孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ギリシャ・イタリア  混乱する政治情勢  経済再建の障害になる可能性も

2013-10-01 23:12:54 | 欧州情勢

(「富」と「快楽」を謳歌することをポジティブにみなす人生観の象徴とも言えるイタリアのベルルスコーニ元首相 【9月28日 THE NEW CLASSIC】)

南欧的な国民性?】
路上に放置された現金が入った財布がどれだけ本人にもどってくるか・・・という“正直度”を世界16都市で調べた実権に関する面白い記事がありました。

各都市について12個の財布を放置して調べるという極めてシンプルなものですから、統計学的に有意云々というより、あくまでも“面白い”話のタネの範疇を出ませんが・・・・。

****世界で最も正直な都市と、不誠実な都市****
今、どこにいるかによって、人を信じることができたり、軽く意気消沈したりするかもしれない。世界各地で興味深い実験が行われた。

米出版大手リーダーズ・ダイジェスト・アソシエーションは、世界16都市の公園やショッピングモール、歩道で財布を置きっぱなしにする実験を行った。
調査員は12の財布に、名前、携帯電話の番号、家族写真、割引クーポン券、名刺、50ドル相当の現金を入れ、街の様々な場所に置くように指示された。

その結果、フィンランド・ヘルシンキで、12の財布中、11が所持者の元へと戻り、世界で最も正直な都市であることが分かった。

また、賑やかな大都市ほど、不当に評価されていることも明らかになった。例えばインドのムンバイは、12の財布のうち9つの財布が返却され、正直者の多い都市第2位に輝いた。
2人の子を持つ母親は「私の両親に教わったように、子供たちには正直であるように言い聞かせている」と語った。

また、米国・ニューヨークも第4位にランクインした。

被験者の多くが、家族写真を見て、財布を返そうと思ったと述べた。

なぜフィンランド人が、特に正直なのか、その理由を1人の男性が説明してくれた。「我々のコミュニティーは小さく、静かで、結束が強い。不正がほとんどなく、信号無視だってしないさ」

正直者テストのランキングは次の通り。
1位 ヘルシンキ、フィンランド 11/12(12の財布のうち11が返却される)
2位 ムンバイ、インド 9/12
3位 ブダペスト、ハンガリー 8/12
4位 ニューヨーク、米国 8/12
5位 モスクワ、ロシア 7/12
6位 アムステルダム、オランダ 7/12
7位 ベルリン、ドイツ 6/12
8位 リュブリャナ、スロベニア 6/12
9位 ロンドン、イギリス 5/12
10位 ワルシャワ、ポーランド 5/12
11位 ブカレスト、ルーマニア 4/12
12位 リオデジャネイロ、ブラジル 4/12
13位 チューリッヒ、スイス 4/12
14位 プラハ、チェコ共和国 3/12
15位 マドリード、スペイン 2/12
16位 リスボン、ポルトガル 1/12  【10月1日 Relaxnews】
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この手の“正直度”では日本が優れているという話はよく聞きます。残念ながら、今回調査には東京は入っていなかったようです。

それにしても、“あの”インド・ムンバイが2位というのは驚きです。わずか12例の実験にすぎないにしても。
もちろん、置く場所によるのでしょうが。

15位と最下位をスペイン、ポルトガルという南欧の国が占めたというのも“面白い”ところです。
わずか12例とは言え、1位フィンランドの12件中11件と、両国の1~2件という数字の間には、やはり国民の気質・社会風潮の差異があるのでは・・・とも考えてしまいます。

スペイン、ポルトガル、更にイタリア、ギリシャの南欧諸国は経済危機に苦しんでいる訳ですが、そうした経済危機と上記調査にあらわれるような国民性的なものに関係があるのでは・・・という短絡的な考えも浮かびます。

もっとも、“シャドーエコノミー(非公式経済)は同国の国内総生産(GDP)の約24%を占める。年間の脱税額はGDPのおよそ15%に相当する280億ユーロとみられている”【2012年 11月 11日 WSJ】というギリシャなどは、社会における“正直さ”の欠如が問題の背景にあると指摘されています。
支援国のドイツなどからすれば、こうした社会風潮は我慢できないものに思えます。

ギリシャ「ネオナチに社会を毒させはしない」】
南欧的な気質と言えば、“正直度”云々は別にしても、明るくおおらかなイメージがあります。
しかし、現実の経済的苦境のなかでは、痛みを伴う緊縮財政を強いるEUや、職を奪う移民などへのギスギスした反感も社会に充満しています。

