孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン政府とタリバン、パキスタンで直接交渉 今後も継続

2015-07-09 22:36:47 | アフガン・パキスタン

(7日、カブールで起きた自爆攻撃の現場を調べるアフガニスタンの治安部隊(ロイター)【7月8日 産経ニュース】)

【「平和に向けた最初の一歩」】
アフガニスタン政府と反政府勢力タリバンは今年に入り、カタールなどで非公式の協議を行ってきましたが、タリバンは正式な和平交渉開始の前提として国際部隊の完全撤退を求めており、これまで目立った進展はありません。

7日夜、今度はパキスタン政府の仲介で、パキスタンの首都イスラマバード近郊において、アフガニスタンの政府代表団とタリバンの元閣僚らが和平に向けた公式協議が行われました。

アフガニスタン政府からはカルザイ外務副大臣のほか、タリバンとの交渉窓口である高等和平評議会メンバーらが出席。タリバン代表団は旧タリバン政権の閣僚らで構成されています。
協議には、アメリカと中国の代表も立会人として参加しています。

****<アフガン>タリバンと初公式協議 「和平への一歩*****
アフガニスタン政府と旧支配勢力タリバンの代表者が7日夜、隣国パキスタンで和平に向けた初の公式協議を行った。

アフガン政府などによると、両者は今後も協議を継続することで一致した。ただ、タリバンは7日も首都カブールで自爆テロを行うなど攻勢を強めており、今回の協議についても公式見解は出していない。

今後は停戦の条件など和平に向けた具体的な交渉に入れるかが焦点となりそうだ。

アフガン政府とタリバンはこれまでも非公式会合を続けてきたが、政府が公式にタリバンとの直接協議を発表したのは初めて。

発表などによると、協議はパキスタンの首都イスラマバード近郊のリゾート地で行われ、アフガン側はヘクマト・カルザイ副外相や高等和平評議会のメンバーが出席。
仲介に積極姿勢を示していた中国と、アフガンに駐留を続ける米国の代表者も参加した。

ロイター通信によると、次回協議は8月15、16両日に中東カタールで行われる見通しという。

アフガン政府は8日、協議について「平和に向けた最初の一歩」との声明を発表。パキスタンのシャリフ首相も今回の協議について「飛躍的な前進だ」と評価した。

ただ、タリバンはこれまで、駐留外国軍の即時撤退を和平交渉入りの条件に挙げていた。
アフガン政府は即時停戦を求めているが、カブールなどでは治安悪化が深刻化しており、駐留外国軍の撤退に応じる可能性は低い。

今後、タリバンとの協議が継続しても交渉は難航しそうだ。【7月8日 毎日】
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取りあえずは公式な直接協議がとにもかくにも実現したことは「平和に向けた最初の一歩」として評価できるでしょう。
もちろん、交渉が難航することは皆が認めるところですが。

パキスタンの関与
今回の交渉で“期待できる点”はパキスタンの関与ではないでしょうか。
パキスタンの国軍がタリバンに強い影響力を有していることは、以前から知られているところです。

パキスタンはタリバンを支援することで、アフガニスタンに親インド政権が確立することを防ぎたい思惑があるとも言われてきました。

そのパキスタンが和平交渉仲介に乗り出した背景には、パキスタン国内におけるイスラム武装勢力TTPへの強硬姿勢があると指摘されています。

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パキスタンでは、タリバンと同盟関係にあるイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」によるテロが相次ぎ、シャリフ政権は昨年、対話路線からテロ掃討に方針転換した。

外交筋や専門家によれば、治安悪化に業を煮やした軍が、支援を与えてきたタリバンに対し、和平協議開催に応じなければ、パキスタン国内での潜伏を許さないと警告していた。

背景には、アフガン政府に、アフガン内に逃げ込んだタリバン運動を掃討するよう求める狙いや、経済協力を進めつつイスラム過激派のテロに悩まされる中国からの圧力がある。

テロによる混乱が、カシミール問題で対立するインドに付け入る隙を与えることも、軍は強く警戒している。【7月8日 産経】
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パキスタンが本格的に和平交渉に乗り出すのであれば、なんらかの成果も期待できます。

タリバン内の路線対立
ただし、タリバン内部が組織的に一枚岩ではなく、穏健派・強硬派が存在することもかねてより指摘されるところです。

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タリバーンの報道担当者は8日夕に声明を出し、会談について言及を避けつつ、「交渉の継続や中止の権限を持つのは(タリバーンの外交・政治部門の)政治評議会だ」と主張した。

