孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南スーダンは前副大統領復帰で再スタート、スーダン・ダルフールは住民投票実施 ともに先行き不透明

2016-04-27 23:03:22 | スーダン

【4月27日 AFP】

南スーダン:前副大統領復帰で「世界で最も恐ろしい人権状況の一つ」改善への期待
和平合意が結ばれながらもキール大統領率いる政府軍とマシャール前副大統領率いる反政府勢力による内戦が停止せず、深刻な人道危機が続いている南スーダンですが、ようやく和平に向けた具体的動きが実現しました。

****南スーダン反政府勢力トップが副大統領復帰、和平へ期待高まる*****
南スーダンの反政府勢力を率いるリヤク・マシャール前副大統領が26日、首都ジュバに帰還し、副大統領の就任宣誓を行った。世界で最も新しい国家である南スーダンでは2年以上前から激しい内戦が続いており、マシャール氏は「団結」を呼び掛けた。
 
マシャール氏が国連機から降り立つと、白いハトが放たれ、閣僚や外交官らが出迎えた。同氏は「人々が一致団結し、傷を癒やしていけるよう、国民を一つにまとめていく必要がある」と語った。
 
その後直ちに、宿敵であるサルバ・キール大統領の官邸を訪れ、大統領の前で副大統領の就任宣誓を行った。キール氏は握手したマシャール氏を「弟」と呼び、統一政府の樹立に向けて「直ちに行動を起こす」と述べた。
 
この激しい内戦の終結を目指して昨年8月に結ばれた和平合意では、移行政府を打ち立て、2年半のうちに選挙を実現させるとしている。
 
この合意に基づいて定められたマシャール氏の帰還は当初18日に予定されていた。遅れが出たことで、敵対する双方を首都に立ち戻らせ、権力を分かち合っていくための交渉に何か月も費やしてきた国際社会からは怒りの声が上がっていた。
 
統一政府でキール大統領とマシャール氏が協力し合い、現在首都内の各キャンプにいる数千人規模の武装勢力同士に停戦を守らせるのは、さらに難題になると予想される。

双方は互いに深い疑念を抱いており、もはやキール氏にもマシャール氏にも従わなくなった民兵部隊らとの戦闘は続いている。
 
これまでの内戦では数万人が犠牲になり、200万人以上が家を追われている。民族間対立は再燃し、甚大な人権侵害が横行している。
 
マシャール氏の帰還により、山積する問題が早急に解決されるはずだという期待が大きく膨らんでいるものの、即効薬はないのが実情だ。【4月27日 AFP】
*********************

南スーダンの惨状はこれまでも何回か取り上げてきましたが、国連人権高等弁務官が「世界で最も恐ろしい人権状況の一つ」だ語る状況にあります。

****南スーダン、民兵に報酬として「女性のレイプ」許す 国連報告書****
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は11日、南スーダン軍が民兵への報酬として、女性へのレイプを許していると述べ、南スーダンを「世界で最も恐ろしい人権状況の一つ」と評した。
 OHCHRは、新たに発表した報告書で「評価チームが受け取った情報によると、(政府軍の)スーダン人民解放軍(SPLA)と合同で戦闘に参加している武装民兵たちは『できることは何をやってもよいし何を手に入れてもよい』という取り決めの下で、暴力行為を繰り返している」と述べた。

「それゆえ若者たちの多くが、報酬として畜牛を襲い、私有財産を盗み、女性や少女たちをレイプしたり拉致したりした」と報告書は付け加えた。
 
また、OHCHRは報告書の中で、反政府勢力を支持していると疑われた民間人らが、子どもたちを含めて、生きたまま火を付けられたり、コンテナの中で窒息死させられたり、木から吊るされたり、バラバラに切り刻まれたりしていると述べた。
 
ゼイド・ラアド・アル・フセイン国連人権高等弁務官は、残忍なレイプが「恐怖を与える道具、そして戦争の武器として」組織的に用いられていると指摘し、南スーダンは「世界で最も恐ろしい人権状況の一つ」だと述べた。【3月11日 AFP】
*******************

報告書によれば、北部の州では去年4月から9月までの間に、1300人以上の女性が被害に遭ったということです。
政府軍やこれに連携する武装グループが、支配下に置いた女性や少女を商品のように見なしているとも指摘しています。

