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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

台湾  軍事面、情報戦、外交で圧力をかけて内部から揺さぶる中国

2023-04-28 23:43:06 | 東アジア

(台湾北部・新竹市で27日、化学物質の輸送中に無人機の攻撃を受けた想定で実施された訓練=鈴木隆弘撮影【4月28日 読売】)

【中国 軍事的圧力の「やり過ぎ」は避ける 来年1月の総統選を控え情報戦で内部から揺さぶる戦略も】
あくまでも中国から見たら・・・という話ですが、台湾の存在は「国家統一」に欠けている最後のピースであり、「中華民族の偉大なる復興」を「中国の夢」とする習近平国家主席は、自らの任期中になんとしても台湾統一を成し遂げてレガシーを作りたい、鄧小平を超えて、毛沢東と並び立つ存在になりたい・・・それが自分の「使命」であると考えているのでしょう。

習近平国家主席は4月6日、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長に対し、「台湾問題は中国の核心的利益中の核心だ」と、中国にとって最大の関心事であることを明確にしています。

中国の台湾侵攻があるのか、それはいつなのか・・・いろいろと取り沙汰されてはいますが、当然ながら誰もわかりません。おそらく習近平主席自身も明確な計画を定めている訳でもないでしょう。状況次第で・・・・といったところ。

もちろん、軍事的にも成否が不透明で、アメリカとの瀬戸際の対立を惹起し、厳しい国際的制裁が課されることが明らかな軍事作戦を行うことなく、台湾に親中国政権が誕生して平和的に中台統一ができれば、それに越したことはないでしょう。

先ずは来年1月に行われる台湾総統選挙で、中国への距離感を明確にする民進党ではなく、中国との関係を重視する国民党の勝利を画策しているところ。

そのためにも、いつでも軍事進攻ができる態勢を整え、それを台湾側に見せつけることで圧力をかける姿勢をとっています。 ただし、これも「やり過ぎる」と台湾世論を硬化させて逆効果となりますので、さじ加減が必要。

****中国軍機71機が台湾周辺で活動 「報復措置」どこまで***
中国人民解放軍は8日、台湾周辺で軍事演習を始めた。台湾の蔡英文総統が米国を訪問してマッカーシー米下院議長と会談したことへの報復措置。

中国軍東部戦区の施毅(し・き)報道官は8日、「『台湾独立』の分裂勢力と外部勢力による挑発に対する重大な警告であり、国家主権と領土の一体性を守り抜くために必要な行動だ」と主張した。(中略)

8日の演習の重点は、制海権や制空権の奪取や情報戦に関する統合作戦能力を検証し、台湾を「全方向で囲む」ものだとした。(中略)

昨年8月にペロシ米下院議長(当時)が訪台した際にも、中国軍は台湾を包囲する形で大規模な軍事演習を行った。演習は7日間にわたり続き、弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)にも着弾して地域の緊張が高まった。今回、弾道ミサイルの発射は現時点で確認されていない。
(中略)一方で、緊張を過度にエスカレートさせないよう報復の程度を調整している様子もうかがわれる。

中国外務省は7日、蔡氏が訪米した際に非公開会合を開いた米シンクタンクなど2団体への制裁を発表。ペロシ米下院議長(当時)が昨年訪台した際には、米国との軍事対話の停止などを表明したが、今回はそこまでは踏み込んでいない。

演習開始の時期も、マクロン仏大統領が7日に訪中を終えて帰国するのを待った可能性がある。

台湾世論に配慮し、昨年よりも抑制的な反応にとどめているとの見方もある。来年1月の総統選を前に、圧力を強化し過ぎれば中国脅威論に火がつき、中国側が敵視する与党、民主進歩党に有利になりかねないからだ。

習政権は、最大野党、中国国民党の馬英九前総統を7日まで中国に招いており、総統選をにらんで硬軟両様の構えで台湾に揺さぶりをかけている。【4月8日 産経】
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軍事演習終了後も軍事的圧力の常態化を狙っているような行動が続いています。

****中国軍機が演習終了後も台湾海峡中間線越え 軍事的圧力常態化狙いか****
台湾国防部(国防省)は11日、同日午前6〜11時に延べ26機の中国軍機が台湾周辺で活動し、うち延べ14機が台湾海峡の中間線を越えたり、台湾の防空識別圏に入ったりしたと発表した。

中国は蔡英文総統とマッカーシー米下院議長の5日の会談に反発して8〜10日に台湾周辺の海空域で軍事演習を行った。演習終了後も台湾に対する軍事的圧力を常態化させることを狙っているとみられる。

