孤帆の遠影碧空に尽き

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パレスチナ・ガザ地区  約50万人が「壊滅的な」食料不安に直面 商業的な食料搬入の実態

2024-07-09 22:47:27 | パレスチナ

(5月、ヨルダン川西岸のヘブロンの検問所で、ガザへの入境を待つ民間トラックの車列。食料を運んでいる【7月9日 Newsweek】)

【進まない停戦交渉 増えるガザ住民の犠牲】
「恒久的停戦」を求めるハマスと、「ハマス壊滅」を目指すイスラエル・ネタニヤフ政権。

両者の停戦交渉については、下記のような若干前進を期待させる情報もありますが、ハマスにしても、イスラエル・ネタニヤフ政権にしても、パレスチナ住民の生命や苦難にはほとんど関心もないようですから、早期に停戦が実現できる可能性は低いように思えます。

****ガザ和平交渉、ハマスが軟化か 「恒久的停戦」要求を一時棚上げ*****
パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエルの停戦交渉を巡り、ロイター通信は6日、ハマスが「恒久的な停戦」の条件を一時棚上げしたと報じた。

まず一時休戦を実現した上で、本格的な停戦交渉に入ることを認める内容で、態度を大きく軟化させた。ただ双方の間には依然として溝があり、合意に達するかは不透明だ。

協議されている停戦案には3段階あり、第1段階の6週間の休戦期間中に恒久的な停戦やイスラエル軍の完全撤収に向けた交渉を行う内容。

これに対し、ハマスはイスラエルが休戦後に戦闘を再開させることを警戒し、最初から恒久的な停戦を保証するよう主張。一方、「ハマス壊滅」を掲げるイスラエルは受け入れず、交渉は停滞していた。

だが、ロイター通信によると、ハマス幹部は6日、休戦が始まってから恒久的な停戦に向けた交渉を始めることを了承したと明らかにした。恒久的な停戦に至るかどうかが曖昧になったことで、イスラエルの交渉関係者からは、休戦が実現する「現実的な可能性」があるとの声も出ている。

ただ、米ニュースサイト「アクシオス」によると、ハマスは休戦後の交渉期間については期限を設けないよう仲介国に要求。仲介国が書面で、最終的に停戦合意に至ることを保証することも求めている。

これに対してイスラエルの対外諜報(ちょうほう)機関モサドのバルネア長官は5日、仲介国カタールでの協議で、仲介国の書面による保証に難色を示したとも報じられている。イスラエル当局者は、ハマスの要求が書面に含まれた場合、ハマスは交渉を無期限に引き延ばすことができると警戒している。(後略)【7月7日 毎日】
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こうした停戦がいつになるかわからない交渉がとぎれとぎれに続くなかで、
“ガザ中部、市民避難の学校に空爆 少なくとも16人死亡 イスラエル軍は攻撃の正当性主張”【7月7日 TBS NEWS DIG】
“ガザ住民に新たな避難命令 ハマス掃討作戦、各地で継続”【7月4日 AFP】
といった無慈悲な戦闘も続いています。

ハマスもイスラエルも交渉が進まない原因は相手側にあると主張し、妥協してまで交渉をまとめようという考えはありません。

****停戦交渉「振り出しに」=イスラエル軍、ガザ北部で攻勢―ハマス警告****
イスラム組織ハマスの最高指導者ハニヤ氏は8日、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ北部のガザ市で攻勢を強めていることを受け、「(停戦に向けた)交渉が振り出しに戻る」と警告した。ハニヤ氏は交渉仲介国に緊急で連絡を取ったという。ハマスが声明で発表した。

イスラエル軍は8日、ガザ市の複数地域に2日連続で退避勧告を出した。住民はロイター通信に、7日夜から8日早朝にかけて激しい爆撃があったと証言。軍は8日の声明で、ハマスが司令センターなどに利用していたとする学校や診療所を急襲したと発表した。【7月9日 時事】 
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基本的に主戦論を掲げるハマスも極右勢力依存のネタニヤフ政権も、戦闘が続いていてこそ、脅威となる「敵」が存在してこそ自らの存在意義があり、戦闘が終息するとその存在意義が危うくなりますので、両者に妥協・停戦を求めることに無理もあるのかも。

その代償を命で支払うのがガザ住民です。
戦闘開始から7日で9か月を迎えましたが、これまでに3万8153人が死亡し、うち7割が女性と子どもだということです。【7月8日 TBS NEWS DIGより】

