孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  少数民族武装勢力と国軍の戦闘のなかで、イスラム教徒ロヒンギャを取り巻く環境が悪化

2024-06-24 21:52:29 | ミャンマー

(【6月3日 時事】)

【「アラカン軍」がロヒンギャの町を放火?】
少数民族武装勢力と国軍の戦闘が続くミャンマーでは、イスラム教少数民族ロヒンギャがともに仏教徒である少数民族武装勢力・国軍双方から迫害・利用される状況になっていることは、4月15日ブログ“ミャンマー国軍  「アラカン軍」との戦いにロヒンギャを「盾」として利用 両者の対立を利用”でも取り上げました。

********************
現在の“主戦場”のひとつとなっているのが西部ラカイン州における少数民族武装勢力「アラカン軍」と国軍の戦いです。

アラカン軍(AA)は、(ミャンマー全体では少数民族ですが)ラカイン州海岸部で多数派である仏教徒ラカイン族(アラカン族)の主権回復を闘争目的とする武装組織です。

そのラカイン州は、イスラム教徒の少数民族ロヒンギャが多く暮らす地域で、国軍とその協力者により民族浄化的な迫害が行われる地域でもあります。

ラカイン族(アラカン族)は多数派ビルマ族からは少数派として差別を受ける一方で、更に劣後する状況にあるイスラム教徒ロヒンギャに対してはこれを差別する側でもあります。ラカイン族とロヒンギャの間には対立・憎しみがあります。

こうした差別される者が、更に弱い立場の者を差別する差別の重層構造は珍しくはありませんが、ラカイン州の状況もそのひとつです。

戦闘で劣勢にたたされ、兵員不足を補うために徴兵実施に踏み出した国軍は、この差別の構造を利用して、無国籍状態に置かれているロヒンギャを兵員に取り込み、アラカン軍との戦いにおける使い捨ての盾のように利用しているとの情報があります。【4月15日ブログ】
***********************

その西部ラカイン州で、国軍と戦う「アラカン軍(AA)」がロヒンギャが暮らすバングラデシュとの国境近くの町に火を放ち、最大で20万人が家を追われる事態となっているという報道が先月ありました。

****「町が丸ごと燃えている」、武装勢力の放火で家追われるロヒンギャ ミャンマー内戦の前線地域****
ミャンマー西部で国軍と敵対する少数民族の武装勢力「アラカン軍(AA)」がバングラデシュとの国境近くの町に火を放ち、先週末以降最大で20万人が家を追われる事態となっている。

これらの住民は国内で長く迫害されてきたイスラム系少数民族のロヒンギャで、火の手を逃れ、水田に隠れて何日も過ごすことを余儀なくされている。

(中略)軍事政権と戦うAAは西部ラカイン州で、ロヒンギャが多く暮らすバングラデシュ国境近くの町ブティダウンを制圧したと宣言。活動家や住民の親族の報告によると、AAの兵士らは町内のロヒンギャの家屋に火を放ち、略奪を行っているという。家を失った住民らは電話を没収され、国外の家族と連絡を取ろうとすれば殺すと脅されているという。

同州では軍事政権により電話やインターネットによる通信が停止されており、外部から現地住民に連絡を取ることはほぼ不可能。ジャーナリストや国際社会の監視団体も現地で何が起きているのかを正確に把握することはほとんどできなくなっている。

ロヒンギャの人権団体などによれば、AAによる放火を受けて約20万人が自宅からの避難を余儀なくされ、女性や子どもを含む多くの人々は水田に身を潜めて数夜を過ごしている。食料や医薬品もない状況で、未確認ながら負傷者がいるとの報告も寄せられているという。

CNNはこうした報告を独自に検証できていないが、衛星画像によってブティダウンの中心部が18日午前に炎に包まれ、週末にかけて燃え続けたことが分かる。(中略)

ブティダウンの出身でロヒンギャ支援団体の共同創設者を務める活動家は「町が丸ごと燃えている」「無事な家屋はほとんど残っていない。ほんの数軒だけだ」と語った。

自分たちの国を持たないロヒンギャに対しては16年から17年にかけ、ミャンマー軍が残虐な軍事行動を展開。殺害やレイプ、放火が行われたとされ、現在ジェノサイド(集団殺害) に該当するとの疑いから国際司法裁判所の捜査対象となっている。

軍の「掃討作戦」を受けて数十万人がミャンマーを逃れ、現在世界最大とみられるバングラデシュの難民キャンプには推計100万人が暮らしている。

ミャンマーに残るロヒンギャの多くは差別的な扱いを受けており、移動や教育、医療の面で厳しい制限に直面する。

AAとミャンマー軍は、期限付き休戦が破られた昨年11月に戦闘を再開。前者はここ数カ月間、ラカイン州の占領地域を大幅に拡大していた。

現在同州では人道危機の懸念が高まっている。新たに避難を余儀なくされた人々は食料や清潔な水を入手することができなくなっているためだ。

前出の活動家は、住民に食料を届ける団体が一つもないと指摘。ミャンマー軍があらゆる経路を遮断しているとの見方を示した。また軍は住民を複数の村に閉じ込めて、そこから移動することも禁じているとした。【5月24日 CNN】
********************

