孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

「世界の10億人以上が極度の貧困状態から抜け出した」一方で、貧困状態に取り残された人々・地域も

2015-07-11 22:11:31 | 国際情勢

(インドネシア・ジャカルタ  高層建築を望む貧困地区 世界中どこでも見られる光景です。 【7月9日 AFP】)

【「史上で最も成功した反貧困運動」】
世界の経済成長、特に人口が多い中国・インドの経済成長によって、絶対的貧困は大きく減少し、国連の「1990年比で世界の貧困層の割合を半減させる」という目標は達成されたとのことです。

ただ、地域的に見ると、アフリカのサハラ以南、南アジアの多くが貧困に取り残されています。

****貧困、残された8億人 サハラ以南・南アジアに集中 「半減目標は達成」国連報告****
貧困の撲滅、初等教育の完全普及・・・・。国連が2015年末を期限として、21世紀の指針を示した「ミレニアム開発目標」(MDGs)。

6日に発表された報告書では、「世界の10億人以上が極度の貧困状態から抜け出した」など、一定の成果が強調された。人口の多い中国やインドの経済成長によってもたらされた側面が大きく、サハラ砂漠以南のアフリカ(サブサハラ)などで8億人以上が開発から取り残されている。

MDGsについて、国連の潘基文(パンギムン)事務総長は「史上で最も成功した反貧困運動」につながったと総括した。

一方で地域や男女差での偏りを認め、「あまりに多くの人々が置き去りにされている」とも指摘した。

報告書によると、1日の生活費が1・25ドル(約150円)未満の「極度の貧困状態」にある人口は、世界中で1990年の約19億人から今年までに8・3億人に減る。

全人口に占める割合は90年の36%から12%に下がる見込みで、「90年比で半減」の目標は達成したとしている。

これは人口の多い中国とインドが経済成長した影響が大きい。東アジアは90年の61%が4%に、南アジアは52%から17%に下がる。

一方で、今も8億人以上が極度の貧困状態にある。そのうち約8割が、サブサハラと、バングラデシュなどの南アジア地域に集中。サブサハラでは、今も人口の4割以上がこの状態だ。

また報告書は、各地の紛争が開発の「最大の脅威」になっていると指摘した。
昨年末までに各地の紛争で6千万人が家を追われ、第2次世界大戦以降で最悪の規模だ。世界で小学校に通えない子は2000年の1億人から5670万人まで減ったが、紛争下の地域では99年の30%から12年の36%に増えたという。

国連では、MDGsの後継として、30年までの新たな目標になる「持続可能な開発目標」(SDGs)の策定が続いている。【7月8日 朝日】
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とにもかくにも、「極度の貧困状態」の者が減少していることは、非常に喜ばしいことです。

しかし、貧困から抜け出した人々の多くは「低所得層」にとどまり、格差という点ではあまり改善していないとの指摘もあります。

****世界の貧困層減少も格差縮まらず、2001~11年 米研究****
今世紀最初の十年間で、世界の約7億人が極貧状態から抜け出したとの研究結果が8日、発表された。しかし、その大半は依然として非常に低い所得水準にあることも明らかになっている。

米調査機関ピュー・リサーチ・センターの発表によると、世界の貧困は2001~2011年の間に「歴史的な減少」を遂げ、また「中間所得層」と考えられる人の数も倍増したという。

2011年には、貧困ラインを下回る1日2ドル(約240円)未満で生活する人の割合が世界全体の15%となった。2001年の時点では、同29%だった。

ただ、極貧生活を脱却した人たちの大半は、いわゆる「低所得層」に位置づけられ、1日2~10ドル(約240~1200円)での生活を強いられている。世界人口の約56%は、依然としてこうした水準にあり、2001年の50%に比べて増加した。

また、1日の生活費が10~50ドル(約1200~6000円)の中間所得層と上位中間所得層の割合は、14%~22%に上昇しただけで、全世界に安定した中間所得層を構築する努力が鈍化していることも同時に示唆された。

