孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イギリス総選挙  与党保守党の記録的大敗、野党労働党の地滑り的圧勝の予測 政権交代必至

2024-06-27 22:55:53 | 欧州情勢

(英二大政党、総選挙へ最後の党首討論 税金やブレグジットなど論点【6月27日 BBC】 リシ・スーナク首相(右)と最大野党・労働党党首のサー・キア・スターマー氏(左))

【選挙結果予測・今後への影響の評価が難しいフランス総選挙】
欧州ではイギリスは7月4日、フランスは6月30日に議会選挙が行われます。

ともに、政権与党が国民支持を失っている状況での血路を切り開くためのサプライズ解散・総選挙であり、スナク英首相、マクロン大統領のそうした思惑にも関わらず、与党が大敗して議会構成が劇的に変化することが予想されている共通点があります。

フランスの方は周知のように極右勢力・国民連合が世論調査で大きくリードしていますので、その流れで展開するとは思いますが、ただ、フランスの場合は1回目の投票で、過半数を得票し、かつ有権者の4分の1以上の票を獲得した候補者がいない場合は1週間後の7月7日に、上位2名及び1回目の投票で有権者の12.5%以上の票を獲得した候補者による決選投票が行われます。

前回の2022年の選挙では1回目の投票で当選した候補者は5人だけで、99%は決選投票で決まっています。【6月10日 NHKより】

そのため、どのような候補者が決選投票に進むのか、また、決選投票に向けて政党間の協力関係がどのようになされるのか、有権者の間で反極右の流れが起きるのか・・・・不確定要素が大きく、最終的な選挙結果を予測するのが極めて困難です。

一応の予測としては“RN(国民連合)は235─265議席を獲得し、現在の88から大きく躍進するものの、過半数の289は下回るとみられる。 一方、マクロン氏の中道連合は125─155議席と、現在の250から半減する可能性がある。左派政党は合わせて115─145議席となる見通し。”【6月11日 ロイター】とも。

さらに言えば、フランスの場合、政治をリードするのは議会・首相より大統領。特に国防・外交は大統領の職務。
そのため、今回選挙結果がストレートに今後の政策運営に反映するというよりは、次回大統領選挙に向けた戦いの性格も。

マクロン大統領としては、できれば今回選挙で反極右の流れをつくって勝利したいという思惑もあるでしょうが、最悪、今回選挙で負けて内政を担当する極右首相が誕生したとしても、その政権運営のミス・ほころびを批判する形で次期大統領選挙で極右ルペン大統領実現を阻止し、自身後継者勝利につなげたい・・・という考えでしょう。そのあたりがマクロン大統領の“賭け”でもあります。

【与党大敗・政権交代必至のイギリス総選挙】
選挙結果予測・今後への影響の評価が難しいフランスは後日に回して、今回は簡単なイギリスの話。
イギリスでは、与党・保守党の記録的大敗、野党労働党の地滑り的圧勝、政権交代がほぼ確実視されています。

****英総選挙、小選挙区制で劇的な政権交代 労働党が「歴史的な地滑り勝利」予想****
英総選挙は下院(定数650)の議員を選出し、原則として5年に1回実施される。1人1区の小選挙区制で、選挙区の数も650。投票年齢と被選挙年齢はともに18歳以上。投票には有権者登録が必要だ。(中略)

保守党と労働党が大半の小選挙区で事実上の一騎打ちとなるため、一方の政党が獲得議席数で圧倒的な差をつけて勝利し、劇的な政権交代につながることも少なくない。

英紙テレグラフの予想(6月27日現在)では、労働党は今回の総選挙で251議席を積み増し、過去最多の453議席を獲得する地滑り的勝利となる見通しだ。

保守党は258議席減の84議席に後退するとしている。また、中道政党の自由民主党が57議席増の68議席獲得で第3党に躍り出るとしている。【6月27日 産経】
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5月段階でも与党・保守党の支持率は低下しており、野党・労働党に大きなリードを許しており、総選挙を行えば政権交代必至と言われる状況でした。

****英総選挙、野党労働党のリードが18ポイントに拡大=支持率調査****
(5月)18日に公表されたオピニウム・リサーチの世論調査によると、年内に実施予定の総選挙で、スナク首相率いる与党・保守党に対する野党・労働党のリードが前回の16ポイントから18ポイントに拡大した。

労働党の予想得票率は43%、保守党は25%だった。

スナク氏と労働党のキア・スターマー党首は、ともに経済を選挙の争点にする傾向を強めており、調査では公共サービス改善や経済運営を含む経済問題全般で労働党が優位であることが浮き彫りとなった。(後略)【5月20日 ロイター】
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【スナク首相の“賭け”】
そうした状況でサプライズ解散に踏み切ったスナク首相の思惑は、これ以上待ってもいい材料は出てこない、それなら不法移民対策や経済安定化の実績が評価されることに一筋の望みを託して・・・というものでした。

****英首相がサプライズ解散…与党支持率18%、移民・経済対策の評価に望み託し「最大の賭け」****
英国で7月4日に総選挙が行われることが決まった。リシ・スナク首相(44)が22日、下院解散の意向を表明した。

与党・保守党の支持率が過去最低水準に低迷する中、不法移民対策や経済安定化の実績が評価されることに一筋の望みを託し、サプライズ解散に踏み切った。

国民生活不安
英下院は定数650で任期5年。前回選は2019年12月に行われており、来年1月までに総選挙を実施する必要があった。コロナ禍やロシアのウクライナ侵略がもたらした急激なインフレ(物価高)を背景に、どのように国民の生活不安を解消するかが争われる。

スナク氏は22日夕、首相官邸から姿を現し、雨に打たれながらカメラの前で声明を読み上げた。英国経済の混乱が収束に向かっているとの認識を示した上で「我々の前進をさらに進めるか、振り出しに戻るリスクを取るか」を国民に問う考えを示した。

スナク氏が実績の一つとして挙げたのがインフレ対策だ。スナク氏が首相に就任した22年10月時点では、物価上昇率が10%を超えていたが、英統計局が22日発表した4月の消費者物価指数は前年同月比2・3%の上昇にとどまった。スナク氏は「私の立てた計画がうまくいっている証拠だ」と強調した。

保守党支持層の関心が高い移民問題でも、4月に不法移民のルワンダ移送を可能にする法律を成立させ、7月の移送開始に向けて準備を進めている。野党・労働党は、大きな効果が期待できないとして移送に反対の立場だ。スナク氏は「労働党は計画もなければ大胆な行動も取れない」と批判した。

30ポイント差広がる
英調査会社ユーガブが今月上旬に実施した世論調査では、保守党の支持率は18%に落ち込み、労働党との差は30ポイントに広がっている。保守党は今月2日の地方選でも大敗を喫した。

スナク氏がこのタイミングで解散を決断したのは、政権交代が現実味を帯びる中で、少しでも保守党に追い風となるニュースがあるうちに選挙に臨みたい思惑がありそうだ。

経済の回復基調がいつまで続くかは分からず、移送計画が始まっても不法移民が減少する保証はない。英紙ザ・タイムズは「解散を遅らせれば、計画がうまくいっていないと労働党が主張するリスクがあった」と解説する。

労働党 意気込む
英国では10年5月から首相5人にまたがる保守党政権が続いており、与党に向ける国民の視線は厳しい。前回選で保守党を圧勝に導いたボリス・ジョンソン元首相は相次ぐ不祥事で求心力を失った。リズ・トラス前首相も経済政策で混乱を招き、1か月余りで辞任を余儀なくされた。

ブレグジットを支持した保守層は、移民の減少や雇用の改善など期待した効果を実感できず、不満を募らせている。保守層の支持離れが進む中、党内では強硬派が影響力を増し、スナク氏と対立した。総選挙前の党首交代を求める動きも表面化し、スナク氏は党内で孤立を深めていた。

厳しい選挙戦が予想される中での解散は「スナク氏にとって人生最大の賭け」(英紙デイリー・テレグラフ)と受け止められている。

労働党は政権奪取に向けて意気込んでいる。10年に退陣したゴードン・ブラウン氏以来となる労働党首相の座を目指すキア・スターマー党首(61)は22日の演説で、「混乱を終わらせよう」と政権交代を呼びかけた。

労働党は、スナク氏の経済政策を批判する一方、ウクライナ支援やパレスチナ問題では政府の立場と大きな相違はなく、外交・安全保障政策は主要な争点にはならないとみられている。【5月24日 読売】
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【スナク首相の足を引っ張る極右ポピュリスト・ファラージ氏と与党スキャンダル 首相自身の落選可能性も】
スナク首相にとって誤算は、ブレグジットの旗振り役でもあった極右ポピュリスト・ファラージ氏に保守票を奪われていることです。

****英総選挙まで2週間 反EU・反移民の右派政党が存在感 与党・保守党の支持層浸食****
7月4日投開票の英総選挙で、英国の欧州連合(EU)離脱「ブレグジット」を先導したナイジェル・ファラージ氏(60)率いる右派政党「リフォームUK」が与党・保守党の一部支持層を取り込んで予想外の存在感を示している。

同氏自身も当選する公算が大きいとされ、最大野党の労働党に大きなリードを許す保守党には大きな頭痛の種となりつつある。

ファラージ氏は1993年、EU創設を決めたマーストリヒト条約の調印に反発して英国独立党(UKIP)を結党し、欧州懐疑主義運動を展開してきた。99年〜2019年、欧州議会選に5期連続で当選。英下院選には7回出馬して全て落選したものの、反EU、反移民のポピュリスト(大衆迎合主義者)として政界に一定の影響力を持つ存在だ。

トランプ前米大統領の友人としても知られるファラージ氏は今月初旬、自身が幹部を務めるリフォームUKの党首に就いて総選挙に出馬すると突如表明した。

最大の出馬理由は、今回の総選挙で惨敗が予想される保守党の支持者のうち、同党の伝統的な穏健保守路線を物足りなく感じる層の取り込みが可能と計算したためとみられている。

ファラージ氏は17日、厳格な移民政策と減税を柱とする党の政権公約を発表。今回の選挙での自党の勝ち目は薄いと認めつつ、「伝統的な保守派有権者」を取り込んで保守党を解体に導くと主張した。また、29年に実施される次期総選挙に勝利して「首相になる」と表明した。

調査会社イプソスの世論調査(18日発表)では、ファラージ氏は出馬した南東部エセックス州の選挙区で52%の支持を集め、労働党の対立候補24%を引き離した。

また、調査会社ユーガブによれば「今日が投票日ならリフォームUKに投票する」との回答は、13日時点で19%と保守党18%を上回った。労働党は37%。ユーガブはリフォームUKが5議席を獲得すると予想する。

一方で別のユーガブの調査では、将来の「ファラージ首相」が「偉大な首相になる」との回答は9%にとどまり、「非常に悪い首相になる」は43%に上るなど、同氏が多くの有権者から嫌われている実情も判明した。

政権公約に関しては、一部の例外を除く移民受け入れの凍結や、フランスから小型ボートで来る不法移民を洋上で追い返すと主張。減税では個人と企業の大型減税を掲げつつ財源が明示されておらず、「非現実的」との指摘が出ている。【6月20日 産経】
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更に与党内部からスキャンダルが。

****英保守党また打撃 賭け疑惑で候補公認取り消し 首相警護官も逮捕****
英国のスナク首相(保守党)の側近らが7月4日の総選挙日程を事前に知りながら選挙日を予想する賭けをしていた問題で、保守党は6月25日、疑惑のある2人の候補者の公認を取り消した。疑惑は拡大して逮捕者まで出ており、投開票まで1週間となる中、支持率が低迷する保守党にさらなる打撃となっている。

英メディアによると、公認を取り消されたのはスナク氏の議会担当秘書官だったクレイグ・ウィリアムズ氏ら2人。スナク氏が5月22日に「7月の選挙実施」を発表する数日前、ウィリアムズ氏は「選挙は7月」との予想に100ポンド(約2万円)を賭けた。

当時、選挙は秋ごろとの見方が一般的だった。仮に内部情報を使って利益を得ようとした場合、刑事罰の対象となるため、政府の賭博規制当局が調査に乗り出した。

保守党関係者ではこの2人を含め、数人に対して当局が調査中という。このほか、スナク氏の警護担当だった警察官1人が同様の賭けをした疑いで警察に逮捕された。

英国ではスポーツや政治の結果を予想する賭けが合法化されている。BBC放送によると、人口約6700万人の英国で、約2250万人が月に1回は賭けをしているという。【6月26日 毎日】
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結果、“現職首相としては「史上初」(英紙デーリー・テレグラフ)となるスナク首相の落選の可能性も報じられている。”【6月21日 毎日】という厳しい状況です。

