(ガザ南部ラファの難民キャンプが26日、イスラエル軍による空爆を受けて20人以上が死傷したと、イスラム組織ハマスが運営する保健当局が発表した。死者には、女性や子どももいるという。【5月27日 BBC】)
【イスラエル 見えない出口 強まる国内外の圧力】
多大な民間人犠牲者を出し続けているパレスチナ・ガザ地区の状況ですが、ハマス側がどの程度戦力を低下させているのか、組織的抵抗が続けられる状況なのか・・・よくわかりません。
ただ、イスラエル軍の執拗な攻撃が続いているということは、ハマス側の抵抗も続いているということなのでしょう。ハマスを一掃したとイスラエルが主張していたガザ中部や北部にハマス戦闘員が再び集結しているとの情報もあります。
また、イスラエルはラファにハマスの相当勢力が残存しており、これを叩かないとハマスを壊滅させることはできないとして、ラファ侵攻を何としても行うと主張しています。
しかし、8か月が経過した戦争の出口(イスラエルにとっては、人質救出かつハマス壊滅)は未だ見えず、イスラエルは国内外からの厳しい批判・圧力に直面しています。
*****イスラエルはハマスの罠にはまった...「3つの圧力」に追い込まれたネタニヤフ、ガザ戦争の出口は見えず*****
<ハマスを壊滅できると主張するイスラエル軍がガザ南部ラファへの突入を強行。それでも8カ月目に入った戦争は泥沼化する一方>
パレスチナ自治区ガザの戦争は8カ月目に入ったが、出口は一向に見えない。
イスラエルは、これまでイスラム組織ハマスの戦闘員1万3000人を殺害したと主張している。その数字が確かなら、負傷したり戦闘不能になった戦闘員の数は少なくともその2~3倍と推定できる。
戦争が始まる前、イスラエルはガザにいるハマス戦闘員を約3万人と推定していた。この数字も額面どおりに受け取るならば、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の言葉は正しいのかもしれない。彼は、ガザ南部の都市ラファに残るハマスの最後の大隊を排除すれば、ハマスを壊滅させられると主張している。
しかし、この論法には穴がある。イスラエルは、殺害したハマス戦闘員の数をどのように推定しているのか説明していない。ガザの混乱ぶりから考えれば、1万3000人という数字は、パレスチナ人の犠牲者の総数3万5000人のうち戦闘任務に就ける年齢(18~40歳)の男性の概数を基に割り出した大ざっぱな数字でしかないだろう。
さらに、もし残存する戦闘員がラファの地下トンネルに隠れているとすれば、攻撃を逃れるためにトンネル網を利用して移動する可能性もある。実際にイスラエル軍とメディアは、イスラエルが何カ月も前にハマスを一掃したと主張していたガザ中部や北部に、ハマス戦闘員が再び集結しているとしている。
もっと重要なのは、イスラエルがハマスの最高幹部2人を排除できていないことだ。昨年10月7日のイスラエル襲撃の首謀者である政治部門の指導者ヤヒヤ・シンワールと、軍事部門の司令官ムハンマド・デイフである。この2人が野放しのうちは、イスラエルが勝利を宣言することはできない。
イスラエルは、ハマスに捕らえられている残りの人質も救出できていない。昨年10月7日にハマスに拉致された約240人のうち、軍事作戦によって解放されたのはわずか3人。これ以外に、交渉やハマスの一方的な決定によって100人強が解放された。
ネタニヤフに3つの圧力
国際社会では、イスラエルを非難する声が急拡大している。各国の大学で反イスラエルの抗議デモが展開され、先日開催されたヨーロッパの国別対抗歌謡祭「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」では、イスラエル代表がすさまじいブーイングを浴びた。
ネタニヤフがラファ侵攻に踏み切ったことを受け、ジョー・バイデン米大統領はイスラエルへの一部弾薬の供与を保留した。ただし、これは象徴的な措置にすぎず、バイデン政権はイスラエル向けに新たに10億㌦相当の兵器を供与する手続きを進めている。
