孤帆の遠影碧空に尽き

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中国  止まらない少子化で「女が家庭を守る」伝統に回帰する習政権 しかし、女性の意識とは真逆

2024-04-23 23:17:45 | 中国

(【23年10月1日 WEDGE】 中国が2018年あたりから急速に低下している理由の分析も必要に思われます)

【止まらない少子化 「出産に優しい文化」キャンペーン】
経済協力開発機構(OECD)によると、1人の女性が生涯に産む子どもの人数を示す「合計特殊出生率」は、中国は21年に1.16でした。少子高齢化の進む日本の同1.30も下回り、深刻さを増しています。
22年には1.09に下がったとの現地報道もあって、少子化進行が止まりません。

****中国、止まらない少子化 出生数過去最少、雇用悪化で将来不安か****
中国国家統計局は17日、2023年末の総人口が22年末比208万人減の14億967万人だったと発表した。人口減少は2年連続で、減少幅は22年(85万人)より拡大した。教育費の増加や、若者の雇用環境の悪化などを背景にした少子化に歯止めがかからず、出生数が7年連続で減少したほか、死者数も増加した。

 ◇2年連続人口減、62年ぶり
2年連続の人口減少は毛沢東が主導した食料や鉄の大増産運動「大躍進」が失敗し、大量の餓死者を出した1960〜61年以来62年ぶりとなった。

23年の出生数は、前年比54万人減の902万人で49年の建国以来過去最少を更新した。

中国政府は79年から導入してきた「一人っ子政策」を見直し、21年からは3人目までの出産を容認。地方政府や企業も、複数の子供を育てる世帯を対象に補助金の支給や休暇の義務化を打ち出すなど対策を急ぐが、少子化を食い止められていない。

出生数低下の背景にあるのが、住宅価格や教育費など結婚・子育てにかかる費用の高騰だが、それに加えて若者の雇用環境の悪化による将来不安の影響も大きいようだ。

 ◇経済回復遅れ 若者失業率21%
新型コロナウイルス禍から経済の回復が遅れる中国では、23年6月には、都市部の若者(16〜24歳)の失業率が21・3%と過去最悪を更新。統計局は同8月、「統計の改善」を理由に公表を一時停止して物議を醸した。統計局は今回、公表を再開し、12月は14・9%に改善したとしたが、「学生を含まない」と調査対象を修正した影響などがあり、若者の雇用情勢は依然厳しい。

また65歳以上は2億1676万人と全人口の15・4%(前年比0・5ポイント増)となり高齢化がさらに進行した。中国政府が23年予算で計上した社会保障費(就業支出含む)は、3兆9192億元と、5年前の1・45倍に膨れ上がっており、今後さらにその割合が増加するとみられる。少子高齢化の加速は中長期的に中国の財政や経済成長に深刻な影響をもたらしそうだ。(後略)【1月17日 毎日】
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中国政府は出産増加に向けて、今のところは「強要」ではなく奨励策に力を入れる形で、あれやこれやの対策をとってはいますが、自分の人生を自分で決めたいと考える女性の意識の意識の強まりによって、目立った成果を上げていません。

****中国の出産圧力、女性が突きつける「ノー」****
政府は「もっと産め」 14億人の人口、2100年には約5億人に落ち込む可能性が高い

中国の女性たちは、もううんざりだと思っている。中国政府はもっと出産せよと要求するが、それに対する彼女たちの反応は「ノー」だ。

政府の嫌がらせに閉口し、子育てのさまざまな犠牲を警戒する若い女性の多くは、政府や家族の希望よりも自分自身を優先しようとする。彼女たちの拒絶によって中国共産党は危機に追い込まれている。高齢化する社会を若返らせるため、共産党は何としても赤ん坊を増やさなくてはならない。(中略)

昨年10月、習近平国家主席は政府が支援する「中華全国婦女連合会(ACWF)」に対し、「女性分野のリスクを予防し、解決する」ことを促した。(中略)共産党がいくら「家庭の価値観」を説いてもほとんど効果がなく、それは中国の農村部でも同様だ

「出産に優しい文化」キャンペーンは、緊急の国家課題の様相を呈し、政府主催のお見合いイベントや軍人家庭の出産を奨励するプログラムが設けられている。

西部・西安市の住民は8月、中国のバレンタインデーにあたる「七夕節」の期間に、政府の番号から自動音声メッセージを受け取ったという。「あなたに甘美な恋と適齢期の結婚が訪れますように。中国の血統をぜひ続けましょう」(中略)

