孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中央アフリカの混乱拡大  フランスは介入姿勢を強める 

2013-10-21 21:40:51 | アフリカ

(中央アフリカ 戦闘を避けて移動する人々 “flickr”より By UNHCR UN Refugee Agency http://www.flickr.com/photos/25857074@N03/9707384417/in/photolist-fMNTbR-fuonF3-fUE6D6-fUFuk8-fUE6hf)

キリスト教徒主体の旧政権支持派がイスラム教徒主体の新政権の支配に抵抗を続ける構図
その国名が示すようにアフリカ中央部に位置する中央アフリカでは、今年3月に反政府武装勢力の連合体「セレカ」が首都バンギを制圧するなど、混乱が続いています。

****中央アフリカ:衝突が激化…新旧政権、宗教の溝****
アフリカ中部・中央アフリカ共和国で新旧政権の武装勢力同士による衝突が激化し、旧宗主国のフランスは国連安全保障理事会決議による安定化策を模索する一方、駐留仏軍の増派を決めるなど軍事介入の姿勢も強めている。

新政権はイスラム教徒、旧政権はキリスト教徒が中心で、宗教対立の様相も呈しており、事態は緊迫化している。

 ◇仏軍が増派方針
中央アフリカでは今年3月末、反政府武装勢力「セレカ」が首都バンギに侵攻。ボジゼ大統領は国外に脱出した。以降セレカの支配が強まり、指導者ジョトディア氏は暫定大統領就任を宣言して新政権が発足、8月に大統領就任式を挙行した。

中央アフリカは中・南部を中心にキリスト教徒が人口の約50%を占め、北部中心のイスラム教徒は約15%。
キリスト教徒主体の旧政権支持派がイスラム教徒主体の新政権の支配に抵抗を続ける構図で、事態は宗教対立に発展しつつある。

9月初旬には西部ボッサンゴアでキリスト教徒武装集団とセレカが衝突し、市民約100人が死亡。今月も南部バンガスー、西部ギャガで相次いでキリスト教徒武装勢力とセレカが交戦し、70人以上が死亡した。

事態を重く見たフランスはファビウス外相が13日にバンギを訪問し「現在410人の仏軍兵力を年末に向け増強する」と明言。派兵規模は最大1200人に達する見通しだ。

現地ではセレカによる略奪行為も深刻化しており、ファビウス外相は「略奪がこれ以上続いた場合、より大規模で迅速に対応する」と仏軍の早期介入も示唆した。

10月の国連安保理で、中央アフリカで展開予定のアフリカ連合(AU)による平和維持部隊を増強する方針が決まった。仏政府は、国連平和維持活動(PKO)への移行などを目指し、11月の安保理決議採択に向け理事国に協力を求めているが、難航。並行して独自の増派準備を進めている形だ。

ボジゼ氏は3月、セレカの侵攻を受け仏政府に支援を求めたが、仏政府は現地駐留部隊を動員しなかった。
しかしその後、治安の悪化が深刻化し、本格的な事態収拾に乗り出した。【10月21日 毎日】
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中央アフリカの混乱は以前からのもで、“05年にジョトディア氏が率いる組織などが北部で反政府武力闘争を開始。各組織は07年に政府と和平合意したものの、昨年12月セレカとして再蜂起し、北部の諸都市を制圧。今年1月に政府とセレカは連立政権を樹立したが後に決裂した。”【4月11日 毎日】という経緯を経て、セレカ政権樹立という今年3月以降の展開となっています。

アフリカ連合(AU)はセレカによる政権奪取を認めず、中央アフリカの参加資格の停止を決めています。アメリカもセレカには「正統性がない」と非難しています。
国連安保理も、中央アフリカでは「法と秩序が崩壊している」と懸念を表明しています。

****中央アフリカ、反政府勢力の支配で崩壊の危機=国連***
国連のシモノビッチ事務次長補(人権担当)らは14日、反政府勢力が4カ月前に権力を掌握した中央アフリカ共和国について、「崩壊の危機にある」と警告した。

最貧国の1つでもある中央アフリカは、反政府勢力セレカが権力を掌握しボジゼ大統領が同国を脱出して以来、混乱状態が続いている。アフリカ連合(AU)は今月、国民の保護や情勢安定化、政府統治の回復のため、平和維持部隊の増強を発表した。