戦争の引き金となった昨年10月の奇襲攻撃の狙いを、ハマスは明らかにしていない。だが、次の3点が推測できる。
第1に、サウジアラビアとイスラエルが和平合意に達しつつあったなか、パレスチナの大義を中東の最優先課題に引き上げること。第2に、世界最大の「屋根のない監獄」と呼ばれるガザの惨状に世界の注目を集めること。そして第3に、イスラエルをあおって過剰な武力行使に駆り立て、国際社会からの非難を引き出すことだ。
この理屈でいけば、イスラエルはハマスが仕掛けた罠にまんまとはまったことになる。
ハマス壊滅の目標には程遠く、国際社会でイスラエル批判が高まるなか、ネタニヤフは3方向からの圧力によって窮地に追い込まれている。
第1の圧力は、イスラエル史上最も右寄りの政権内部からのものだ。なかでも強硬派のベザレル・スモトリッチ財務相とイタマル・ベングビール国家治安相は、ネタニヤフが長期の停戦に同意すれば、閣僚を辞任して選挙の実施に向けて動くと語っている。最近の世論調査ではネタニヤフの退任を望む国民が71%に上っており、すぐに選挙が行われれば敗北はほぼ確実だ。
ポスト9.11との類似
第2の圧力は、今もハマスに拘束されているとみられる約130人の人質の家族や支持者からのものだ。彼らは人質解放と引き換えに停戦を受け入れるよう、ネタニヤフに圧力をかけ続けている。
そして第3は、ネタニヤフの一番の盟友であるバイデンからの圧力。11月に大統領選を控えるバイデンは、この戦争をできるだけ早く終わらせたい。戦争が長引けば、進歩派やアラブ系アメリカ人の票を失いかねない。弾薬供与の保留は、バイデンの忍耐が限界に達しつつあることをネタニヤフに伝えるシグナルの1つにすぎなかった。
戦争が長引くなかで浮き彫りになってきたのは、イスラエルにパレスチナ人と共存するための長期戦略がないことだ。停戦に合意したとしても、その後の計画が全く見えない。計画の欠如が既にガザ北部で危険な権力の空白をつくり出し、そこでギャングや部族組織、犯罪者が幅を利かせている。
カート・キャンベル米国務副長官は先頃、現在の状況は9.11同時テロの後、アメリカがイラクとアフガニスタンで直面したものに似ていると警告。「(イラクとアフガニスタンでは)一般市民が退避した後も、多くの暴力や反乱が起きた」と述べた。
ガザは今後、どうなるのか。イスラエルもパレスチナも、イスラエル軍が長期にわたってガザを再占領する状況は望まないだろう。しかもネタニヤフは、いまヨルダン川西岸の一部を統治するパレスチナ自治政府がガザの統治を引き継ぐことは認めない姿勢をはっきり示している。
だが部族組織の指導者らがイスラエルに代わってガザを管理するというネタニヤフが好む方法は、対立する組織間の小競り合いや腐敗を招く恐れがある。一方、中東の近隣諸国や国連などの外部勢力が関与するという選択肢は、ネタニヤフが支持していない。
戦闘地域から別の戦闘地域へと避難を続けるパレスチナの住民は、もう希望を失いつつある。ラファのある地域指導者はこう語った。
「戦争は全てを変えた。だが何より問題なのは、安全が消え去ったことだ。弱者に残されたものは何もない。生き残るのは強者だけだ」【5月21日 Newsweek】
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【政権内部の亀裂も】
政権内極右勢力からの突き上げ、人質救出を求める家族ら国民世論、自身の大統領選挙への影響を懸念するバイデン大統領からの自制強要・・・・ネタニヤフ首相が直面している圧力はまだ他にもあります。
国内的には、閣内では政敵ガンツ前国防相とのガザ地区の将来計画をめぐる路線対立が危険なレベルに達しています。
****イスラエル戦時内閣、足並みの乱れ浮き彫りに ガンツ前国防相が“ガザ地区統治”計画案の策定を要求 ネタニヤフ首相は反発****
イスラエルのガンツ前国防相は、戦闘終結後のガザ地区の統治などを含む計画案を来月8日までに策定するよう求めました。ネタニヤフ首相は反発していて、戦時内閣の足並みの乱れが浮き彫りになっています。
ロイター通信によりますと、イスラエル戦時内閣の一員であるガンツ前国防相は18日、戦闘終結後のパレスチナ自治区ガザ地区の統治などに関する6項目の計画案を提示しました。
イスラエルが治安管理を続ける一方、パレスチナや欧米、民政部門などが関与する国際的な枠組みで統治する案などが掲げられていて、こうした項目が盛りこまれた計画が来月8日までに策定されなければ、連立内閣から中道政党を離脱させると述べました。
ネタニヤフ首相は15日に、戦闘終結後はイスラエルがガザ地区の軍事的責任を持つと述べていて、イスラエルメディアによりますと、ガンツ前国防相の発言に対し、「イスラム組織ハマスではなく、首相に最後通告を突きつけるのか」と反発したということです。
ガザ地区の統治をめぐっては、ガラント国防相もイスラエルが統治に関与することに反対の立場を示していて、戦時内閣での足並みの乱れが浮き彫りになっています。【5月19日 日テレNEWS】
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【国際刑事裁判所(ICC)はネタニヤフ首相の逮捕状請求 欧州3各国のパレスチナ国家承認 強まる一方の国際圧力】
国際的なイスラエルへの圧力は強まる一方です。
****ICC、ネタニヤフ氏とハマス幹部の逮捕状請求 米など猛反発****
国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任検察官は20日、パレスチナ自治区ガザでの戦闘を巡り、戦争犯罪と人道に対する罪の疑いでイスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相のほか、イスラム組織ハマス幹部3人の逮捕状を請求したと発表した。
これに対し、ネタニヤフ首相本人は猛反発。米国や英国からも批判的な声が上がっている。逮捕状を発行するに十分な証拠があるかどうかは、予審裁判部が今後判断する。
カーン氏は声明で、戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で「刑事責任を負う」と信じるに足る十分な根拠が得られたと指摘。
これに対し、ネタニヤフ首相本人は猛反発。米国や英国からも批判的な声が上がっている。逮捕状を発行するに十分な証拠があるかどうかは、予審裁判部が今後判断する。
カーン氏は声明で、戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で「刑事責任を負う」と信じるに足る十分な根拠が得られたと指摘。
「イスラエルは他の全ての国と同様に国民を守るために行動する権利があるが、こうした権利は国際人道法を順守する義務を免除するものではない」とし、イスラエルが行ったとされる人道に対する罪は「国家政策に基づくパレスチナ民間人に対する広範かつ組織的な攻撃」の一部との見解を示した。
その上で、イスラエルが食料、水、医薬品、エネルギー源などの「人間の生存に不可欠な物資」を民間人から組織的に奪っていたことを示す証拠が得られているとし、ネタニヤフ首相とガラント国防相は故意に多大な苦しみを引き起こし、戦争犯罪として殺人を犯したことに責任を負っているとした。
ICCはハマス最高指導者のハニヤ政治局長ら3人の逮捕状も請求。ハマス幹部のサミ・アブ・ズフリ氏は「被害者と加害者を同一視するものだ」と非難し、逮捕状請求の取り消しを要求した。
イスラエルのネタニヤフ首相は「ICC検察官が、民主的なイスラエルと大量殺りくを行うハマスとを比較したことに嫌悪感を抱く。イスラエル国民を虐殺し、レイプし、誘拐したハマスと、正義の戦争を戦っているイスラエル軍兵士を比較することなどできるだろうか」と激しく反発した。
その上で、逮捕状請求は不合理であり、イスラエル全体を標的にしたもので「新たな反ユダヤ主義」の姿だと批判した。(後略)【5月21日 ロイター】