政府は一人っ子政策の時代に特徴的だった「強要」ではなく、奨励策に力を入れる。地方政府は2人目・3人目を出産したカップルに現金を支給する。東部・浙江省のある県では25歳までに結婚したカップル全員に137ドル(約2万円)相当のボーナスを出す。(中略)

また当局は一人っ子政策時の重要な手段だった人工妊娠中絶を抑制しようとしている。1991年には1400万件を超えたが、2020年には900万件弱へと3分の1以上減少した。それ以降、中国は精管切除術や卵管結紮術、中絶に関するデータ公表を中止している。(中略)

カリフォルニア大学アーバイン校のワン・フェン教授(社会学)は、中国社会には二つの相反する変化が起きていると指摘する。女性の権利への認識が高まったことと、家父長制を推進する政策の拡大だ。(中略)

中国政府はフェミニズムを外国勢力が後ろ盾となった邪悪なイデオロギーとみなす。女性の権利を唱える活動家を拘束し、そのソーシャルメディアのアカウントを削除するなど、何年にもわたって取り締まりを続けている。

それでも女性たちは人間関係や家族、仕事に関する自らの経験について、ネット上で以前より声高に発言している。彼女たちの投稿は個人的な形でフェミニズムを表しており、当局がそれを取り締まるのはより難しい。(後略)【1月16日  WSJ】
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女性が政府の要請に否定的なのは、女性にとって出産・子育てが大きな負担になるという現実が背景にあります。(このたりは日本も同様でしょうが)

****中国の養育費は世界有数の高さ、女性の負担重く シンクタンク報告****
中国のシンクタンク「育媧人口研究智庫」は、同国の養育費が1人当たり国内総生産(GDP)でみて世界有数の高さだとの報告書をまとめた。

18歳までの養育費は1人当たりGDPの約6.3倍。これに対しオーストラリアは2.08倍、フランスは2.24倍、米国は4.11倍、日本は4.26倍。

子育てにより女性の有給労働時間と賃金は減少するが、男性の生活に大きな変化はないという。

報告書は「中国の現在の社会環境は母親に優しいとは言えず、女性が子供を育てる時間的なコストと機会費用が高すぎる」と指摘。「養育費の高さ、女性が家庭と仕事を両立させる難しさといった理由から、中国人の平均的な出産意欲は世界最低に近い」としている。

中国では昨年、2年連続で人口が減少。出生数は2016年の約半分に落ち込んでいる。

報告書によると、0─4歳の子どもを育てる女性は有給労働時間が2106時間減り、6万3000元(8700ドル)の収入を失う。子どもを持つ女性は賃金が12─17%減り、余暇の時間も0─6歳の子供が1人いる女性は12.6時間、2人の場合は14時間減るという。

報告書は養育費を下げる政策を全国レベルで可能な限り早期に導入すべきだと主張。現金給付や優遇税制、保育サービスの改善、母親と父親の育児休暇平等化、外国人ベビーシッターの活用、柔軟な勤務体制、独身女性と既婚女性の同等な生殖権といった対策を挙げた。

「現在の超低出生率を改善できなければ、中国の人口は急速に減少し、高齢化が進む。そうなればイノベーションや国力全体に深刻な悪影響が出る」としている。【2月21日 ロイター】
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【23年の婚姻数が10年ぶりに増加 ただし、特殊要因かも】
そうしたなかで、23年の婚姻数が10年ぶりに増加したという中国政府を喜ばせるニュースも。

****中国の婚姻数、10年ぶり増加=ウィズコロナ移行で反転****
中国民政省は18日までに、2023年の同国の婚姻登録数が768万組だったと発表した。中国メディアによると、婚姻数は22年に過去最低を記録したが、23年は前年比12.4%増で、10年ぶりの増加となった。

中国の婚姻数は13年の約1347万組でピークを迎え、14年から減少に転じた。22年は683万5000組で、13年の約半数まで落ち込んでいた。23年は前年までの厳格な新型コロナウイルス対策が解除され、「ウィズコロナ」に移行したことが結婚増の背景にあるとみられる。【3月18日 時事】 
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ただ、これは記事にもあるように、新型コロナウイルス対策で結婚を控えていた人が解除によって婚姻に至ったということ、更には辰(たつ)年の24年に子どもを産むと縁起がいいと考える人が数字を押し上げたことなどの影響も大きいと思われ、今後も増えるのかどうかは不透明です。

婚姻・出産増加に向けて、中国の女性団体、中華全国婦女連合会が、何百人も招待するような伝統的な大規模結婚式ではなく、「質素な」結婚式を奨励する記事をネットに掲載するといった対策も。
“中国当局、質素な結婚式を奨励 婚姻と出生率引き上げへ”【3月26日 ロイター】

