豊田の生活アメニティ

都市デザイン、街歩き・旅行、くらし

静かなる大恐慌

2013-02-06 | 気になる本
 
 柴山桂太(2012)『静かなる大恐慌』集英社新書
今日の時代を大恐慌と見ることに賛成です。なぜ1929年の大恐慌と違ってドラスチックでないのか、各国政府がてこ入れし問題を先送りしているからです。サブプライムローンの住宅バブルや、金融工学、債権の証券化などアメリカ発の経済危機と思っていましたが、EUの銀行もしっかり投機をしてつけが回っているのです。アメリカ、EUがだめになると日本も中国はじめアジアもダメになるのがグローバル化経済です。それにしてもアベノミクスは小泉政権で失敗した構造改革路線であり、大局を見ないものだと思います。金融緩和で円安、株高に当面なっているので後のつけが怖いものです。この本はケインズの理論を基本とし、長いスパンで分析しています。発行が12年9月のためアベノミクスについては触れていません。以下著書の気になったポイントを拾います。
 経済危機の本質を見誤る「3つの壁」(p19)を指摘しています。1、今の世界経済危機は単なる景気循環による一時的な落ち込み。2、グローバル化や自由化の果てに国家間の対立が表面化。3、経済危機にとどまらず、国内政治の危機を伴っているのに、両者の関係を分析。
 「大量の資金が有利な投資先を求めて、世界中どこでも流れ込み、一瞬に引き上げます。どの国の政府も、このような資金の流れを管理することができません」(p32)。G20でもコントロールできず、実態経済との乖離も問題です。アメリカの力と信用も失墜し、IMFも機能しているとはいえません。世界の利益か自国の利益か、それとも多国籍企業の利益か、展望の見えないところです。「アジアの成長を取り込む」ことが果たして可能か、アメリカの枠組みに取り込まれるのか。TPPへの対応が問われます。
日本経済も世界経済も不況から抜けられず、資本主義体制の限界でしょうか。アメリカも製造業の再生と輸出拡大を狙っていますが、一旦産業空洞化(脱-製造業)した経済の再生は容易ではありません。「通貨切り下げで、産業の空洞化は止められない」(p78)のが著者の考えです。これは今後の日本が真剣に考えることだとしています。先行き不透明です。日銀も機能しているとは思えません。
 「パクス・アメリカーナは終焉したのでは?」(p83)と指摘しています。ソ連が崩壊し冷戦が終結し、唯一の超大国アメリカが国際秩序を維持し平和が実現できるのか。リーマンショックはアメリカの威信を傷つけ、イランの核開発、中国と周辺国の争いなど多発しています。
 ロシア、中国を「国家資本主義」と規定し、一方欧米を「自由市場資本主義」規定しています。どちらもそれぞれ難題を抱えています。「自由資本主義と国家資本主義の「違い」は、それほど明確ではありません」。例としてアメリカが「大きすぎてつぶせない」として、金融機関、GM、AIGなど全面的救済しました。中国もアメリカも軍事力を背景に、石油資源の確保を強引に進めています。「資本主義はすべて本質的に国家資本主義」と、規定しています。その通りだと思います。
 他にも沢山の考えるヒントと議論するテーマが整理されている本です。
(写真は大林のmotomachi coffeeです。テレビでもやっていたので、初めて行きました。洒落た店で流行っていましたが、改造のため段差のバリアにつまづいてしまいました。)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする