
(【2月11日 日経】)
【アメリカ民主主義の到達点でもあったDEIを否定するトランプ政権】
<DEIを否定し、移民を強制送還するトランプ政権。彼らがやっているのは、アメリカの民主主義の「土俵」を造り変える壮大な実験だ>【4月11日 江藤洋一氏(弁護士)「トランプが始めた、アメリカ民主主義を作り変える大実験の行方」 Newsweek】
****多様性、公平性、包括性(diversity, equity, and inclusion、DEI)****
DEIは、すべての人々、特に歴史的に過小評価されてきたグループやアイデンティティや障害に基づいて差別を受けてきたグループのフェアな扱いと完全な参加を促進するための組織的なフレームワークである.
「多様性(ダイバーシティ)」とは、組織的な職場の中に、アイデンティティやアイデンティティ政治などの意味でさまざまな種類の人が存在することを意味する。アイデンティティとしては、ジェンダー、民族性、性的指向、障害、年齢、文化、社会階級、宗教(英語版)、意見などが含まれる。
「公平性(エクイティ)」とは、公平な報酬や実質的な平等)など、公平性と正義の概念を意味する。より具体的には、公平性には通常、社会的格差や資源の配分へ焦点を当てることが含まれ、「歴史的に不利な立場にあった集団に意思決定権限を与えること」や、「その人固有の状況を考慮して、最終的な結果が平等になるようにするため、個人に応じて扱いを調整すること」も含まれる。
「包括性(インクルージョン)」とは、帰属意識と一体感という意味で「すべての従業員が自分の声を聞いてもらえていると感じる」経験を生み出す組織文化を構築することを意味する。【ウィキペディア】
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トランプ大統領は就任直後、連邦政府機関などでのDEIプログラムを廃止する大統領令に署名し、連邦政府や軍の人事においても反DEIの観点から行い、民間企業にも同調を求めています。
****トランプ氏「DEIはデマ!」、アップルに多様性施策廃止求める****
トランプ米大統領は26日、米アップルに対し、「多様性、公平性、包摂性(DEI)」に関する方針を廃止するよう求めた。同社の株主は前日25日の年次総会での投票で、DEIを引き続き推進する経営陣の方針を承認した。
トランプ大統領は自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、アップルはDEIルールを調整するだけでなく、廃止すべきだと主張。「DEIは米国に悪影響を及ぼしてきたデマだ。DEIは終了だ!」と大文字で書き込んだ。
トランプ氏は就任直後、連邦政府機関などでのDEIプログラムを廃止する大統領令に署名し、民間企業にも同調を求めている。
アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は25日の年次総会で、同社の「強み」は最優秀の人材を採用して彼らに協力の文化を提供することに由来していると強調。ただ、新たな展開に応じて何らかの調整を行う可能性についても示唆した。
DEI施策を巡っては、メタ・プラットフォームズや、米グーグルの持ち株会社アルファベットなど米大手企業が、トランプ大統領の返り咲きを機に相次いで取り組みを後退させている。【2月27日 ロイター】
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****米政府契約維持したければDEI廃止を-トランプ政権が仏企業に迫る****
米政府と請負契約を結んでいるフランス企業は、多様性・公平性・包摂性(DEI)の慣行をやめるよう要求されていると仏経済紙レゼコーが28日報じた。
同紙によると、パリの米国大使館は仏企業に対し、米政府契約へのアクセスを維持したければ「積極的差別」の慣行を廃止するよう求めているという。
仏財務省の当局者は報道について電子メールでコメントを寄せ、こうした動きは「米政府の価値観を反映したもので、われわれの価値観ではない」と指摘。ロンバール経済・財務相が米財務長官にそう説明すると付け加えた。(後略)【3月31日 Bloomberg】
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反DEIはトランプ大統領個人だけでなく同氏を支持する人々の間に強く存在する傾向です。
