孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

スーダン  戦闘が収まらず、日本を含めた各国の自国民保護も困難 ジブチで待機の状況

2023-04-21 23:30:39 | スーダン

(【4月21日 NHK】)

【エジプトやサウジなど周辺国、米中露など関係国の利害・思惑が錯綜】
自国民の保護などで日本を含めて各国が状況を見守っているスーダンの内戦は未だ収拾の目途がたっていません。

正規軍と(かつて西部ダルフールでの紛争で、黒人住民を虐殺したアラブ系民兵組織が前身とされる)民兵組織「即応支援部隊」(RSF)が主導権を争っているとのこと。

****スーダン 軍統治トップ2人の争い 長期化懸念****
アフリカ北東部スーダンで起きた軍事衝突は、正規軍と民兵組織「即応支援部隊」(RSF)が表明した19日夕からの停戦が守られず、20日も首都ハルツームなどで戦闘が続いた。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると15日の戦闘開始以来、300人近くが死亡、3千人以上が負傷したが、収束の兆しはみえない。

今回の衝突で正規軍とRSFのどちらが戦端を開いたかなど詳細は不明だ。ただ、スーダンでは2019年に約30年間に及んだバシル独裁政権が軍のクーデターで崩壊し、民政移管が進められていた。衝突の背景には、民政移管を巡る軍とRSFの主導権争いがあるとの見方が強まっている。

軍を主導するブルハン氏とRSFを率いるダガロ司令官はバシル政権打倒で共闘し、21年に民主派を排除して権力を掌握したクーデターでも協力した間柄だ。軍主導の統治組織でブルハン氏はトップ、ダガロ氏がナンバー2の座に就く。

だが、英BBC放送(電子版)によると、2人はその後対立。ブルハン氏がバシル政権を支えた人の復権を計画し、ダガロ氏は自らの権力縮小につながるとして不信感を募らせた。

軍と民主派は昨年12月、移行政権の樹立で大枠合意したが、4月1日に予定された合意文書への署名は実現しなかった。RSFの軍への統合を巡り、時期や権力移譲などの点で折り合えなかったもようだ。

ダガロ氏は金採掘などの事業を展開し、豊富な資金をもとに各地に総勢10万人の兵力を有するとされる。正規軍に劣らぬ勢力でサウジアラビアなどの要請でイエメン内戦にも派兵した。

RSFは衝突直前、各地の民兵を動員し軍の警戒心を招いたともされる。ダガロ氏はブルハン氏について「どこにいようと見つけて責任を取らせる」と非難しており、衝突は長期化することが懸念されている。
■スーダン 
人口約4690万人(2020年推定)。1980年代に南部のキリスト教徒主体の反政府勢力と内戦になり、南部は2011年に南スーダンとして独立した。

19年のクーデターで約30年続いたバシル独裁政権が崩壊。民政移管に向けた取り組みが続いていた。

今回、政府軍と衝突している民兵組織「即応支援部隊(RSF)」は03年から続く西部ダルフールでの紛争で、黒人住民を虐殺したアラブ系民兵組織が前身。

自衛隊は08〜11年にスーダンの国連平和維持活動(PKO)に司令部要員を派遣した。【4月20日 産経】
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RSFに関しては、国連が「世界最悪の人道危機」と呼んだダルフールでの黒人住民虐殺を行ったアラブ系民兵組織が前身ということで、非常にイメージが悪いですが、現在の組織の性格などは知りません。

スーダン情勢と周辺国・関係国の関りについては、下記のように各国の思惑が交錯しています。
エジプトは軍を支援し、サウジ・UAEはRSFに肩入れしているとも。
また、ロシア民間軍事会社ワグネルがリビアやシリアを経由し、RSFに武器を供給しているとの情報もあるようです。

****軍事衝突のスーダン 米中露の利害錯綜****
正規軍と準軍事組織の軍事衝突が起きたアフリカ北東部スーダンは、地下資源が豊富な戦略上の要衝だ。周辺国のほか米中露3カ国も浸透を図ってきたが利害は錯綜(さくそう)しており、混迷が深まる一因になりかねない。

割れる中東の大国
スーダンでは15日、ブルハン氏が主導する軍と、ダガロ司令官率いる準軍事組織「即応支援部隊」(RSF)の戦闘が始まった。

軍を支援するのはシーシー大統領が統治する北隣のエジプトだ。シーシー氏自身も軍出身で、エジプト、スーダン両軍はしばしば演習を行うなど関係が深い。

ロイター通信は20日、スーダンにいたエジプト軍兵士約180人が空路で本国に脱出し、RSFが拘束した兵士27人の身柄を在スーダンのエジプト大使館に引き渡したと報じた。エジプト軍が水面下で活動していた可能性をうかがわせる。

これに対し、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)はRSFに肩入れしているようだ。両国が介入したイエメン内戦にRSFは兵を送って支援し、関係を深めた。

