孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

「世界食糧デー」 飽食と飢餓 明日の食糧を確保するために

2014-10-16 22:27:50 | 国際情勢

(アメリカ レストランやスーパーで余った食料は慈善団体を通じてホームレスシェルターなどで有効活用されます。 “flickr”より By U.S. Department of Agriculture https://www.flickr.com/photos/usdagov/15244531186/in/photolist-pe7d1A-ajxNfU-edBsA9-fCCwY3-fCkezz-dAwtzb-5FY3Mb-nQGs81-9qey46-ceEZNq-npijQK-719pGh-f6bUD5-83BuMZ-4XDnCi-4XHLtA-9quVoK-4XC35S-a7hc1K-4XHiq1-4XJ7N5-mLfysg-7M5ZJX-8Ki2ui-4XHYbo-aK2Prp-chw9uC-4PoakY-5M2wmr-fh7sSR-nSEpvh-nAg7eP-4XWajX-5q3bsm-5pXSfz-8JnzaU-5pXSe2-5dZrHR-bBXFxZ-aKEmGx-4XHJE9-4XDLsX-4XC5oL-5JaCyM-4XHNvo-4XDBgB-3MVN8L-4XJ4gE-4XBRpG-4XBTzQ)

飢餓人口 なお9人に1人の割合
“10月16日は、世界の食糧問題を考える「世界食糧デー」です。世界では、自然災害や人為的な要因によって飢餓が発生しています。”【10月16日 国連WFPニュース】

“「世界の食料不安の現状2014年報告」によると、世界の飢餓人口は、3700万人減り、8億500万人になりました。また、既に63カ国が、2015年までに飢餓人口の割合を半減するというミレニアム開発目標を達成しました。”【同上】ということで、前進も見られますが、今なお8億500万人、世界の9人に1人が飢餓に苦しんでいる現実があります。

地域的には、東アジアや南アジアでは改善が見られますが、アフリカのサハラ以南では厳しい状況が続いています。

****世界の飢餓人口、8億500万人 9人に1人の割合****
国連食糧農業機関(FAO)が16日に発表した今年の報告書によると、世界の飢餓人口は8億500万人で、9人に1人の割合となっていることが分かった。

FAOは、一部の途上国では食料不安が「容認できないほどの高さ」に達していると強調した。
アフリカのサハラ砂漠以南では4人に1人以上が十分な食料を得られない状態。マラウイでは5歳未満の子どもの半数が低体重とされる。

中東イエメンは政治、経済不安と紛争の影響で、食料不安が最も深刻な国のひとつとなっている。

人口が密集するアジアでは、5億2600万人が食料不足に苦しんでいる。

ただ、世界の飢餓人口が昨年の約8億4200万人から減少したのは事実だ。1990年に比べると、栄養不良とされる人の数は世界で2億人も減った。

特に東アジアや南アジア、中南米での改善が目立つ。インドネシアの飢餓人口は90年から半減したという。報告書ではブラジル、ボリビア、ハイチも改善例として紹介されている。

報告書は、15年までに途上国の飢餓人口を半減させるという目標に近付きつつあるものの、達成には国際社会の支援が必要だと呼び掛けた。FAOは来月、ローマで世界食料安全保障サミットを開催する。【9月16日 CNN Money】
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食糧廃棄と食料損失を減らすための第一歩は、人々に問題に気づいてもらうこと
食糧を消費する段階で膨大な“無駄”が発生していることは、スーパーやコンビニで期限切れ廃棄される食品や、各家庭で捨てられる食品などからして、非常に身近な現象です。

****食糧の1/3が失われている****
農地から食料品店を経て食卓に上るまでの過程で食糧の30%が失われている。改善の余地はあるはずだ。

カリフォルニア州中部を南北に細長く伸びるサリナスバレーでは、レタスの収穫期を迎えている。アメリカの小売市場で売られるレタスの約70%がこの地域で生産されている。ある霧の深い朝、野菜を山積みにした何台もの農業用トレーラーが、加工工場を出て、北、南、東とそれぞれの方向に向かって走り去っていく。

そんななか、1台のごみ回収トラックがサリナスの町の中心からそう遠くないところにあるサンストリートごみ処理場へと入っていった。

運転手は計量台の上で一瞬停車した後、ごみ容器をコンクリートの受け台の上へと移動させた。レバーを引くと、シューッという音と共に、15立方メートル分のレタスとホウレンソウが地面になだれ落ちる。