中東カタールに拠点を置く政治評議会の関係者は朝日新聞の取材に「今回出席したのは、パキスタン軍と関係が深い元閣僚や元カンダハル州知事で、政治評議会とは無関係。組織の代表とは言えない」と指摘した。

和平交渉をめぐり、タリバーン内で路線対立が起きているとの見方もある。【7月9日 朝日】
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仮に、今後和平協議が進展したとしても、強硬派が離脱してISと共闘して戦闘・テロを継続するといった事態も想定されます。

“タリバンは強硬派も抱え、和平協議が進んでも、硬軟両様で交渉を有利に進めようとするのは確実だ。アフガンで勢力拡大を図るイスラム教スンニ派武装組織「イスラム国」への離脱者が増すことも懸念される。”【7月8日 産経】

タリバン最高指導者オマル師が生存しており、和平協議への賛意を明らかにするようなことがあれば、話はまた違うのでしょうが・・・。

なおタリバンは、ISの影響が拡大するなかで組織防衛のため、4月にはオマル師の“評伝”を公表しています。

****タリバンが最高指導者オマル師の「評伝」公表、ISへの対抗措置か****
アフガニスタンの旧支配勢力タリバンが5日、最高指導者オマル師の詳細な経歴を公表するという異例の行動に出た。影響力を拡大するイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」への対抗措置とみられる。

タリバンをめぐってはこの数か月、ISにくら替えする離反者が複数いると伝えられている。離反者の中には、2001年に米国主導の国際部隊がアフガニスタンに進攻して以来、公の場に姿を見せていないオマル師に対する不信感を抱く者もいるとされる。

タリバンは夜半過ぎ、オマル師が最高指導者として19年目を迎えたことへの記念として、公式ウェブサイトにオマル師の経歴などを掲載した。その中で、オマル師が現在も「ジハード(聖戦)活動」に積極的に関わっているとして、死亡したとの情報を否定している。(中略)

めったに公の場に姿を見せず、写真もほとんどないオマル師自身やその家族の生活についても言及した詳細な情報の公表に、安全保障の専門家らからは驚きの声が上がっている。

タリバンに詳しい専門家は、幾つかの戦略的な理由があると思われるが、最大の狙いはタリバン内部に広がるISの影響力に対抗することだろうとの見方を示している。【4月6日 AFP】
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和平同様に難しい社会の変革
和平協議の方は今後の話として、今月に入って目についたアフガニスタン関連の記事が2件。
いずれも女性の権利に関連する話題であり、社会変革の難しさを感じさせるものです。

****アフガン女性リンチ事件、控訴裁が4被告の死刑破棄****
アフガニスタンの首都カブールで今年3月、イスラム教の聖典コーランを焼いたとの虚偽の疑いを掛けられた女性が群衆に殺害された事件の控訴審で、カブール控訴裁判所は、4被告に対する1審の死刑判決を破棄し、禁錮10~20年に減刑する判決を下した。同裁判所の判事が2日、明らかにした。

同裁判所のナシル・ムリド長官はAFPに「控訴裁判所は3被告を禁錮20年、1被告を禁錮10年に減刑した」と語った。

地元メディアによると、控訴審は非公開で行われ、判決は1日に言い渡されたという。
殺害されたファルクンダさん(当時27)の兄弟はAFPに、家族は裁判に呼ばれておらず、判決についてもまだ聞かされていないと述べ、「どのような判決であろうと認めるつもりはない」と語った。【7月2日 AFP】
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****通学への罰」、女子生徒3人が酸かけられ負傷 アフガン****
アフガニスタンの西部ヘラート州で4日、登校中の女子生徒3人が顔に酸をかけられて負傷した。当局者がCNNに語った。

同州教育当局の責任者によると、3人は州都ヘラート市内最大級とされる女子学校の生徒で、年齢は16~18歳。
市内の病院へ運ばれたが、病院長によるとその後家族が引き取り、別の場所へ移動した。3人のうち2人は重体だったという。

同病院長が3人の話として語ったところによれば、犯人はオートバイに乗った2人組の男。生徒らに酸を浴びせながら、「これは学校へ行くことに対する罰だ」と話したという。

警察報道官は、犯人の捜索に全力を尽くしていると述べた。【7月5日 CNN】
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