
(今年6月3日、イランは2019年までに有人宇宙衛星を実現すると語るアフマディネジャド大統領 そのロケット技術が宇宙船だけでなく、大陸間弾道弾にも使われることへの懸念もあります。それはイランに限った話でもありませんが。“flickr”より By owlbeasts haunt my dreams
http://www.flickr.com/photos/nike6/4827277371/)
【国連安保理の追加制裁にイラン保守派反発】
6月9日、国連安全保障理事会は核兵器開発疑惑のあるイランに対する追加制裁決議案を賛成12カ国、反対2カ国(ブラジル、トルコ)、棄権1カ国(レバノン)の賛成多数で採択しました。
決議案は、加盟国に戦車など大型武器の対イラン輸出を禁止し、核兵器やミサイル関連物資を積むとみられるすべての貨物船について、港湾だけでなく、公海上でも検査を行うよう求めています。また、アフマディネジャド大統領の権力基盤であり、核開発の主体でもある革命防衛隊の関連企業の資産凍結も含まれています。
アメリカ・オバマ大統領は、7月1日、石油精製品をイランに輸出する企業を米国の金融市場から閉め出す「ガソリン禁輸」措置を含む、国連安保理の制裁決議の内容を超えるアメリカ独自の制裁法に署名、イランへの圧力を強めています。
このアメリカのイラン制裁法には、イランのエネルギー産業に技術支援をした外国企業や、イラン革命防衛隊と取引している外国銀行を米金融市場から排除する内容も含まれています。
こうしたアメリカ主導の国際社会のイラン封じ込めに対し、イランでは保守派からの反発が強く、対話再開の糸口が見えてこないとも報じられていました。
****イラン:対話再開の糸口なし 制裁決議で保守派反発*****
行き詰まりの様相を見せているイラン核問題で、米国のケリー上院外交委員長や欧州連合(EU)のアシュトン外務・安全保障政策上級代表(外相)が相次いで対話再開へ向けたシグナルを送っている。だが、イラン側では先月の国連安全保障理事会による経済制裁決議以降、保守強硬派による反発の声が強まっており、対話再開の糸口は依然として見えてきていない。
イランは制裁決議後に反発を強めるばかりで、核政策を見直す機運は全く見られない。イラン核問題の行き詰まりは、米国内のいらだちを高めるだけでなく、イスラエルを刺激してイランへの武力攻撃にもつながりかねない。そのため米国は、対話再開で事態を動かしたい考えだ。(中略)
アフマディネジャド大統領は、表向きの強硬姿勢とは裏腹に水面下で米欧との接点を探ろうとしていたが、保守強硬派との路線対立が激化して身動きが取れなくなっている。【7月21日 毎日】
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また、国際社会の経済制裁は正規の貿易業者には打撃となるものの、イランで横行する密輸(年間120億ドル)、そして密輸ビジネスを牛耳る革命防衛隊には効果がない・・・との報道もあります。【7月21日号 Newsweek日本版】
【EU独自追加制裁、ロシアもイラン批判】
これに対し、EUが新たな経済制裁を発動するとともに、核協議に応じる用意も示す「アメ(対話)とムチ(制裁)」でイランに揺さぶりをかけています。
****EU:イラン追加制裁を決定…石油取引制限*****
欧州連合(EU、加盟27カ国)は26日、ブリュッセルで外相会議を開き、国連安保理決議に反してウラン濃縮活動を続けるイランに対する新たな経済制裁の発動を決めた。イラン経済の基盤である石油・天然ガス産業を初めて制裁対象に加え、金融・保険、運輸を含む広範な分野への締め付けを強める。一方でイランとの核協議に応じる用意を示し、硬軟両面で揺さぶりをかけている。
欧米紙によると、EUは6月の首脳会議でエネルギー分野を含む制裁の発動方針で合意していた。制裁では、欧州企業による(1)イラン石油・ガス産業への新規投資や技術支援(2)石油精製や天然ガス液化などに携わるイラン企業への重要な機材や技術の売却・提供・移転--が禁じられる。(中略)
だが、EUのイラン政策は「アメ(対話)とムチ(制裁)」路線のため、アシュトン外務・安全保障政策上級代表(外相)は同時にイランに核協議再開の日程設定を求めている。【7月26日 毎日】
