孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

韓国  少子化など日本と相似的な社会問題 全く異なる戦後の政治体験

2023-04-09 23:42:32 | 東アジア

(李承晩政権のもと、処刑される保導連盟員(共産党関係者とみなされる者が加入した監視統制組織) 1950年 被害者は公式に確認されているもので4934人、20万人から120万人とする主張もある。【ウィキペディア】)

【強まる出産・結婚を避ける傾向】
しばしば取り上げているように、日本以上に少子化が進行しているのが韓国。

1人の女性が一生の間に産む子どもの数を示した合計特殊出生率は2022年に0.78まで低下。少子化に悩む日本の1.27程度を大きく下回り、世界最低と数字となっています。

韓国も10年程前の2012年には1.30と今の日本と同じような水準でした。その後低下し続け、0.78に。
日本も同じような道をたどるのかも・・・。

韓国で出産を避ける要因にいつも挙げられるのは経済的負担です。
韓国では子ども1人当たりの大学卒業までの養育費が3億〜4億ウォン(約3千万〜4千万円)かかるとされています。

中央日報が全国の20〜39歳の男女800人を対象に実施した調査によると「子どもを産む意向がある」と答えた女性は41.9%、「子どもを産まない方がいい」と答えた女性は41.7%で同程度でした。

「必ず産みたい」28.9%に対し、「必ずしも産まなくてもいい」が66.9%。

男性は女性より子どもがほしいと考える割合が多かったものの、それでも「必ずしも子どもがいなくてもいい」が44.8%に上り、男女とも、子どもを産み育てることが当然ではなくなってきたことを示しています。

最近では、出産だけでなく、そもそも結婚自体を避ける傾向が強まっています。

****国民の半数「結婚しなくてもいい」 10〜20代過半数「子ども不要」=韓国****
韓国国民の半数は結婚しなくてもよいと考えていることが23日、分かった。特に10〜20代の過半数は結婚後も子どもを産む必要がないと考えている。

◇結婚・出産に対する認識の変化で出生率は過去最低
韓国の社会像が一目で分かるよう統計庁がまとめた「2022韓国の社会指標」によると、昨年、満13歳以上の国民のうち「結婚すべきだ」と考えている人の割合は50.0%だった。残る約半数は「結婚しなくてもよい」と考えていることを意味する。男性は半数以上の55.8%が結婚すべきだと考えているが、女性は44.3%にとどまった。

「結婚後に子どもが必要」と考えている人は65.3%だった。しかし10代は「子どもが必要」と考えている人の割合が41.1%で最も低く、20代はこの割合が44.0%、30代は54.7%にとどまった。10〜20代の過半数が「結婚しても子どもは産まなくてよい」と考えている。

韓国の昨年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの推定数)は0.78で、統計を取り始めた1970年以降で最も低かった。結婚や出産に対する認識が変化する中、女性の平均出産年齢が上昇した影響とみられる。

また、親と子で構成された伝統的な核家族も次第に減っていることが分かった。2021年の1世帯当たりの世帯員数は2.3人で、2000年に比べ0.83人減少した。

全世帯のうち、1人世帯が33.4%と最も大きな割合を占め、3人世帯は19.4%、4人世帯は14.7%にとどまった。

◇国民の5人に1人「寂しい」
昨年、韓国国民のうち「寂しい」と感じた人の割合は19.2%だった。国民の5人に1人は社会的孤立感を感じていることを意味し、60歳以上では寂しいと感じた人が26.2%に達した。

「自分の暮らしに満足している」と答えた人は75.4%で、残り約25%は不満を感じていることが分かった。中高生も全般的な学校生活に「満足している」と答えた人の割合が51.1%にとどまり、2年前の調査に比べ8.2ポイント下落した。(後略)【3月23日 聯合ニュース】
******************

【熾烈な競争社会が生むニート】
養育費が膨らむのは習い事や塾通いのため。

小学生なら、テコンドーやピアノ(週5回が基本)、更に水泳、絵画などの習い事に加え、英語や算数、論述などの塾に通うとか。2〜3カ所通うのは当たり前で、小学生から大学医学部を目指す塾もあります。熾烈な受験戦争は小学生から始まっている・・・・といった実態。

受験競争が終わっても、次は就職競争。
韓国では一部大企業とその他中小企業の賃金格差が非常に大きいことが知られています。そのため大企業を目指した熾烈な就活が始まります。