【中国女性と習近平政権の示す真逆のベクトル】
ここで、これまでの出産や婚姻に関する話題とは表面的には全く関係ない話、中国女性の女性器整形に関する記事をひとつ。

****中国で加熱「美容整形ブーム」の知られざる裏側 現役医師が初めて明かす「ヒミツの部位へのプチ整形」が人気急上昇のワケ****
中国でいま、空前の美容整形ブームが起きているという。世界4大会計事務所の一つである「デロイト トーマツ」の調査によれば、2025年に中国の整形市場は実に3500億元(約7兆円)を超えると予測。なかでも最近、注目を集めているのが“秘めたパーツ”に施されるプチ整形という。その実態を「日本の第一人者」と呼ばれる医師が初めて明かした。

(中略)中国の国内事情に詳しいニュースサイト「レコードチャイナ」の任書剣氏が言う。
「(中略)しかし1980年代以降に生まれた世代はアイドルブームやインターネットの普及などを通じ、“見た目も心を表す”といった考えが主流で、整形やタトゥーに対する抵抗感も薄れています」

そんな新しい価値観を体現し、近年の整形ブームを引っ張るのが、現在30〜40代の「中女(オトナの女性)」という。(中略)

一方で最近、話題を集めているのが〈天使名器〉と呼ばれる、女性器へのヒアルロン酸注入手術です」(任氏)

女性たちの「不満」の核心
中国の“中女”たちから「天使名器造成の第一人者」と呼ばれるのが、東大医学部卒で、都内・港区六本木で美容外科「ヴェアリークリニック」を経営する井上裕章医師だ。その井上氏がこう話す。

「(中略)昨年11月、初めて中国に招待され“衝撃”を受けました。年会費が数千万円もする富裕層向けの美容サロンで行われたトークセッションにゲストとして呼ばれたのですが、会場には司会役の男性のほか、30〜40代の中国人女性が20名ほど集まっていた。

驚いたのは、彼女たちの口から次々と夫婦の営みに関する不満が飛び出したことです。中国ではいまだに“男性本位”の考えが根強く、会場にいた30代の女性の一人は『夫は行為に至るまでの過程を楽しむといった行動を一切取らない。寝ている私を叩き起こして“入れて・出して”で終わり。その間、私はひたすら耐えるしかない』と話していました」(井上氏)

また別の40代女性は「中国ではこれまで女性が性を楽しむことは禁忌とされてきたので、正直、何をどう楽しんだらいいのかも分からない」と打ち明けたという。

「そこで私が女性器形成術を説明し、その効果の一つに“感度の高まり”があることを話しました。(中略)」(井上氏)

トークライブの場で手術
井上氏の説明を聞いた女性のうち、30〜50代の3人が「実際に“天使名器”の手術を受けたい」と、その場で手を上げたという。(中略)

国内で吹き荒れる“不況の嵐”もドコ吹く風。「中女」たちの欲望はむしろ加速しているという。(後略)【4月21日 デイリー新潮】
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出産や婚姻に関する話題とは全く関係ない“下半身”の、しかも一部富裕層女性の話ではありますが、中国の女性が自分自身、自分の人生について自分で決断・行動するという方向で声を上げ始めているという意味で、非常に印象的に思えました。

そのベクトルの向きは、習近平政権が進めるような共産主義的社会観からの共同富裕とか出産奨励といたもの、あるいは、家父長制的な発想を引きずる「女性は結婚、出産に・・・」といった話とは真逆の方向を指し示しているように思えます。

おそらくこうした真逆のベクトルが存在する現状(前出【WSJ】でワン・フェン教授(社会学)が“中国社会には二つの相反する変化が起きている”と指摘するもの)では、中国政府の出産奨励策は大きな効果はでないでは・・・と思った次第です。

【「中絶禁止」に向かうのか?】
「奨励」で効果が出ないなら・・・「一人っ子政策」で不妊手術などの「強制」の実績もある中国のことですので、「中絶禁止」などの「強制」が表面化するのでは・・・とも推測されます。すでに「医学的に必要ではない」中絶は制限されています。

ただ、上記のような真逆のベクトルを考えると反発もこれまでになく大きくなることが予想され、下記記事で王豊(ワン・フォン)教授(社会学)は「ほとんど想像できない」とも。

****低すぎる出生率で迷走...中国政府は「中絶禁止」に向かうのか****
<人口維持に必要な水準を大きく下回る少子化は悪名高い1人っ子政策を放棄しても止まらない>

中国は何十年もの間、人口増加を抑えるために1人っ子政策を続けていた。だが今は、ほぼ回避不可能な人口減少の趨勢(すうせい)を、中絶の制限などで逆転させようと躍起になっている。(中略)