2メートルほどの高さにうず高く積み重なった野菜は、プラスチック製の箱とビニール袋に詰められている。見たところ、どれもみずみずしく、張りがあり、傷んだところもないようだ。

いったいどういった理由で廃棄処分になるのだろう? 問題があるのは、野菜ではなく容器の方。詰め方や、ラベルの貼り方、封の仕方、カットの仕方が適切でないというわけだ。

アフリカゾウ2頭分に相当する大量の野菜を廃棄するなんてもったいない、犯罪行為ですらある。誰だってそう思うだろう。

だが、これはまだ序の口だ。このごみ処理場には、近隣の野菜梱包業者から出される全く問題のない野菜が、日が暮れるまでにあと10~20台分運び込まれることになる。

4月から11月にかけて、サリナスバレーの固形廃棄物処理局では1800~3600トンの収穫したての野菜を処理する。しかもここは、カリフォルニア州の耕作地から出されるごみを処理する数ある処理場のうちのたった1つにすぎないのだ。

国連食糧農業機関(FAO)では、世界中で栽培・消費される農産物の記録をとっている。FAOの推計によると、農場から加工工場、市場、小売店、食品サービス業者、そして家庭の台所へとつながる食糧連鎖のいずれかの段階で、人が食べるために生産された世界中の食糧の3分の1が毎年失われるか、廃棄されるかしているという。

その量、実に12億7000万トン。30億人を飢えから救うのに十分な量だ。アメリカでは事態はさらに深刻で、年間30%以上の食糧、金額に換算すると1620億ドル分が食べられることなく失われている。

◆食糧廃棄の背景
先進国では、超効率的な農業、充実した冷蔵設備、さらには輸送、保管、通信の最先端の技術によって、栽培される農作物のほとんどが小売り段階にまで到達する(にもかかわらず、サンストリートごみ処理場には廃棄食品がうず高く積まれていた)。

しかし、ここから事態は急激に悪化する。FAOによると、先進工業国の食糧廃棄量は年間約6億8000万トン。サハラ以南アフリカの食糧生産量とほぼ同じ値だ。

◆資源の浪費
どの時点で廃棄が行われようと、人々を飢えから救う機会が失われることに変わりはない。

家庭での廃棄は大きな損失となっている。アメリカの4人家族の家庭では、年間平均1484ドル分の食べられる食品が捨てられている。食糧の浪費は、それらを生産するのに必要な大量の燃料、農薬、水、土地、労働力を浪費することでもある。

「American Wasteland(アメリカの不毛地帯)」の著者ジョナサン・ブルーム氏によると、アメリカで食べられることのないまま失われる食糧を生産するには、2010年4月に発生した石油掘削基地ディープウォーター・ホライズンの爆発事故で流出した量の70倍の原油が必要だという。全世界で見ると、ヨーロッパ最長の川であるボルガ川の年間流量に相当する量の原油が必要になる。

2007年には、カナダの国土を大きく上回る1400万平方キロもの土地が、誰も食べることのない食糧を得るための耕作と放牧に利用された。

さらに悪いことに、風通しの悪いごみ捨て場に埋められた食糧は二酸化炭素よりもはるかに強力な温室効果ガスであるメタンガスの発生源となっている。

◆食糧連鎖の見直し
世界の食糧廃棄量は衝撃的なまでの多さだが、せめてもの救いは改善の余地が多分にあることだろう。例えば発展途上国では、支援団体が小規模農家に貯蔵容器と多重の穀物袋、野菜と果物を乾燥・保存するための道具、冷蔵と梱包のためのローテク機器などを提供しており、アフガニスタンではトマトの損失率が50%から5%に縮小した。

アメリカでは、メディア、政府機関、環境団体による食糧廃棄の監視活動に後押しされ、廃棄する食品の記録を始める飲食店が増えてきている。損失を抑え込むための重要な一歩だ。

天然資源保護協議会(NRDC)は、アメリカ政府に対して“販売期限”、“賞味期限”、“消費期限”の表示の統一を要請している。実施されれば、冷蔵庫の無駄をなくすことにつながるだろう。