DEIは白人・男性・性的多数派などへの逆差別であり、能力主義を損ねるものであり、エリート層のリベラル思想である・・・その結果、自分たちが冷遇されている、自分たちの文化が危うくされているとして、強い反感が持たれています。
****なぜトランプ支持者の右派がDEIに反対しているのか?****
一方で、トランプ支持者の多くは、DEIに対して強い反発を示している。その理由の一つは教育機関、政府、企業の一部のDEIプログラムが、人種・性別・性的指向といった要素を基準に特定のグループを優遇することで、DEIが「逆差別」と捉えられていることにある。
特に保守派の間では、DEIが「能力主義」を損なうと考えられており、特定の人種や性別に優遇措置を与える不公平な政策として認識されている。
また、政府や大企業がDEIプログラムを推進することは、個人の自由や経済的競争力を損なうものだという主張もある。
トランプ支持者の間では、DEIが「エリート主義」と結び付けられ、大学や大企業などの特定のリベラルな層による価値観の押し付けとみなされている。特に白人労働者階級の間では、「自分たちが冷遇されている」という感情が高まっており、それがDEIに対する反発の大きな要因となっている。【3月23日 「DEIと政治的対立~米国での反DEIの動き」 Think ESG】
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しかし、(行き過ぎ云々の議論は別にして)本来DEIはアメリカの自由と民主主義の到達点であり、その象徴であったと思います。その放棄はアメリカ民主主義の根幹を大きく変質させるもののようにも思えます。
****関税より根深く、影響を残すトランプの政策****
実はもう一つ気にかかる点は、トランプ氏がDEIを放棄したことだ。DEIこそアメリカの自由と民主主義の象徴だ。
(中略)民主主義社会は、尊厳を有する人の平等によって成り立つ。LGBTQやその他のマイノリティーが偏見や差別によって苦しめられることから解放されなければならない。DEIは公正な社会の在り方としてそのことを象徴的に表現している。彼らに関し、偏見も特権もあってはならない。それがアメリカの自由と民主主義の到達点だったはずだ。
だが、トランプ氏はこのDEIを放棄するという。トランプ政権は、アイビー・リーグの大学への補助金の支給を留保し、大学の内情を調査しているという。その理由が反ユダヤ主義だと言われている。
よくよく聞けば、イスラエルのガザ攻撃に対する反対デモが学内であった、という程度のことらしい。少なくとも現時点ではその程度のことしか分かっていない。学内のデモを取り締まれば、補助金の支給を再開するとでもいうつもりだろうか。馬鹿げた話だ。
イスラエル(ユダヤ人)にだけ肩入れすることは多様性(diversity)を欠く。それを補助金の支給打ち切りをちらつかせて行うことは公平(equity)な処置ではない。そうしたデモを包摂する(inclusion)ことこそがアメリカの魅力だったはずだ。アイビー・リーグの関係者がマッカーシー旋風以来ことだと危機感を募らせていることもよく理解できる。
DEIは民主主義的な意思決定に基づく政策選択の問題に尽きるものではない。それはアメリカがかつて苦しみ、内戦(南北戦争)にまで発展した奴隷制度の廃止が単なる政策選択の問題でないのと同様である。
DEIは政策に関する党派の論争からは中立的だ。DEIの放棄は、アメリカの自由と民主主義をひどく傷つけるだろう。その意味において、民主主義そのものが実験されている。
この実験は、トランプ氏の関税政策ほど耳目を集めないかもしれないが、実はもっと根深く、その影響を後世に残すだろう。【4月11日 江藤洋一氏(弁護士)「トランプが始めた、アメリカ民主主義を作り変える大実験の行方」 Newsweek】
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【選挙の仕組みを自身に有利な方向に変える動きも】
選挙を行うことが民主主義・・・という訳ではないですが、民主主義を実現・維持する方法が公正な選挙です。
トランプ政権は中間選挙に向けてこの選挙の仕組みを自分たちに有利なものに作り変えようとする動きが見れます。
そうなると上記の反DEIに見られるようなその本質においても、選挙という具体的方法においても「アメリカは民主主義国と言えなくなる」という危険性があります。
****「夏の終わりまでにアメリカは民主主義国と言えなくなる」その理由は…【報道1930】****
トランプ大統領は考えを変えたのか…“相互関税”の発動を突如90日間延期した。株価や米国債の価値低落が影響したかのように見えるが、中国などにはさらに報復の報復として125%という高い関税を課した。
GDP1位と2位の国同士のチキンレースの様相は世界経済に悪影響を与えインフレが進むのは間違いない。さすがにアメリカ国民も気づいたのか…最近トランプ人気に陰りも見えて来た。
「共和党候補がいくら選挙区に尽くしてもこの“トランプ・ペインン・トレイン(=痛みの列車)”から逃げられない」
“相互関税”を一端は延期したもののあくまで延期。90日後に再び復活することもある。トランプ氏が“改心”するとしたら何なのかを考えてみた。
笹川平和財団 渡部恒雄 上席フェロー
「中間選挙で民主党に過半数取られたら、弾劾を受ける場合があるわけで、それだけは避けたいんだろうと私は思う。やはり保身が第一に来るので…。この先かなりトランプ氏が憲法違反のようなことをやる可能性があるので…。そういうのに対して下院で過半数を民主党が持ってれば弾劾決議できるわけですよ。それをトランプ氏は一番気にするんじゃないかと…」
「中間選挙で民主党に過半数取られたら、弾劾を受ける場合があるわけで、それだけは避けたいんだろうと私は思う。やはり保身が第一に来るので…。この先かなりトランプ氏が憲法違反のようなことをやる可能性があるので…。そういうのに対して下院で過半数を民主党が持ってれば弾劾決議できるわけですよ。それをトランプ氏は一番気にするんじゃないかと…」
トランプ氏が最も心配しているのは選挙。その心配を煽るような事態がここのところ相次いでいる。先月ウィスコンシン州であった最高裁判所の判事選挙に肩入れしていたのはイーロン・マスク氏。地元の産業であるチーズの被り物まで身につけ盛り上げた。被り物だけではない。金も70億円を使ったという。共和党側の候補を支援する人の中から2人に1億5000万円を渡すキャンペーンも行った。
しかし結果は民主党側が10ポイントの差で勝利。この選挙の2日後トランプ氏はマスク氏が政権を去ることを匂わせ、逆にマスク氏は「欧州の関税はゼロにすべき」と発言した。
そして重要州ペンシルベニア州でも。州議会上院議員選挙で136年ぶりに民主党の候補者が勝った。トランプ政権の勢いが陰りを見せていることの象徴とも言われている。
(中略)“関税”というトランプ氏の政策が民主党の追い風になるという見方は渡部恒雄氏もうなずく。
笹川平和財団 渡部恒雄 上席フェロー
「物価高、インフレは民主党にとっては二重にアピールできる。“トランプ氏はウソをついた”これが一つ。それから“現職の政権がやってることは間違っている”とも言える。物価は所得が低い人ほど、株価は所得が高い人ほど影響を受けるんです」
「物価高、インフレは民主党にとっては二重にアピールできる。“トランプ氏はウソをついた”これが一つ。それから“現職の政権がやってることは間違っている”とも言える。物価は所得が低い人ほど、株価は所得が高い人ほど影響を受けるんです」
「トランプ大統領が『この命令によって民主党支持者の投票を抑制できる』と信じているとすれば、それは民主主義にとって深刻な問題だ」
選挙に絶対負けたくないトランプ氏が手をつけた“憲法違反”かもしれないことがある。ある大統領令への署名だ。それは“選挙の有権者登録に市民権の証明書類の提示を義務付ける”というものだ。戸籍が整備された日本では理解しにくいが、この“市民権の証明”というのがアメリカでは決して簡単ではない人が少なくないらしい。米選挙監視団体の訴訟部門担当者に話を聞いた。
『キャンペーン・リーガル・センター』ブレント・ファーガソン氏
「パスポートを持っているのはアメリカ人の半分で、残りの半分は容易に取得できない人たちだ。今回の大統領令ではほかの書類(出生証明書など)も市民権の証明として認められる可能性がある。但しその基準があいまいなのだ…(中略)本質的には(パスポートを持っていない人が多い)民主党支持者が投票しづらくなるようにするものだ。トランプ大統領が『この命令によって民主党支持者の投票を抑制できる』と信じているとすれば、それは民主主義にとって深刻な問題だ」
「パスポートを持っているのはアメリカ人の半分で、残りの半分は容易に取得できない人たちだ。今回の大統領令ではほかの書類(出生証明書など)も市民権の証明として認められる可能性がある。但しその基準があいまいなのだ…(中略)本質的には(パスポートを持っていない人が多い)民主党支持者が投票しづらくなるようにするものだ。トランプ大統領が『この命令によって民主党支持者の投票を抑制できる』と信じているとすれば、それは民主主義にとって深刻な問題だ」
市民権の証明書類をすぐに用意できない人は有権者の9%(約2000万人)に上るという。
トランプ氏の言い分はこうだ。 「この国は偽の投票や不正な選挙のせいでとても病んでいる」
確かに不法移民など本来投票権を持たないものが不正に投票した事例はあるが、選挙結果が変わるほどの数ではない。
この事態についてかつて日本外国特派員協会の会長を務めたジャーナリスト、ジェームズ・シムズ氏は言う…。
ジャーナリスト ジェームズ・シムズ氏
「私はパスポートを提示して投票してます。大昔は電気料金の請求書を見せて住んでることが証明できればよかった…(中略)これは有色人種特に黒人の票を抑えたい。黒人はほとんどが民主党に入れますから、それを抑えたい。…例えば黒人は病院で生まれていない場合がある。その場合出生証明書はない。これは人種に対する劣悪な政策です。投票権を奪いたいという…」
「私はパスポートを提示して投票してます。大昔は電気料金の請求書を見せて住んでることが証明できればよかった…(中略)これは有色人種特に黒人の票を抑えたい。黒人はほとんどが民主党に入れますから、それを抑えたい。…例えば黒人は病院で生まれていない場合がある。その場合出生証明書はない。これは人種に対する劣悪な政策です。投票権を奪いたいという…」
同志社大学の三牧聖子教授は、不正選挙はなくすべきなのでトランプ氏の言い分は正しいと言いつつ、この大統領令は本質的には権力闘争だと話す。
同志社大学 三牧聖子教授
「女性の間でも姓が変わった場合どうなるんだ(出生証明書と)IDが違うとか…。7000万人ほどが姓を変えている。この法律では、許可を出した側の罰則も重いんです。なので管理する側もちょっとでも怪しい場合はダメにしちゃう。実際に共和党が握っている選挙区では投票箱の数を減らすとかドライブスルーをなくすとか…」
「女性の間でも姓が変わった場合どうなるんだ(出生証明書と)IDが違うとか…。7000万人ほどが姓を変えている。この法律では、許可を出した側の罰則も重いんです。なので管理する側もちょっとでも怪しい場合はダメにしちゃう。実際に共和党が握っている選挙区では投票箱の数を減らすとかドライブスルーをなくすとか…」
つまり生活に余裕のある共和党支持者には関係ないが、投票所が遠くなれば投票に行けない人が民主党支持者には多くいるということらしい。
番組のニュース解説、堤氏は証明書類が免許証なのか出生証明なのか何なのかを明確化していないことが問題だと指摘する。
国際情報誌『フォーサイト』元編集長 堤伸輔氏
「明確化しないということは現場の恣意的な運用を認めてしまう。例えば投票所にいる人がどちらかの党の支持者であれば、非常に恣意的運用が偏ってしまう。だから非常に差別的…」
「明確化しないということは現場の恣意的な運用を認めてしまう。例えば投票所にいる人がどちらかの党の支持者であれば、非常に恣意的運用が偏ってしまう。だから非常に差別的…」
「夏の終わりまでにはアメリカはもはや民主主義国家とは言えなくなる」
強権を発動し続けるトランプ大統領。イエスマンで固めた人事によりトランプ氏を止める人もいさめる人もいない。まるで専制国家だ。スウェーデンの調査機関は毎年、民主主義についての調査を行っている。最新の調査報告書ではアメリカの民主主義の低下が懸念されている。その調査機関の代表はこう表現している。
『V-Dem』創設所長 リンドバーグ氏
「アメリカの政府体制は来年の報告書では間違いなく格下げになるだろう。現状のペースで行くと夏の終わりまでにはアメリカはもはや民主主義国家とは言えなくなるだろう」
「アメリカの政府体制は来年の報告書では間違いなく格下げになるだろう。現状のペースで行くと夏の終わりまでにはアメリカはもはや民主主義国家とは言えなくなるだろう」
夏の終わり…、それほど先のことではない。(BS-TBS『報道1930』4月7日放送より)【4月11日 TBS NEWS DIG】
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【すでに始まっている武力衝突を伴わないハイブリッド内戦 トランプ政権の言葉狩りはその延長線上に】
“民主主義の低下”にとどまらず、中間選挙での敗北が明らかになり、弾劾も視野に入ったとき、非常事態宣言のもとでトランプ支持州の州兵を動員した軍事行動で反トランプ州を制圧するといった文字通りの「内戦」の可能性も・・・と言えば陰謀論的な妄想と笑われるだけでしょうが、そんな妄想を捨てきれない危うさをトランプ政権には感じてしまいます。(白人比率は今後50%を割り込んで低下します。やるなら今でしょう)
****トランプ政権下での言葉狩りで「過去の歴史は改ざん」...アメリカの新しい現実を理解しよう****
<アメリカでDEI(多様性、公正性、包括性)を中心とした言葉が減っている。新しい文書に記載されないだけではなく、すでに公開されている過去の文書から削除されている>
トランプ政権によってもたらされる変化は激しく、かつ広範な分野に及んでおり、おそらくトランプ本人もどのような変化が起きているのか把握できていない。
この変化の多くは2021年頃には始まっており、その後じょじょに拡大してきたもので、トランプがはじめたものではない。トランプはじょじょに進んでいた変化を大きく加速させることで、「なにかが起きている」ことをわかりやすく示した。
アメリカで進む言葉狩り
アメリカでDEIを中心とした言葉が減っている。新しい文書に記載されないだけではなく、すでに公開されている過去の文書から削除されているのだ。 たとえばニューヨーク・タイムズの記事によると、トランプ政権発足後、政府機関の文書が数千回にわたって修正され、5千ページ以上が書き換えられた。
対象となった言葉は、「LGBTQ」「feminism」「inclusive」といったDEIに関係したものが多いが、一般的な「women」や「Black」まで対象となっていた。 さらに人種差別や気候変動に関するものなども言葉狩りの対象となっていた。
トランプ政権下での言葉狩りの対象とほぼ同じテーマの書籍が図書館や教育現場から排除される事態が2021年から始まっており、その中心になっていたのはMoms for Libertyという組織である。
文字通り女性の組織なのだが、実際には共和党やBreitbartあるいはTucker Carlsonなどと連携して反主流派の主張を広げていた。
その活動の一環として奴隷制度に関する話題を教育現場で扱えないようにしたり、図書館からワクチンや人種差別、LGBTQに関する書籍を排除したりしていた。 (中略)
こうした前史を踏まえると、トランプ政権が進めている言葉狩りがその延長線上にあることがわかる。 アメリカは2021年から武力衝突を伴わないハイブリッド内戦に突入しており、言葉狩りは内戦を象徴する活動のひとつだ。
内戦は2023年にピークを迎え、2024年のトランプ再選(反主流派の政権奪取)をもって内戦は掃討戦へと変わってきたように見える。
こうした変化を推し進めているハイブリッド内戦の主役はいわゆる反主流派だ。一般的に反主流派はLGBTQを始めとするDEIに対する嫌悪と攻撃、反ワクチンや陰謀論などの反科学的主張、主流メディアや左派への反感を特徴としており、明確なイデオロギーは存在せず、その時々に会わせて主張を変えたりする。
たとえば、コロナ禍においては反ワクチン、反ロックダウンを主張していた人々は、ロシアのウクライナ侵攻の際に親ロシア、反ウクライナの主張を始めた。極右や白人至上主義にもつながるものだが、その支持層ははるかに多いと推測される。
民主主義国の多くで反主流派の活動が活性化しており、政治や社会に大きな影響を与えている。日本も例外ではないことは近年の選挙を見ればわかる(日本の場合は独自の要素も多いが)。 一貫した主張やイデオロギーはないものの、こうした勢力の台頭は目や耳に入ってくる言葉を変容させ、認識される現実を変えていく。(後略)【4月9日 一田和樹氏 Newsweek】
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