孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラエル 謎のシリア空爆

2007-10-05 16:15:44 | 国際情勢

(6日間戦争以来イスラエルの占領が続くゴラン高原 “flickr”より By mockstar)


イスラエル軍は2日、シリアを先月6日に空爆したことを初めて認めました。
これまでイスラエルが沈黙を続けてきたのは、あからさまな国家主権の侵害になる空爆の事実が明らかになると、名目上は未だ戦争関係にあるシリアが国内の反発を抑えきれずに報復攻撃をし、両国間の本格紛争に発展する事態を避けるためだったと見られています。

この空爆についてはいろいろな憶測がなされミステリアスな展開をたどりましたが、今現在なお、標的が何だったのかについてはっきりしません。
北朝鮮から運ばれた核関連物質か、イランからレバノンのシーア派武装組織ヒズボラに提供された武器の保管施設などの可能性が取りざたされてきました。

事件当初の9月7日AFPではシリア軍報道官の言葉として「(領空侵犯した)イスラエル軍機は軍需品を投下したが、被害は出ていない」と報じました。
“軍需品を投下”ってなんのこと?・・・奇妙な記事でした。

シリア政府は9月11日には「イスラエル軍の戦闘機が6日にシリア北方の国境を侵犯し「数個の弾薬」を投下した」と書簡で国連に提訴しました。
“数個の弾薬を投下”って空爆ということ?・・・相変わらずよくわかりません。

オルメルト・イスラエル首相は、政府当局者らにシリア問題に触れないようかん口令を敷いていると言われ、シリア側からも詳しい情報が出ないなかで、アメリカのマスメディアでいろんな情報が流れ始めました。

先ず11日、米主要メディアが米当局筋の話として「シーア派組織ヒズボラへの武器流入を阻止する目的でシリア北部を空爆した」報道しました。

12日付の米紙ニューヨーク・タイムズは米政府筋の話として、イスラエルの偵察機が最近、シリア国内の核関連とみられる施設の写真撮影に成功したと報道。

13日には米紙ワシントン・ポストが情報筋の話として「北朝鮮がシリアの核施設建設に協力している可能性がある」と報じました。

15日付の米紙ワシントン・ポストは中東専門家の話として「シリア北部の『農業研究施設』を攻撃したとみられる」と報道。イスラエルはこれをウラン抽出施設とみており、攻撃の3日前に北朝鮮からシリアに核関連機器が輸送されていたと解説しています。

18日付のニューヨーク・タイムズ紙も、北朝鮮の貨物船がシリアの港に入るのをイスラエル情報機関が追跡し、その貨物が運ばれた場所が攻撃されたと報じたものの、「積み荷の中身は不明だ」だと指摘。

真相が不明なまま、情報が乱れ飛び、意図的な情報のリークも勘ぐられるような“空中戦”“情報戦”の様相を呈してきました。
特に、北朝鮮の関与が報道されるようになって、進行中の6カ国協議への影響が意識されるようになってきました。

21日付の米紙ワシントン・ポストは、イスラエル軍機が今月上旬、北朝鮮の協力によって建設されたとみられるシリア北部の核疑惑施設を空爆するのに先立ち、米ブッシュ政権はイスラエル側と情報を交換していたと報じました。

23日付けの英紙サンデー・タイムズは、イスラエルが9月6日にシリア北部を空爆するのに先立ち、同国の精鋭特殊部隊がシリアの秘密軍事施設を襲い、北朝鮮から密輸された核関連物質を持ち帰っていたと報じました。

24日の時事通信は、「北朝鮮が国際社会の監視の目を逃れようと中東のシリアにウラン濃縮関連装置を搬送し、ウラン濃縮による核開発をシリアに委託しようとしていたのではないかとの疑惑が浮上している。」と報じています。

その後は目立った報道もなく推移し、冒頭紹介の2日のイスラエル軍公表になっています。
6カ国協議も合意へ向けて進展したようです。
一方、米誌ニューズウィーク(電子版)は23日、イスラエルがイランの核・ミサイル施設も空爆に踏み切る可能性を伝えています。
イスラエル政府筋は、イランがウラン濃縮活動の年内停止に応じない場合、「2008年は行動を取る年となる」と警告したとのこと。【9月25日 産経】

世界情勢というのは、一般の国民には見えないところで相当にきわどい事態が進行しているもののようです。
しかし、イスラエルという国は個人的には40年前の6日間戦争のイメージが強いのですが、そのイメージどおりに、常に“やるときには断固として、電光石火の早業でやる”・・・そういうお国柄のようですから・・・。


(シリアは遺跡の多いところでもあり、特にパルミラ遺跡は世界的に有名です。
“flickr”より By loufi )
コメント
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