スーダンでは、バシル独裁政権が支配した約30年間でイスラム色が強まり、軍関係者に、その傾向が残っているとされる。一方のRSFは、イスラム過激派を敵視するサウジなどと立場が近いという側面がある。

親米のサウジとエジプトはともに反米のイランと関係改善を図るなど、中東で広がる融和の機運を担ってきたが、スーダンでは利害が割れたとの見方が多い。

露の侵略の資金源か
スーダンをめぐっては大国の思惑も絡み合い、過去に米露が火花を散らした経緯もある。

米国は1993年、バシル政権が国際テロ組織アルカーイダのビンラーディン容疑者らをかくまったとして、テロ支援国家に指定した。この機に乗じて政権と蜜月関係を築いたのがロシアだった。

しかし、軍とRSFによる2019年のクーデターでバシル政権が崩壊し、情勢が一変。米国は20年、スーダンに対するテロ支援国指定を解除し、関係改善を模索していた。

一方のロシアは巻き返しに躍起だ。RSFと親密な関係を築き、昨年2月にはダガロ氏が訪露したほか、今年2月にはスーダンの紅海沿岸に海軍基地を建設する合意を結んだ。紅海はインド洋と地中海を結ぶ海上輸送の大動脈で、米中も沿岸のジブチに基地を有する。アフリカへの影響力強化を目指すロシアの意欲が透けてみえる。

米CNNテレビは20日、露民間軍事会社ワグネルがリビアやシリアを経由し、RSFに武器を供給していると報じた。ワグネルはRSFが採掘利権を握る金を獲得し、ウクライナ侵略の資金を捻出しているともささやかれている。

中国も権益死守に腐心
アフリカに巨額の投資を行ってきた中国はスーダンとも関係を深めてきたが、最近は意欲が衰えていたといわれる。
香港の英字紙、サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)は18日付で、11年に南部スーダンが「南スーダン」として独立したことに伴い、油田地帯の採掘権も移ったことが主な理由だと指摘した。

同紙は中国・アフリカ関係に詳しい米ジョージ・ワシントン大のデビッド・シン教授が「中国はビジネスと商圏を守る上で(軍事衝突を)懸念している」と述べたとし、アフリカの紛争の調停役を務めようと計画していた中国にとり、「スーダン情勢は明らかに(状況を)複雑にした」との見方を示したと伝えた。【4月21日 産経】
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【3回目の停戦も機能していない様子で、自国民退避のための活動は困難な状況 日本を含め各国がジブチで待機】
日本との関りでは、在留邦人は約60名と言われていますが、進出企業は4社のみ。
日本とアフリカの関係の“薄さ”、アフリカ外交の弱さを反映しているとも言えます。(今回の戦乱からの避難ということでは、好都合ではありますが)

在留邦人保護の活動拠点となるのが、自衛隊がソマリア海賊対応以来、唯一の海外拠点を持つジブチです。

****戦闘激化のスーダン 進出の日本企業は4社 「影響は限定的」****
戦闘が激化しているアフリカ北東部スーダンの在留邦人を退避させるため、自衛隊機1機が21日、周辺国のジブチに向けて航空自衛隊小牧基地(愛知県)を出発した。ジブチに到着後、スーダンの情勢を見極めて現地入りのタイミングなどを判断する。

帝国データバンクによると、スーダンに進出している日本企業は2023年3月末時点で4社。スーダンと直接、輸出入をしている企業は21年時点で6社ある。帝国データバンクは「日本とスーダンの貿易規模は元々大きくなく、現地にいる邦人の数も限られている。情勢不安による日本への影響は限定的だろう」としている。

スーダンには医療サービスや、資源開発支援の日本企業が進出。日本からの輸出は自動車など機械類が中心となっており、スーダンからの輸入はガムの原料となるアラビアガムなど天然資源が多いという。【加藤美穂子】
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海外に滞在している日本人の自衛隊機による輸送が行われれば6回目となります。最近ではアフガニスタン・カブールで邦人1名と現地住民を運んだ事例が。

日本を含めて各国とも自国民保護に向けて動いてはいますが、現地の戦闘が収まらないとスーダンに入ることもできません。
しかし、3回目の停戦合意も、これまで同様に機能していないようです。

ジブチには、日本の自衛隊の他、アメリカ・中国も拠点を構えていますので、各国がジブチで待機している状況です。

****スーダンの激しい戦闘続く、停戦設定時刻を過ぎても首都ハルツームなどで激しい銃撃音****
アフリカ北東部スーダンでは21日も、国軍と準軍事組織「即応支援部隊」(RSF)が激しい戦闘を続けた。

RSFは21日、イスラム教のラマダン(断食月)明けの祝祭に合わせた3日間の停戦に応じるとSNSで表明したが、開始時刻として一方的に設定した同日午前6時を過ぎても、首都ハルツームなどで激しい銃撃音が確認された。