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は5月24日、「アラカン軍(AA)」と国軍の双方がイスラム教徒少数民族ロヒンギャを迫害していると非難する声明を出しています。

****ロヒンギャ迫害、アラカン軍と国軍に責任****
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は24日、ミャンマーの少数民族武装勢力「アラカン軍(AA)」と国軍の双方がイスラム教徒少数民族ロヒンギャを迫害していると非難する声明を出した。

民主派からは国軍の責任を問う声明が出ているが、アラカン軍が「完全占拠」したとする地域でも残虐行為が行われているとされる。

アラカン軍は西部ラカイン州内でバングラデシュに隣接する二つの郡区(ブティダウン、マウンドー)の制圧に向けて攻勢に出ている。国軍は今月中旬にブティダウンの町から撤退。多くのロヒンギャが住むマウンドーでも戦闘が激化している。

UNHCRは、両郡区を巡る攻防で多くの市民が避難を余儀なくされており、このうちロヒンギャ4万5,000人が保護を求めてバングラデシュ国境を流れる川まで押し寄せていると指摘した。ロヒンギャ数十万人が国境を超えてバングラデシュに逃れた2017年の人道危機の再来を想起させる状況で、同国に保護を要請している。

国軍が長年ロヒンギャを迫害してきたと追及しつつも、今回は「アラカン軍と国軍双方がロヒンギャを攻撃している」と指摘。ブティダウンの町では、国軍が撤退してアラカン軍が占拠を主張した後に焼き打ちが発生しているとされており、情報を精査しているという。

ブティダウンを逃れた市民からは、アラカン軍の兵士から虐待を受けたなどの証言が出ている。

ラカイン情勢を巡っては、軍政に対抗しようとする民主派政治組織「挙国一致政府(NUG)」が21日、国軍が民族間対立をあおっているなどと非難した。ただ、アラカン軍への言及がなく、X(旧ツイッター)上では「挙国一致政府は現場を知らない」などと疑問を呈する声が上がっている。

ミャンマーでは21年2月のクーデターで国軍が実権を掌握。以降は各地で民主派武装組織が生まれ、民族紛争も再燃した。昨年10月には、三つの少数民族武装勢力が北東部シャン州北部で国軍への一斉攻撃を開始し、国軍が劣勢に立たされている。【5月27日 NNA ASIA】
******************

【アラカン軍はロヒンギャ迫害を否定 国軍による分断工作と主張】
少数民族武装勢力「アラカン軍」は、ロヒンギャ迫害を否定し、国軍によるプロパガンダだと主張しています。

****司令官がロヒンギャ迫害を否定 ミャンマー武装勢力・アラカン軍 国連機関に反論「国軍が分裂を狙った」****
ミャンマー西部ラカイン州で国軍と戦う少数民族ラカイン族の武装勢力「アラカン軍(AA)」のトゥワンムラッナイン司令官が東京新聞のオンライン取材に応じた。

ともに仏教徒中心の国軍とAAが、同州でイスラム教徒少数民族ロヒンギャを「弾圧している」と国連機関などが懸念を強めている。トゥワンムラッナイン氏はそれを否定し、国軍側がラカイン族とロヒンギャを「宗教的に分裂させようとしている」と強調した。

◆「政治的だけでなく、宗教的にも分裂させようとしている」
2009年に結成されたAAは国内有数規模の武装勢力の一つで、トゥワンムラッナイン氏は「4万人近い兵士がいる」と説明している。同氏が海外メディアのインタビューに応じるのは異例だ。
 
トゥワンムラッナイン氏は「国軍は劣勢になると、イスラム教徒を徴兵した。AAとイスラム教徒の民兵を対立させた方が、国軍が生き延びられると考えたからだ。政治的だけでなく、宗教的にも分裂させようとしている」と主張した。

◆「国軍がイスラム過激派にも武器供与」
AAは、バングラデシュに隣接し、ロヒンギャが多く暮らすラカイン州北部のブティダウン、マウンドー両郡区で攻勢を強めており、5月18日にブティダウンを掌握したと発表した。

同氏は「ブティダウン、マウンドー両郡区をこれほど早く攻める計画はなかったが、国軍が『アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)』などのイスラム過激派にも武器を供与したので、作戦の実施を早めた」と明かした。AAはこれまでにラカイン州北部を中心に10以上の街を掌握した。