その上で、イスラエルが食料、水、医薬品、エネルギー源などの「人間の生存に不可欠な物資」を民間人から組織的に奪っていたことを示す証拠が得られているとし、ネタニヤフ首相とガラント国防相は故意に多大な苦しみを引き起こし、戦争犯罪として殺人を犯したことに責任を負っているとした。
ICCはハマス最高指導者のハニヤ政治局長ら3人の逮捕状も請求。ハマス幹部のサミ・アブ・ズフリ氏は「被害者と加害者を同一視するものだ」と非難し、逮捕状請求の取り消しを要求した。
イスラエルのネタニヤフ首相は「ICC検察官が、民主的なイスラエルと大量殺りくを行うハマスとを比較したことに嫌悪感を抱く。イスラエル国民を虐殺し、レイプし、誘拐したハマスと、正義の戦争を戦っているイスラエル軍兵士を比較することなどできるだろうか」と激しく反発した。
その上で、逮捕状請求は不合理であり、イスラエル全体を標的にしたもので「新たな反ユダヤ主義」の姿だと批判した。(後略)【5月21日 ロイター】
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更に、スペイン、アイルランド、ノルウェーの欧州3カ国がパレスチナ国家を承認すると発表。
“英BBC放送などによると、少なくとも140カ国がパレスチナを国家承認しているが、米国をはじめG7は未承認。パレスチナは3カ国の決定を悲願の独立国家樹立や国連正式加盟への追い風にしたい考えだ。 今回の承認表明により欧米諸国の間での立場の違いが表面化した。”【5月22日 共同】
****イスラエル孤立さらに鮮明に 世論反発で政権に求心力も、欧州3カ国のパレスチナ国家承認****
アイルランドなど欧州3カ国が22日、パレスチナを国家承認すると表明し、国際社会で進むイスラエルの孤立が印象付けられる形となった。イスラエルのネタニヤフ首相は、同国を奇襲したイスラム原理主義組織ハマスなどを勇気づける「テロリズムへの褒美」になるとして批判した。
イスラエルは第3次中東戦争(1967年)でパレスチナ人が多く住むヨルダン川西岸とガザを占領し、ガザではハマスと戦闘を続けている。3カ国のパレスチナ国家承認には、こうした実態を変える実効力はなく、象徴的な意義にとどまる。
とはいえ、ガザの民間人に大きな犠牲が出ているイスラエルの軍事攻撃への反感は根強く、外交にも影響を広げつつある。
バイデン米政権はイスラエルがガザ最南部ラファで行うとする地上作戦に反対し、兵器供与の停止をちらつかせている。5月には国際刑事裁判所(ICC)の検察官がネタニヤフ氏らの逮捕状を請求したほか、国際司法裁判所(ICJ)は1月に始めた審理でジェノサイド(集団殺害)を防ぐ「あらゆる措置」を取るようイスラエルに求めた。
一方、イスラエルではパレスチナ国家を建設して共存を図る「2国家解決」の支持は少数派で、ネタニヤフ政権も一貫して反対してきた。
ロイター通信は、欧州3カ国の動きはイスラエル国内で政権の求心力強化につながり、イスラエルの孤立を是とする国内世論を促しかねず、「非生産的だ」などとする識者の見方を伝えた。【5月23日 産経】
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ドイツのベーアボック外相は「『象徴的な承認』ではなく、政治的な解決が必要だ」と述べ、イスラエルとパレスチナの当事者間の交渉を呼びかけています。【5月23日 共同より】
フランスのステファヌ・セジュルネ外相は22日、同国がパレスチナを国家承認するのは「タブー」ではないが、今は適切な時期ではないとの見解を示しています。【5月23日 AFPより】
一方、次期総選挙で保守党からの政権奪還がほぼ確実視されているイギリス野党・労働党のスターマー党首は24日、総選挙で勝利すればパレスチナ国家を承認したいが、承認は和平プロセスの適切な時期に行う必要があると述べています。【5月27日 ロイターより】
国内外で四面楚歌的な圧力・批判に直面するネタニヤフ政権ですが、極右政党の激しい突き上げもあってラファ侵攻を主張しています。そうした極右勢力を支持しているのはどういう人々か?
