孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パキスタン 再選後も課題の多いムシャラフ大統領

2007-10-07 11:14:09 | 国際情勢

(パキスタン北部のフンザ 是非一度訪れたい場所です。できれば杏の花が咲く頃。 “flickr”より By DavidS )

6日に投開票されたパキスタン大統領選で、ムシャラフ現大統領が再選を確実にしましたが、同大統領の立候補資格の有無が最高裁で争われており、司法判断が下るまで選挙結果の発表は見送られることになっています。

パキスタン情勢のニュースを読んでいて、よくわからないことがあります。
ひとつは、現行憲法は選挙を経ない国会での再選を禁止していたのでは?ということ。

総選挙を実施すると与党は議席を減らす見込みなので、現在の議会で再選されたい、しかし憲法の規定でそれが難しい、だからブット元首相の率いる野党パキスタン人民党(PPP)と組んで憲法改正したうえで現在の議会で再選を果たしたい・・・というのがムシャラフ大統領の路線だったというふうに理解していました。【8月30日 毎日】

しかし、陸軍参謀長兼任問題は焦点になっていますが、この選挙を経ない議会での再選の問題は最近全く目にしません。
理解が違ったのか?それともすでに憲法を改正したのか?うやむやにしたまま進行しているのか?
よくわかりません。

もうひとつわからなかったのはブット元首相の意向です。
10月4日のAFPは「ブット元首相は3日、ムシャラフ大統領と進めてきた連携交渉について「完全に頓挫した」と述べ、報じられていた恩赦については「偽情報」だとしてはねつけた。大統領に「強力な一撃」を与えるために、同元首相が総裁を務めるパキスタン人民党議会派所属議員が辞職する可能性を示唆した。」と報じました。

しかし翌日の5日には同じくAFPは「ブット元首相は4日、ムシャラフ大統領との連携交渉について「前向きだ」と述べ、今週末に行われる大統領選で予想されるムシャラフ大統領の再選を妨害しない考えを示唆した。」と報じ、全く逆の動きに転じています。
どういう背景でたった1日でブット元大統領の発言が180度変わったのか?
「強力な一撃」発言でムシャラフ大統領側が相当な譲歩をしたのか?
よくわかりません。

いずれにしても、ムシャラフ大統領は今後再選が正式に確認されても、その求心力は相当に弱まることも懸念されています。
ひとつは、陸軍参謀長を辞任して今後も軍への影響力を保持できるのか?ということ。

もうひとつは各政党との関係。
汚職などの罪で国外追放されている政治家らに「恩赦」を与える「国民和解協定」を通じ、野党勢力の協力を取り付けて政治基盤の強化を目指すものとみられていますが、ブット元首相だけでなく、第3野党「イスラム教徒連盟ナワズ・シャリフ派」(PMLN)のシャリフ元首も対象になるとか。(一部報道ではシャリフ氏は除外されているとも伝えられましたが)
また、南部カラチに強固な地盤を持つ政権与党「ムータヒダ民族運動」(MQM)の指導者で英国亡命中のアルターフ・フセイン氏相も帰国可能だそうです。
“赤いモスク事件”鎮圧に反発を強めていたイスラム原理主義政党の第2野党「統一行動評議会」(MMA)との和解の動きも出ているようです。

一方で、最大与党「イスラム教徒連盟クアイディアザム派」(PMLQ)は、世俗政党の人民党との連携を嫌い、過去には同じ政党だったシャリフ派との連合を望む幹部は少なくないそうで、今後人民党との協力関係が深まれば深まるほど、与党内の分裂の可能性が出てくるとみられています。【10月6日 毎日】

かつての大物政治家の復活、政党間の確執で、ムシャラフ大統領の手足が縛られる事態も考えられます。

最近の世論調査によると、ムシャラフ大統領の支持率が38%だったのに対し、ビンラディン容疑者は46%。特に、イスラム組織が強い勢力を維持している北西辺境州では、同容疑者の支持率は70%に達しているそうです。
(ちなみに、ブット元首相の支持率は63%で、シャリフ元首相は57%。ムシャラフ大統領が職務を停止しようとして失敗したチョードリー最高裁長官は69%だったそうです。)【9月12日 時事】

過激派勢力への根強い国民支持があり、ビンラディン容疑者が、最新のビデオ映像の中でムシャラフ大統領とパキスタン政府に対し「宣戦布告」をしたと報じられている【9月21日 AFP】状況では、“強いリーダーシップ”が必要とされますが、再選後のムシャラフ大統領には課題が多いようです。

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