(ほぼ10ウォン=1円ですから、下記記事のウォン表示の十分の一が円表示になります)
****2021年、韓国会社員の平均月給333万ウォン…大・中小企業の格差は2.1倍に拡大****
2021年、韓国の会社員の月平均賃金は333万ウォンであることが分かった。大企業の平均賃金は中小企業より2倍以上多かった。

統計庁は28日、このような内容を盛り込んだ「2021年の賃金勤労働き口所得(報酬)結果」を発表した。

2021年の全体賃金労働者の平均所得は333万ウォンで、1年前より4.1%増加した。

所得順で中位所得は250万ウォンとなり、3.3%増えた。所得区間別には150万~250万ウォン未満が26.3%で最も多く、250万~350万ウォン未満(17.8%)、85万ウォン未満(13.8%)などの順だった。

同年12月基準の営利企業のうち、大手企業の労働者の平均所得は月563万ウォン(税引き前基準)で、1年前より6.6%増加した。一方、中小企業の労働者の平均所得は266万ウォンで、2.9%増に止まった。

大企業勤労者の所得増加率は関連統計作成が始まった2016年以後最高を記録した。反面、中小企業は最低を記録した。大企業労働者の所得増加率も初めて中小企業を上回った。

大企業と中小企業の所得格差は2.12倍(297万ウォン)で、2020年(2.04倍・270万ウォン)より拡大した。非営利企業の労働者の平均所得は3.0%増えた335万ウォンだった。

性別基準では男性勤労者の平均所得は389万ウォンで1年前より4.7%増え、女性勤労者は256万ウォンで3.7%増加した。

女性労働者の平均所得は男性労働者の65.8%水準で、2020年(66.6%)より減少した。男性労働者の所得増加率が女性を上回った結果だ。

男女賃金勤労者間の所得格差は2017年の63.1%から2018年に64.8%、2019年には65.5%に減ったが、2021年には再び所得の格差が広がった。2021年、男性労働者の所得は女性の1.5倍水準を維持した。(後略)【2月28日 亜洲日報】
**********************

こうした「熾烈な競争社会」は、必然的にそこからドロップアウトする者を生みます。

****韓国で「若者のニート化」が急加速中…“就活放棄者”が前年比4万人超え、一体なぜ?****
日本におけるニートは「15歳〜34歳までの非労働層の若年者」を指し、「若年無業者層」とも言われている。
2022年の発表によると、2021年におけるニートの人数(15歳から39歳までの若年無就業者を対象)は、日本全国で75万人と報告されている。

韓国ネット民は辛辣「今の時代に生まれたのが悪い」
日本のニート率は2010年の60万人から2020年は69万人と、緩やかな上昇傾向にある。ニートの就業問題解決は、もはや無視することのできない社会問題と言える。

こうした状況は、お隣・韓国も同様だ。

韓国統計庁の国家統計ポータルによると、今年2月における非経済活動人口(就業者、失業者以外の人口)において、自身の活動状態を「休んだ」と答えた青年層(15〜29歳)が49万7000人に達したことがわかった。

これは2003年の統計作成開始以降では最大規模で、2022年2月の同調査(45万3000人)より4万4000人も増加している。

就活を諦めた理由としては「体調不良」(39.4%)が最も多く、「希望の仕事を見つけることが難しかった」(18.1%)、「退職以降休み続けている」(17.3%)が続いた。

また、同期間の青年就業者数は385万3000人と、2022年2月(397万8000人)より12万5000人減少したことがわかった。

こうした状況に、韓国国内では「子どもたちのためにも、国を挙げて就職支援すべきだ」という声が上がった一方、「新卒が大企業・高収入ばかり求めている」「両親が“大学にさえ行ってくれれば良い”という根拠のない教育をした結果」「仕事をしないで遊ぶのも良いが、親に寄生しないように」「今の時代に生まれたのが悪い」など、現状への批判的な意見も目立った。

若者たちも理想と現実の折り合いをつけるのは難しいだろうが、一歩ずつでも前に進んで欲しいものだ。【4月9日 サーチコリアニュース】
**************

なかなか厳しい社会です。

【支持率低下も対日重視の姿勢に変化は見られない尹錫悦大統領 背景に北の脅威】
政治面では、“尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は、元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟問題の解決策を発表して1か月が過ぎても、対日外交を巡る国内の強い批判に苦慮している”【4月8日 読売】という状況ですが、支持率低下は想定されていたことで、現在の「支持31% 不支持61%」と言うレベルは、「低下傾向」とも言えますし、強い「反日感情」を考えれば、この程度に持ちこたえているとも言えます。

