孤帆の遠影碧空に尽き

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アメリカ  増加するホームレス 65万人

2024-06-25 22:47:43 | アメリカ

(【2023年12月19日 Forbes】 ロサンゼルスの路上生活者)

アメリカの“面白ネタ”的な記事から。

****スーパーの看板内に1年住んでいた女性が発見される…PCもコーヒーマシンも完備、あだ名は「屋根忍者」****
米国ミシガン州のスーパーマーケットの看板の中で、34歳の女性が1年間暮らしていたことが明らかになった。

看板内には十分に横になって寝られるほどスペースがあったほか、女性は内部に机やパソコンなどを持ち込み、自宅のような環境を整えていた。「屋根忍者」というニックネームで地元住民の間で話題になっていたが、店に発見され、退去することとなった。

女性が住んでいたのは、米中部を中心に展開するスーパーマーケット・チェーン「ファミリー・フェアー」のミッドランドの店舗だ。食料品や日用品などを取りそろえる、地域密着型のチェーンとして知られる。

問題の看板は店舗屋上に設けられた、三角形の屋根状の大型のものだった。ニューヨーク・タイムズ紙によると、看板の内部の空間は、長さ約3〜4.5m、幅約1.5m、高さ約1.8〜2.4mほどだった。

女性は侵入方法を明かさなかったが、看板にはドアが付いているものの、屋上から看板内部に出入りできる構造だった模様だ。

デスクにコーヒーメーカーまで…自宅のように環境整備
看板の床には床材が敷かれ、小さなデスクとコーヒーメーカー、そしてコンピュータまで持ち込んでいたという。ほか、プリンター、食品棚、雑貨、衣類、寝具、ビタミン剤、観葉植物、ナイフなどが看板から発見された。まるで自分の家のように看板内をアレンジしていたようだ。

米フォックス・ニュースによると、発見されたきっかけは、4月23日の店の工事だった。工事作業員が店舗に赴いたところ、本来そこにあるはずのない延長コードが看板内へと延びていた。工事業者が店員に告げ、店が警察に通報したことで警官が現場に駆けつけたという。

全米日刊紙のUSAトゥデイは、警官と女性とのやりとりを公開している。警官が女性にドアを開けるよう求めたところ、女性はすぐに出る準備をすると答えた。

女性は衣服や持ち物まとめるため24時間が必要だと繰り返し訴えたが、警官は穏やかなトーンながら、それを拒否している。警官に促され、女性は看板から退去した。(中略)

アメリカで深刻化するホームレス問題
看板に1年間住み続けた例はめずらしいが、アメリカではホームレスが深刻な問題となっている。森の中や車の中、倉庫でテントを張って生活するケースも少なくない。

ミッドランドにある危機管理シェルター兼炊き出し所「オープン・ドア」のエグゼクティブ・ディレクターであるサラリン・テンプル氏は、彼女の組織に助けを求める人が増えていると、ニューヨーク・タイムズ紙に対し語っている。

昨年はランチを食べに来る人が毎日40人ほどだったが、今では2割増しの50人以上がやってくると話している。食べ物の工面に苦労し、およそ安全とは呼べない場所での生活を余儀なくされる人々が増えているようだ。

今回事件の起きた店舗があるミッドランドの人口は約4万2500人で、そのうち約9%が貧困状態にあるという。テンプル氏は、貧困ライン以下で生活することにより、人々は「透明人間」のように社会から見えにくい存在になってしまうと語る。

看板に住んだ「屋根忍者」の女性は、住居や食料を求めている人々がいることを思い出させる象徴的な事件となったようだ。【6月22日 Pen Online】
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「どうしてそんなことが可能だったのか?」と疑問に思うところもありますが、それはともかく、単なる“面白ネタ”ですまないのは、記事にもある増加するホームレスの問題です。

昨年1月時点の数字で、アメリカには65万人のホームレスがおり、その数は急増しているということで、大きな社会問題にもなっています。

****米国のホームレス数が65万人に急増、コロナ対策支援の終了が背景に****
米国内のホームレスの数は昨年1年間で12%増加しており、家賃の高騰とコロナ禍後の経済支援の打ち切りが、何千人ものアメリカ人に重大な影響を及ぼしたことが見えてきた。

米国住宅都市開発省(HUD)は現地時間12月15日、今年1月時点で約65万3000人がホームレス状態にあったと発表した。これは同省が2007年に実態調査を開始して以来、最も多い人数だ。

HUDによると、2023年には人口1万人あたりのホームレスの数は約20人だったが、その割合は有色人種に偏りが見られるという。

アジア系およびアジア系アメリカ人のホームレスの数は、この1年で40%急増し、増加率は最大となった。ヒスパニック系またはラテン系アメリカ人のホームレスの数は、2023年に前年から3万9000人以上増加した。HUDによると、2023年のホームレスの数は2022年より7万650人増加したとのこと。

「このデータは、人々がホームレス状態から速やかに脱するのを助け、そもそもホームレス状態になることを防ぐための、解決策や戦略に緊急な支援が必要であることを示している」と、HUDのマーシャ・ファッジ長官は15日の声明で述べた。

米国のホームレスの数は、数年に及んだ減少傾向が終わり、近年は増加が続いている。最近のホームレス人口の増加は、家賃滞納者への立ち退き猶予措置を含む、新型コロナウイルス対策の支援プログラムが2021年に終了したことが一因だと報告書は述べている。

HUDがホームレスの統計調査を開始した2007年から2010年かけて、米国のホームレスの数は63万7000人から55万54000人に減少していた。

この数値は、2020年に約58万人に増加し、さらに今年になって急増した。米国ホームレス問題連絡協議会(United States Interagency Council on Homelessness)のジェフ・オリヴェット代表は、ニューヨーク・タイムズ紙の取材に、「手頃な価格の住宅の不足と家賃の高騰がホームレス問題に最も大きな影響を与えている」と語った。

一方、全米ホームレス撲滅同盟(National Alliance to End Homelessness)のアン・オリバCEOは、公共ラジオ放送のNPRに対し、「米国の多くの都市における移民の増加が今年の数字に影響を与えた可能性が高い」と語った。各地のシェルターでは移民の数が増えているため、連邦政府に州の負担を軽減するよう求める声も多い。【2023年12月19日 Forbes】
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****アメリカでホームレスが急増。コロナ禍救済策の終了と家賃高騰が影響か。****
(中略)
モラトリアム終了と家賃高騰が影響
住居のない人が増加した要因は複数考えられますが、直接的な影響を与えたのは未払いによる立ち退きの一時停止措置(モラトリアム)の終了と、家賃の高騰です。

パンデミック中、家賃の支払いが難しい世帯が続出したことにより、低所得層の救済や公衆衛生上の観点から、政府が家賃を肩代わりすることで強制退去を防いでいたのがモラトリアム政策です。しかしこの措置も、度重なる延長を経て2021年10月3日に終了。家賃を払えない人々は住居を失いました。

さらにそこから、アメリカの賃貸住宅の募集家賃は上昇を続け、2022年8月には中央値が過去最高額の2054ドルに。それをピークに停滞し、直近ではやっと下がり始めたものの、ほんの4%ほどしか下がっていません。

Redfinのデータによるとパンデミック前の2019年11月に比べるとまだ約22%も高い水準です。家賃負担が増え赤字になった家計を、貯蓄を切り崩すことで支えている世帯も相当数あると見られ、耐えきれなくなる過程がジワジワと増えているのでしょう。

この悲惨な状況は、2024年に利下げがはじまることで好転するのでしょうか?【1月10日 OPEN HOUSE】
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当然ながら、一般の住民からすればホームレスは厄介者。
西部オレゴン州のグランツパス市は法令で、公園や路上で寝具類を使用して生活することを禁じ、違反者に罰金を科していますが、こうした強権的対応には批判も。

