孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ヒズボラ  イスラエルとの戦闘が激化 全面戦争の危険性も 両者は互いに相手を威嚇

2024-06-23 23:36:29 | 中東情勢

(レバノン地域のヒズボラ兵。(ウィキメディア・コモンズ-タスニム通信社)【6月19日 VOI】)

【激しさを増すイスラエル・ヒズボラの戦闘 全面戦争の危険も】
パレスチナ・ガザ地区におけるハマスとイスラエルの衝突が始まった当初から注目されていたのは「(レバノンの)ヒズボラは参戦するのか?」ということ。

かつてイスラエルと戦って負けなかった実績があることが示すようにハマスを上回る戦闘力を有し、イスラエルと戦う意思があり(周辺アラブ諸国にはそのような考えはないでしょう)、実際に動ける(イスラエルと敵対するイラン本国が動く訳にはいきませんので)・・・・そうした条件を兼ね備える(イランの支援をうける)ヒズボラが参戦すればイスラエルは両面作戦を強いられ、紛争は新たな展開を迎えます。

もちろんヒズボラにとってもイスラエルとの本格的な戦闘となれば、組織の存亡がかかってきますので、現実問題としては軽々に動けるものでもありません。

イスラエルとヒズボラの間では小競り合いは続いていたものの、これまでのところ「ヒズボラの本格参戦はなさそうだ・・・」というのが大方の見方でした。

しかし、ここにきて両者の緊張が高まっています。

“ヒズボラの攻撃で兵士死亡=レバノン境界で高まる緊張―イスラエル”【6月6日 時事】
“イスラエル、ヒズボラ司令官殺害 昨年10月以降で最高位か―レバノン”【6月12日 時事】

****ヒズボラ、イスラエルに最多のロケット弾 幹部殺害で報復****
レバノンの親イラン武装組織ヒズボラは12日、イスラエル軍による空爆で現場司令官が死亡したことへの報復として、イスラエルをロケット弾で攻撃した。昨年10月に国境付近で交戦が始まって以降、1日として最多のロケット弾を発射した。

イスラエル軍は11日、レバノン南部の村を空爆し、ヒズボラの司令官と戦闘員3人が死亡した。関係筋によると、同司令官は昨年来の交戦で殺害された最高位の幹部だという。

ヒズボラは12日、イスラエルに対し少なくとも17の作戦を実施したと表明。このうち半数は司令官「暗殺」への報復だとした。イスラエルの軍事工場に誘導弾を発射したほか、軍の司令部や航空監視施設を攻撃したという。

治安筋によると、ヒズボラが12日に発射したロケット弾は約250発と、現在の衝突開始以降、1日として最多に上った。

ヒズボラ幹部は殺害された司令官の葬儀で、報復としてイスラエルに対する作戦の強度と威力、数を増やすと述べた。【6月13日 ロイター】
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【互いに相手を威嚇する両者 アメリカはイスラエル支援を明示】
イスラエル側も軍・政府がヒズボラの動きを警戒して、「これ以上やるなら、こっちも容赦しないぞ!」といった牽制する対応。

****ヒズボラの砲撃激化、衝突拡大も イスラエル軍が警告****
イスラエル軍は16日、レバノンの親イラン武装組織ヒズボラによる国境を越えた砲撃が激化しているとし、衝突拡大の恐れがあるとの見方を示した。

イスラエル軍のハガリ報道官は「ヒズボラの攻撃激化により、われわれはレバノンや地域全体に壊滅的な結果をもたらす可能性のある、より広範なエスカレーションの瀬戸際に向かっている」と述べた。(中略)

米仏はレバノン南部国境付近の敵対行為を巡り、交渉を通じた解決策に取り組んでいるが、ヒズボラはイスラエルがパレスチナ自治区ガザへの軍事攻撃を停止しない限り砲撃を続けるとしている。【6月17日 ロイター】
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****レバノンへの軍事計画承認 イスラエル軍発表、ヒズボラと全面衝突の懸念****
イスラエル軍は18日、隣国レバノンに対する軍事作戦計画が承認されたと発表した。レバノンと国境を接する北部の軍部隊の戦闘準備をさらに増強するとしている。イスラエルとレバノンの親イラン民兵組織「ヒズボラ」の交戦は最近激しさを増しており、全面衝突への懸念が高まっている。