中国政府は22年に出産・子育て支援策を導入。出生数の増加を期待しているが、人口減少に歯止めはかかっていない。この程度の施策では不十分というのが専門家の見方だ。

この人口動態の変化は、欧米とよく似ている。乳幼児死亡率の低下とともに、生まれる子供の数は減り、子育ての費用が増えるにつれて、子供を持つ余裕がなくなる人々が増える。特に1980~90年代生まれのミレニアル世代は人生で2度の深刻な景気後退を経験している。

高齢者の面倒を誰が見る?
「多くの若者が子供も持ちたがらないし、結婚もしたがらなくなった」と、ハーバード大学フェアバンク中国研究センターで中国社会を研究するスーザン・グリーンハル教授は本誌に語る。「(中国の)子育て費用は法外で、韓国に次いで世界で2番目に高い。既に育児の負担と時間的制約に悩まされている女性にとって、2人目の子供の出産は仕事と収入、自由を失うことを意味する」(中略)

「悪名高い1人っ子政策を撤廃した後も、予想外の急速な少子化が進んでいる現状を、中国政府は強く懸念している」と、王(人口と高齢化、格差の問題に詳しいカリフォルニア大学アーバイン校の王豊(ワン・フォン)教授(社会学))も指摘する。「だが、少子化はこの国の経済・社会構造に深く根差した現象であり、出生率の低下を食い止める手っ取り早い処方箋はない」

グリーンハルによれば、中国政府がこの問題に取り組み始めたのは13年。夫婦のどちらかが1人っ子の場合に限り2人目を産めるようにして、1人っ子政策を初めて微調整した。「15年には制限なしの『2人っ子政策』を発表し、16年1月1日から全てのカップルが2人の子供を持てるようにした」と言う。

「新たな国勢調査のデータで出生率の上昇が一時的なものであることが判明すると、21年8月には再び政策を変更して『全てのカップルが3人目を産める』こととし、出生率向上のために極めて多数かつ多様な支援措置を導入。同じ21年には、新しい政策のニーズに合わせて人口・出産計画法も改正された」

「女が家庭を守る」伝統に回帰
中国はまた、習近平(シー・チンピン)国家主席が言う「新時代の結婚・出産文化」を育成するため、「若い女性が家庭に戻り、フルタイムで出産・育児と年長者の世話をするよう奨励している」と、グリーンハルは言う。「(今の中国は)女性が家庭を管理し、男性が稼ぐ伝統的な国家にかなり近いものをつくろうとしている」

中国政府は既に「医学的に必要ではない」中絶を制限する政策を導入し、男女の産み分けを防ぐ目的で胎児の性別判明後の中絶も制限していると、グリーンハルは指摘する。

中国では1950年代から中絶規制が緩和された。1人っ子政策が続いていた数十年間は、地方当局が「違法な」妊娠の中絶を女性に強要していた。

中国政府は中絶禁止まで踏み込むだろうかと王に質問すると、「ほとんど想像できない」という答えが返ってきた。「今の中国は高学歴社会でもある。若者たち、特に若い女性は自分たちの権利に敏感だ。人々の意思に反するやり方は政治的な自殺行為になる」

中国が検討していない政策の1つは、移民の増加による生産年齢人口の確保だ。「日本や韓国も歴史的に移民受け入れが非常に少なく、それが全人口と生産年齢人口の減少を加速させた要因の1つになった」と、アジアの高齢化問題に詳しいニューサウスウェールズ大学シドニー・ビジネススクール(オーストラリア)のフィリップ・オキーフ教授は本誌に語った。

「たとえ中国が移民の拡大に意欲を示し、外国から中国に移住する意思と能力を持つ労働者がいたとしても、中国の労働力の絶対的な規模を考えれば、移民の受け入れによって状況を変えるのは難しいだろう」

さらにオキーフはこう言葉を続けた。「中国にとってもっと現実的な当面の目標は、合計特殊出生率が0.72の韓国や0.97のシンガポールのような近隣諸国のレベルまで落ち込まないように、現在進行中の出生率低下に歯止めをかけ、安定させることかもしれない」【4月22日 Newsweek】
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「今の中国は高学歴社会でもある。若者たち、特に若い女性は自分たちの権利に敏感だ。人々の意思に反するやり方は政治的な自殺行為になる」・・・・それでも共産党支配に必要とあらば強権でやる、反対は許さないというのが中国の怖いところではありますが・・・。
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