****米の路上生活、過去最多65万人 違法化、6月中にも司法判断****
米国で路上や車中で生活するホームレスが急増し、昨年は過去最多の約65万人を記録した。各地で対策が課題となる中、公共の場での寝泊まりを法令で禁止した西部州の市が批判を浴びる。連邦最高裁が今月中にも法令の合憲性を判断する見通しで、各自治体の対応に影響しそうだ。

ニューヨークのタイムズスクエアでも、路上やベンチで横になる人々が目立つ。うち1人の女性は「好んでホームレスになったわけじゃない」と語り、作家として活躍したが、母親が介護施設に入り金銭的に行き詰まったと訴えた。

住宅都市開発省によると、昨年1月時点でホームレス状態だった人は保護施設の一時滞在を含め、全米で約65万人に上った。統計開始の2007年以降、最多となった。

西部オレゴン州のグランツパス市は法令で、公園や路上で寝具類を使用して生活することを禁じ、違反者に罰金を科す。ホームレスらは、路上生活を強いられた人々を罰するのは「過度な刑罰を禁じる憲法修正第8条に抵触する」と市を提訴。連邦地裁・高裁はいずれも法令を違憲と判断した。【6月24日 共同】
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ホームレス増加をもたらしている家賃高騰は、円安関連ニュースでいつも話題になるアメリカの高金利政策とリンクしています。

****アメリカ経済 堅調の裏側で****
FRB(連邦準備制度理事会)が高い金利水準を維持する中でも、堅調な成長で強さを見せるアメリカ経済。一方で、いま社会問題となっているのがホームレスが増加です。その数は過去最多といわれています。

バイデン大統領は3月の一般教書演説で、家賃の引き下げに向けて手ごろな価格の住宅の建設を支援していく考えを強調しています。

しかし、金利が高いままでは住宅の購入がしづらく、結果として賃貸の需要が高まり、家賃の高騰を招く悪循環に陥っています。大統領選挙も控え、アメリカでは住宅の問題への関心がさらに高まりそうです。【4月24日 NHK】
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イエレン米財務長官は、手頃な価格の住宅供給を増やすため、今後3年間で1億ドルを追加拠出すると発表しましたが、3年間で160億円・・・年間では53億円・・・その程度の資金投入で事態は変わるでしょうか?

****米財務省、住宅供給に1億ドル追加拠出へ 価格高騰に対応****
イエレン米財務長官は24日、手頃な価格の住宅供給を増やすため、今後3年間で1億ドルを追加拠出すると発表した。バイデン政権は11月の大統領選を前に住宅価格高騰への対応を進めている。

中小企業や消費者、低価格住宅プロジェクトを支援するために財務省がコロナ禍前に行った地域金融機関への投資から受け取っている資金で賄われる。

財務省データによると、2021年の緊急資本投資プログラムでは、地域の貸し手に85億7000万ドル以上が注入され、その貸し手は433の手頃な価格の住宅プロジェクトに12億ドルを投資した。

イエレン氏は、住宅価格の上昇は緩やかになると予想していると述べたが、2000年から20年にかけて米人口の97%を占める郡では家賃の中央値が所得の中央値を上回っていると説明した。

「われわれは長期にわたって蓄積されてきた非常に深刻な住宅供給不足に直面している。この供給不足が住宅価格の高騰につながっている」とし、負担が最も大きいのは低所得世帯と黒人世帯だと述べた。【6月25日ロイター】
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ホームレスが多いのはニューヨークにカリフォルニア、更に一番多いのが首都ワシントン。

****米首都、ホームレス問題に悩む 「排除アート」も*****
米政治の中枢、首都ワシントンDCが深刻なホームレス問題に悩まされている。人口当たりの数が全米最悪とあって、市政府は2025年までに首都から路上生活者を無くすと宣言、シェルターの建設にも取り組む。

一方で、路上生活を困難にする「排除アート」の設置など手厳しい対応も見られる。首都の財政は厳しい状態で、対策の先行きは多難だ。

ワシントンの街並みを歩くと、重厚な連邦政府の建物の周囲や環状交差点の内側など各所に緑豊かな公園がある。ランチタイムには公園のベンチで食事を楽しむ人も多い。皮肉なことに、この充実したインフラがホームレスを引き寄せるという問題がある。