ガザ地区住民のほとんどが避難生活を余儀なくされています。

****ガザ人口、推計210万人と発表 国連機関、9割が避難生活続ける****
国連人道問題調整室(OCHA)は3日、イスラエル軍による攻撃が続くパレスチナ自治区ガザの現在の人口は約210万人だとする推計を発表した。9割に当たる190万人が避難生活を続けている。戦闘状況に振り回され、複数回の避難を余儀なくされた人も多いと分析した。

昨年10月の戦闘開始時の人口は230万人弱だった。国境は厳しく管理されており、記録上はガザから脱出できた人は11万人にとどまる。

イスラエル軍により北部と南部が分断され、住民だけでなく国連関係者も行き来できない状況だとした。激しく破壊された北部には最大35万人が残っており、早急な支援が必要としている。【7月4日 共同】
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【約50万人が「壊滅的な」食料不安に直面】
空爆や戦闘による直接的脅威に加えて、真綿で首を締めるようにガザ住民を苦しめるのが食糧危機、飢餓の脅威です。

****ガザ、深刻な食料危機リスク続く 北部はやや改善=国連****
イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦争が続くパレスチナ自治区ガザでは支援へのアクセスが限られているため飢餓の危険が高い状況が続いているが、北部地域では支援物資が届き、予想された極度の食料危機の拡大は抑制されている。25日に発表された国連の「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」報告書で分かった。

最も深刻なレベルである「壊滅的な」食料不安に直面している人の数はガザ全体で49万5000人超と、3カ月前の前回更新時に予想された110万人は下回ったものの、なおガザ人口の20%を超えている。

「壊滅的な」食料不安は、家庭で食料が極度に不足し、小児の急性栄養失調、差し迫った飢餓の危険、死亡につながる状況。

IPCによると、調査対象となったガザの家計の半数以上が食料を買うために衣服を売らなければならず、3割がゴミを集めて売っていた。また、20%以上が何日も何も食べずに過ごしたと回答した。

3月と4月に行われた食料と栄養補給サービスの提供で、IPCが食料危機の可能性を予想していた北部では状況の深刻さが軽減されたとみられている。

しかし、最南部ラファ周辺で5月初めに始まったイスラエルによる攻撃や避難により、ここ数週間は再び状況が悪化しているという。【6月26日 ロイター】
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【「地獄の配送業」】
それにしても、ガザ住民210万人がどうやって食いつないでいるのか・・・食料はどのように運ばれているのか・・・よくわかりません。そのあたりの事情の一端を垣間見ることができるのが(長いですが)下記記事。

****銃弾・爆弾・賄賂の「地獄の配送業」...命がけでガザに食料運ぶ商人たち****
モハメドさんいわく、その仕事は「地獄の配送業」だ。

パレスチナ自治区ガザで輸入業を営むモハメドさんは、「運ぶたびに無理をしている」と、ロイターに語った。包囲されたガザ地区にトラック1台分の食料を運び込むたびに、急騰する輸送費や仲介業者への賄賂、略奪者に備えた警護費用として1万4000ドル(約225万円)以上も払わねばならない。昨年10月に戦争が始まるまでは、1500ドルから4000ドルで済んでいた。

「ほとんど稼ぎにならない。とはいえ、私も近所の人も食べ物が必要だ。ガザ地区全体が食べるものを必要としている」

モハメドさんは、気は進まないものの、乳製品や果物、鶏肉といった生鮮食品の一部については採算を取るために通常価格の10倍に値上げせざるを得ないという。だが、そうすれば飢えに苦しむ多くのガザ住民には手の届かない価格になってしまうことも分かっている。

ロイターは、モハメドさんの他、17人に話を聞いた。そのほとんどはガザ地区の輸入業者か支援関係者で、物資の供給状況について熟知している。飢餓のリスクが高まっているという支援機関の警告がある一方で、供給システムが混乱しているため、食料を輸入するには危険度もコストも高すぎる状況だという。

取材に応じた人の多くは、フルネームを伏せたいと話した。モハメドさんのような輸入業者は、本名で取材に応じれば、現地の犯罪組織からの報復やイスラエル軍のブラックリストに載る懸念があるという。

取材した人々によれば、食料の輸入に費やされる金額の大部分は、急騰する輸送費に使われる。
イスラエル国内の運転手は、委託費を最大で3倍に引き上げている。ガザに向かうトラックに対してイスラエル人の抗議者からの攻撃があるというのがその理由だ。

また、イスラエル占領下にあるヨルダン川西岸地区やケレム・シャローム検問所などの越境地点では、イスラエル兵士による検査を受けて入域許可を得るために何日も待機せざるをえないことも多く、それがさらに輸送コストを押し上げているという。