イスラエルのカッツ外相は18日、「全面戦争になれば、ヒズボラは壊滅してレバノンは手痛い打撃を受けるだろう」と警告した。

一方、ヒズボラはレバノン国境から約25キロの距離にあるイスラエル第3の都市ハイファの港などを上空から偵察機で撮影したとする映像を公表した。ハイファ市街は攻撃可能だと示唆する狙いとみられ、市当局者が「市民に対する心理的なテロだ」と非難するなど駆け引きが活発化している。(中略)

一方、米国のホックスティーン特使は17日、イスラエル入りしてネタニヤフ首相と会談したのに続き、18日にはレバノンでミカティ暫定首相らと会談し、イスラエルとヒズボラの緊張緩和に努めた。

ヒズボラとイスラエルは2006年、約1カ月にわたる大規模交戦を展開し、レバノン・イスラエル両国で総勢1200人以上が死亡した。ヒズボラの戦闘能力はハマスを上回るといわれる。【6月19日 産経】
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****イスラエル外相、レバノンのヒズボラに「決断の時は間近だ」と警告…近く大規模攻撃か****
イスラエルのイスラエル・カッツ外相は18日、北部への攻撃を強めるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに対し、SNSで「ルールを変更する決断の時は間近だ」と述べ、大規模攻撃の決定が近付いていると警告した。

北部の国境地帯ではヒズボラとイスラエル軍との攻撃の応酬が激化している。カッツ氏は「全面戦争でヒズボラは壊滅し、レバノンは深刻な打撃を受ける」と訴えた。イスラエル軍は18日、「レバノン攻撃の作戦を承認し、現地部隊の増強継続を決めた」と明らかにした。(後略)【6月19日 読売】
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ヒズボラ側も、本音はともかく表向きの強気姿勢を崩していません。

****イスラエルに「逃げ場ない 」 ヒズボラ最高指導者が警告****
レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者ハッサン・ナスララ師は19日、イスラエルが対レバノン攻撃作戦を承認したのを受け、ヒズボラの対イスラエル攻撃を回避できる場所は「どこにもない」と警告した。昨年10月のパレスチナ自治区ガザ地区での戦闘勃発(ぼっぱつ)以来、イスラエルとヒズボラは毎日のように交戦しているが、本格的な戦闘に発展する恐れもある。

ナスララ師はビデオ演説で、ヒズボラの「ロケット弾攻撃」を逃れられる場所はイスラエルには「どこにもない」と述べた。

また、地中海東部の島国キプロスについても、イスラエル軍によるレバノン攻撃のため空港や基地が使用されるなら報復の対象になり得ると警告した。

キプロスには英軍基地が2か所ある。うち1か所は空軍基地。ただ、基地は英国の主権領域で、キプロス政府の管轄権は及ばない。

キプロスのニコス・フリストドゥリディス大統領は、同国はガザへの海路での人道支援で「国際社会に広く認知された」役割を果たしているとしながら、イスラエルとヒズボラとの間の戦闘への関与については否定した。 【6月20日 AFP】
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国連事務総長は事態の沈静化を求めています。

****国連事務総長が事態の沈静化訴え イスラエル軍と「ヒズボラ」の間で攻撃の応酬続く****
イスラエル軍と隣国レバノンのイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」との間で連日、攻撃の応酬が続く中、国連事務総長は21日、事態の沈静化を訴えました。

イスラエル軍とヒズボラの間では、連日、攻撃の応酬が続いていて、事態のさらなる悪化が懸念されています。こうした中、国連のグテーレス事務総長は21日、緊張が高まっていることに「深い懸念」を示した上で、事態の沈静化を訴えました。

国連・グテーレス事務総長「中東の紛争が拡大するリスクは現実のものであり、絶対に避けなければならない」(後略)【6月22日 日テレNEWS】
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ガザ情勢では弾薬供給停止措置などイスラエルとの溝も明らかになっているアメリカは、もしヒズボラとの全面戦争になればイスラエルを支援することを明らかにしています。もちろん「イスラエル頑張れ」という話ではなく、「アメリカがイスラエルを支援しないといった幻想を抱くな!」とヒズボラを牽制したものでしょう。

****イスラエル支援を確認=ヒズボラと全面戦争なら―米高官****
米CNNテレビは21日、米国とイスラエルの高官が20日に行った会談で、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとイスラエルが全面戦争に突入した場合、米国がイスラエルを支援することを確認したと報じた。