****尹錫悦氏、対日外交巡る国内の強い批判に苦慮…野党の「反日攻勢」で支持率は下落傾向***
韓国の尹錫悦ユンソンニョル大統領は、元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟問題の解決策を発表して1か月が過ぎても、対日外交を巡る国内の強い批判に苦慮している。野党の「反日攻勢」による揺さぶりで支持率が下落傾向にある中、日米韓の連携の重要性を訴えることで理解につなげる模索が続く。

左派系最大野党「共に民主党」の広報担当者は7日、ソウルで行われた日韓の局長協議に先だって記者会見し、「誰が尹大統領に被害者(元徴用工ら)の権利を踏みにじる権限を与えたのか」と解決策を酷評した。被告の日本企業に賠償を命じた大法院(最高裁)判決に従うべきだと主張し、政府傘下の財団が賠償相当額を原告に支払うとする解決策の撤回を要求した。

韓国で関心の高い東京電力福島第一原子力発電所の「処理水」の海洋放出を巡っても政権批判を展開している。聯合ニュースによると、所属国会議員4人が7日、福島県を訪問して地方議員や住民らと面会。共に民主党は、処理水放出が「韓国の海や水産業に莫大ばくだいな被害を与える」と一方的に主張し、政権に対応を求めている。政権は科学的な分析に基づき判断するとの立場だ。

共に民主党は来年4月の総選挙に向け、「反日感情」を刺激して政権批判の機運を高めたい狙いとみられる。日韓首脳会談を巡っては、保守寄りの専門家からも「岸田首相から直接的な謝罪の言葉を引き出せなかった」との指摘が出るなど、政権の得点にはなっていない。

韓国ギャラップが7日に発表した世論調査では、尹氏の支持率は31%と低迷し、不支持率は今年に入って最高の61%だった。不支持の理由の約4割は「外交」と「日本関係」が占めた。

それでも、尹氏の対日重視の姿勢に変化は見られない。5日の会議で「北朝鮮の核の脅威を始めとする課題を克服するには、これまで以上に韓米日3か国の協力が重要だ。韓日関係の重要性はどれだけ強調しても足りない」と主張した。

尹氏は、日韓首脳会談で合意した安全保障対話の早期再開など、関係改善を一層進めたい考えだ。4月下旬に国賓で訪米し、5月には広島で開かれる先進7か国首脳会議(G7サミット)に招待国として参加する予定だ。外交で成果を上げ、支持率反転につなげられるかが課題となりそうだ。【4月8日 読売】
*******************

“尹氏の対日重視の姿勢に変化は見られない”・・・尹大統領は強い信念で行動する人のようですが、「日米韓の連携の重要性」ということでは気になるニュースも。

****米、韓国政府の通信傍受か 砲弾供与議論、文書流出****
安全保障上の機密を含む米国の文書が流出したとされる問題で、米紙ニューヨーク・タイムズは8日、米当局が韓国政府内の通信を傍受していることを示す文書も流出したと報じた。韓国大統領府は9日「米側と必要な協議を行う」と表明した。

文書にはロシアの侵攻を受けるウクライナを支援する米国に、韓国が砲弾を売却することを巡る韓国政府高官らの発言が記されている。

韓国は「ウクライナに殺傷兵器を提供しない」との方針を堅持し、米国の不足分を補う形で砲弾を輸出した。文書には尹錫悦大統領がバイデン大統領から電話を受け、兵器供与に関し圧力をかけられることを危惧していたことが記されていた。【4月9日 共同】
*******************

「北朝鮮の核の脅威」への対応ということで、最近目立つのが核兵器開発を望む動き。

****韓国は核兵器開発すべき、北朝鮮の脅威に対抗=ソウル市長****
韓国ソウルの呉世勲市長はロイターとのインタビューで、北朝鮮に対する防衛力を強化するため韓国は核兵器を開発すべきとの考えを示した。

「北朝鮮は戦術核の小型化や軽量化にほぼ成功し、少なくとも数十発の弾頭を保有している」と指摘し、「核兵器開発を手控え、非核化の大義を貫くべきだとの論理で人々を納得させるのがもはや難しい状況になっている」と説明した。

呉氏はこれまでもこの問題を提起しており、2月には韓国は核の選択肢を持ち続けるべきだと述べている。今回の発言は核保有についてこれまでで最も踏み込んだものとなる。

データリサーチが1日に公表した世論調査では、韓国国民の70%以上が核兵器開発を支持しており、反対は27%にとどまった。朝鮮半島で戦争が起きれば北朝鮮は恐らく核兵器を使うとの回答は59%だった。

