孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

スーダン  武力衝突から1年 国連の仲介・支援活動の限界

2024-04-17 23:51:46 | スーダン

(スーダン北東部ポートスーダンで撮影に応じる正規軍兵士ら=2023年4月(AFP時事)【4月16日 時事】
正規軍兵士には見えませんが、双方のこうした「兵士」が戦っているのが実態でしょう)

【スーダン武力衝突1年 国民の6人にひとりが避難民となっており、パレスチナ・ガザの5倍】
「忘れられた紛争」スーダン内戦については、3月29日ブログ“スーダン内戦  「忘れられた紛争」で拡大する被害 「代理戦争」の側面も 武器としての性暴力”で取り上げました。

スーダンでは、昨年4月15日、国軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊」(RSF)の統合問題を背景に、軍が主導する統治評議会議長のトップ、ブルハン国軍最高司令官と、同副議長でRSF司令官のダガロ氏の権力闘争としての武力衝突が発生して、今もなお続いています。

「忘れられた・・・」というのは、“推計で約1万5000人が死亡し、家を追われた避難民の数はガザの5倍近い約830万人に上る。ところが米国やロシアといった大国の思惑があまり絡まないこともあり、国際社会の関心は低いままだ。”【4月8日 毎日】という事情。

そのスーダン内戦も1年が経過した節目ということで各メディアが取り上げています。

****スーダン武力衝突1年 戦闘続く “820万人が住む場所追われる”****
(中略)
戦闘は首都ハルツームやその周辺などで続いていて、国連は世界の紛争地のデータを集めているNGOの数字として、先月上旬までに1万4790人が死亡したとしていて、犠牲者はさらに多いおそれがあると指摘しています。

また、OCHA(国連人道問題調整事務所)によりますと、少なくとも820万人が住む場所を追われ、このうち170万人以上が国境を越えてエジプトやチャドなどの周辺国で避難生活を余儀なくされています。

日本を含む各国の大使館や国連機関などは安全を確保できないとしてハルツームから退避していて、現地の実情の把握も難しくなっています。

WFP(世界食糧計画)は、スーダン国内では1800万人が深刻な食料不安を抱え、5歳未満の子どもおよそ380万人が栄養失調に陥っているとしています。

一方で、パレスチナのガザ地区やウクライナの情勢などに国際社会の目が向けられるなか、スーダンへの支援にことし必要な27億ドルのうち、集まったのはわずか6%にとどまっていて、国連は人道状況がさらに悪化しかねないとして各国に支援を訴えています。

スーダン武力衝突 1年の経緯
スーダンでは2019年に独裁的な長期政権が崩壊したあと、民主化への模索が続いたものの、2021年に軍がクーデターを起こして実権を握りました。

その後、軍の傘下にある準軍事組織のRSFが軍の再編などに反発し、去年4月15日、首都ハルツームや国際空港などで激しい衝突が発生しました。

軍事衝突が拡大する中、各国が自国民を退避させる動きが広がります。

日本も自衛隊機を派遣し、4月24日には日本大使館やJICA(国際協力機構)、それに支援団体などの関係者やその家族あわせて45人が東部の都市ポートスーダンから自衛隊機でジブチに退避しました。

国連のほかエジプトやサウジアラビアなど周辺国が停戦や和平交渉を呼びかけていますが道筋はたっておらず、1年たったいまも現地では戦闘が続いています。

このため教育や医療など社会基盤の崩壊が進み、人道危機が深まっていて、国連はおよそ4800万の人口の2人に1人が人道支援を必要としているとしています。

ただ、多くの支援関係者が退避を余儀なくされたほか、治安の悪化で支援を届けるのは容易ではなく、周辺国に逃れた避難民の支援も含め厳しい状況が続いています。

支援活動のNPO「現地に目を向けて」
武力衝突から1年となるのにあわせ、現地で支援活動をしてきた日本の団体などがオンラインの報告会を開き、人道危機が深まる現地への支援と関心の継続を訴えました。

今月9日に行われた報道機関向けの報告会にはスーダンへの支援活動を続けてきたNPOの「ロシナンテス」と「難民を助ける会」の職員などが参加しました。

スーダンでは、いまも軍と準軍事組織の戦闘が続き、人道危機が深まる一方、治安への懸念などで支援活動は困難に直面しています。

このうち医療や教育の支援を行ってきたロシナンテスは遠隔の支援を続けスーダン北部の2600人以上が身を寄せる3つの避難所で衛生環境の改善を目指してトイレなどの整備を進めることにしています。

ロシナンテスの川原尚行理事長は「単独での活動は難しいですが、国連機関などとともに現地に戻れないか調整を続けています。気持ちとしては年内にでも戻りたいと思っていますが、治安状況によるので情報収集を続け、判断したいです」と話していました。

また、「難民を助ける会」の職員でウガンダから支援を続ける相波優太さんは、スーダンにとどまる現地スタッフを通じて避難民に食料配付などの支援を行っていることを紹介しました。ただ、スタッフ自身も何度も避難を余儀なくされ、厳しい状況に置かれていると話していました。

相波さんは「情勢が安定したら、感染症対策事業なども再開したいと思っています。メディアにも関心をもってもらい、現地で何が起きているのか少しでも多くの人に目を向けてもらいたいと思います」と訴えていました。【4月15日 NHK】
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避難民が820~830万人・・・パレスチナ・ガザの5倍、総人口(約4810万人)のおよそ6人に1人に当たります。

【欧米は20億ユーロの支援表明】
国際社会も“見捨てた”訳ではない・・・ということで、飢餓寸前に陥った数百万人れを支援する国際会議がパリで開催され、20億ユーロ(21億3000万ドル)の支援が表明されてはいます。

****スーダン内戦1年、欧米諸国が飢餓対策で20億ユーロ支援表明****
アフリカ北東部スーダンで政府軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の戦闘が始まって1年となる15日、飢餓寸前に陥った数百万人を支援する国際会議がパリで開かれ、フランスのマクロン大統領は支援総額が20億ユーロ(21億3000万ドル)を超える規模に上ることになったと表明した。

会議はフランスとドイツが共催し、両国はそれぞれ1億1000万ユーロと2億4400万ユーロの拠出を確約。欧州連合(EU)は3億5000万ユーロ、米国は1億4700万ドル、英国は1億1000万ドルを約束した。

これまでのスーダン向けの国際的な人道支援は、戦闘継続や紛争当事者側からのさまざまな制限に加え、パレスチナ自治区ガザやウクライナなど他の地域で起きている危機に対する支援の需要も生じている影響で、思うように進んでいない。

マクロン氏は会議の締めくくり演説で、紛争解決と紛争当事者への外国からの支援を停止するため国際協調の必要性を強調。「残念ながら、われわれが本日躍起になって集めた額は、戦争が始まって以来、複数の国が紛争当事者同士の殺し合いを手助けするためにかき集めた額よりも恐らく少ないだろう」と述べた。

国連の専門家らは、アラブ首長国連邦(UAE)がRSFに武器支援を実施したとの疑惑に信憑性があると述べている。一方で、複数の情報筋はスーダン軍がイランから武器を受け取ったと述べている。ただ、紛争当事者双方はそうした報道を否定している。

スーダンのインフラは機能不全に陥り、避難民は850万人を超えている。ドイツのベーアボック外相は「即座に協力し合えた場合にのみ、大規模な飢餓を回避できる」と発言するとともに、事態が最悪となる場合は今年中に100万人が餓死する恐れがあると付け加えた。

スーダン国内では2500万人が支援を必要としており、国連は今年27億ドルのスーダン向け支援を要請。また、数十万人の難民を受け入れている近隣諸国への支援として別途14億ドルの支援を求めている。【4月16日 ロイター】
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もちろん内戦状態を止めることが第一ですが、20億ユーロが実際に飢餓に直面している人々の救済に使われるなら大きな助けにはなるでしょう。ただ、(本当に拠出されたとしても)戦闘状態にあるなかで現実にどのように運用されるのか・・・。

【「世界がスーダンの人々を忘れようとしている」】
グテレス国連事務総長はスーダンでの民間人への無差別攻撃は「戦争犯罪や人道に対する犯罪」となり得ると警告、一方で、「世界がスーダンの人々を忘れようとしている」と危機感を表明しています。

****国連総長、無差別攻撃は「戦争犯罪」 スーダン戦闘1年****
スーダンで正規軍と準軍事組織の戦闘が始まって15日で1年となったのに合わせ、アントニオ・グテレス国連事務総長は同日、民間人への無差別攻撃は「戦争犯罪や人道に対する犯罪」となり得ると警告した。

スーダンでは昨年4月、正規軍と準軍事組織「即応支援部隊」の武力衝突が勃発。グテレス氏は報道陣の取材に応じ、これまでに1万人以上が死亡しており、1800万人が飢餓に直面しているとし、「これはもはや二つの勢力間の紛争にとどまらず、スーダンの人々に対する戦争となっている」と語った。