国軍側は国連による停戦の呼びかけに反応していなかった。国軍トップのアブドルファタハ・ブルハン主権評議会議長は21日、戦闘が始まった15日以降初めて国民向けに演説。「我々は試練を克服し、国の安全と団結を守る」とRSFの壊滅を目指す姿勢を強調した。

各国でも自国民らの国外退避の準備を進めている。米国防総省は20日、米大使館員の退避に備え、近隣国に部隊を追加配備すると明らかにした。韓国の尹錫悦ユンソンニョル大統領も21日、軍輸送機派遣などの対策を迅速に進めるよう指示した。

世界保健機関(WHO)は21日、戦闘による死者は413人、負傷者は3551人に上ると明らかにした。【4月21日 読売】
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米紙ニューヨーク・タイムズは、米軍関係者の話として、最初の数百人の米兵がジブチに到着し始めたと報じています。

韓国の輸送機もジブチの米軍基地に待機しています。

日本では午後2時45分ごろ、C-130輸送機が、愛知・小牧基地からジブチ共和国に向け出発。
浜田防衛相はさらに、別の輸送機や空中給油輸送機も、準備が整い次第出発させると明らかにしています。

ただ、前述のように戦闘が収まらない状況では救出も困難です。
「アメリカが動く時に彼らがどう動くか、どう判断するかを見て、場合によっては自衛隊で足りない部分はアメリカにお願いすることも必要に」(軍事ジャーナリスト・黒井文太郎氏)【4月21日 テレ朝news】と、米軍の動向を見ながら、協調して・・・ということになるのでしょう。

****スーダン内戦激化…自衛隊が輸送機派遣へ 日本人60人救出どうなる? 風間解説委員「陸路の脱出はなかなか厳しい」****
武力衝突が起き、内戦状態にあるスーダン。首都ハルツームでは、軍と民兵組織の激しい戦闘が続いています。邦人の退避を政府が表明しましたが、どの国もスーダンに入ることすらできていないといいます。(中略)

風間解説委員「陸路の脱出はなかなか厳しい」
風間晋 フジテレビ解説委員:
とにかく今は危険すぎるということがあるんですけども、各国がスーダン国内に入るときは救出するために入るわけで、救出できるという見込みがないと入れないし入らないことなんだと思います。

陸路と空路という問題もありますが、陸路の場合は、そこそこ距離があるわけです。63人を何台かの車に分けて走らせる。その間も護衛しなくてはいけない。というようなことを考えると、陸路の脱出はなかなか厳しいものがあると思われます。

あともうひとつ言われているのは、首都の国際空港というのは、かなり壊されていて、使い物にならないんじゃないかっていうのは、目で見ても分かるんですけど、一方で首都の北方20㎞あまり行ったところに、政府の空軍基地があると。

その空軍基地から、実は今週エジプト軍機が離陸しているという情報があるんですね。
だから空軍基地の方は、もしかしたら国軍がとにかく全力で確保をしている可能性が考えられるので、だからまだ使える可能性が考えられるので、やはりそういうところを使わせてもらう。

でも現実問題として日本は単独で話をまとめる力はありません。
やはりそこは、アメリカだったり、ヨーロッパの国々がまとまって交渉したりとか、日本はその交渉に乗っからせてもらうということだと思うんですよね。

でもそのためには、やはり交渉の過程で日本もいなきゃいけない、いまどういうことになっているという情報をもらいながら、どうするっていう作戦を考えなきゃいけない。

そのためには、ジブチが今各国の集まっている場所ですから、ジブチにとにかく、自衛隊も早く入って、そういう話し合いとか、情報の中に自分たちもいなきゃいけないというのが今の現状だと思います。【4月21日 FNNプライムオンライン】
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仮に空軍基地が使える状況になったとしても、現地の日本人が自力で空港までたどり着けない可能性もある・・・ということで、自衛隊機が発着する空港まで、自衛隊の車両で運ぶ案も浮上しています。

地雷などが爆発しても走り続けられるブッシュマスターと呼ばれる輸送防護車などを派遣し、陸上輸送することが検討されています。

しかし、地雷には耐えても、攻撃を受けた場合どうするのか。安全の問題と、自衛隊の“応戦”をどうするのかという問題にもなります。

「(ブッシュマスターが)敵として見られる可能性がある。だから、攻撃を受ける可能性がある。ブッシュマスターは基本的には銃弾が飛んでいない所で使うのが前提」(軍事ジャーナリスト・黒井文太郎氏)【4月21日 テレ朝news】 これまでも、アメリカ外交官の車列が銃撃された事実もあります。

目下の在留邦人退避の問題の他に、スーダン自身の問題として、昨年12月5日に、10月にクーデターを主導したスーダンの軍事政権トップのブルハン統治評議会議長が民政移管に向けた枠組みで主要な民主派勢力と合意したと発表していましたが、この民政移管がどうなるのか? という問題があります。

ただ、その件は現在の混乱が収まらないことにはどうにもなりません。どういう結果になったとしても、軍事政権が残存し、民政移管は遠のくことが懸念されます。

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