国連特使を務めるBabacar Gaye氏は、AUが経済面や技術面で支援を要請しているとし、安全保障理事会に要請に応じるよう提言したと述べた。

特使やシモノビッチ事務次長補は、危機解決にはAUの部隊だけでは足りないとの見方を示した。事務次長補は、治安確保と国民の保護には大規模の部隊が必要だとし、外国の反政府勢力が中央アフリカに流入することも防ぐ必要があると述べた。

安保理は声明で、中央アフリカでは「法と秩序が崩壊している」とし、同国の治安情勢に深い懸念を表明。情勢安定のためにあらゆる選択肢を検討するとした。

国連のバレリー・アモス人道問題担当事務次長は、中央アフリカが破綻国家になる可能性があると指摘。国民約460万人が情勢危機の影響を受け、このうち160万人は緊急支援を必要としていると説明した。【8月15日 ロイター】
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セレカが少年兵を戦わせている疑惑も報じられていますが、アフリカにおける多くの衝突では、戦闘を行う両勢力が同様の行為を行っている・・・というのが一般的です。

あくまでも「フランスの国益」】
旧宗主国フランスは、以前から治安維持活動支援の一環として250人を駐留させていましたが、3月末からの混乱拡大で300人規模の増派を行い、首都空港を確保しています。

しかし、マリのイスラム過激派南進に素早く反応して積極介入したときと比べると慎重姿勢でのぞんでいます。
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だが、任務は現地在住の自国民1200人の安全確保に限定。内政不介入の姿勢で暫定政権への支持も表明していない。
仏が慎重姿勢である理由は▽1月に軍事介入した西アフリカのマリより周辺地域の仏権益が少ない▽イスラム教徒人口が少なくイスラム過激派の温床となる可能性が低い−−などだ。【4月11日 毎日】
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フランスのオランド大統領は、2012年12月27日、「ボジゼ政権を守るために仏軍がいるのではない。仏国民やフランスの権益を守るために駐留している。内政干渉はしない。そういう時代は終わった」と述べています。
そうした慎重姿勢をとってきたフランスが、より介入を拡大させる姿勢を強めているというのが冒頭記事です。

アフリカはフランス植民地支配の中核にあった地域であり、今現在も「大国」フランスの基盤となっている“核心的利益”に関わる地域であること、フランスはアフリカ旧植民地国と疑似家父長制的「共同体」関係とも言える特殊な結びつきを依然として維持し続けている唯一の国であること、フランスの対アフリカ政策の目的は①「大国」としての勢力圏の維持 ②経済的利益の追求にあること・・・などは、1月12日ブログ「フランス  西アフリカ・マリの混乱に軍事介入 フランスにとってのアフリカ」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130112)でも取り上げました。

****アフリカに軍事介入するフランスの論理****
・・・・フランスは過去半世紀の間、アフリカに対して最も頻繁に軍事介入してきた国だ。軍事超大国アメリカが世界規模で追求してきた軍事戦略を、アフリカの旧植民地に特化して進めてきた国。それがフランスだと言えるかもしれない。

アメリカはソマリアのアルカイダ系組織掃討のため今世紀に入ってからジブチを軍事拠点とし、最近になってニジェールに無人攻撃機の基地をつくる計画を本格化させている。
だが、アメリカは長年、アフリカ大陸に米軍基地を置いてこなかった。2008年10月に新設された「米アフリカ軍司令部」も、司令部はドイツにある。

かつて大英帝国としてアフリカ東部・南部を中心に広大な植民地を有していたイギリスも、現時点で兵士を駐留させている国はケニアとシエラレオネだけである。

これに対してフランスは、旧フランス領植民地だったガボン、コートジボワール、セネガル、チャド、ジブチの5カ国に基地を置く。また、1998年にいったん基地を閉鎖した中央アフリカには現在、首都バンギの空港に250人のフランス兵を駐留させている。

さらにフランスは、多数のアフリカの国々と軍事協力協定や二国間防衛協定を締結している。フランス語圏アフリカの政治動向に詳しいアジア経済研究所の佐藤章アフリカ研究グループ長代理が2010年に発表した論文「フランスの軍事政策とアフリカの紛争」によると、1990年代半ばの時点で28カ国との間にこうした協定があった。(中略)

フランスのアフリカへの軍事介入の歴史をまとめた一覧表を見て改めて気づくのは、その時々のフランスの政権が「フランスの国益」になると判断した時にのみ介入を決断したに違いないという、当たり前の事実である。

介入は後に称賛されたものもあれば、失敗に終わったものもあったに違いない。成否の判断が今なお判然としないものも多いだろう。

フランスにとっての国益に基づく介入が、被介入国の民衆の不利益になったケースも多々あるに違いない。
90年代初頭、ルワンダに派兵してフツ人主体政権を支援したことは、後に100万と言われる犠牲者を生んだ大虐殺の伏線になったとして、フランス政府は国内外から強い批判を浴びた。
一方、今回のマリ介入のように、介入先のマリの庶民から歓迎されているケースもあるだろう。

だが、いずれの場合にせよ、介入の是非を決断した時点の最終的な判断基準はフランスの国益に照らされたものであり、被介入国の国益が最優先されたことはない。

当たり前と言われればそれまでだが、国益に基づいて軍事介入の是非を判断する機会自体が60余年にわたって存在しない国に住む者にとっては、国際政治の冷徹な現実を再認識する良い機会である。

なぜなら、「フランス」と「アフリカ」の関係を「アメリカ」と「日本」に置き換えると、この冷徹な現実の持つ意味の重さを痛感するからだ。
アメリカは「日本を防衛することがアメリカの国益に資する」と判断すれば、東アジアの紛争に介入するだろう。だが、アメリカが「紛争への介入はアメリカの国益に反する」と判断するような事態が出現したら、日本はどうなるのだろうか。フランスのアフリカへの軍事介入を遠くから見ながら、私はそういう頭の体操をしている。【2月23日 白戸圭一氏 フォーサイト】(http://www.fsight.jp/14818
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中央アフリカへの介入姿勢をフランスが強めているのは、これ以上の混乱を放置することは家父長フランスの威信を傷つける・・・ということでしょうか。

十分に機能しないアフリカ連合
一方、混乱収拾の中核となるべきアフリカ連合(AU)は、下記のような緊急部隊創設といった話もありますが、現実問題としては、加盟国の財政上の問題もあって軍事的対応力を発揮できていません。
資金面では、パトロンというか“盟主”的存在だったリビア・カダフィ大佐の失脚で更に厳しくなっているという話もあります。

****アフリカ連合、紛争対応のための緊急部隊創設へ****
アフリカ連合(AU)は27日、アフリカ大陸で起きる紛争に即座に対応できる緊急部隊を創設すると発表した。

AUは10年前、アフリカ大陸5地域から徴集した各国の兵士や民間人から成る3万2500人規模の「アフリカ待機軍」発足に向けた取り組みを開始したが、その準備はほとんど前進していない。
運用開始のめどが立っているのは5地域のうち2つのみだ。

エチオピアの首都アディスアベバで2日間にわたり行われたAU首脳会談後の会見で、議長国エチオピアのハイレマリアム・デザレン首相は「AU加盟国のほぼすべての国が即時対応できる軍事力を持つことで合意した」と語った。

ラムタネ・ラマムラAU平和安全保障委員は記者団に対し、「これは、待機軍が完全に運用可能になるのを待つ間の暫定措置だ。その間、あちこちで危機や、憲法に反する政権交代、大規模な人権侵害が起きる可能性が高い。そのため、責任という面から見れば、完全な道具が使えるようになるまでわれわれは待ってはいれない」と語った。
同委員によれば、この緊急部隊には、南アフリカ、ウガンダ、エチオピアが派兵を申し出ているという。

AUは、昨年3月にマリで兵士らが起こしたクーデターへの対応の遅れを非難された。アフリカ大陸の中でも比較的安定した民主主義政権を保持していたマリだが、このクーデターを機にイスラム過激派が北部を掌握。旧宗主国のフランスは今年1月、過激派掃討のための軍事介入に踏み切った。【5月28日 AFP】
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アフリカ連合(AU)については、財政面から軍事的対応がとれないという話以上に問題なのは、その現状維持姿勢ではないでしょうか。