そうした不満を背景に、ギリシャでは先の選挙で、EU批判・移民排斥を訴える極右政党「黄金の夜明け」が大躍進しました。

もちろん、こうした極右勢力の拡大、その傍若無人な言動に危険なものを感じる人々も多数存在します。

****極右政党「黄金の夜明け」に抗議デモ…アテネ****
AP通信によると、アテネで25日、移民排斥を訴える極右政党「黄金の夜明け」に対する抗議デモが行われた。
数千人が同党の本部前に押し寄せて投石し、治安警察が催涙ガスで応じた。

アテネでは18日、人種差別反対を訴えてきたヒップホップ歌手の男性(34)が刺殺される事件が発生。殺人容疑で逮捕された男が同党支持者を名乗ったことから、同党に対する反発が強まっている。

同党は2012年5~6月の議会選で、経済危機に苦しむギリシャ人の仕事を移民が奪っていると訴え、18議席を初獲得。同党は刺殺事件への関与を否定しているが、議員や支持者による移民襲撃騒ぎが問題になっていた。
【9月28日 読売】
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ヒップホップ歌手殺害事件を機に、サマラス首相は「ネオナチに社会を毒させはしない」と「黄金の夜明け」に対する摘発の強化を宣言し、極右政党「黄金の夜明け」への党首らを逮捕する措置に出ています。

ただ、「黄金の夜明け」は一定の議席数、国民支持を有していますので、今回の強硬措置は不安定な政情をさらに危うくする危険もあります。

****ギリシャ、極右党首ら逮捕 犯罪組織創設容疑 政情波乱の可能性****
ギリシャからの報道によると、同国の警察は28日、昨年の総選挙で躍進した極右政党「黄金の夜明け」に対する摘発に乗り出し、党首ら4人の国会議員を犯罪組織創設の疑いで逮捕した。ほかにも国会議員を含む関係者多数に逮捕状が発行されている模様だ。

「黄金の夜明け」は300議席の国会で18議席あり、選挙後は世論調査でさらに支持率を伸ばしている。逮捕されたミハロリアコス党首らは前日、「弾圧を受ければ政情を不安定化させる」と予告。連立政権がわずかに過半数を維持しながら緊縮策を進める同国で、新たな波乱要因になりそうだ。

今月半ば、自称「黄金の夜明け」党員の男が反ファシズム活動家だった歌手を刺殺した事件があり、捜査が始まった。

同党は生活苦にあえぐ低所得層に支持を伸ばす一方、人種差別的なヘイトスピーチ(憎悪表現)を繰り返して移民への暴力事件を起こし、放置してきた警察当局への批判が高まっていた。【9月29日 朝日】
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イタリア「個人的な問題を隠蔽しようという無責任な振る舞い」】
政情の不安定化という点では、イタリアはもっと危機的です。
騒ぎの元凶は脱税・セックススキャンダルで起訴されている“おおらか”過ぎるベルルスコーニ元首相です。

こういうスキャンダルまみれの人物が今なお一定の政治力を有している、それを国民が許しているあたりに、イタリア的な国民性があるのだろうか・・・とも思ってしまいますが、さすがに“8月に税金詐欺事件で禁錮4年の有罪が確定。上院が反汚職法の規定で議員資格剥奪の審議中だ。最高裁判決で公職禁止も確定し、高裁が具体的な禁止期間を検討している。”【10月1日 朝日】と、いよいよ追い詰められています。

これに対し、ベルルスコーニ元首相は連立政権から自派閣僚を辞任させて、基盤の弱いレッタ政権を揺さぶっています。
これにより、中道左派・民主党とベルルスコーニ元首相率いる自由国民が手を組んだ大連立の枠組みは4月末の政権発足から5カ月で事実上崩壊しました。

****伊ベルルスコーニ元首相派全閣僚が辞意=連立政権崩壊の危機―議員資格剥奪阻止狙う****
イタリア連立政権の一角を担うベルルスコーニ元首相(76)派の全5閣僚は28日、辞意を表明した。

レッタ首相が財政再建策をめぐり元首相派に信任を求めたことへの反発が表向きの理由だが、実際には脱税で有罪が確定したベルルスコーニ氏の議員資格剥奪阻止を狙い倒閣に動いたとみられている。
2月の総選挙後、2カ月の政治空白を経て誕生したレッタ内閣は4月の発足以来5カ月で崩壊の危機に陥った。