その上で、「民間人を無差別に攻撃して殺傷したり、恐怖に陥れたりすることは戦争犯罪や人道に対する犯罪に該当し得る」と強調。特に成人女性や少女に対する性暴力、援助物資を積んだ車両への攻撃を非難した。

また、北ダルフール州の州都エルファシェルでの情勢不安と人道状況の悪化に懸念を表明した。 【4月16日 AFP】******************

****スーダンへの関心低下 国連危機感、戦闘1年****
国連のグテレス事務総長は(中略)中東情勢などに各国や市民の関心が移り「世界がスーダンの人々を忘れようとしている」と危機感を表明した。

グテレス氏は、1800万人が飢餓に直面し、2500万人が支援を必要としていると指摘。「スーダンの人々が熱望する平和で安全な未来への呼びかけをやめるつもりはない」と述べ、双方に戦闘停止を求めた。【4月16日 共同】
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【昨年末に民主化を支援する国連スーダン統合移行支援ミッション(UNITAMS)の活動終了】
しかし、現実には「忘れようとしている」のは国連も同じ・・・と言ったら言い過ぎでしょうが、国連のスーダンへの関与も低下しています。
国連安保理は昨年末、民主化を支援する国連スーダン統合移行支援ミッション(UNITAMS)の活動終了を決めています。

これは国連と緊張状態にあるスーダン政府からの要請に基づくものであり、国連は、「国連がスーダンから撤退するというのは、事実誤認だ。人道・開発支援を提供する国連の国別チームはスーダンにとどまる」とはしていますが、危機が継続・深刻化するなかで関与の低下は否めません。

****安保理、国連スーダン・ミッションの終了を決議****
1日、国連安全保障理事会は、スーダンにおける国連ミッションの任務終了を決議した。理事会15カ国のうち14カ国が決議案に賛成、ロシアは棄権した。

同決議案は、国連スーダン統合移行支援ミッションに対し、12月4日から活動の縮小を開始し、その任務を他の国連機関に移管するよう求めるものだ。可能であれば、2月までに移管を完了させることを目標としている。その後、3月1日にミッションの閉鎖を開始する。(中略)

国連スーダン派遣団とスーダン当局との関係は、紛争勃発以来、緊張状態にある。5月、(スーダン政府軍を率いる)アル・ブルハン氏はアントニオ・グテーレス国連事務総長に書簡を送り、当時グテーレスのスーダン担当特別代表だったフォルカー・ペルテス氏の交代を要求した。

国連がペルテス氏を擁護すると、アル・ブルハン氏は彼を「ペルソナ・ノン・グラータ」に指定した。関係が悪化の一途をたどるなか、ペルテス特使は9月、スーダンの外から効果的に仕事を遂行することは不可能だとして辞任した。

それ以来、スーダンの国連ミッションは、ポートスーダンに駐在するクレメンタイン・ンクウェタ・サラミ副特別代表兼スーダン常駐・人道調整官の指導の下にある。

先月開かれた安全保障理事会で、スーダンのアルハリス・イドリス・モハメッド国連大使は、スーダンの国連ミッションの閉鎖を求める自国の決定を伝えた。スーダン外務省は、現在の状況を鑑みると、同ミッションはもはやスーダン国民と同国政府の望みに沿うものではない、と述べた。

米国のロバート・ウッド特別政治問題担当代表代理は、1日の安保理決議後、理事会に対し、同国は「ミッションの安全かつ秩序ある撤退」を可能にするため決議案に賛成票を投じたが、スーダンにおける国際的プレゼンスの低下は「残虐行為の加害者を増長させるだけであり、民間人に悲惨な結果をもたらす」と引き続き懸念していると述べた。

同氏は「UNITAMSの活動は、現在進行中の紛争、残虐行為、人権侵害や虐待、数千万人のスーダン人に対する悲惨な人道的状況、地域の安全と安定を脅かす波及リスクの増大を考慮すれば、全ての面で極めて重要である」と付け加えた。

11月30日、ステファン・デュジャリック国連報道官は次のように述べた。「国連がスーダンから撤退することはない。私たちは、戦争の終結、人道支援の促進、文民統治への移行の回復を目指し、全ての努力を継続する」