また学者や研究者たちは、家政学の授業を復活させるよう学校に働きかけている。形の悪い作物を受け入れること、食料品を正しく保存すること、余った食物を貯蔵しておくこと、飲食店で量を減らしてもらうこと、残り物を食べること、食べ切れない食糧を分け合うこと(アプリケーションやソーシャル・メディア・サイトが役立つ場合が多い)、生ごみを堆肥にすることなどを幼い消費者に学んでもらえるというわけだ。

食糧廃棄の削減が国家的優先課題となっているイギリスでは、草の根団体「Feeding the 5000(5000人に食べ物を)」が、スーパーマーケットや料理人に売ることのできなかった質の高い農産物を農家や梱包業者から引き取り、それらを調理して、5000人に無料で配給するという活動を行っている。

◆豊かな食卓
余った食べ物を動物に与えることは、経済的にも環境的にも理にかなっている。しかし、余剰食糧の最も理想的な利用法は、言うまでもなく、世界中に8億500万人いるとされる飢餓に苦しむ人々に食べてもらうことだ。

アメリカでは、4900万人が食べ物に困っていると報告されている。つまり、次の食事のあてのない人がそれだけ存在するということだ。

これらのニーズに対応するために、慈善団体のフィーディング・アメリカ(Feeding America)では、2014年に約180万トンの食糧を分配する計画を立てている。同団体では、これらの食糧のほとんどをメーカー、スーパーマーケット、大規模農家、連邦政府などからの寄付でまかなう予定だ。

食糧廃棄と食料損失を減らすための第一歩は、人々に問題に気づいてもらうことだ。多くの人が現実を受け入れようとしない。

だが、食品価格の上昇に伴い、さらには気候変動によって食糧生産が減少するであろうこと、すでに耕作地となっている土地からこれまで以上に多くの食糧を継続的に得ることが避けられないことについての認識が高まるにつれ、少しずつではあるが意識は変わりつつあるようだ。【10月16日 Natinal Geographic】
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日本で節約した食糧をアフリカの飢餓に苦しむ人々へ届ける・・・という訳にはいきませんが、資源の効率利用は巡り巡って困難な状況にある人々を支援する余力・資源を生むことにもなるでしょう。

縮小する公的な農業研究支援 必要なのは切迫感
農業生産面では、農業研究に対する公的支援の縮小を懸念する指摘もあります。

****食糧危機の解決策、見出せない理由****
メキシコと南アジアが飢饉に見舞われた20世紀半ば、人々を窮地から救ったのは農作物を専門とする研究者たちだった。メキシコの国際トウモロコシ・コムギ改良センター(CIMMYT)とフィリピンの国際稲研究所(IRRI)が小麦と稲の高収量品種を開発し、飢えを食い止めたのだ。

改良された作物種子や灌漑システム、合成肥料、農薬の導入という栽培方法の飛躍的な進歩によって穀物の収量は向上し、のちに緑の革命と呼ばれるようになった。

過去半世紀の農業生産向上の背景には、このような種類のイノベーション、つまりすでに存在した農地での農作物や畜産物の増産がある。また、それを可能にしたのが農業研究への投資であることを複数の研究が示している。

だが、過去20年間で増産ペースは減速し、アメリカやヨーロッパ各国を含む先進国における農業研究への公共支出は横ばい状態になっている。人口が2100年までに110億人に達するとされ、世界各地で歴史的な干ばつが起きている中、これは恐ろしい事態だ。

2012年に「Science」誌に掲載された米国農務省のデータに基づく報告では、農業研究に対する公的支援の縮小が収量低迷や食糧価格上昇の一因である可能性が指摘されている。一方、農薬に強い遺伝子組み換え作物の開発など、民間からの資金提供による農業研究が大半を占めるようになった。

◆農業研究の再活性化を求める声
基礎研究や収量向上の低迷を危惧する科学者や研究グループらは、公的資金による農業研究の重要性を訴えている。
(中略)

◆必要なのは切迫感
2007年下旬、穀物飼育の肉の需要増大や低迷する収量、エタノール生産へのトウモロコシの転用を背景に食糧価格が高騰した。売る側の農家にとっては好ましい価格上昇だが、買う側となる世界中の貧困層が痛手を受けた。

以来、人口や所得の拡大、食糧や穀物飼育の肉の需要増大、穀物に悪影響を及ぼす異常気象事象、バイオ燃料への穀物転用などにより、食糧価格は常に2010年のレベルを上回っている。

