孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

西アフリカ  イスラム過激派対策でロシアに接近 ワグネルの利権継承を目論むロシア

2024-03-07 22:00:04 | アフリカ

(【3月2日 NHK】 ブルキナファソの首都ワガドゥグの街中、壁に描かれたプーチン大統領)

【「過激」・特殊なものでもなく、もっと一般的なものとしての暴力・・・との印象】
西アフリカの地域大国ナイジェリアと言えば、経済的重要性の高まりの一方で、イスラム過激派「ボコ・ハラム」がすぐに思い浮かぶように治安状態はよくありません。
「ボコ・ハラム」だけでなく敵対関係にあるIS系過激派も活発に活動しています。

****武装集団襲撃で50人拉致 ナイジェリア、過激派か****
ナイジェリア北東部で4日、武装集団が湖の周辺でまき集めをしていた住民を襲撃し、50人を拉致した。ほとんどが女性。イスラム過激派の犯行とみられる。ロイター通信が6日報じた。

現場はチャドやカメルーンとの国境近くで、過激派組織「イスラム国」(IS)系のグループが活動する地域。逃亡した女性はロイターに、被害者はチャドに連行されたと話した。

ナイジェリア北東部ではIS系に加え、敵対関係にある過激派ボコ・ハラムもテロを続け、多数の住民が家を追われた。4日に拉致された人々は避難民キャンプで暮らしていた。【3月7日 共同】
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こうした武装勢力を一般的に「過激派」という言葉で呼んでいますが、下記のような部族間抗争が絶えない現状を考えると、この地域では武力行使や殺害などの暴力は日本や欧米で考えるような「過激」・特殊なものでもなく、もっと一般的なものなのかもしれない・・・という印象も。

****ナイジェリアで武装集団による襲撃…少なくとも140人死亡 干ばつや洪水で土地など奪い合いか****
アフリカ・ナイジェリアの中部で今月(23年12月)23日と24日、武装集団による襲撃事件があり、少なくとも140人が死亡しました。気候変動によって干ばつや洪水などが起き、人々の間で土地など奪い合いが起きているとみられています。

ナイジェリア中部・プラトー州の集落で今月23日と24日、武装集団による襲撃事件があり、ロイター通信などによりますと、少なくとも140人が死亡、300人がケガをしたということです。

この州では、イスラム教徒の遊牧民とキリスト教徒の農民との間で衝突がたびたび起きていて、今年5月には100人以上が死亡する衝突が起きていました。

ロイター通信は専門家などの話として、気候変動によって干ばつや洪水などが起き、住む場所を失った遊牧民と農民との間で土地や資源の奪い合いが起きているとの見方を伝えています。

こうした事態に国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは、「ナイジェリア当局はこの地域で頻繁に起こる致命的な襲撃を止めることができていない」と非難するとともに、「これらの攻撃について、公平で効果的に調査する必要がある」と迅速な対応を求めました。【23年12月27日 日テレNEWS】
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暴力が一般的なもの・・・と書きましたが、それはこの地域の人々が野蛮云々という話ではなく、その背景には、そうでもしないと生きていけない厳しさ・貧困、それにたいする政治対応の不十分さなどがあってのことでしょう。

ナイジェリアに隣接するニジェール、マリ、ブルキナファソもイスラム過激派の跋扈という状況は同じです。

****ブルキナファソ 3つの村が襲撃され約170人殺害 検察「処刑された」 イスラム過激派が関与か***
西アフリカのブルキナファソで、3つの村が襲撃され、およそ170人が殺害されました。イスラム過激派が関与した可能性があり、検察当局は、「処刑」されたとしています。

AFP通信などによりますと、ブルキナファソ北部のヤテンガ県で先月25日、3つの村が襲撃され、およそ170人が「処刑」されたと現地の検察当局が発表しました。

目撃者の話では、死者のうち、数十人が女性や子どもだったということです。
村を襲撃した集団についてはわかっておらず、ブルキナファソの検察当局は、目撃情報を集めるなど捜査を進めています。

ブルキナファソでは2015年以降、イスラム過激派によるテロや襲撃が繰り返され、およそ2万人が死亡。200万人以上が避難を余儀なくされるなど治安の悪化が深刻になっています。【3月4日 日テレNEWS】
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“ブルキナファソでは2022年に軍によるクーデターが2回起きたほか、過激派組織「イスラム国」の影響を受けたとみられる武装勢力などが反発を強めていて、現在の暫定政府も国土の半分近くを掌握できずにいるとも伝えられています。”【3月4日 テレ朝news】

日本や欧米で50人が拉致されたり、170人が殺害処刑されたりすれば大騒ぎですが、西アフリカでの出来事となると上記のような簡単なニュースの扱いです。

口にはしなくても“この地域では暴力が一般的なもの”という認識が前提にあるのでしょう。

【過激派対策をフランスに代えてロシアに頼る西アフリカ軍事政権】
しかし、現地の住民、何とか過激派を掃討しようとしている現地政府(政府軍自身の暴力の問題もありますが)にとっては、それではすみません。

ブルキナファソではもともと旧宗主国のフランスが強い影響力を持っていましたが、おととし、2度にわたるクーデターで軍事政権が成立すると、フランスとの関係が悪化し、駐留していたフランス軍の部隊が去年、撤退しました。

旧フランス植民地のニジェール・マリも同様です。これらの国がフランスに代えて頼っているのがロシア。

****ロシア、ニジェール軍政と軍事協力で合意=国防省****
ロシア国防省は16日、昨年のクーデター以来軍政が支配しているニジェールと軍事面で協力を進めることで合意したと明らかにした。

ロシアの通信各社によると、国防次官2人がこの日、ニジェールのモディ国防相と会談した。

ロシア国防省は「防衛部門における両国間の関係構築の重要性が指摘され、地域安定に向け共同の行動を強化することで一致した」と説明。またニジェール軍の「戦闘態勢強化」に向け対話を継続するとした。ただ、計画の詳細は明らかにしていない。

ニジェールでは2023年7月に軍によるクーデターが発生。バズム大統領の警護隊トップを務めていたアブドゥラハマネ・チアニ将軍が大統領を追放し、新国家元首に就任した。

さらに、軍政はフランス軍を追放し、欧州連合(EU)との安全保障協定を破棄。西側の間では、同地域がロシアによる進出の足掛かりになる可能性があると懸念されている。【1月17日 ロイター】
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軍事クデター政権でもあるニジェール・マリ・ブルキナファソの西アフリカ3ヶ国は西アフリカ諸国経済共同体からも離脱して独自の路線をとろうとしています。名目はより徹底したテロ・過激派対策です。

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ニジェールなど3か国 西アフリカ共同体の即時離脱を発表****
西アフリカ・ニジェールの軍事政権は、隣国のマリやブルキナファソとともに、周辺国で作る共同体から即時離脱すると発表しました。

ニジェールの軍事政権の報道官は28日、国営テレビで共同声明を読み上げ、隣国のマリ、ブルキナファソとともにECOWAS=西アフリカ諸国経済共同体を即時離脱すると発表しました。

ニジェールでは去年7月、軍によるクーデターが発生して欧米寄りの大統領が排除されたほか、2020年にはマリで、2022年にはブルキナファソでもクーデターが起きて軍が政権を掌握しています。

これらの国々ではイスラム過激派のテロが頻発するなど治安が不安定で、声明ではECOWASが「テロや情勢不安との戦いにおいて、3か国を支援することに失敗した」と非難しています。

また軍事政権発足以降はいずれもロシアへの接近が指摘されていて、マリではロシアの民間軍事会社「ワグネル」が派遣されているとみられています。

一方、ECOWASは声明で、「3か国から正式な通知を受けていない」と明かし、「交渉による解決策を見出せるよう取り組む」としています。【1月29日 TBS NEWS DIG】
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【ワグネルの利権を引き継ぐロシア】
ロシア側の受け皿になっていたが民間軍事会社ワグネルですが、「プリゴジンの乱」で解体しました。しかし、ロシアとしては「アフリカ部隊」を創設して、ワグネルがこの地域で築いた利権をそのまま引き継ぐ考えです。
ニジェール・マリ・ブルキナファソにとっても民間軍事会社からロシア公認の組織への変更は基本的には歓迎でしょう。

****ロシア アフリカで準軍事組織立ち上げ 政府主導で利権確保も****
ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏の死亡から半年余りとなる中、ロシア政府はワグネルが活動を広げてきたアフリカで、国防省傘下の新たな準軍事組織を立ち上げ、現地での活動や利権の確保などに政府主導で乗り出す動きを見せています。

ロシアはアフリカで、これまで民間軍事会社ワグネルを通じて、リビアやスーダン、マリ、中央アフリカなど紛争やクーデターによって国内情勢が不安定な国々に影響力を拡大してきました。

ワグネルが戦闘員を派遣する一方で、鉱物資源の権益を拡大するなど、プーチン政権のアフリカ戦略と密接に結び付きながら暗躍してきたと指摘されています。

しかし、ワグネルの創設者、プリゴジン氏が去年6月に武装反乱を起こし、その2か月後に搭乗していた自家用ジェット機が墜落して死亡する事態となり、アフリカでのロシアの動向が注目されていました。

ロシア政府は去年秋ごろに、ワグネルに代わって国防省の傘下に位置づける「アフリカ部隊」と呼ばれる新たな準軍事組織を立ち上げ、アフリカでの活動や利権を引き継ごうとしていると指摘されています。

アフリカ部隊はマリやリビアですでに活動を開始したとみられているほか、ことし1月には、西アフリカのブルキナファソにおよそ100人の部隊を派遣したと発表しています。

アフリカ部隊は去年12月の時点で、指揮官を含む構成員のうち、およそ半分がワグネルの元メンバーだとみずから公表しています。

一方で、新たな人員の獲得に力を入れていて、SNS上には、「高額な給与」や「医療費などの給付」をうたって人材を募集する広告が頻繁に投稿されています。

アメリカのメディア、ブルームバーグはロシア国防省の関係者の話として、アフリカ部隊は最大で2万人の要員を確保しようとしていると伝えています。

ロシアとしては政情不安が続くアフリカ諸国などに対し、民間軍事会社を間に挟んだ関与から、政府主導のより直接的な関与へと切り替え、影響力を広げていこうとしているとみられます。

専門家“ワグネルが築き上げた利権乗っ取ろうとしている”
 ロシアのアフリカでの活動に詳しい専門家は、ロシア政府はアフリカでワグネルが築き上げてきた軍事的、経済的な利権やネットワークを乗っ取ろうとしていると指摘しています。

日本エネルギー経済研究所中東研究センターの小林周主任研究員は「ロシアの政府と軍が、アフリカに展開していたワグネルの乗っ取りを本気で進めていることが明らかになってきている。民間軍事会社が主導するのではなく、政府が主導することで軍事や情報、それに経済などの活動をより一体化して展開していこうとしているようにみえる」と指摘しました。

その理由について、「ロシアが国家としてアフリカの紛争に介入することは、さまざまなリスクがあるものの、アフリカの少なからぬ国には親ロシアの体制ができていて、金鉱山などからの利益をウクライナでの戦争の軍資金にも充てられている。リスクを上回る利益を見いだしているといえる」と分析しています。

また、小林主任研究員は、テロや治安の悪化に悩むアフリカ諸国にとってもロシアは頼れるパートナーになっているとする一方で、「ロシアが国家として関与することになれば、アフリカの国としてはプーチン政権からお墨付きを得たととらえて、人権侵害につながる活動をちゅうちょしなくなるおそれがある」と述べて、テロ対策の名のもとに市民への抑圧や暴力が助長されるおそれがあると指摘します。

アフリカでは2020年以降、かつてフランスの植民地だった西アフリカの国々などでクーデターが連鎖的に起きていて、その周辺でも政治情勢が不安定となる国が増えています。

小林主任研究員は「西側諸国がクーデターを起こしたり、強権化した国を排除しようとしたりすればするほど、彼らはロシアに近づいていく。そうした国々への関与と対話を継続し、ロシアの介入をはねのける努力を続けていくことが必要となっている」と述べ、日本や欧米などの各国や国際機関がアフリカに関与し続けることが重要だと強調しました。

ロシアとの関係 急速に深めるブルキナファソは
このところ、ロシアとの関係を急速に深めている国の一つが西アフリカのブルキナファソです。

サハラ砂漠の南側のサヘル地域にある内陸国で、人口はおよそ2200万です。 もともと旧宗主国のフランスが強い影響力を持っていましたが、おととし、2度にわたるクーデターで軍事政権が成立すると、フランスとの関係が悪化し、駐留していたフランス軍の部隊が去年、撤退しました。

代わってブルキナファソ政府が接近したのがロシアです。

去年7月にロシアで開かれたアフリカ諸国との首脳会議では、プーチン大統領とブルキナファソのトラオレ暫定大統領が個別に会談を行い、安全保障や食料問題などでの協力を確認しています。

その後、双方の政府や軍の高官が往来を重ね、ことし1月には、ロシア国防省傘下の準軍事組織「アフリカ部隊」の隊員、およそ100人がブルキナファソに到着し、政府軍の兵士の訓練などを行っています。

先月、NHKの取材班がブルキナファソの首都ワガドゥグを訪れたところ、街のあちこちにロシアの国旗が掲げられ、国をあげてロシアの支援を歓迎している様子がうかがえました。

日中は強い日ざしが照りつけ、気温が40度近くになりますが、日が暮れて暑さが和らぐと、街の広場に連日、ロシアを支持する若者たちが集まります。

若者たちはスマートフォンを使ってSNSの動画中継をしながら、ロシアとの連携がいかに重要かについて主張を展開していました。

参加者の1人は「ロシアからの武器が私たちの国に実際に輸入されてきています。まさに互恵的でウィンウィンの関係です。フランスなどこれまでのパートナーは不誠実で、問題が多かったのです」と話していました。
ブルキナファソの人々がロシアの軍事支援に期待を寄せる最大の理由が治安の深刻な悪化です。

ブルキナファソでは2015年ごろからイスラム過激派が活動を活発化させ、テロや襲撃事件が頻発しています。

世界各地の武力紛争のデータを集計している非営利調査団体ACLEDによりますと、去年1年間でおよそ8500人が殺害されたということです。

また、住む家を追われて国内で避難している人も200万人を超えています。

ワガドゥグの郊外で避難生活を続けているベレム・アダマさん(37)は、ことし1月に住んでいた村が過激派に包囲されました。

すぐ近くの集落が襲われ、村人が殺されたり家に火をつけられたりしたため、家族を連れて着の身着のままで村を離れたといいます。

アダマさんには3人の妻と15人の子どもがいますが、避難場所では、時々入る日雇いの仕事以外に収入はなく、食料を確保するのにも苦労しています。 そのため、大人は1日1食ほどで我慢し、子どもになるべく多く食べさせるようにしているということです。

アダマさんは「家畜の牛やバイクもすべて村に残し、せめて命だけでも守ろうとここに逃げてきました。ロシアがテロリストとの戦いを支援し、皆が早く自分の村に戻れるようになってほしいです」と話していました。

安全保障の専門家で、トラオレ暫定大統領のアドバイザーも務めているサミュエル・カルクームド氏は「ロシアとの協力関係は非常に重要で、われわれの軍はそのおかげで高性能の武器を備え、よりよい訓練も受け、テロと戦えるようになっている」とロシアとの関係を高く評価しています。

一方で、マリや中央アフリカなどの周辺の国では、ロシアの民間軍事会社ワグネルの部隊が市民の殺害に関与したなどと指摘されていることについては、「テロとの戦いにおいては、残虐な行為が行われることも、その国の人々が支持しているのであれば、仕方ない場合もある。ただ、われわれが協力しているのはよう兵部隊ではなく、ロシア政府と軍なのです。それが政府の方針です」と話していました。【3月2日 NHK】
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