****誰が極右政党を支持しているのか、イスラエルの止まらないガザ侵攻****
イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ南部ラファへの侵攻で、多くの死傷者が出ています。ネタニヤフ政権の事実上の「ガザ占領政策」に対し、イスラエル国内でも各地で反戦デモが続き、政権支持率は低迷しています。その一方で、「ガザ占領政策」を支持する声も根強くあります。
現在、極右政党と連立を組む第6次ネタニヤフ内閣には、首相よりも強硬な閣僚であるスモトリッチ財務相、ベングヴィル国家安全保障相らがいます。スモトリッチ財務相は極右政党の「宗教シオニズム」を、ベングヴィル安保相は「ユダヤの力」を率いています。2022年11月1日に行われた総選挙では、これらの極右政党が議席を倍増させました。いったい、イスラエルの中のどのような人たちが極右政党を支持しているのでしょうか。
ヨルダン川西岸の若い世代は「入植者」との意識を持たず
1967年の第3次中東戦争で、イスラエルがヨルダン川西岸を占領して以来、イスラエル人の入植が進み、今日では70万人以上のユダヤ人が住んでいます(同地域におけるパレスチナ人居住者は約300万人)。国際法の観点からは、イスラエル人の同地域への入植は違法とされています。
同地域におけるイスラエル人は第2世代や第3世代に広がっており、彼らはここで生まれ育ち、ヨルダン川西岸地域を自分たちの生まれ故郷と見なしています。
それにもかかわらず、パレスチナ人との争いが絶えず、なぜ、自分たちの故郷に、邪魔な異邦人がいるのかという不満を募らせています。若い世代は、自分たちが「入植者」であるという意識を持っておらず、その土地での生存権を当然のごとく主張し、原住者のパレスチナ人を完全駆逐することを目的としています。
そして、SNSなどを効果的に活用し、全イスラエルに向けて、ユダヤ人の権利を訴えているのです。極右政党の集会に集う若い熱狂的な支持者はこのような形で、連帯しています。(中略)
極右政党の一つである「宗教シオニズム」を率いるベザレル・スモトリッチ財務相はヨルダン川西岸の入植者に厚い支持層を持っています。ヨルダン川西岸出身(生まれはゴラン高原)で、イスラエルによる同地域の併合とユダヤ人の権利拡大を主張しています。
核兵器使用発言で物議を醸した閣僚も
スモトリッチ財務相はヨルダン川西岸の占領行政を担当する特任担当大臣(Additional minister) を兼任しており、同地域の入植をかつてないほど急増させ、また、入植支援活動を積極的に行うなどして、支持層を固めています。現在、自身が率いる「宗教シオニズム」から同氏を含めて3名が閣僚となっています。
もう一つの極右政党「ユダヤの力」を率いるイタマール・ベングヴィル党首は新設の国家安全保障相に就任しています。治安を担当する閣僚であり、警察や公安組織を統括します。
特に、ヨルダン川西岸の警察行政を統括し、パレスチナ人排斥とイスラエル人保護の強硬な施策を推進しています。スモトリッチ財務相同様に、同地域の有権者や強硬派の支持を得ています。
ベングヴィル安保相は、バールーフ・ゴールドシュテインというユダヤ民族主義者の肖像を自宅に掲げていたことで知られています。ゴールドシュテインは1994年、29名のパレスチナ人を射殺しました(マクペラの洞窟虐殺事件)。
ベングヴィル安保相率いる「ユダヤの力」からも、同氏を含めて3名が閣僚となっています。その内の1人、アミハイ・エリヤフ文化遺産相は昨年11月5日、ガザ地区に核爆弾を投下することも選択肢の一つだと発言し、物議を醸しました。
ハイテク、軍需関連産業に強硬派支持の傾向
1993年に調印されたオスロ合意での中東和平プロセスが失敗していく状況で、ヨルダン川西岸を含むイスラエルの入植地で、ユダヤ人とパレスチナ人の対立が激化し、イスラエル人の不安や不満が募ります。しかし、中道左派は何一つ、有効な手立てを打つことができませんでした。
2021年には、ガザ地区で軍事衝突が発生し、イスラエル人とパレスチナ人が抗争状態となりました。ヨルダン川西岸の治安悪化などを受けて、同地域の事実上の併合推進を主張する勢力が伸長し、極右政党の台頭を招いたのです。
「宗教シオニズム」や「ユダヤの力」に比べれば、ネタニヤフ首相率いる「リクード」は決して強硬とは言えず、中道路線に霞んで見えるほどです。
ではどのような層が、とりわけ政治に強い影響力を持つ産業界はこうした極右政党を支持しているのでしょうか。
産業界のほとんど、特に地場産業は極右政党を支持していません。地場産業はパレスチナ人を労働者として雇用しており、パレスチナ人との対立を望んでいないのです。
しかし、ハイテク産業は地場産業とは異なり、パレスチナ人との直接的な接触が少なく、また、特に軍需関連企業は戦争によって特需に見舞われるため、強硬派を支持する傾向が強いと言えます。(後略)【5月27日 宇山 卓栄氏 JBpress】
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