そして、物資を何とかガザに運び込んだとしても、旅路の最も危険な部分はまさにそこから始まる。
やはり輸入業者であるハムダさんは、野菜のピクルスや鶏肉、乳製品を西岸地区から輸入している。地元の犯罪組織に金を払って見逃してもらうか、武装ガードマンを独自に雇って貨物に張りつかせ、略奪者を撃退しているという。

「これに200ドルから800ドルかかる。1回分の貨物が最高で2万5000ドルになるから、金を払う意味はある」といハムダさん。「雇うのは友人か親戚だ。トラック1台あたりだいたい3─5人は必要になる」

一方、支援組織によると飢餓の状況はガザ北部で一段と厳しいが、民間セクターの物資はまったく搬入できない。取材に応じた輸入業者8人全員が、イスラエル軍がこの地区を封鎖しており、商業用の物資輸送を締め出していると指摘した。

支援関係者2人も、ガザ地区北部で手に入る食料は人道支援によるものだけで、商業用の物資は販売されていないことを確認した。ガザ市及びその郊外を主体とするガザ地区北部で販売用の食料を入手できるかどうか、イスラエル軍はコメントしなかった。

ガザ地区での人道支援の調整を監督するイスラエル軍は、住民全体に行き渡るだけの食料をイスラエルとエジプトから入れさせているとしている。ケレム・シャロームなどの越境地点を経由してガザ地区に運び込まれた後、支援機関による食料の輸送に「困難」が生じていることを軍は認めたが、どのような障害があるか具体的には明らかにしなかった。

広報担当者の1人はロイターに対し、ガザにおける支援物資の配布は「戦闘が進行中の地域なだけに、困難な作業」になっているとした上で、「イスラエルは、一般住民の利益のために人道支援物資のガザ搬入を認めると約束している。現地での作戦上の都合に配慮しつつ、搬入を促進している」と述べた。

イスラエル軍は、ガザを支配するイスラム組織ハマスが「人道目的のインフラを軍事目的に流用」していると主張するが、詳細は明らかにしていない。

ハマスは人道支援の流用を否定し、食料の流通に介入していないとしている。ハマスは、商業関係者が貨物を守るために武装ガードマンを雇っていることを確認しているが、こうした護衛とハマスとのつながりはないと述べている。

「私たちの最大の目標は、人々の苦悩を緩和することだ」と、ハマス行政部門広報官は話した。

「法と秩序の完全な崩壊」
昨年10月7日、ハマスがイスラエル南部の街を襲撃したことに端を発した今回の戦争では、イスラエル側が報復として空爆と地上侵攻を行い、ガザ地区に壊滅的な損害を与えた。230万人ものガザ住民のほとんどが住居を失い、彼らへの食料供給は、官僚主義と暴力のために八方塞がりとなっている。

食料を運び込むには主として2つの手段がある。1つは国際支援だ。主体は国連またはその関連機関によるコメや小麦粉、缶詰など保存食の供給で、戦時下での食料輸入の大半を占める。もう1つは民間による供給で、栄養不良を回避するために重要な生鮮食品が含まれる。
 
イスラエル軍は5月、イスラエル及びヨルダン川西岸地区からの商業的な食料供給の再開を認めた。エジプトからの入域経路として重要なガザ最南端ラファに対するイスラエル軍の攻撃により、国連による支援が大幅に減少したためだ。

ロイターはこうした商業的な食料供給の再開について既に報道した。その後、ガザの商業関係者がコスト高騰や混乱に悩まされ、ガザ地区内の市場や店舗向けに生鮮食品を輸入しようという試みが阻害されている状況についても、今回報道機関として初めて詳細に報じることになった。

食料トラックに対する攻撃は、5月7日にイスラエルがラファ攻撃を開始したことをきっかけで急増した。輸入業者や支援関係者によれば、この攻撃で、ラファでテント暮らしを送っていた150万人の避難民が散り散りになり、ガザ地区の混乱がさらに深まったという。

国連が提供する食料は、ケレム・シャロームや北部の越境地点を経由して今もガザに運び込まれている。だが、食料供給の調整に関与している支援関係者6人によれば、国連機関は武装ガードマンによる護衛の費用を出せないため、武装組織に対する脆弱性ははるかに高いという。ある関係者によれば、食料輸送トラックの約70%が攻撃を受けている。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長はロイターに対し、「トラック運転手は日常的に脅迫や襲撃を受けており、私たちは、法と秩序のほぼ完全な崩壊という事態に直面しているといえる」と語った。

「あまりにも多くのトラックが略奪された」
援助機関が困難に直面しているため、商業トラックがガザに運ぶ食料の割合は増え始めているものの、その流れは依然として不安定だと、関係者8人がロイターに語った。

