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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

混迷するアフガニスタン情勢  アメリカは戦略継続、更なる増派・撤退延期も

2010-07-16 23:24:07 | 国際情勢

(「英雄的存在」のペトレイアス司令官 7月4日のISAF司令部でのセレモニーで。 6月15日の米公聴会出席時には、脱水症状と時差ボケで倒れるという出来事もありました。 アメリカの期待が重くのしかかっています。 “flickr”より By isafmedia
http://www.flickr.com/photos/isafmedia/4759206531/)

【「アフガン軍と多国籍軍は協力して武装勢力と戦わなければならない」】
アメリカのアフガニスタン戦略の柱は、現地の人々を味方につけて、その助けを借りてゲリラやテロリストを掃討するという「対反政府武装勢力(COIN)戦略」と呼ばれているものです。
現地住民の支持の前に、当然ながらアフガニスタン軍・警察との密接な協調が前提になりますが、このところNATO軍がアフガニスタン軍を誤爆し、アフガニスタン軍兵士がNATO軍兵士を殺害して逃亡するといった、協調どころではない事件が相次いでいます。

****アフガニスタン:米軍機がアフガン軍部隊誤爆? 7人死傷****
アフガニスタン国防省によると、同国中部ガズニ州で6日、米軍機が地上のアフガン軍部隊を爆撃し、アフガン兵5人が死亡、2人が負傷した。同省は7日、「(駐留米軍は)過去に何度もアフガンの治安部隊を誤爆してきた。これを最後にすべきだ」と異例の非難声明を出した。
アフガン国防省のアジミ報道官によると、6日未明、旧支配勢力タリバン戦闘員がいるとの情報がアフガン軍に寄せられた。アフガン軍部隊が現場の同州アンダール地区を捜索していたところ、突然、飛来した武装ヘリにミサイル攻撃されたという。
米軍側に同様の情報があったかどうかは不明。アフガン国防省はアフガン軍の単独作戦だったとしている。
国際治安支援部隊(ISAF)報道官は、「(現場は当時)暗く標的を誤った」とだけ述べた。ISAFの司令官は、先月23日にオバマ米大統領に解任されたマクリスタル氏に代わり駐留米軍司令官に就いたペトレアス氏が兼務している。【7月7日 毎日】
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****アフガンでNATO軍の誤爆相次ぐ 市民や兵士が犠牲に****
アフガニスタンに展開する北大西洋条約機構(NATO)主導の国際治安支援部隊(ISAF)は9日、東部パクティア州でNATO部隊による誤爆で市民6人が死亡、数人が負傷したと発表した。
ISAFによると、同州ジャニケル地区で8日、地上部隊が撃った砲弾が標的に及ばずに着弾した。AP通信によると、当初8人の負傷者しか確認できなかったが、その後の調査で死者がいたことがわかったという。【7月10日 朝日】
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****アフガン軍:NATO軍3兵士を殺害 銃撃後、逃走*****
アフガニスタン国防省は13日、同国南部へルマンド州でアフガン軍が北大西洋条約機構(NATO)軍部隊を銃撃し、兵士3人を殺害したと発表した。死んだのは、同州で米軍と大規模軍事作戦を展開中の英軍兵士とみられる。
銃撃が故意か過失かは不明だが、撃ったアフガン兵らはそのまま逃走したという。
駐留米軍の司令官を兼務するペトレアスNATO軍司令官は、「アフガン軍と多国籍軍は協力して武装勢力と戦わなければならない」と異例の声明を出した。中部ガズニ州では6日、米軍機がアフガン軍部隊を爆撃してアフガン兵7人が死傷し、アフガン政府が非難していた。【7月13日 毎日】
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「アフガン軍と多国籍軍は協力して武装勢力と戦わなければならない」・・・こんな当たり前のことを声明として出さなければならない状態では、タリバン掃討の見通しは暗いものがあります。

【各国が撤退を早めるなかでアメリカは・・・】
泥沼化するアフガニスタンから、アメリカ以外の国はなるべく早期に手を引こうとしているようです。
カナダやオランダは、11年末までに戦闘部隊を撤退する姿勢をみせています。

アメリカの最大の盟友イギリスも、国内世論に配慮して撤退ムードです。
****南部の危険区から「撤退」=英軍、治安責任を米軍に―アフガン****
フォックス英国防相は7日の下院で、アフガニスタン南部のヘルマンド州北部にあるサンギン地区に展開する英軍部隊について、年内に同州中部に再配置し、治安責任を米軍に移譲する方針を発表した。同地区は反政府勢力タリバンの活動が活発で、「アフガン最悪の危険地帯」とされる。
英軍は2001年のアフガン侵攻以来、兵士312人の犠牲者を出し、このうち3分の1近い約100人がサンギン地区で死亡。英軍は権限移譲を「(同州での)外国軍再編成の一環」と説明するが、犠牲の増大で国内の厭戦(えんせん)ムードが強まる中、事実上の「撤退」を余儀なくされた形だ。【7月7日 時事】
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ただ、アメリカは出口戦略を示していますが、より早期の撤退を求める声は国内では強くないようです。
“6月29日に発表された、米ギャラップ社の世論調査によると、オバマ大統領が提唱する11年7月のアフガンからの撤退開始を支持する者が58%、38%は反対だった。反対した者の28%は撤退期限を設けるべきではないとし、より早期の撤退を求める者は7%に過ぎなかった。
与党・民主党は、アフガンの対テロ戦争の行方、無期限の軍事作戦に伴う費用に懸念を深めているものの、民主党議員はオバマ政権の政策を妨害したくないと考えている。
現在の野党・共和党がアフガン戦争を開始したこともあり、共和党もアフガンへの増派やペトレイアス司令官の任命を支持している。”【7月16日 オックスフォード・アナリティカ】

【英雄的存在 ペトレイアス司令官】
アフガン駐留米軍トップで、ISAF司令官も兼務していたマクリスタル米陸軍大将がオバマ政権幹部を批判した発言が米紙ローリング・ストーンに掲載され、文民統制に反するとして6月23日、更迭されました。
後任には上司でもある米中央軍のペトレイアス司令官が任命されましたが、ペトレイアス司令官は「COIN戦略」の生みの親でもありますので、アフガニスタンにおけるアメリカの戦略は今後も変わらないと見られています。

また、ペトレイアス司令官はイラクの治安回復を成功させたとして、党派を超えて絶大な評価を受けている英雄的存在で、だれにとっても批判しづらい人物です。
オバマ大統領としても、マクリスタル前司令官を更迭したことに加えてペトレイアス司令官とも対立すれば、アフガニスタン軍事作戦への国民の支持を確保できなくなり、再選の見通しも不透明となります。
“そういった事情から、ペトレイアス司令官はホワイトハウスからの干渉をほとんど受けずに、作戦を遂行できる強い立場にある。同司令官は、作戦の遅れを理由に、さらなる増派と撤退の延期を求めるかもしれない。”【7月16日 オックスフォード・アナリティカ】

アフガニスタンの情勢はアメリカにとっては厳しいものになっています。ペトレイアス司令官も「アフガンでの任務は困難で、容易なことは何一つない」と語っています。
****ペトレイアス新司令官、タリバン“本丸”いつ掃討*****
・・・・南部ヘルマンド州マルジャでは、マクリスタル氏の指揮下、鳴り物入りで掃討作戦が2月に幕を開けた。ゲーツ米国防長官は6月、「マルジャはタリバンの支配から解放された」と米議会で証言した。だが、マルジャにあるホテルの経営者アブドラ氏(40)は、「マルジャの7割はいまだにタリバンの支配下にある」と否定する。
行政機能の立ち上げにしても、カルザイ政権に任命された政府高官が治安の悪さから現地入りできない地区が残っている。
また、タリバンは「日没後になるとパトロールし、農作物の収穫量の3%を上納するよう住民に強要している」(アブドラ氏)という。そうしたタリバンの動向もにらみ、軍事的成果だけではなく、住民の気持ちをつかむことも重視されたマルジャでの作戦は、情勢転換の突破口を開くものとはなっていない。

 ■作戦は秋ごろか
ISAFとアフガン軍は、タリバン発祥の地、南部カンダハル州での大規模な掃討作戦に向けて準備に入っている。5日付の英紙フィナンシャル・タイムズによると、カンダハル市内では小規模な軍基地の設置などが始まっている。
同州で掃討作戦を実施するのは、タリバンを彼らの“本丸”から追い出し、カルザイ政権に幻滅している住民の支持を取り戻すことができれば、戦況を一変できると、ISAFなどは考えているからだ。だが、成果を上げられなければ、アフガン全土でタリバンをさらに勢いづかせ、外国部隊の撤退を加速させる危険性もはらむ。
作戦の開始時期は当初、6月といわれていたが、秋頃になるとの見通しが強まっている。その理由についてアフガン議会筋は、国会議員や地方議員ら約1600人が参加してカブールで6月に開催された「ピース・ジルガ」(平和会議)が、カルザイ大統領にタリバンとの対話を要請し、「カルザイ氏は対話の時間を稼ぐために作戦開始に同意しなかった」と説明する。
タリバン掃討への住民の支持が得られないことを理由に、同州で強い影響力をもつカルザイ氏の弟が同意しなかったとの説もある。住民が支持を躊躇(ちゆうちよ)するのは、タリバンが政府への協力者とみなす地元有力者らを頻繁に暗殺し、住民らに恐怖を植え付けているからだ。タリバンのそうした手法は効果を発揮している。

 ■米兵死者最多に
米軍などが苦戦しているのは南部だけではない。パキスタンの部族地域と国境を接している東部のヌリスタン、ナンガルハル、クナール3州では、南部における掃討作戦に対抗し、パキスタンからの武装勢力の流入が加速しているという。「情勢は日々悪化している」(地元ジャーナリスト)といい、クナール州では、アフガン軍と駐留外国部隊が掃討作戦に着手した。6月30日に、ナンガルハル州のジャララバード飛行場が武装集団に襲撃されたほか、各地で武装勢力との戦闘が続いている。
AP通信によると、6月の駐留外国部隊兵の死者数は、2001年の米軍によるアフガン攻撃開始以来、月間死者数としては最も多い103人となった。このうち60人は米兵で、米兵の死者数も月間最多だった昨年10月(59人)を上回った。
駐留外国部隊の現在の規模は約12万人。8月に米軍の3万人増派が完了すれば15万人体制となる。アフガン軍は12万5千人を超え、今年度の育成目標の13万4千人に届こうとしている。増強された戦力をペトレイアス氏がいかに指揮していくのか、手腕が試される。【7月7日 産経】
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