貧困層から中間所得層への移行が最も顕著だったのは、中国や南米および東欧地域だった。一方、インドや東南アジア、中米地域では微増にとどまった。

研究では「経済的に発展した国と新興国、発展途上国との間にある生活水準の『差』が、今世紀初めの10年間であまり縮まっていない」ことも指摘された。【7月9日 AFP】
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取り残された人々・・・・レソト、リベリア、北朝鮮、中国
減少したとは言え、「極度の貧困状態」の事例は、未だいたるところに溢れています。

****月収600円、死産も「宿命」 レソト****
世界の成長から取り残されたサブサハラ。中でも、人口200万人の小国レソトの貧困は深刻だ。

成人人口(15~49歳)のHIV(エイズウイルス)の感染率(約23%)や、5歳未満の幼児死亡率(約10%)は世界最悪の水準にある。

首都マセルの南約80キロにあるハレブル村。主婦マブティバ・パツワニさん(28)は2005年に生後7日で娘を亡くした。娘は体重が1キロしかなかったという。「妊婦のほとんどが栄養不足だ」。1日1食、トウモロコシの粉で作った郷土食「パップ」を食べられればいい方だと話す。

主婦マテペロ・ロマテさん(49)は04年、娘を死産した。破水後、14キロ先の医院に歩いて向かったが、間に合わなかったという。「この村では、半数の子が5歳まで育たない。今は宿命だったと思ってあきらめている」

産業が乏しいレソト。1日1・25ドル(約150円)未満で暮らす人が約5割を占める。特に農村部の貧困は深刻だ。トウモロコシ栽培が主産業のハレブル村では、1カ月の世帯収入が600~2千円ほどで電気も水道もない。井戸水に頼る暮らしだ。

長年、男性が南アフリカの鉱山などで出稼ぎし、仕送りで家族の生計を立ててきた。ところが90年代以降、出稼ぎに出た男性がHIVに感染し、村に戻って妻や交際相手に感染させるケースが相次いだ。感染は爆発的に広がった。

国連や政府は、国内各所にHIVの検査やカウンセリングができる医院を設置。感染防止の啓発に取り組んできた。しかし医師や医療従事者が教育を受けた後、報酬の良い国外へと移住することも多く、状況は好転していない。

電気のないハレブルのような地域では、テレビやラジオのような情報伝達手段がなく、啓発も広がらない。ハレブル村のポカ・レスル区長(59)は「村では成人の7、8割が感染している」と打ち明けた。

エイズによる孤児の問題も深刻だ。レスル区長によると、学校に通う児童の大半が、片親か両親をエイズで亡くしている。

マタペロさん(12)は昨年、母(36)をエイズで亡くした。父も3年前にエイズで他界。今は祖母のモデラホさん(72)や妹(9)と暮らす。母の死後、水くみや調理など家事の手伝いが増えた。「でも大丈夫。学校の級友と助け合って生きているから」【7月8日 朝日】
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****リベリアの違法金鉱、死も覚悟で働く若者たち****
西アフリカ・リベリアの金鉱でピーター・コリーさん(20)が地面を掘っていたところ、坑道が崩れ、一帯は一瞬にして暗い密室の墓場となった。

コートジボワールとの国境地帯で行われている違法な金採掘。貧困から抜け出そうと必死で働く数千人の若者たちと同様、コリーさんも、危険な作業で命を落とす恐れがあることは覚悟の上だった。

コリーさんが死亡して数日後、同じ鉱山労働者で、若者のための福祉ボランティアもしているロマックス・セイデーさんはAFPに「こういう事故で、僕たちにできることは何もない。遺体を放置し、しばらくその場所には近づかないようにする。それで、ある程度、日数が経ったら掘り起こしてみる。すると、たいてい、遺体のある場所から大量の金が見つかる」と話した。「自分の墓を掘っているような感じだ。もしも閉じ込められたら、誰にも助けてもらえないのだから」

コリーさんが働いていたグランドゲデ郡の中心にある「ダーク・フォレスト」(暗い森)では、政府の認可を得ていない砂金採掘が活況を呈している。規制はほとんどない。

広大な露天掘り鉱山で、30代の男たちに混ざって7、8歳の少年たちが働く。幅の狭い立坑は、金鉱脈のある深さ100メートルの地点まで掘られ、ロープとカゴを使って金鉱石を地上まで運ぶ。