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これまでイランとのつながりが強かったロシアは、「イランは核兵器製造に利用できる能力の保有に近づいている」というメドベージェフ大統領の発言など、ここにきてイランと距離を置き、欧米と強調する姿勢を強めています。
****ロシアとイラン、非難の応酬 核製造能力発言めぐり****
イランの核開発問題をめぐり、友好国だったはずのロシアとイランが非難の応酬を繰り広げている。「イランの核兵器製造能力の保有は近い」と警告したロシアのメドベージェフ大統領を、イランのアフマディネジャド大統領は「米国の芝居を演じている」などと強い調子で批判。ロシア外務省は26日、「決して受け入れられない発言だ」とする声明を出した。
ロシアのイズベスチヤ紙によると、アフマディネジャド大統領は24日にテヘランで、「メドベージェフ大統領の発言は、イランに向けられた米国の宣伝芝居の始まりとなった。なぜロシア大統領が米国の芝居を演じなければならないのか」「メドベージェフ大統領はイランの敵国思想の表現者になった」と批判した。
これに対し、ロシア外務省は、アフマディネジャド大統領の発言は「外交的解決をめざすロシアの客観的なアプローチや建設的な路線をゆがめるものだ」と指摘、「イランは無益で無責任な発言の代わりに、具体的で建設的な歩みをすべきだ」などと述べた。(中略)ロシアはイランの核開発疑惑に懸念を強めており、制裁の一環として、イランへの地対空ミサイルシステム「S300」の納入を中止している。【7月27日 朝日】
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ロシアとともにイラン包囲網のカギをにぎる中国に対しては、アメリカが調整を進めています。
****米国務省:調整官が8月に中国訪問へ イラン制裁巡り*****
イランと北朝鮮の制裁を担当する米国務省のアインホーン調整官は29日、下院監視・政府改革委員会の公聴会で「(対イラン制裁に関し)中国を懸念している」と述べ、8月下旬に訪中することを明らかにした。中国は原油輸入を通じてイランとの関係が深く、調整官は国連決議の履行を求めるとみられる。【7月30日 毎日】
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【ウラン20%濃縮停止、交渉再開の動き】
国際社会の包囲網が狭まるなかで、イラン側からも交渉に応じる意向を示す発言が出てくるようになっています。
****ウラン国外搬出で「交渉の準備ある」、イラン外相*****
イランのマヌチェフル・モッタキ外相は25日、5月にトルコ、ブラジルと合意した低濃縮ウランの国外搬出について、疑問を提示していた欧米各国とただちに対話する準備があると語った。26日に米国、ロシア、フランスのウィーングループの提示した疑問に返答する書簡を、国際原子力機関(IAEA)に提出する予定で、その中で、対話の希望を伝えるという。【7月26日 AFP】
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****イラン、無条件で核燃料に関する交渉に復帰する用意*****
イラン国営通信(IRNA)によると、イランは無条件で核燃料の交換交渉に復帰する用意があると表明した。・・・ IRNAによると、同国の国際原子力機関(IAEA)代表を務めるアリ・アスガル・ソルタニエ氏は、イランがIAEAに送った核燃料交換提案に関する書簡について、「イランが核燃料に関して無条件で交渉を行う準備が完全に整っているという明確なメッセージを伝えている」と述べた。
アハマディネジャド大統領はこれまで、イスラエルが保有している核兵器に対する対応、核不拡散条約に関するスタンス、イランの友好国あるいは敵国のどちらとして交渉の席につくか、の3点を西側諸国が明確にするまでは、イランは交渉に応じないと言明していた。
それに対し、今回、ソルタニエ代表は条件はつけないと言明。「各国の準備が整い次第、われわれは核燃料に関する交渉を行う準備がある」と述べた。【7月27日 ロイター】
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イラン側の対話再開へのシグナル、特に25日のモッタキ外相との会談について、トルコのダウトオール外相が「研究に必要な核燃料が(外国から)提供されるなら、ウランを20%濃縮することをやめるとのメッセージをイランから受けた」と説明したこともあって、アメリカ側からも対話再開へ向けた発言も出てきています。
****米国:「イランと対話の用意」 20%濃縮中断示唆受け*****
米国務省のクローリー国務次官補(広報担当)は28日、イランがウランの20%濃縮を条件付きで中断する意向を示唆しているとの報道を受け、「イランと引き続き話し合う準備はできている」と語り、国連安保理常任理事国とドイツの6カ国とイランによる核交渉再開に問題はないとの認識を示した。「協議は数週間のうちに開かれることを希望する」と述べた。
イランが先月の国連安保理追加制裁を受け、事態打開に動いたとみられる。ただ、イランは濃縮継続は譲らないとみられ、対話の成果があがるかどうかは未知数だ。
イランとの核交渉に関し、オバマ米政権はウラン濃縮の完全停止を最低条件と位置づけている。国務次官補は、ウラン濃縮を含む国際義務違反が続く限り、対イラン制裁が継続することも強調した。
イランと欧米の仲介を行っているトルコのダウトオール外相は28日、イランのモッタキ外相との25日の会談について「研究に必要な核燃料が(外国から)提供されるなら、ウランを20%濃縮することをやめるとのメッセージをイランから受けた」と説明した。
イランはトルコ、ブラジルと今年5月、イランの低濃縮ウランをトルコに搬出、燃料と交換する提案を行っていた。イランが20%濃縮を継続する意思を示し、交換の内容も不透明なため欧米が反発していた。
イランは交換の提案を欧米が受け入れれば、20%濃縮を停止するとの妥協案を示したとみられる。ただそのほかの低レベル濃縮の停止には触れていない。
トルコのアナトリア通信によればダウトオール外相は「協議は9月に行うことで(米国とイランは)基本的に合意したが、日程変更もありうる」と語った。また低濃縮ウランと燃料の交換について、実務レベルでの協議が始まっているという。
国連安保理常任理事国とドイツの6カ国とイランによる核交渉は昨年10月に行われたが、成果がないまま中断している。クローリー国務次官補は「同様な会議が、数週間以内に開始されることを期待している。もう一度会議を開くことに関心がある」と述べた。
イランのアフマディネジャド大統領は、対立している保守強硬派に配慮して米欧を非難し、今年8月末まで交渉に応じないとの姿勢をとっていたが、水面下では接点を探ってきた。【7月29日 毎日】
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【国民世論も気にかけるアフマディネジャド大統領】
イランのアフマディネジャド大統領はイスラム原理主義や民主化運動弾圧の強権的なイメージもありますが、一方で国内世論の動向を気にする現実的な政治家でもあります。かねてよりその経済運営には国内的に批判がありましたが、国際社会の経済制裁でイラン国内経済が更に打撃を受け、国民の不満が高まることを懸念しているように見えます。
ポピュリストとも言われるアフマディネジャド大統領ですが、国民の反感を気にして、女性の服装取締に対しても批判的だそうです。
****女性の服に甘いイラン大統領 規制に反対、宗教者は反発*****
イランのアフマディネジャド大統領が、イスラム式の服装を守らない女性への取り締まりを重ねて批判している。警察当局の摘発は今夏、例年にも増して厳しいが、強権一点張りでは不興を買うだけとの思いがあるようだ。しかし、政権を支える宗教指導者は「宗教に口を出すな」と大統領をいさめる始末。「政教一致」の国のややこしい権力構造の一端をのぞかせている。
「それは政府とは関係のないこと。我々は認めてはいない。聞きたければ警察に尋ねて下さい」。6月末の記者会見で取り締まりについて質問された大統領は、突き放すようにそう答えた。・・・・大統領は06年、女性の競技場でのサッカー観戦を認める方針を打ち出したが、宗教界は「下品なヤジが飛び交う場所に女性は入れられない」と反発。実現が見送られたこともあった。【7月28日 朝日】
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保守派の意向と国民生活への影響の板挟み状態のアフマディネジャド大統領に、核問題で妥協する余地があるのか・・・。