「政治ミッションがどうなっているかにかかわらず、スーダンには人道支援に携わる仲間が大勢残っており、人道支援を切実に必要としている人々を支援していることを忘れてはならない」。「そのため、国連がスーダンから撤退するというのは、事実誤認だ」【2023年12月2日 ARAB NEWS】
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国連スーダン統合移行支援ミッション(UNITAMS)は国連平和維持活動(PKO)ではなく、国連特別政治ミッション(Special Political Mission: SPM)です。

“PKOは軍事・警察の部隊派遣を伴い、時には国連憲章第7条に基づいた武力行使も用いて文民保護、治安回復、和平合意実施を行うが、SPMの主眼は紛争予防や和平合意の締結、選挙支援、平和構築など政治的プロセスに特化している”【2023年7月7日 中谷 純江氏(一橋大学講師 国際連合平和活動 安全調整担当官) IINA“国連特別政治ミッションはPKOの代替案となりうるのか――マリからのPKO撤収で問われるスーダンの教訓”】という目的の違いがあります。

現実にはPKOに比べ、SPMはコンパクトな活動になります。

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SPMはPKOより費用対効果の良いオプションと捉えられる傾向にある。またホスト国においては、国連憲章第7条の(武力行使)可能性が視野に入るPKOを避けてSPMという形でのみ国連ミッションの受け入れを容認する場合もある。

よって政治ミッションとは言っても武装解除(ネパール、コロンビア)や停戦監視(イエメン、リビア)などの軍事・警察機能を兼ね備えるSPMも増えてきた。またイラク、リビア、ソマリアなどの危険地帯で展開しているSPMでは安全確保のために警備部隊(Guard Unit)も展開している。

しかしながら、概してSPMの規模はPKOの10分の1程度で、アフガニスタン・UNAMAやイラク・UNAMIの規模で予算がつくミッションは稀である。”【同上】
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イメージ的には、国内の内戦状態・混乱にPKOで対処し、混乱が一定に収まった段階で、新たな統治体制確立をサポートするSMPに移行する・・・といったところでしょうか。

しかし、現実にはスーダン・ダルフールで活動してたPKOの国連・アフリカ連合合同ミッション(UNAMID)がはスーダン政府の要請に基づき撤収することになり、選挙や憲法改正などの権力移譲措置の実施、またダルフールのみならず南スーダンとの国境地域での紛争解決など広い委任権限がSPMの UNITAMSに与えられました。

当初から人員的にも非常に厳しいものがありました。
“縮小しながらもダルフールで文民保護にあたっていた(PKOの)UNAMID(2019年段階で要員7000人前後が13箇所に展開)の撤退と(SMPの)UNITAMSへの引き継ぎも定められた。この全国規模の新ミッションは首都ハルツーム以外では地方事務所7箇所で総勢250名というスリムな形で発足した。国連財政状況の厳しさから当初のミッションコンセプトを3分の1まで削らざるを得なかったからである。”

準軍事組織の存在は引継ぎ当時から懸念されてはいましたが、その懸念が現実となり政府軍と準軍事組織の間で紛争が勃発、SMPのUNITAMSは事態に対処することもかなわないなかで、スーダン政府の要請により撤退を余儀なくされた・・・というのが現実です。

SMPとしての国連スーダン統合移行支援ミッション(UNITAMS)の失敗と言うより、現実世界において国連が果たしうる役割の限界を示している・・・と言うべきでしょうか。

【リビアでも 国連リビア特別代表が辞意】
スーダン以上に最近情報が少ないのが東西勢力が分裂状態で争うリビアですが・・・

****国連リビア特別代表が辞意 和平見通せず、仲介断念****
東西分裂状態のリビアで和平協議を仲介する国連リビア支援団(UNSMIL)のバシリー事務総長特別代表は16日、ニューヨークの国連本部で記者団に対して辞意を表明した。「リビア指導者らの政治的意思の欠如」で協力が得られず、和平の進展が期待できないとして、仲介を断念したと説明した。後任は未定。

バシリー氏は2022年9月から同代表。内戦状態のリビアを外国勢力が代理戦争に利用していると指摘し「状況は悪化している」と訴えた。

リビアでは40年以上統治したカダフィ独裁政権が、11年に北大西洋条約機構(NATO)の軍事介入を受けて崩壊した。【4月17日 共同】
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よく知りませんが、国連リビア支援団(UNSMIL)もSMPのひとつではないでしょうか。(違うかも)
いずれにしても、そのリビア国内でプレゼンスを強化するための改革案が安保理で議論されましたが、ロシアが反対していました。【2021年10月1日 ARAB NEWS“国連リビア支援団をめぐる安保理の紛糾が続く”】
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