国連(UN)の専門家委員会がリベリアについてまとめた12年のレポートによると「坑道の崩壊による死亡は珍しいことではない」

鉱山労働者は大半がリベリア人だが、コートジボワールの政治的暴力から逃れてきた元兵士などもいる。労働者たちは広大な野営地に防水シートを張り、その下でたき火をし、野生動物を焼いて食べて暮らしている。

■1日数ドルで掘った鉱石が金塊に
野営地が遠隔地になるほど人は混み合い、インフラ不足で水が原因となる感染症の危険も高い。国連によるとドラッグも「まん延」しており、これは国境警備にも脅威を与えうる。

リベリア政府の評価では、13年1~9月に輸出された金は416.5キロ、金額にして1650万ドル(約20億円)相当だったが、業界筋は年間産出量を3000キロ近くと推計している。

一方、同年の金による政府収入は50万ドル(約6000万円)程度。合法な業者は、市場がモーリタニアやセネガル、ガンビアやマリの違法業者に占領されつつあると訴えている。

しかし最も損をしているのは労働者だ。賃金は1日数ドル、あるいはまったく支払われないことさえある。

「ダーク・フォレスト」で産出される金は、マンディンカ(Mandingo)族やフラニ(Fulani)族の仲介人を通じ、首都モンロビアや隣国のギニアやコートジボワールへと流れ、そこで金塊に加工されてアラブ首長国連邦(UAE)へ送られる。

リベリア当局と国連は12年、国境地帯での金採掘をすべて中止することで合意したが、実際には履行されていない。国連は、インフラ不足や多くの鉱山が遠隔地にあること、ひっ迫したリベリア政府の財政状態では人員を割けないことなどが、規制を極めて緩くしていると指摘する。

一方、地元自治体は、金採掘で多くの若者の生活が少しでも支えられている事実を認める。グランドゲデ郡の高官、ピーター・ソロ氏は、もしも金採掘がなければ、若者たちの問題はもっと大きく、深刻化するだろうと語る。

金採掘は国境地帯の集落にとって主な収益源となっているだけではなく、今では首都からも大勢の若者が労働者としてやって来始めている。【7月11日 AFP】
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****貧困から逃れるために脱北した北朝鮮女性、中国農民がコメと交換で花嫁に―香港メディア****
北朝鮮と国境を接する中国吉林省の延辺朝鮮族自治州では、脱北した北朝鮮女性の人身売買が横行している。空腹に耐えかねて中国に密入国した北朝鮮女性を妻として迎えたい人は多いという。

あっせん業者からの買い取り価格は1万元(約19万5000円)。コメと引き換えに北朝鮮女性を娶った中国農民の話しもネット上で紹介されている。

北朝鮮女性は結婚しても戸籍はなく、通報されれば本国に強制送還される。送還後、労働改造所送りは避けられない。

一方、外国人が合法的に北朝鮮女性と結婚したい場合、北朝鮮政府から外資導入を名目に許可される。外国人は30万元(約588万円)を結納金として支払えば結婚できるが、その後も北朝鮮政府から花嫁を通じて投資を持ちかけられ、かなわなければ追加として620万元(約1億2000万円)以上が請求されるという。【7月11日 FOCUS-ASIA.COM】
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経済成長著しい中国も、内陸農村部に膨大な貧困を未だ抱えています。

“新華社によると、年間の収入が2300元(1日当たり6・3元=約1ドル)以下で生活する農村の貧困人口は約7017万人に達する。貴州省、雲南省、広西チワン族自治区などではそれぞれ貧困人口が500万人を超えている。”【7月3日 朝日】

