰国した際に(帰国が許されればの話ですが)、アメリカ・スペイン以上に適正な対応をとられる・・・・とは、なかなか思えません。
むしろ、中国のエボラ出血熱への関心は非常に低く、その背景にはアフリカへの蔑視もあるようです。

****中国人、なぜエボラに関心持たない?・・・「野蛮人の疫病と思っているから」=国外在住の専門家が自国民批判****
香港に拠点を置く衛星テレビ局の鳳凰衛視(フェニックステレビ)が運営する情報サイト「鳳凰網」は16日、カナダ在住の中国人のアフリカ問題専門家の陶短房氏による「中国人はなぜ、エボラエボラに関心を持たないのか?」と題する論評を掲載した。陶氏は、中国人にはアフリカ人に対する差別感情があり、アフリカを「閉ざされた大陸」とする誤った認識をしていると指摘した。

陶氏は、中国の経済高度成長に伴い、アフリカと中国の経済関係は未曽有の発展をしたと紹介。アフリカには中国製品と中国人建設作業員が満ち溢れていると指摘。

しかしアフリカでは中国人に対して、現地社会に溶け込もうとせず、「門を閉ざして自分たちだけで暮らす、「アフリカ人やアフリカ人の生活を理解しない。理解しようともしない」という怨嗟の声が聞こえてくるという。

陶氏はさらに、アフリカとの経済関係で直接、間接の利益を得ているにも関わらず、多くの中国人はアフリカやアフリカ人に対して「距離を置き、差別視している」と指摘。

そのため、エボラ出血熱の流行も「アフリカの内部で流行しているだけ」であり「未開人、野蛮人の疫病だ」と認識する現象が発生しているという。

エボラ出血熱と中国が無縁でいられないことについてはまず、多くの専門家が、エボラ出血熱のウイルスがアフリカ外に出ていく可能性は否定できないとみなしていると紹介。

中国とアフリカのつながりを示す数字としては「「アフリカで暮らす中国人は数百万人。(エボラ出血熱流行の中心地である)シエラレオネ、ギニア、リベリアにいる中国人は1万人」であることを挙げた。(中略)

陶氏はエボラ出血熱の状況について、「サハラ以南のアフリカの現状は、貧困で遅れており、単独では病魔に対抗できない」、「国際組織やボランティアの努力にも限界がある」ことは事実であるとの見方を示し、だからこそ、さらに多くの支援が必要と指摘。

貧困な地域における伝染病の流行は、世界中に広まっていく危険を伴っており「他人の不幸が、いつも自分とは離れた場所にとどまっていると考えていてはならない」と主張した。

陶氏は、中国の動き全体としては、医師団の派遣や必要品の援助などで「多くの尽力、物力、財力を投入している」と一定の評価をしたが、中国の医療体については、「集中、統一、組織」という特徴があり、これまでは非常に有効だったが、現在のエボラ出血熱の流行については、現地の医療機構や他の国際援助組織との協力などの面で限界が出ていると指摘した。

また、中国の一部の製薬会社が現地で、エボラ出血熱の流行を「商機」と考え、「エボラ出血熱治療の秘密の薬がある」などとして販売促進活動をしていると指摘。「このようなふざけたやり方に、中国人もアフリカ人も怒っている」と論じた上で「中国の大衆の、(エボラ出血熱の)流行状況と危険性についての関心を減じる、大きな悪影響をもたらしている」と主張した。

中国ではこれまで、当局関係者がエボラ出血熱について、「国内に感染者がいても、すぐに発見できる。感染が拡大する恐れはない。すでに準備はできている」などと発言してきた。

陶氏は、アフリカ多くの中国人が暮らしている一方で、国内ではエボラ出血熱の危険性に対する警戒感が高まらないことを深刻視し、「エボラ出血熱への対応で、中国は自信を持って『われわれは準備ができている』と表明することができるのか?」と、改めて問いかけた。【10月18日 Searchina】
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エボラウイルスが何らかの形で中国へ入ってきた場合、関心の低さに加え、SARSのときのような隠蔽体質があると感染は一気に拡大します。

中国で感染が拡大すれば、日本に入ってくるのは時間の問題です。

なんとも暗い話ではありますが、1年後、2年後に振り返って「あの頃は、まだ危機感がなかった。こんなことになるとは・・・・」なんて思うことにならないことを願います。

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