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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

韓国 アフガニスタン派兵再開、タリバンの攻撃も

2010-07-03 18:36:17 | 国際情勢

(アフガニスタンの村で村民と話し合うISAFのPRTメンバー “flickr”より By isafmedia
http://www.flickr.com/photos/isafmedia/4591816036/)

【「約束違反だ」】
2007年7月、アフガニスタンで短期宣教に参加していた大韓イエス教長老会に属する韓国人の福音派キリスト教徒23名がタリバンに拉致され、最終的に解放には至ったものの、交渉過程で男性2名が殺害される事件がありました。

この事件の解決にあたって、韓国政府はタリバンとの交渉で、「アフガニスタン駐留韓国軍部隊の計画どおりの年内撤退」と、「キリスト教宣教師のアフガニスタン入国禁止」を約束しました。
このほか、身代金授受についてもいろいろ憶測がありましたが、正確なところはわかりません。

韓国はそれまで医療部隊や工兵部隊を派遣していましたが、事件以前にすでに撤退計画は決まっていました。
しかし、タリバンとの間でその撤退を条件としたことについては、韓国政府がタリバンからの撤退要求を受け入れたかのようにも見え、タリバンの脅迫に屈したとのメッセージを与えかねないとの批判が各国からありました。

その韓国の「地方復興チーム(PRT)」が再びアフガニスタンで活動を始め、「約束違反」とするタリバン側の攻撃を受けています。
****アフガニスタン:韓国が活動再開 基地周辺にロケット弾*****
韓国軍と民間組織が共同でアフガニスタン再建を支援する「地方復興チーム(PRT)」が1日、カブール北方のパルワン州で活動を開始した。6月30日夜には同州州都チャリカル近郊で建設中のPRT基地周辺にロケット弾2発が着弾。けが人はなかった。07年の非政府組織(NGO)拉致事件をきっかけに撤退した韓国軍が対米支援のためアフガンでの活動を実質的に再開したが、旧支配勢力タリバンの予告通りの攻撃にあい、不安の中での船出となった。
撤退後も北朝鮮が09年に核実験を実施、6カ国協議が停滞する中で、李明博(イ・ミョンバク)政権は昨年12月、韓米同盟を重視し、最大350人のPRT保護兵力の派遣を決定していた。
韓国外交通商省によると、現在派遣されているのは147人。PRT保護兵力の本隊が7月初旬に現地入りし民間49人、軍232人、警察8人の総勢289人で活動を本格化させる。まず、学校や保健所への資機材の提供などを行い、12年まで、農業・農村開発や警察訓練などの支援にあたる計画だ。
先月30日にはパルワン州の米軍バグラム基地で、同州のPRT代表権を米国から韓国に移す移譲式典が行われた。当初は米韓共同でPRTを運用する予定だったが、オランダの撤収に伴い米PRTは南部ウルズガン州へ移動することになった。

一方、聯合ニュースによると、韓国PRT基地では約4ヘクタールの土地に宿舎や病院、教育文化センター、道場などを建設中だが、ロケット弾2発のうち1発が基地のすぐ外に着弾した。韓国側も直ちに携帯型ロケット砲で応戦したという。
外交通商省は1日、旧支配勢力タリバンや地域の武装勢力の攻撃の可能性を指摘した。
タリバンは韓国軍の再派兵について「アフガン・イスラム首長国政府」を名乗るウェブサイトに「約束違反だ」と脅迫する声明を発表。「この決定に壊滅的打撃を与える」と、パルワン州での攻撃を示唆していた。【7月1日 毎日】
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「地方復興チーム(PRT)」は、戦闘後に治安が悪化したアフガニスタンで、外国の軍と文民が協力して地域復興に当たる枠組みで、地域ごとに拠点を設け、軍が治安維持や警察支援などを担い、文民が教育や保健分野の復興支援に当たります。今年1月時点でNATO加盟14カ国が26カ所でPRTを展開しています。

【“派兵が避けにくい状況”】
この韓国のPRT及び保護する部隊の派遣については、昨年10月末に政府決定されています。
その政府決定について、当時、韓国・中央日報は次のように報じています。

****アフガン派兵ようやく決定…犠牲最小化案見つけるべき*****
政府が30日、アフガニスタンに民間地方再建支援チーム(PRT)とこれらを保護する兵力を派遣する予定だと明らかにした。派遣地域と人員はまだ確定されていない。政府はPRT要員を現在の25人から130人ほどに増やし、これらを保護するために300人程度の軍の兵力を派兵する案を検討中と伝えられている。アフガンは2007年、センムル教会信徒20人がタリバン勢力に拉致され、2人が殺害された末、40日たって解放された事件が起こった現場だ。また建設・医療支援部隊として派兵された茶山(タサン)・東医(トンイ)部隊の兵士1人も犠牲になった。このように危険性が高い地域に再び派兵するという点で、今後の国会同意過程を経るまで、これまでになく論議を呼ぶものと予想される。それだけ政府の苦情(苦悩か?)も非常に大きかったものと見当がつく。

政府はアフガン派兵決定に対し、私たちの国力に合うよう、国際社会で責任を果たす次元で独自的に下した決定だと説明した。米国側の非公式的で遠回しな要請があったものと見当がつくが、政府の説明どおり韓米間の事前協議や要求なしに単独で取った措置だったとしたら、それだけでも意味があったと言える。国力にふさわしい責任次元でも韓米同盟の力学関係でも韓国の国際政治的環境を考慮して派兵が避けにくい状況なら、韓国自ら決断を下す方がかえってよいといえると思う。変わらぬ姿のみならず、同盟国である米国の立場に配慮することで両国関係をいっそう強固にすることができるという側面でも、肯定的に評価できる。