ベルルスコーニ氏が議席を持つ上院の特別委員会は10月4日、議員資格剥奪を決める見通しとなっていた。中道右派はこれを阻止するため、レッタ首相との対決姿勢を強めた。
倒閣による混乱で、上院の動きを阻止することが最大の狙いとみられ、国益より私益を優先するベルルスコーニ氏の手法に全欧から批判が集まりそうだ。【9月29日 時事】
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政治的な生き残りを図る賭けに出たベルルスコーニ元首相を、レッタ首相は「個人的な問題を隠蔽しようという無責任な振る舞い」と批判しています。

ベルルスコーニ元首相や、上院第3勢力「五つ星運動」の創設者、ベッペ・グリッロ氏は解散・早期選挙を求めていますが、レッタ首相は自由国民内の反ベルルスコーニ議員らを含めた連立組み直しを模索していると見られています。

ベルルスコーニ元首相がこの時期に総選挙に執念を見せる背景には、議員資格剥奪審議を止めることで議員資格を維持し、時間を稼いで恩赦などで生き残る道を探る狙いがあるとも指摘されています。【10月1日 朝日より】

しかし、自由国民内部からも批判が出ており、ベルルスコーニ元首相の思惑どおりには進んでいないようです。

****イタリア:ベルルスコーニ元首相の「中道右派」が内部分裂****
タリアのレッタ大連立政権から離脱表明したベルルスコーニ元首相率いる中道右派・自由国民が29日、内部分裂を露呈した。
しぶしぶ辞任を表明することを受け入れた閣僚や党内ハト派が元首相の強硬路線に反旗を翻したためだ。

レッタ首相は同日、ナポリターノ大統領と対応を緊急協議した。イタリア紙レプブリカ(電子版)によると、首相は自由国民内のハト派との連立組み直しを模索しているという。

元首相が8月1日に脱税事件で禁錮4年(恩赦法により1年に短縮)の最高裁有罪判決を受けて以降、自由国民内では、連立離脱や集団議員辞職を促すタカ派と、連立残留を主張するハト派の対立が続いてきた。
元首相は10月半ばに禁錮の代替刑として社会奉仕活動か自宅軟禁を選ばなければならず、進退窮まる中、タカ派路線を取った格好だ。

だが、党内ハト派から反発が噴出した。クアリアリエッロ憲法改正担当相は29日、10月2日の内閣信任投票でレッタ首相を支持する考えを示唆。ロレンツィン保健相も「(元首相の)戦略を正当化できない」と指摘、自由国民に代わる中道右派政党「フォルツァ・イタリア」(がんばれイタリア)には参加しないと表明した。元首相側近のアルファノ副首相兼内相もタカ派批判を繰り広げた。

元首相は29日、南部ナポリでの政治集会に電話で「できるだけ早く選挙を実施すべきだ」とメッセージを寄せたが、党内ハト派の反発を受けて姿勢を軟化。個別政策ごとにレッタ政権を支持する可能性を示唆した。

ナポリターノ大統領は自由国民ハト派の動向を踏まえ、早期選挙の回避に向けて万全を尽くす方針を強調。
レッタ首相はイタリア・テレビのインタビューで、上下両院で「ねじれ」を生みやすい現行選挙法を改正しなければ政局が安定しないと指摘し、早期選挙を求める野党「五つ星運動」などをけん制した。【9月30日 毎日】
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ベルルスコーニ元首相が引き起こしたイタリア政局の混乱・空白が長引くようなことになると、立ち直りの兆しが見えてきた欧州経済全体の足を引っ張ることも懸念されています。

****伊国債利回り、急上昇=欧州株は全面安―政局混乱嫌気*****
週明け30日午前の欧州金融市場では、イタリアの政局混乱を嫌気して同国国債価格が急落(利回りは急上昇)し、10年物利回りは6月下旬以来約3カ月ぶりの高水準にまで跳ね上がった。

一方、株式市場ではイタリアを中心に全面安。ベルルスコーニ元首相の倒閣運動が、沈静化している欧州金融市場を再び動揺させる可能性もありそうだ。 【9月30日 時事】
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ベルルスコーニ元首相のなりふり構わぬ延命策も、イタリア・南欧的・・・と言えば、怒られるでしょうか。

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