ただ、米国は地上部隊は派遣しないという。米国とイスラエルはパレスチナ自治区ガザで続くイスラム組織ハマスとの戦闘を巡り、関係がぎくしゃくしていた。

訪米したイスラエルのハネグビ国家安全保障顧問とデルメル戦略問題相は、ブリンケン米国務長官らと会談。ヒズボラへの対応を協議し、米国の支援方針が確認されたという。【6月22日 時事】 
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【鉄壁のイスラエル防空態勢が破られる危険も】
イスラエル世論はヒズボラとの本格戦闘に肯定的なようです。

****ヒズボラと本格戦闘、6割が支持 イスラエル国民、最新世論調査****
イスラエル軍とレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラとの交戦で、イスラエル国民の6割超がレバノン地上侵攻を含めた対ヒズボラ本格戦闘を支持していることが最新の世論調査で分かった。

背景にはヒズボラの攻撃強化による被害の拡大がある。軍幹部からも本格戦闘に前向きな発言が相次ぎ、緊張が高まっている。

ヒズボラは昨年10月のパレスチナ自治区ガザの戦闘開始後、パレスチナ人を支援するとして、イスラエル北部へロケット弾やミサイル、無人機で攻撃を開始した。その頻度は増し、イスラエルのシンクタンク「アルマ研究教育センター」によると、5月は計325回に達し月間最多だった。【6月12日 共同】
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ただイスラエルにとって気掛かりなことは、ヒズボラ指導者ナスララ師が“ヒズボラの「ロケット弾攻撃」を逃れられる場所はイスラエルには「どこにもない」”と言及しているように、イスラエル自慢のアイアンドームを中心とした防空態勢が破られる危険性があることです。

驚異的な精度でミサイル・ロケット弾をとらえるアイアンドームですが、数には限りがあります。一方、ヒズボラは推定15万発のミサイルやロケット弾を保有しているとされ、これを集中的に使用されるとアイアンドームでも防ぎきれません。

****ミサイル15万発を保有のヒズボラ、イスラエルの対空システム「アイアン・ドーム」破る可能性****
米CNNは20日、米高官の話として、イスラエルと、レバノンを拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラが全面的な紛争を始めた場合、ヒズボラの攻撃にイスラエル北部の防空網が対処しきれない可能性があると報じた。

ヒズボラは15万発とされるミサイルを持っており、イスラエルの対空防衛システム「アイアン・ドーム」も対応できない事態が懸念されているという。

CNNは、米高官3人が「深刻な懸念」を示しており、こうした懸念はイスラエル側に伝えられているとしている。イスラエル軍は18日、ヒズボラへの作戦を承認したが、米国は全面紛争を懸念しているようだ。

アイアン・ドームは、イスラエルが誇る世界で最も優れているとされる対空防御システムだ。ただ、ヒズボラがミサイルや無人機(ドローン)を大量に同時投入する「飽和攻撃」を展開した場合、迎撃しきれない恐れがある。山など高台から撃ち下ろす砲撃に対処できない弱点もある。

ヒズボラは、パレスチナ自治区ガザで昨年10月に始まった戦闘に呼応し、イスラエル北部にロケット砲など5000発以上を撃ち込み、29人の市民や兵士が死亡した。これに対し、イスラエル軍はヒズボラ拠点の空爆を続け、戦闘員346人を殺害したとしている。【6月21日 読売】
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“イスラエル側もこうした懸念を持っており、イスラム組織ハマスとの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザ周辺からイスラエル北部へ装備を移す方針を米政府に示した。”【6月21日 共同】

更に、ヒズボラ・イラン側は全面戦争になればミサイルだけでなく、人員面でも集中的に投入する構えを見せています。

****対イスラエルで戦闘員数千人ヒズボラ支援か****
AP通信は23日、親イラン武装組織関係者の話として、イスラエル軍とレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラが本格戦闘に入った場合、中東各地の親イラン組織の戦闘員数千人がレバノンに向かう準備ができていると伝えた。【6月23日 共同】
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実際にミサイル・人員が言われているように機能するのかはわかりませんが、いまはチキンレースでの段階で、互いに相手側を威嚇して有利にことを運ぼうとしています。

ただ「チキンレース」は不測の事態によって、“後に退けない”状況にもなる危険性があります。
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