【争点とはなっていないEU復帰 労働党は現状受入れ】
8年前に大騒ぎして決めたEU離脱については、移民抑制にもつながらず、イギリス経済の重しになっている現実があり、国民の間にも「復帰した方が・・・」という声があります。

****イギリス人の過半数が「EU復帰」を望んでいる。最新調査で明らかに****
イギリス国民が、投票でEUからの離脱(ブレグジット)を決めてから8年。

新しい世論調査で、有権者の過半数が、次期政権に対してEU復帰を望んでいるという結果が示された。データ分析会社テクネが実施した調査で、EU復帰に賛成すると回答した人は43%で、非加盟を続けるを選んだ40%を上回った。

さらに、「わからない」と回答した18%を除くと、52%がEU復帰を支持し、48%が反対だった。

2016年の国民投票ではEU離脱派が52%で、とどまることを選んだのは48%だった。今回の調査はこの結果が完全に逆転した結果となった。

復帰を支持した人の内訳は、前回選挙で労働党に投票した人が79%で、自由民主党は62%、保守党は25%だった。
 イギリスでは、7月4日に総選挙が行われる。選挙でブレグジットはほとんど争点になっていないものの、今回の世論結果から、再加盟を望む人が多くいることが見て取れる。(後略)【6月24日 HUFFPOST】
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しかし、“選挙でブレグジットはほとんど争点になっていない”
政権復帰が予想される労働党はブレクジット(英のEU離脱)を既成事実として受け入れている立場で、EU復帰は掲げていません。

****右傾化するヨーロッパと左傾化するイギリス****
<ヨーロッパで極右が躍進するなかイギリスで左派政党が順調なのは、移民問題や反EUなどでイギリスの主要政党が大衆の懸念を足蹴にせずきちんと向き合ってきたから>

6月上旬に行われた欧州議会選挙の結果に、不可解な疑問が湧いた。ひょっとしてキア・スターマー党首率いるイギリスの労働党は、「極右」だったっけ?と。

なぜならフランスでもドイツでも、イタリア、オランダ、その他の国々でも、「ポピュリスト」や「ナショナリスト」、さらには「過激派」と呼ばれる政党が、主に2つの争点を掲げて欧州議会選で健闘したからだ。その2つとは、EU懐疑主義と増加する移民に対する懸念である。 

伝統的にイギリスの「左派政党」と見られてきた労働党は、これらの争点について攻撃的あるいは極端な主張を唱えているわけではないが、7月4日に行われる英総選挙に向けた彼らの立場は明白だ。イギリスのEU復帰を訴えてはいないし、将来的な復帰を掲げてもいない。

つまりブレクジット(英EU離脱)を既成事実として受け入れているということだ。 

移民についてはあらゆる層を歓迎するとも、より多くの移民を受け入れるべきだとも提唱していない。それどころか、保守党政権は移民の受け入れ抑制に失敗したとの批判を展開している。つまり労働党ならもっとうまく移民を抑制できるという言い分であり、両者のイデオロギーに大きな隔たりがあるわけではない。 

欧州の怒れる大衆は過激な政党頼み 今度のイギリスの総選挙は、右派である保守党が敗北すると予想され、限りなく「出来レース」に近いものになるはずだ。

ヨーロッパの多くが右傾化しているが、イギリスは左傾化しているように見えるかもしれない。 しかしイギリスが他と異なるのは、主要な政党が、有権者のEU嫌いや移民への懸念をきちんと受け止めている点だ。

一方、欧州大陸の多くの国では、EUを敵視し、移民の無制限な受け入れは望ましくないと考える有権者たちは、「ドイツのための選択肢(AfD)」や「イタリアの同胞」など多かれ少なかれ過激主義に染まっている政党にしか、政治的なよりどころを見いだすことができない。(後略)【6月26日 Newsweek】
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有権者のEU嫌いや移民への懸念を″きちんと受け止めている”と見るか、“迎合している”と見るかは立場によります。
また、“有権者のEU嫌い”も前出記事のように単純ではありません。
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