50年以上前の“緑の革命”で小麦の高収量品種の開発に取り組んだ際、ノーマン・ボーローグ氏は切迫感に突き動かされていたという。彼と同じ切迫感を抱き、農業研究を再び最優先事項とすれば、誰もが恩恵を受けられるに違いない。【10月6日 Natinal Geographic】
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「緑の革命」については、“緑の革命は確かに産業としての農業の大増産を達成したが、一方でそれは化学肥料や農薬といった化学工業製品の投入なしには維持できなくなり、持続可能性が問われている。また、1970年代に入った頃から一部では生産量増加が緩やかになったり、病虫害や塩類集積によって逆に生産量を減らす例が出てきた”【ウィキペディア】といった批判も多々あります。

その点については今回はパスしますが、「緑の革命」を主導したノーマン・ボーローグ氏は、批判に対し以下のように反論しています。

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西欧の環境ロビイストの中には耳を傾けるべき地道な努力家もいるが、多くはエリートで空腹の苦しみを味わったことがなく、ワシントンやブリュッセルにある居心地の良いオフィスからロビー活動を行っている。

もし彼らがたった1ヶ月でも途上国の悲惨さの中で生活すれば、それは私が50年以上も行ってきたのだが、彼らはトラクター、肥料そして灌漑水路が必要だと叫ぶであろうし、故国の上流社会のエリートがこれらを否定しようとしていることに激怒するであろう。【ウィキペディア】
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日中の食糧確保競合
日本の食糧確保がどのような状況にあるかについては、“例によって”中国との競合が大きな問題となってきています。

****中国が世界の食肉買いあさる・・・勝負できぬ日本企業、突破口は「官民一体****
・・・・・わずか数年前、世界穀物貿易の7割は「ABCD」と呼ばれる欧米系穀物メジャーが握っていた。すなわち、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(A)、ブンゲ(B)、カーギル(C)、ルイ・ドレフュス(D)の4社だ。

現在ではその4社支配体制は崩れ、穀物貿易は戦国時代に突入している。カナダの穀物会社を買収したスイスの資源大手グレンコア・エクストラータが首位の米カーギルに迫り、米5位のガビロンを買収した丸紅も大手の一角に名を連ねる。

今年に入り急速に力をつけているのが中国企業だ。コフコは2月、オランダの穀物商社ニデラを子会社化。4月には、香港に拠点を置く穀物商社ノーブル・グループ子会社を傘下に収めることで合意した。「次の標的はメジャーか」と噂になるのも無理はない。

 ◆現実路線に修正
実は食をめぐる中国の攻勢は、昨年末に複数の重要会議で打ち出した方針に沿ったものだ。中国の農政に詳しい農林中金総合研究所の阮蔚(ルアンウエイ)主席研究員は、一連の会議で「中国の食糧安全保障をめぐる歴史的な大転換があった」と分析する。

絶対的に自給する穀物を小麦とコメに絞り込み、国内産よりも安く調達できる他の穀物や豚・牛の加工肉の輸入戦略を食糧安保の両輪とする現実路線に軌道修正したというのが阮氏の見立てだ。

なかでも中国が重視しているのが、豚肉や牛肉など畜産物の確保だ。農畜産業振興機構によると、中国が昨年輸入した牛肉の量は12年の約4倍、11年からは14・7倍に膨れあがった。(中略)

食の安全保障をめぐり、激しさを増す日中の企業戦争。中国の戦略転換の影響はすでに日本にも及んでいる。(中略)

国際協力銀行(JBIC)は最近、丸紅のガビロン買収や双日のブラジル集荷会社をめぐる出資や融資を支援するなど、海外の農業投資支援にかじを切り始めた。

だが、政府金融や貿易保険を総動員する資源外交によるエネルギー安保に比べると、その支援内容は脆弱(ぜいじゃく)であることは否めない。

日本が食の安定調達を目指す上で、民間企業に多くを委ねるのは限界がある。ブラジルのセラード開発で日本の政府開発援助(ODA)が大きな役割を果たしたように、官民一体となった総合的な食糧安保戦略が求められている。
【7月13日 産経】
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“中国が世界の食肉買いあさる”とありますが、以前から“買いあさっている”のは日本ですから、やや手前勝手な表現にも思えます。

それはともかく、昔から“中国人が肉を食べるようになれば・・・”と言われていましたが、その問題が現実となり、今後ますます大きくなると思われます。

競争意識を煽り立てるだけでなく、冷静な議論・対策が望まれます。
コメント
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