豊田の生活アメニティ

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TPP亡国論(2)

2012-01-08 | 気になる本

中野剛志「TPP亡国論」
4章 輸出主導の成長を疑う
 デフレを促進するのは安い製品が入る輸入だけではなく、輸出も影響します。グローバル化でコスト競争は低い賃金へ、「底辺の競争」をしました。デフレで賃金が安いことは企業にとっていいことで、さらに「実質為替レート」は下がります。2002年以降の景気回復は円安によってもたらされました。米への住宅バブルも大きい要因です。輸出主導で成長しなければならないという意見が、ずっと優勢でした。それどころか、リーマンショックでグローバルの限界が露呈した今日なお、しかも円高でもなお、輸出主導で成長するしかないと思い込んでいる政治家、官僚、あるいは知識人があとたちません。(おそらく、財界、大企業からの圧力で政治献金の力でしょう。私も2000年代の景気はトリクルダウンがないと主張しましたが、ここでの解明はおみごとです。)少子高齢化の需給の問題も述べています。また、法人税減税は間違っているということで、減税しても企業誘致できない、実質は高くないです。最も問題にしたいことは、輸出企業がもっと儲かるように減税しても、国民は豊かにならない。それと、企業部門に貯蓄が累積しています。デフレ不況で企業がお金の使い道を見つけられない。(しかし、実際は震災復興と抱き合わせ法人税減税を行いました)長期デフレ、就職難の今は、がんがん公共投資、がんがん国債発行すべきです。(ちょっと気になる所です。河村、橋本氏らは公務員と福祉削減に矛先を向けています。森英樹さんがいう軍事費を削って福祉に回せばいいのでは。渡辺治・二宮厚美等の提唱する新福祉国家構想はどうか。)
第5章 グローバル化した世界で戦略を考える
TPPはグローバルインバランスを解消できず、デフレは悪化します。「貿易黒字が勝ちで、貿易赤字が負け」という重商主義は間違っています。食料自給率が低いことに、カロリーベースに問題があるとしていますが、他の先進国に比べて極端に低く、アメリカからの輸入に依存し過ぎていることは、間違いなく言えそうです。穀物輸入の「リスク」は、輸入量の問題だけでなく、価格高騰の問題もあります。水の枯渇について、「ダムはムダ」などと親父ギャグを売り文句に、ダム建設中止を喜んでいるのはおめでたいとしています。(この点に関しては、貯水量や水利用計画を検証すべきす)
第6章 真の開国を願う
菅政権は、尖閣沖における中国漁船の領海侵犯事件の処理によって、世論の厳しい批判にさらされ、支持率が急落しました。くわえて、ロシアのメドベージェフ大統領の北方領土訪問が火に油を注ぎました。弱腰批判をかわすための「開国」と言えます。安保との関わりで、もし、「アジア太平洋地域の安定のためには、アメリカ中心の太平洋同盟網が必要である」という現状分析が正しいのであれば、アメリカは日本がTPPに参加しなくても同盟網を維持するでしょう。その点は著者に同感です。グローバルな視点で、一見保護貿易論に見えるが国益を守る視点で、アメリカの仕掛けた罠を分析しています。がんがん公共事業には異論がありますが、TPP問題を理解するには必読文献だと思います。(写真は那覇・福州園)
コメント
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