設置されたベンチの多くは、真ん中にひじ掛けがある。ホームレスが横になって居着かないための設計だ。同様にバス停のベンチにも隆起が設けられている。

10年間ワシントンでホームレス生活を経験したヘンリー・ジョンソンさんは「ホームセンターで買ったのこぎりで(ひじ掛けを)切断して横になる人もいる」という。

ジョージ・ワシントン大学病院からほど近いワシントン・サークルの路上ではホームレス数人がテント生活をしている。テントの裏にある塀にはとげ状の器具が設置されており、塀に寝そべることができない構造になっている。

生活費の高騰が重荷に

10万人ごとのホームレス人口は米住宅都市開発省(HUD)が発表した推計によると、22年のワシントンのホームレス人口は4410人。10万人当たりのホームレス人口ではワシントンは約656人と、ニューヨーク州(約377人)とカリフォルニア州(約439人)を上回り、全米最多となる。経済格差が深刻とされる首都ワシントンの実態を象徴する。

ワシントンのバウザー市長は21年7月、25年までにワシントンのホームレスをゼロにするための計画を発表した。バウザー氏は就任当初の15年からホームレス問題の解決を訴えてきた。16年1月〜22年1月にかけワシントンのホームレス人口は47%減った。

しかし、23年1月に実施された調査によると、ワシントンのホームレス人口は4922人と前年比11.6%の増加に転じた。ワシントンでホームレス人口が増えるのは5年ぶり。

フードスタンプ(食料配給券)の適用者拡充を含む新型コロナウイルス禍の特別措置が終了したほか、21年半ばから続く高インフレで生活必需品が値上がりし、貧困層の生活を圧迫している。

家賃の高騰もホームレス問題の深刻化を招く。例えば、バージニア州アーリントン、アレクサンドリアを含むワシントン近郊の家賃の消費者物価指数(CPI)を見ると、21年8月〜23年3月にかけ前月比で20カ月連続上昇した。

ワシントンでは22年、70人を超えるホームレスが死亡した。酩酊(めいてい)による事故、低体温症、殺人など死因は様々だった。

市政府は「アフォーダブル・ハウジング(安価な価格の住宅)」へ入居するための引換券を提供している。しかし、22年に死亡したホームレスのうち6割ほどは引換券を使って入居申請を終えて入居を待っていた。

「(ワシントンの)夏は美しいが、冬は耐えられない」と話すジョンソンさんは、5年ほど前に引換券を使ってアパートに入り、ホームレス生活から脱却した。「(膝に)関節炎があり、路上生活は大変だった」という。

22会計年度(21年10月〜22年9月)には3430件の入居引換券が配布された。2523件が入居申請に利用されたが、実際に入居できたのは23年5月時点で1696人。手続きを行うボランティアの体制が不十分なこともあり、申請から入居まで半年以上かかるケースもある。

政治に翻弄される
ホームレス問題の解決を掲げるバウザー市長も厳しい判断を迫られる。23年3月に家賃補助やホームレス支援の歳出を減らす24会計年度予算案を発表した際、「財源が減るなかで、固定費が増えている。(08年の)金融危機以来の厳しい状況だ」と述べた。

背景には在宅勤務が定着した影響で事業用不動産からの税収が低下していることがある。そのうえ、コロナ禍の特別措置として連邦政府から支給されていた追加予算も9月に期限を迎える。

ワシントンの予算案は連邦議会の可決を必要とする。現在、歳出削減を訴える共和党が議会下院を握っており、さらなる削減を求めかねない。

バイデン米大統領は22年12月、25年までに米国のホームレス人口を25%減らすと宣言し、「目標を達成するには地方自治体の協力が必要」と訴えた。しかし、米国の首都ワシントンのホームレス問題は解決からほど遠い。【2023年6月21日 日経】
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