◆「私たちはやっていない」
一方、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、ブティダウンの街の大部分が焼失し、数万人の住民が避難を余儀なくされたと指摘。「AAと国軍の双方によるロヒンギャへの攻撃を記録した。空爆や、丸腰で逃げる村人への銃撃、斬首、失踪、民家の焼き打ちの報告を受けている」と糾弾している。

これに対しトゥワンムラッナイン氏は「私たちはやっていない」と否定した。故郷を追われたロヒンギャの中には「土地問題や政治的な動機からラカイン族を憎んでいる者もおり、AAの行動を自説の補強のために都合よく解釈する」と釈明。

「ブティダウンは(宗教的に)繊細な地域なので、事前に住民に軍事作戦を伝え、イスラム教徒行政官の助けを借りて避難を促した。彼らはそれを強制移住と決めつけ、まるで戦争犯罪をしているかのように描いた」と持論を展開した。【6月7日 東京】
***********************

“事前に住民に軍事作戦を伝え避難を促す”と“強制移住”・・・・混乱の戦場では“紙一重”というか、ほとんど同じことも想像できます。

【戦闘で悪化するロヒンギャを取り巻く環境】
アラカン軍が放火したのか、ロヒンギャを攻撃したのか・・・その実態はよくわかりませんが、戦闘で現地がこんらんするなかでロヒンギャへの迫害が強まっている状況が懸念されます。

****略奪や放火…強まるロヒンギャ迫害 ミャンマー戦闘のあおり受け****
内戦状態にあるミャンマーで、長年迫害されてきた少数派のイスラム教徒ロヒンギャを取り巻く環境が悪化の一途をたどっている。

西部ラカイン州では国軍と少数民族武装勢力「アラカン軍」の戦闘のあおりを受け、命を落としたり家を追われたりするロヒンギャ住民が急増。国連などは、国軍とアラカン軍の双方から弾圧されているとして、暴力の即時停止を求める。

アラカン軍はラカイン州北部で攻勢を強め、5月18日に要衝のブティダウンを掌握したと発表した。今月中旬、バングラデシュとの国境に近いマウンドーにも戦火が広がり、アラカン軍は住民に退避を促した。ただ、国軍の空爆などを受けて、多くの人が取り残されているという。

現地からの情報は限られ詳しい状況は不明だ。欧州を拠点とする支援団体「自由ロヒンギャ連合」によると、ブティダウン周辺では住民がアラカン軍に連れ去られて殺害され、略奪や放火も相次いだという。避難民がドローンで攻撃されたとの情報もあり、「人道に対する罪であり、戦争犯罪だ」と訴える。

一方、アラカン軍は、国軍による攻撃だと主張する。地元メディアによると、今月上旬にも国軍兵士が村を襲撃し、住民76人を殺害したと非難した。国軍は関与を否定している。

国連人権高等弁務官事務所はブティダウンの大部分が焼失し、5月24日時点で約4000人の避難民が発生したと指摘。双方からの攻撃を確認し「空爆や非武装の避難民への銃撃、斬首、失踪、住宅の焼き打ちがあった」としている。

国内有数の武装勢力であるアラカン軍は、2021年のクーデター前から自治拡大を求めて国軍と衝突を繰り返してきた。仏教徒のラカイン族を中心とし、ロヒンギャとの確執も根深い。国軍がこうした確執を利用し、ロヒンギャの被害に関する情報を操作しているとの見方もある。

ロヒンギャは長らく「不法移民」とみなされて国籍を与えられず、偏見にさらされてきた。17年にはロヒンギャの武装勢力が警察や国軍の施設を襲撃し、国軍による掃討作戦で約70万人が難民となった。迫害を恐れて国境を越える人は後を絶たず、バングラデシュの難民キャンプで約100万人が暮らす。

民主派など抵抗勢力の猛攻で兵力不足に陥った国軍は、今年2月に徴兵制の実施を発表した。ラカイン州でもロヒンギャの若者を強制動員しているとされる。英シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)は、約5000人が国軍側に加わったと推計。ロヒンギャの武装勢力が国軍に協力して難民キャンプで集めた人も含まれ、アラカン軍との宗教対立をあおる構図となっている。

ミャンマー、バングラデシュ両政府は難民の帰還で合意しているが、実現しないままクーデターが起きた。混乱によって帰還はさらに遠のき、キャンプの治安悪化や将来への不安からインドネシアなどに密航する人が相次ぎ、現地住民との間で摩擦も起きている。

自由ロヒンギャ連合の共同創設者で、20年以上亡命生活を続けるネイサンルイン氏は「最近の状況は17年当時よりもひどい。移動を制限されて逃げることもできない住民が取り残されている」とアラカン軍を糾弾。一方で「難民の帰還には民政復帰が必要だ」と述べ、日本政府に対し国軍への経済制裁を求めた。【6月24日 毎日】
*******************

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ヒズボラ  イスラエルとの... | トップ | アメリカ  増加するホーム... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ミャンマー」カテゴリの最新記事