(中略)蔡氏は演習期間中に誤った情報を故意に拡散する動きがあったとした上で、「軍民が一致して、誤情報に惑わされることなく、民主主義の台湾を守ることが最も大事だ」と述べた。【4月11日 毎日】
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“誤った情報を故意に拡散する動き”・・・誤情報かどうかはともかく、情報戦略で台湾社会を内部から揺さぶることも中国の重要な戦略となっています。

****「台湾内部から揺さぶる」戦法に変更した中国****
(中略)
神保謙氏(国際政治学者で慶應義塾大学教授))そのなかで台湾の世論がどう分断されるか。「ずっと緊張ではないでしょう。いま財政を使うべきは、社会福祉や台湾のなかに使うべきでしょう」というような情報戦を仕掛けて、「なぜこんなに緊張してアメリカに付き合っているのだろう?」というイメージを増やそうとしているのだと思います。(中略)
現政権の国内政策への責任を追及し、支持率を落としていけば、先の統一選で民進党が敗北したのと同じような形で総統選に挑める。そのために中国はいろいろと工作しているのだと思います。

「軍事的なプレッシャーを掛け続けて民進党を勝たせてしまった」という反省から、内部から揺さぶりをかける(中略)

台湾内のSNSやメディアも含めて、中国にシンパシーを持つ人たちや中国本土から入り込んだ人たちによる工作は、間違いなく行われていると思います。(中略)

それがどれぐらい奏功するかはわかりませんが、これまで「軍事的なプレッシャーを掛け続けて民進党を勝たせてしまった」という反省が中国国内にあるのであれば、やはり内部から揺さぶりをかけることの有効性に、現在は賭けているのではないかと思います。【4月13日 ニッポン放送NEWS ONLINE】
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【台湾 昨年から戦災対応が中心となった災害訓練】
一方の台湾側では・・・

****「25年に中国軍が台湾に武力侵攻」想定、住民ら1000人が訓練参加…有毒物質漏えいも想定****
台湾北部の新竹市で27日、中国軍の攻撃を想定した住民動員訓練が行われた。中国の軍事的圧力が強まる中、有事の住民対応を確認した。

訓練は「2025年に中国軍が台湾に武力侵攻した」という想定で行われた。市政府や企業の職員、住民ら約1000人が参加し、高層ビルからの救助や住民避難、救援物資の配布などの手順を確かめた。

新竹市には半導体工場が多く、工場で使う有毒な化学物質が無人機の攻撃で漏えいした事態も想定し、半導体企業の消防隊が参加して対応した。

台湾各地で行われてきた恒例の災害訓練は、昨年から戦災対応が中心となった。【4月28日 読売】
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当初、こういう戦災対応の訓練は文字通りの「訓練」の意味合いの他に、中国の脅威を改めて住民(有権者)に認識させる効果を狙ったものかも・・・と邪推したのですが、新竹市の政治状況を考えると、やはり「邪推」かも。

新竹市は、昨年11月に野党・台湾民衆党の高虹安(こうこうあん)氏が、与党・民進党と最大野党・国民党の候補を退け、38歳の台湾最年少、かつ女性市長が誕生した都市。

台湾第3政党「台湾民衆党」は2024年1月の次期総統選に立候補を予定している柯文哲(かぶんてつ)氏が立ち上げた政党で、「今の民主進歩党(民進党)の台湾独立志向も、中台統一志向の国民党もどちらも非現実的」と指摘、「現状維持こそ台湾唯一の選択肢だ」というスタンスです。 ただ、「現状維持」と言いつつも、柯文哲氏は中国に友好的な言動が目立ちます。

「現状維持」ということでは、民進党支持者にしても、国民党支持者にしても、同じでしょう。本当に(中国との関係を危機的なものにする)「独立」や「統一」を支持しているのは一部でしょう。 問題は「現状維持」のために、具体的に中国とどのように向き合うか・・・です。

中国の軍事進攻が実際に行われた場合・・・・SNSに流出した米機密文書によれば、台湾の防空能力が不足しているとのこと。まあ・・・常識的にもそうでしょう。

****台湾、対中国で防空能力不足 米分析、制空阻止も困難****
米紙ワシントン・ポスト電子版は15日、交流サイト(SNS)に流出した米機密文書を基に、台湾の防空能力が不足しており、台湾有事の際に中国軍の制空権掌握を阻止することも困難との米国防総省の分析を伝えた。ミサイル攻撃に対処できない可能性を指摘した。