彼らによると、ラファ攻撃が開始されて以来、民間ルートによる輸送は1日あたりトラック20台から100台で、1台あたり最大20トンの食料を運んでいるという。この間、イスラエル軍のデータによれば、1日平均150台の援助トラックと商業食料トラックが入国している。

これは、米国際開発庁が飢饉の脅威に対処するために必要とする1日600台のトラックにははるかに及ばない。
また、6人の援助関係者によれば、入ってくる市販の食料は高価で、援助国や援助団体により代金を支払い済みの国際援助の代わりにはならないという。

ノルウェー難民評議会のガザ担当のマジド・キシャウィ氏は、「いくつかの品目は、少なくとも15倍の値段になっている。基本的な品目は、援助や商用トラックの到着が激減したため、市場から姿を消した」と話した。

イスラエルのデモ隊
イスラエルやヨルダン川西岸で食料を積み、ガザの目的地まで届けるのは最大でも160キロの距離だが、その道のりは危険に満ちている。ガザに入る前から、トラブルに見舞われがちだという。
5月には、ガザに向かっていたトラックがイスラエルの抗議デモ隊に道を阻まれ、襲撃された。ドライバーにはイスラエル人のほか、イスラエルで働く許可を持つパレスチナ人だった。抗議者たちは、ハマスへの物資の供給を妨げる目的だと主張したが、一連の襲撃行動を受け、米政府はイスラエル人入植者らとつながりのあるグループに制裁を科した。

「特にイスラエルの運転手は、襲撃のせいで輸送料金を値上げした。1,000ドルの輸送費が3,000ドルになることもありる」と、サミールと名乗る輸送業者は話した。

ガザに入る前にトラックの大行列に引っ掛かり、長い待ち時間で輸入業者はトラック1台につき1日約200ドルから300ドルの負担を強いられている、と彼は付け加えた。
パレスチナや欧米の政府関係者を含む関係者18人によれば、この遅れは、ガザへの食料輸送が全体的に滞っていることが原因だという。

輸入業者や援助関係者によると、6月初旬の2週間、イスラエル軍は人道援助物資の滞留を解消するためとして、すべての商業物資のガザ入りを停止した。ある輸入業者は、6月9日にイスラエル軍のガザへの物資搬入調整官から、商業貨物は「追って通知があるまで保留」だとするテキストメッセージを受け取ったという。

6月15日に始まるイスラム教の祝祭日の連休の頃には、商業トラックの通行が再開したという。

賄賂と護衛
ようやくガザに搬入された食料は別のトラックに積み替えられ、地元のドライバーによって域内の小売商に届けられるという。

そこは、戦闘地域だ。
ラファ攻撃開始以前は比較的安全と思われていたラファや南部の街ハンユニスの道路は、今では攻撃されやすい場所として知られている。

援助関係者3人はトラックの略奪は日常茶飯事だと言い、輸入業者のハムダさんは、ラファ侵攻前に比べて、略奪されるトラックの数は約6倍になったと推定している。

ハムダさんによれば、肉や新鮮な果物といった希少な食品を積んだトラックが狙われることもある。他の多くの場合、食品に紛れこませてタバコの密輸を手配したギャングに襲われている。
あるガザの商人は、スイカをくりぬいた中にタバコを隠して密輸している写真を共有したが、ロイターはその真偽を確認できなかった。

イスラエルが継続中の軍事作戦も、食料輸送の妨げとなっている
ある貿易商は、トラックがガザ内にいる間、リアルタイムで連絡できる軍関係者がいないと話した。戦闘や砲撃によって道路が閉鎖されている場合、安全な代替手段を見つけることも、仲間のドライバーにその情報を伝えることもできないという。携帯電話は圏外になることが多いためだ。

3人の貿易商は、広いコネを持ちイスラエル軍とも定期的に連絡を取るガザの商人に先月からカネを払い、貨物の搬入と目的地までのトラックの保護を得るようになったという。

3人はこの商人の名前は明かさなかったが、商品を安全に目的地まで運ぶのに、このサービスだけで1万4000ドルもかかるという。

輸入業者の一人であるアブ・モハメッドさんは、積み荷をいくらで売ることができるか、再計算しなければならなかったと語った。

「輸送費を補うために値上げすれば、数百ドルの儲けかもしれない。もしかしたら、収支が合うかもしれない。でもすべてを失うリスクもある。もし荷物が襲われたら、私の払ったカネは無駄になってしまう」【7月9日 Newsweek】
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全体像はわかりませんが、国際人道支援以外に、こういう商業用の「地獄の配送業」などもあって、ガザ地区210万人の命がつながっているのでしょう。
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