AUがセレカによる政権奪取を認めないのは、セレカの政治姿勢の問題でもなく、旧ボジゼ政権の統治の良し悪しでもなく、とにかくどんな悪辣な政権であってもそれを力で倒すことは認めないという現状維持姿勢によるものでしょう。
AU加盟国の多くが自国内に人権や民主化で問題を抱えていることもあって、人道などで国際批判を浴びる国の指導者を支持する傾向があります。

****AU首脳会議:国際法廷の現職首脳訴追に反対****
アフリカ連合(AU、54カ国・地域)は12日、エチオピアの首都アディスアベバの本部で首脳会議を開催し、国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)などの国際法廷が現職首脳を訴追することに反対する意見をまとめた。
人道に対する罪に問われたケニヤッタ・ケニア大統領の審理が来月始まるなど、アフリカの人ばかりが訴追されている状況に反発した形だ。

AP通信などによると、会議では首脳の在任中は訴追されないようにすべきだと結論づけた。また、ケニヤッタ氏の審理を延期するよう国連安全保障理事会に求める方針も決めた。

2003年の開設以来、ICCが進めてきた20件の訴追手続きはすべてアフリカを対象としており、アフリカ各国からはICCへの反感が高まっている。

スーダンのバシル大統領は、ダルフール紛争を巡り民間人殺害などへの責任を問われ、ICCが逮捕状を発付。ケニヤッタ氏は07年の大統領選直後の暴動への間接的な加害責任を問われた。ルト・ケニア副大統領も同様の疑いで訴追され、すでに審理が始まっている。

英BBCによると、AU議長のハイレマリアム・エチオピア首相は「ICCが我々に科した不公正な扱いはまったく容認できない」と強く批判した。【10月13日 毎日】
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アフリカ連合(AU)の側には、人道などの問題でアフリカだけが狙い撃ちされている・・・という不満があるようです。

うまくいっていることはニュースにならず、悪い事例のみがニュースとして世界に流布されるという情報の偏りはあるにしても、アフリカの統治でうまくいっている事例というのは聞く機会が少なく、内戦や政治混乱の話ばかりを目にするのは残念なことです。

****アフリカ指導者対象の「イブラヒム賞」、今年も受賞者なし****
アフリカの優れた指導者を対象に、個人に与えられる賞では世界最多の賞金を授与する「イブラヒム・アフリカ指導者業績賞」(モ・イブラヒム賞)が、今年は過去5年間で4度目の「適格者無し」となったことが14日、発表された。

モ・イブラヒム財団は、ロンドンで開いた記者会見で、「慎重に検討した結果」、2013年度の受賞者はいないという結論に達したと発表した。

通信業界で富をなしたスーダン生まれのモ・イブラヒム氏が2007年に創設したこの賞は、賞金として500万ドル(約4億9000万円)が10年間に分割して支払われる他、それ以降は年間20万ドル(約2000万円)が一生涯支払われる。また、受賞者が支援する活動に対して、さらに年間20万ドルが10年間支払われる。

受賞の対象になるのは、民主的な選挙で選出され、卓越した指導力を発揮した任期満了後3年以内のアフリカ人指導者。創設以来これまでに受賞したのは3人だけで、その他に南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領とデズモンド・ツツ元大主教が特別賞を受賞している。【10月15日 AFP】
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なお、イブラヒム賞の受賞者3人とは第1回(2007年) ジョアキン・アルベルト・シサノ モザンビーク元大統領、第2回(2008年) フェスタス・モハエ ボツワナ元大統領、そして第5回(2011年) ペドロ・ピレス カーボベルデ前大統領です。

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3 コメント

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Unknown (飯塚真穂)
2019-08-14 18:51:49
浦部春香
返信する
Unknown (大石芽依)
2019-08-14 18:52:12
金谷智子
返信する
Unknown (バンギ)
2019-08-14 18:53:00
バンギ
返信する

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