特に、親が出稼ぎで家を離れ、孤独な暮らしを強いられている「留守児童」の問題が注目を集めています。

****孤独な「留守児童」命絶つ 中国農村、貧困で父出稼ぎに****
中国貴州省の貧困地域で兄妹4人が6月初め、農薬を飲んで自殺した。親が出稼ぎで家を離れ、孤独な暮らしを強いられていた「留守児童」だった。

事件は社会に衝撃を与え、経済規模で世界2位の「大国」が抱える貧困問題を改めて浮かび上がらせた。兄妹が住んでいた村を訪ねた。

■汚れた室内・学校行かず…4兄妹は農薬を飲んだ
・・・・貴州省民政庁の報告によると、死亡したのは、14歳の長男と5~10歳の妹3人。4人とも農薬を飲んで自殺したとみている。

兄妹の父親(34)は出稼ぎで不在。母親(32)も2年前に家を出ていた。長男が豚の世話などをしながら、幼い妹たちの面倒を見ていたという。

近所の張宗義さん(63)は「家の中はぼろぼろで汚れていた。服や靴、いろんな物が散らかっていた」と言う。「子どもたちには両親の愛が足りなかった」と語った。

貴州省の2013年の1人当たり域内総生産は約2万3千元(約46万円)で、中国の省と直轄市のなかで最下位。上海の3割に満たない。

報道によると、茨竹村は貴州省の中でも特に貧しい農村部にあり、約2500人の住民のうち半数ほどが出稼ぎで村を離れているという。

長男と妹2人は5月8日から学校に行っていなかったと中国紙は伝える。役人や学校の先生が6月9日に家を訪ね、学校に来るよう促した。4人はその夜、農薬を飲んで亡くなったという。

警察当局は、少年が宿題をするノートに書いたという遺書の概要を中国メディアに公表した。
《みなさんの好意に感謝します。みなさんがよくしてくれたことはわかっています。でも僕は行かなければならない。僕は15歳まで生きないと誓っていた。死ぬことは長年の夢でした。今日、リセットします!》(中略)

■「多くが見捨てられた状態」 全国に6100万人 政府、対策強化
畢節市では2012年にも痛ましい事故が起きていた。大型のごみ箱の中で暖を取っていた留守児童の男児ら5人が一酸化炭素中毒で死亡した。

3年前の悲劇と今回の兄妹の自殺が同じ地域で起きたこともあり、中央政府も事態を重く見ているようだ。

自殺事件の後、李克強(リーコーチアン)首相は「悲劇を繰り返してはならない」と訴え、留守児童らを保護するための対策を強化するよう指示した。地区や教育担当の幹部らは責任を問われ、停職や免職などの処分を受けた。

中華全国婦女連合会などによると、10年時点で親と離れて暮らす農村の留守児童は全国に約6100万人。そのうち、両親とも離れているのは約47%と推計される。また、0~5歳の子どもは2300万人以上とみられる。

また、民間団体が貴州省や雲南省など約1千人の留守児童にアンケートし、6月にまとめた調査結果によると、留守児童のうち11%が月に3~4回親に会っているが、15%は年に1度も会っていないという。国営の新華社通信は「多くの留守児童が見捨てられた状態だ」と指摘する。

留守児童の問題は、農村部の貧困や格差の問題を端的に示しており、共産党指導部も注視している。
習近平(シーチンピン)国家主席は6月中旬、視察先の貴州省で地方幹部を前に「2020年までに貧困から脱却できるようにしなければならない」と演説。留守児童への支援も求めた。(後略)【7月3日 朝日】
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超富裕層は・・・・
なお、“お金持ち”の方の話では、以下のようにも報じられています。こうした富裕層が経済を牽引することで全体の底上げがなされ、貧困に苦しむ者も減少するとも言われてはいますが・・・・。

****成人人口0.004%の超富裕層、世界の総資産13%保有 研究***
世界総資産の13%にあたる30兆ドル(約3528兆円)近くは世界の成人人口のわずか0.004%によって保有されていることが、20日に発表された研究報告で明らかになった。こうした超富裕層の資産は、さらに増え続けているという。(後略)【2014年11月21日 AFP】
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****世界の富の半分以上、占めるのは1%の富裕層****
世界人口の1%にあたる富裕層が持つ富は、2016年には残りの人口の99%が持つ富の合計を上回り、世界全体の富の半分を上回るとする報告を19日、国際NGOオックスファムが発表した。(後略)【1月19日 AFP】
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