内戦の背景には部族対立もあるとは言われていますが、新たな国家を目指して希望に燃えてスーダンからの分離独立を果たしてまだ5年も経過していないこの国で、なぜにかくも残虐な行為が横行するのか理解に苦しむものがあります。

相互不信の根深さ、これまでの経緯を考えると、先行きについてはあまり楽観的にもなれませんが、事態改善に向けて動き出すことを強く願います。(PKOに参加している日本自衛隊のためにも)

【「世界最悪の人道危機」スーダン・ダルフール:行政形態に関する住民投票は実施されたものの・・・・
一方、南スーダンを分離したスーダンでは、西部のダルフール地方で、これまた最悪の人道危機とも言われる紛争が続いていました。

一応、主要反政府勢力と政府との間の和平合意がなされて、メディアに取り上げられる機会は少なくなっていますが、未だ「安定」とは言い難い状況にあるようです。

****ダルフール地域****
2011年以降,スーダン政府とダルフール反政府勢力「解放と正義運動(LJM)」及び「正義平等運動(JEM)分派」との間で、和平合意(ダルフール和平のためのドーハ文書:DDPD)が締結されている。

2014年4月25日には、カタール政府の資金拠出を得て、「ダルフール内部対話(DIDC)」履行委員会の発足が合意され、同年8月25日には、正義平等運動スーダン派(JEM-Sudan)元戦闘員をスーダン国軍(SAF)及びスーダン警察へ統合する治安措置履行の開始式典が挙行された。

2015年1月,スーダン政府は、ダルフール開発に尽力してきた国連人道調整官の国外退去処分を決定し、和平プロセスへの影響が懸念されたが、2月23日には、LJMが政党化を発表し、続いて、3月27日には、スーダン解放運動モハンメディアン・イスマイール・バシャル派(SLM-MIB)が、スーダン解放運動ミンニ・ミナウィ派(SLM-MM)より分離し、スーダン政府との間で和平合意を締結する等、合意履行は遅延しつつも、和平へ向けた取り組みが継続されている。
  
しかしその一方で、2014年3月から、中央ダルフール州などのジャバルマッラ、北ダルフール州及び南ダルフール州で反政府勢力及びスーダン政府との衝突が多数発生し、国内避難民が引き続き発生するなど、人道情勢の回復は遅れている。

2015年9月におけるバシール大統領の2ヶ月の停戦令(12月31日にさらに1ヶ月延長)、スーダン革命前線(SRF)の6ヶ月の敵対行為の停止宣言などの理由によって、一時的にダルフールの戦闘は小康状態にあったものの、2016年1月に入り中央ダルフール州ジャバルマッラを中心に、政府軍とSLM-AWの戦闘が再開され、現在までに多くの国内避難民の発生が確認された。
  
このような状況のなか、政府は4月にダルフールの住民投票を実施する旨決定した。投票が行われた場合、ダルフールは現状の5州体制を維持するのか、それとも1つの「地域」としてまとまり、地域憲法を制定するのか、いずれかとなる。

この間、政府とJEMやSLM-MM、SLM-AW等のダルフール反政府勢力との和平交渉は引き続き行われているものの、未だ妥結してない。

スーダン国軍及びNISSの部隊である「Rapid Support Forces」による攻撃や空爆の活発化に加えて、ムーサ・ヒラール(国連の制裁対象者)による北ダルフール州都市の占拠等が確認されている。

なお、同地域では、UNAMIDが治安維持等のため駐留しているが、正体不明の武装勢力による同部隊への攻撃事案が発生しているほか、スーダン政府との間にコンテナの搬入、査証の発給、アクセス許可の問題を抱えている。
  
従来のスーダン政府と反政府勢力間における対立に加えて、ダルフール地域では概ね2013年以降、水や金等の資源や土地問題に起因する部族間対立が顕著となっており、同地方の不安定な治安情勢の大きな要因となっている。

ダルフールには、アフリカ系農耕民族とアラブ系遊牧民族の間の伝統的対立が存在しているが、この伝統的対立に加えて近年では、アフリカ系部族同士やアラブ系部族同士の対立も発生している。
  
2014年7月から8月にかけて、ダルフールの有力部族であり、アラブ系牧畜民であるリゼイカート族とマアーリア族が、土地・資源の支配権を巡って対立し、「Rapid Support Forces」、国境管理部隊(Border Guards)の関与も行われた結果、約320名の死者を出すなど、大規模な戦闘に発展した。

その後、各部族の散発的な戦闘が各地で断続的に発生したが、2015年2月から5月にかけては、リゼイカート族とマアーリア族が再度、土地の支配権を巡って対立し、百名を越える数十名の死傷者を出した。

こうした部族間紛争について、スーダン政府及びUNAMIDは 仲介による停戦乃至和解会合の開催等の調停合意を試みている。

また、長らく続いた紛争によってダルフールの経済は疲弊し、小型武器が蔓延した結果、一般犯罪の増加や武装ユニットによる犯罪行為が多数発生している。【日本外務省HP】
******************

いろんな組織名が出てきて非常にわかりにくい文章ですが、そのことが示すように、反政府勢力、アフリカ系農耕民族やアラブ系遊牧民族と言っても一枚岩ではなく、多くの組織・部族が自己利益のために暴力手段を厭わない行動を続けているところにダルフール紛争の解決の難しさがあるように思えます。

上記外務省HPでも触れられているダルフールにおける住民投票は今月11日からの3日間行われました。

****スーダン・ダルフール地方で住民投票が実施 「世界最悪の人道危機」に終止符は打たれるか****
北アフリカに位置するスーダン共和国のダルフール地方で、行政形態を決めるための住民投票が今月11日(月)から始まり、昨日13日(水)をもって終了した。

スーダンでは2003年から13年間続く紛争で、これまで30万人以上が犠牲になっている。
今回の投票は、スーダン政府とダルフール反政府勢力との間で締結されているドーハ和平合意の最終段階として行われる。

本投票では、北・西・中央・南・東ダルフールへと5つに分割されているダルフール地方を、現在の分割形態を残すかもしくは一つの地域へ統合するかに関して争われており、スーダン政府は、今回の投票が長年続く紛争の根本的問題を解決することに繋がっていくとの見解を示している。

その一方、反政府軍やその他の反対派は今回の投票は公平ではないと訴えており、投票のボイコットを呼び掛けている。

またアメリカ国務省は、「現在のルールや状況下で投票が行われれば、それはダルフールの人々の意志を確かに表したものだと考える事は出来ない。」と声明を出している。
 
世界最悪の人道危機
2003年2月、アラブ系中心の政府に不満を募らせたダルフール地方の黒人系住民が「スーダン解放軍」(Sudan Liberation Army)、「正義と平等運動」(Justice and Equality Movement)などの反政府勢力を組織して蜂起、紛争が勃発した。

その後、スーダン政府軍と政府軍を支援する民兵組織「ジャンジャウィード」(Janjaweed、"馬に乗った悪魔"を意味する)により黒人居住の村々が襲撃され、地元の農民や一般市民はジャンジャウィードの手による無差別殺戮・強制移住の犠牲となった。

正式な人数は把握されていないものの、これまでに30万人以上が死亡、250万人以上が避難民になり(今年だけでも10万人以上の避難民が生まれたと推定されている)、440万人が人道支援を必要としている。スーダン政府はジャンジャウィードとの繋がりを否定している。

なお、ダルフール紛争での無差別殺戮や強制移住は正式にジェノサイド(集団殺害)の認定は行われてはいないものの、元アメリカ国務長官のコリン・パウエル氏は当時これをジェノサイドと表現している(2004年)。(関連記事:イスラム国は「ジェノサイド(大量虐殺)」に関与、アメリカ政府が発言。注目すべき点は何か?)。

なおダルフール地方では1956年のスーダン独立以来紛争が頻発しており、1972年から1983年の11年間を除く期間に、200万人の死者、400万人の国内避難民、60万人の難民が発生したと考えられている。
 
国際指名手配中のバシール現大統領は2020年に引退?
今月上旬、1989年のクーデター以来スーダン大統領を務めるオマル・アル=バシール氏が、2020年をもってその職を辞する意向をBBCのインタビューで表した。

バシール大統領にはジェノサイドや戦争犯罪、人道に対する罪への関与の疑いで、国際刑事裁判所(International Criminal Court, ICC)から逮捕状が出されている。

バシール大統領は以前にも大統領職を辞する意向を示しその後撤回したことがあるため、今回の発言に対しても一部の専門家は疑問を呈している。

バシール大統領は昨年4月に行われた選挙で94パーセントの得票率を獲得し当選したが、同選挙は最大野党がボイコットした状態で行われていた。
 
なお、ダルフール地方が一つに統合されることは反政府軍が独立を求めるための追い風となるため、スーダン政府は同地方の統合に反対していると考えられている。

投票の結果は予定では来週発表される。今の状態から察するに、ダルフール地方は分割されたまま残る可能性が高いが、その場合は選挙の不公平さなどを理由とし、政府側・反対派との間での更なる紛争に繋がっていく懸念もある。

しかしながら、その反対に仮にダルフール地域が統一された場合を考えても、その後、独立の機運の高まりへと繋がり、政府側との間で更なる軋轢が生まれるかもしれない。

長年続く紛争の政治的解決の着地点がどこになるのか、今後の動向に注目したい。【4月15日投稿 原貫太氏 huffingtonpost】
*******************

結果は予想されていたように、スーダン政府が支持しているとされる現行の分離状態維持というものでした。しかも97%以上の高率で!

****スーダン・ダルフールの住民投票結果は現在の5州分割状態を支持****
選挙委員会は、スーダン西部・ダルフール地方における住民投票結果は現在の5州分割状態を支持したと発表しました。

住民投票の有権者の97%以上は、ダルフール地方で一つの地域を作るよりは、現在の5つの州に分割された状態て残るほうを選んだとのことです。

投票は、統一された地域の方がより多くの自治を可能にすると主張する主要な反政府勢力と反対グループによってボイコットされました。

今回住民投票は、30万人もの住民が死亡した13年に及ぶ紛争を終結させる和平プロセスの一部でした。

住民投票に先立って、スーダンのオマール・アル・バシル大統領(ダルフールに関する戦争犯罪容疑で国際刑事裁判所(ICC)によって指名手配れています)は、今回住民投票は自由で公明正大な投票であると語っています。

しかし、アメリカ政府は、「現在の規則と状況の下で」行われる住民投票は信用できないと警告していました。

投票は現在の不安定な状況下で行われ、250万人にのぼる避難民の多くは投票のための登録はなされませんでした。

選挙委員会によれば、321万人の有権者のうち308万人が今月始めの国民投票に参加したとのことです。

反政府勢力は、彼らが土地所有紛争に対する中央政府ハルツームの影響力とみなすものを終わらせるために、自治権の拡大を求めてきました。

中央政府が1994年にダルフール地方を3つの州に分割し、その後更に5つの州に分割したことが、中央政府ハルツームからのより強い支配を招き、2003年に始まった紛争を誘発することになったと、反政府勢力は考えています。

特派員によれば、南スーダンが2011年に成功したように、統一されたダルフールは独立を助長するための基盤を反政府勢力に与えることになると考えているとのことです。(後略)【4月23日 BBC】
***********************

上記は英語原文からの私の勝手な翻訳ですから、内容は不正確であることをお断りしておきます。(原文はhttp://www.bbc.com/news/world-africa-36120926で)

321万人の有権者のうち308万人が参加して(反政府勢力ボイコットにもかかわらず)、97%超の高率で政府支持案が賛同されるというのは、何の証拠もありませんが、全くの茶番であることが確信できます。
どこかの数字、あるいは全部の数字にウソ・操作があると思われます。あるいは、分離支持の者だけが選挙登録されたか。

反政府勢力のボイコット理由はよく知りません。アメリカ政府も言っているように公平性が期待できない選挙ということなのでしょう。(もし、負けそうだからボイコットするというのが本音の理由なら、民主主義の否定ですが)

今年1月以来、政府軍と一部反政府勢力との間の紛争が再発し、国連PKO担当官は安保理あての報告で、3月末日には10万人超の難民が生じていると報じているとの情報もあります。

今回住民投票を受けて紛争が本格的に再燃する事態とならないことを、これまた強く願います。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 東アフリカを中心に横行する... | トップ | ルワンダ  大虐殺から22年... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

スーダン」カテゴリの最新記事