今回報じられた国防総省の分析は、台湾軍の航空機のうち任務遂行可能な状態なのは辛うじて半数以上で、航空機を分散させる前に攻撃を受ければ大きな問題になると指摘。

ミサイル1発に対して防空ミサイル2発で迎撃を図る台湾の戦略も、中国軍が複数の移動式発射台から大量に発射すれば機能しない可能性があると懸念を示した。【4月16日 共同】
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やはり、戦災対応の訓練が必要です。

【中国 中台以外の「内政」への口出しに反発】
中台の当事者以外の国の台湾に関する発言では、フランス・マクロン大統領の「欧州は台湾問題で米中に追従すべきでない」「われわれのものではない危機にとらわれれば、ワナに陥る」との発言が話題になりましたが(4月11日ブログ“フランス・マクロン大統領 台湾問題についてアメリカ追随を否定し、「われわれの危機ではない」”)、これに反論したのがポーランド首相。

****ポーランド首相、「近視眼的な」中国迎合を非難 マクロン氏念頭か****
訪米中のポーランドのマテウシュ・モラウィエツキ首相は13日、エマニュエル・マクロン仏大統領を念頭に、欧州人が中国との関係強化を目指せば、歴史的な過ちを犯す可能性があると非難した。

モラウィエツキ氏は首都ワシントンのシンクタンク「大西洋評議会」で、「(一部の欧州諸国が)中国での欧州連合製品の販売を促進しようと、地政学的に大きな犠牲を払って近視眼的に中国に目を向け、対中依存を強めている」「ロシアを相手に犯したのと同じ、非常に大きな過ちを中国相手に犯そうとしている」と訴えた。

また、マクロン氏の名前こそ挙げなかったがその発言に言及して、「台湾は関係ないと言っていては、ウクライナのきょう、あしたを守ることはできない」「ウクライナが陥落し、征服されれば、翌日にも中国が台湾を攻撃してもおかしくない」と述べた。

さらに「欧州の自立というと聞こえはいいが、それは欧州が重心を中国に移し、米国との関係を断ち切ることを意味する」「戦略的自立という概念が、判断を誤り自ら災難を招くということを意味するのであれば、まったく理解できない」と語った。 【4月14日 AFP】
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中国は、このポーランド・モラウィエツキ首相発言に反発しています。

****中国、台湾巡るポーランド首相発言を内政干渉と非難****
中国は14日、ロシアのウクライナ侵攻と中国の台湾攻撃の可能性を結び付けたポーランド首相の発言を内政干渉として非難した。

ポーランドのモラウィエツキ首相は13日、ワシントンのシンクタンクでの講演で、ウクライナが敗北すればその後すぐに中国が台湾攻撃を決意するかもしれないと発言した。

これについてワルシャワの中国大使館は「13日にポーランド政府の高官が台湾とウクライナの問題を公然と比較し、ウクライナが戦争に負ければ中国が翌日台湾を攻撃すると根拠のない主張をした」と反発。

「ウクライナ問題を口実に台湾問題との関係をほのめかす試みは下心を持った政治工作であり、国家主権と領土保全の尊重という原則を踏みにじり、中国の内政に対する明白な干渉だ」と主張した。

これに対しポーランドの安全保障当局の報道官は、中国は台湾に関する中国の主張を強制しようとしていると非難。

ツイッターに「ポーランド首相に対する中国側のプロパガンダ、ワルシャワの中国大使館の運営スタイル、中国政府の政策遂行のやり方は、中ロの戦術同盟がますます多くの領域をカバーしていることを示している」と投稿した。【4月17日 ロイター】
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また、韓国・尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が、台湾海峡の緊張について「(中国による)力による現状変更の試みのために緊張が生じたが、われわれは国際社会とともに、このような変化には絶対反対する」などと発言したことで、「中国の内政問題だ。他人が口出しすることではない」(中国外務省)、「中国の国家としての格を疑わせる深刻な外交的欠礼だ」(韓国外務省)と批判合戦になっていることは、4月24日ブログでも取り上げました。

中国は、ポーランドや韓国のような台湾問題への第三国の干渉を嫌っています。

****台湾問題での非難は「危険な結末」招く 中国外相****
中国の秦剛外相は21日、このところ台湾問題をめぐり中国を非難する言論が相次いでいると指摘し、対中批判は「危険な結末」を招くと警告した。

秦氏は上海で開催されたフォーラムで講演し、「最近、軍事力や強制により台湾海峡の現状を一方的に変更しようとし、海峡の平和と安定を脅かしているとの中国非難の奇怪な言論がみられる」と述べた。

その上で「こうした主張は国際関係や歴史的な公正さに関する基本的な共通認識に反している」とし、「その論理は荒唐無稽であり、危険な結末を招く」と警告した。

さらに秦氏は「台湾問題は中国の核心的利益の中でも核心にある」と強調。「中国の主権や安全保障を脅かす、いかなる行動に直面しても後退することはない」と言明した。 【4月21日 AFP】
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【進む台湾との外交関係切り崩し 次は南米パラグアイか 米中の綱引きも】
一方、中国は台湾と外交関係を維持する国の切り崩しで、台湾への圧力を強めています。
中米ホンジュラスが3月に台湾と断交したことで、台湾が外交関係の残るのは13カ国のみ。

「われわれには(中国と外交競争を繰り広げられるほどの)十分な資金力はない」(台湾高官)というのが現実。

特に、アメリカの「裏庭」でもある中南米における中国の攻勢が目だち、ホンジュラスの次は今月30日に大統領選挙を控える南米パラグアイではないかと推測されています。

野党候補エフライン・アレグレ氏は、勝利すれば台湾と国交を断絶し、中国と国交を結ぶと語っています。重要な大豆と牛肉の輸出拡大が期待できるとも。

もっとも、“一部のアナリストは、アレグレ氏が勝った場合でも、台湾との国交断絶に議会の承認が得られるかは疑問だとしている”【4月6日 ロイター】という指摘もあります。

****中国市場を求める「緑の黄金」 農業国パラグアイ、米中対立の渦中****
広大な大地のはるか先まで、緑一色の大豆畑が広がっていた。南米ブラジルと国境を接するパラグアイ東部ペドロ・フアン・カバジェロ。「面積は680ヘクタールで、収穫量は2400トンを軽く超えるよ」。ファビアン・ダバロスさん(41)が、畑を見渡しながら言った。収穫された大豆は家畜用の飼料などとして、隣国ウルグアイやアルゼンチンを経由して、欧米に輸出している。

「緑の黄金」。日本人移住者が1950年代に栽培したのが始まりとされる大豆は、今ではパラグアイでこう呼ばれる。穀物類の有力業界団体「パラグアイ穀物・油糧作物輸出業者協会(CAPECO)」によると、2022年の大豆の輸出量は世界6位。農業国であるパラグアイの経済をけん引する。ダバロスさんは言う。「良い買い手がいるなら、もっと畑を拡大したい」

ダバロスさんら農家が見据えるのは、巨大な中国市場だ。CAPECOのウーゴ・パストレ幹部も「大豆を大量に買う中国は魅力だ」と大豆の輸入依存度が高い中国市場に期待感を示す。同様の思いを、牛肉輸出量で世界9位の畜産業界も抱く。(中略)

主要産業である大豆と牛肉の業界からのこうした要求は、中道右派ベニテス大統領(51)の任期満了に伴い30日に投開票される大統領選にも影響を及ぼしている。

パラグアイは南米で唯一、台湾と外交関係を維持している。与党コロラド党のサンティアゴ・ペニャ元財務相(44)が台湾との関係維持を主張するのに対し、農業票の取り込みを図る野党連合のエフライン・アレグレ元公共事業・通信相(60)は、当選すれば中国と国交を樹立すると示唆している。選挙は両氏による事実上の一騎打ちの構図で、両氏の支持率は激しく競り合っている。

中国は、台湾との断交を国交樹立の条件にするが、パラグアイでは断交に慎重論も強い。背景にあるのは、中国と対立し台湾との連携を深める米国の存在だ。

中南米は米国の「裏庭」とも呼ばれるが、中国が外交攻勢を強めて影響力の拡大を図り、台湾と断交して中国と国交を結ぶ国が相次いでおり、米国は警戒を強めている。

パラグアイにとって、米国は政府開発援助(ODA)の主要国の一つで、貿易額でも上位に名を連ねる。台湾と断交して中国との関係を強化することは、対米関係を難しくするリスクを伴う。

パラグアイ政治の分析などを行うシンクタンク「民主主義発展研究所(DENDE)」のアルベルト・アコスタ所長は今回の大統領選についてこう指摘する。「パラグアイは今、激しさを増す米中の対立に巻き込まれており、次期政権には外交面で重い課題がのしかかる」【4月27日 毎日】
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ここでも米中の“綱引き”の様相のようです。
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