金泰栄(キム・テヨン)国防部長官はおととい国会で「派兵する場合、避けられない交戦と犠牲がともなうだろう」と明らかにした。政府が派兵による危険性を率直に明らかにしたのは正しい態度だ。その延長線上で危険なのに派兵しなければならない理由に対して政府はより説得力ある説明をしなければならないだろう。同時に派遣地域の選定と再建支援業務協議過程で、犠牲を最小化しながらも効果的に支援する案を見つけることに最善の努力を尽くさなければならない。そんな努力をもとに国民を説得し、国民の多数が同意した上で派兵すべきである。【09年10月31日 中央日報】
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“米国側の非公式的で遠回しな要請があったものと見当がつくが、政府の説明どおり韓米間の事前協議や要求なしに単独で取った措置だったとしたら、・・・”というのは、いささか無理のある論理展開です。
アメリカに協力せざるを得ない韓国の立場、常に「有事」に備えてアメリカとの協調体制が不可欠であるという状況は、その後の北朝鮮による韓国海軍の哨戒艦沈没事件で更に鮮明になっています。

【「世界の先進一流国家」への道】
メキシコを国賓訪問中の李明博大統領は30日、メキシコシティの宿泊先のホテルで現地在住韓国人らとの懇談会を開きました。その席で、ことし韓国は経済協力開発機構(OECD)加盟国で最も高い経済成長率を記録するとの見通しを示し、「大韓民国は世界の中心国として、重要な状況を強大国と話し合う位置に立っている」と強調、また、在住者らに「皆さんも韓国の地位が以前とは異なることを暮らしのなかで感じることだろう」としながら、韓国は向こう10年間さえ努力し力をひとつにすれば、世界の先進一流国家に発展すると確信していると語っています。【7月1日  聯合ニュース】
アフガニスタンでの「貢献」も、「世界の先進一流国家」に発展するためのステップということでしょうか。

なお、韓国では、任務遂行命令から1カ月以内に海外に派遣され、国連平和維持活動(PKO)または国際平和維持軍(PKF)の任務に取り組む1000人規模の陸軍部隊「国際平和支援団(オンヌリ部隊)」が創設されています。

****陸軍が海外派遣専門部隊を創設、1千人規模*****
海外派遣を専門とする1000人規模の陸軍部隊「国際平和支援団(オンヌリ部隊)」が創設された。
¥陸軍は1日、黄義敦(ファン・ウィドン)参謀総長主管の創設式を特殊作戦司令部特殊任務団で挙行した。部隊の兵士らと郡関係者350人余りが出席した。
同部隊は、任務遂行命令から1カ月以内に海外に派遣され、国連平和維持活動(PKO)または国際平和維持軍(PKF)の任務に取り組む。部隊員は派遣命令に備え、基本的な戦術を熟知する。派遣命令が下ると、派遣先の言語や慣習などの教育を受け、任務地に投入される。
黄総長は式典で、派遣専門部隊を創設し海外派遣常備体制を構築したことは、韓国の国運を増大させる歴史的転換点になると述べた。

一方、陸軍は国際平和支援団とは別に、特殊戦司令部隷下の4大隊で構成する1000人規模の「予備指定部隊」、約1000人の工兵、輸送、医務など軍別機能部隊からなる「別途指定部隊」を編成した。
予備指定部隊は、派遣専門部隊の交代、追加派遣に備える部隊。四半期に1週間、派遣任務関連の教育を受ける。別途指定部隊は、さまざまな派遣の必要性に対応するため、平常時は基本任務を遂行し、半期ごとに1週間の派遣基本教育を受ける。
これにより、韓国の海外派遣常備部隊規模は約3000人となる。【7月1日 聯合ニュース】
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国際的活動によって韓国の地位向上を図るという国家戦略が明示されています。
日本では、南部スーダンへのPKO派遣をめぐって、アメリカとの関係を重視して実施したい外務省と、費用対効果への疑問から消極的な防衛省・北沢大臣の対立が報じられています。

【アフガニスタン撤退の流れ】
なお、アフガニスタンについては、“激戦地の南部ウルズガン州で主導的役割を担っていたオランダ軍1700人が8月に撤退。カンダハル州に展開するカナダ軍2800人も来年半ばまでに撤退する見通しだ。
ポーランドの次期大統領の有力候補であるコモロフスキ大統領代行は先月下旬に「12年までに2500人の駐留軍を撤退させるべきだ」との考えを示した。比較的安全な北部に4300人を駐留するドイツのグッテンベルク国防相も英紙フィナンシャル・タイムズに「来年2月に派兵延長の議会承認を控えており、年内に成果を上げる必要がある」と、現状のままでの延長承認には困難な要素もあるとの見方を示した。これまで米国と歩調を合わせてきた英国のキャメロン首相は「15年までにアフガンから英軍を撤退する」と述べ、オバマ大統領との違いを鮮明にした。”【7月3日 産経】と、撤退へ向けた流れが広がっています。

また、一方、オバマ大統領が来年7月に開始するとしたアフガニスタンからの米軍撤退が始まらなかった場合、議会が戦費を凍結できるとした内容の米軍撤退を求める修正案が、7月1日米下院で否決はされましたが、ペロシ議長を含む民主党153人と共和党9人の計162人が賛成票を投じるなど、アメリカ国内での“厭戦気分”も広がっています。

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