呉氏は、ウクライナ危機により非核化の魅力は薄れ、核兵器が北朝鮮に対する最も効果的な抑止力になるという信念が強まったと述べた。

「ロシアはウクライナの領空を自由に侵犯し、爆撃機を飛ばし、ミサイルを発射する。一方、ウクライナは核保有国に対する心理的劣等感からロシア領をほとんど攻撃していない」と述べた。

また、韓国の核開発計画は中国などに対して北朝鮮の軍事力抑制のメッセージを送ることになると指摘。「国際社会から最初は抵抗があるかもしれないが、いずれは支持を得られると確信している」と語った。【3月13日 ロイター】
******************

【日本と全く異なる戦後の過酷な政治体験】
もちろん、技術的な問題は別にしても、国際社会の現状を考えれば、すぐに動き出すような問題でもありませんが、朝鮮戦争で悲惨極まる体験(数字はいろいろありますが、韓国側の軍の戦死者は約25万人、民間人死者は約100万人とも。それ以外に負傷者、離散家族なども。沖縄の体験を全土で経験したようなものでしょう)をしたことを考えれば、ウクライナの現状、本当にアメリカは助けてくれるのか?といったことも考え合わせて、当然に出てくる発想でしょう。

(朝鮮戦争は、日本にとっては特需景気によって戦争の疲弊から立ち直り、高度成長期に入る基盤を作ってくれました。そこらも日韓の経験には天地の開きがあります。)

むしろ、左派前政権時の北への融和姿勢の方が、日本としては理解に苦しむところですが、韓国では左右の対立、民主派への軍事政権の弾圧ということでは、これまた悲惨な歴史を経験して今日に至っています。

あまり日本では知られていませんが、朝鮮戦争(1950~1953)に先立つ1948年には済州島で「4.3事件」という左派弾圧が起きています。

****島民3万人虐殺 韓国・済州島「4.3事件」の“正当化”根強く…癒えぬ遺族の傷***
美しいビーチや豊かな自然から「韓国のハワイ」とも称される、済州(チェジュ)島。韓国随一のリゾート地として知られるが、この島には血塗られた過去がある。米軍政下だった1940年代後半から7年以上にわたり続いた「4.3事件」だ。

軍や警察が左派勢力の鎮圧を名目に、島民の1割にあたる3万人を虐殺したとされる4.3事件は、半世紀にわたりタブー視されたが、その後、韓国政府が「国家による暴力」と認めて謝罪。

最近では被害遺族に対する補償金の支給も始まり、地元の済州道は人権侵害の教訓としてユネスコの「世界記憶遺産」への登録を目指す。

一方で「虐殺は正しかった」などと主張する反対勢力の動きもあり、現在も遺族らは事件の傷跡に苦悩している。

政治思想関係なく…住民全員が「暴徒」遺族の証言
済州4.3平和財団によると、1948年4月3日、南朝鮮単独での選挙実施に反発した島の共産主義団体が武装蜂起した。

同年7月に就任した李承晩(イ・スンマン)初代大統領は武力制圧の過程で住民全員を暴徒と見なし「焦土化作戦」を取った地域もあり、政治思想とは無関係な女性や子供も多数巻き込まれたという。(後略)【4月6日 FNNプライムオンライン】
********************

“朝鮮戦争となると「朝鮮労働党党員狩り」は熾烈さを極め、1954年9月21日までに3万人、完全に鎮圧された1957年までには8万人の島民が殺害されたとも推測される。”【「28の未来へ」】

時代が下って1980年になっても、全斗煥軍事政権による民主派弾圧の「光州事件」(民間人死者168人)も起きています。今も韓国で左右の政治対立が激しいのも、こうした歴史を考えれば当然とも思われます。

冒頭に記したように、社会問題では日本と韓国は相似的な類似性がありますが、政治的な戦後の歴史は全く異なります。

日本と異なって韓国では第2次世界大戦後も政治的な事件で多くの犠牲者が出ています。また冷戦下の国際状況でベトナム戦争に参加し、5000人以上の戦死者も。

“日本と韓国では、第2次世界大戦後の政治状況の根本構図が異なるため、国同士、あるいは国民同士の相互理解には、こうした点に関する歴史の理解とそれに基づく相手の立場と気持ちへの洞察が不可欠であろう。”【社会実情データ図録】
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする