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『日本経済の真実』

2010-08-08 | 気になる本
辛坊治郎・正記(2010)『日本経済の真実』幻冬社
 この本を友達に進められて読みました。図書館で予約しても順番待ちの人気の本です。論点は、この国は破産(国の借金、円の暴落)する。そのために、GDPを成長させる。大企業の支援、つまり法人税を減税することに主眼があります。そして、小泉・竹中構造改革をもう一度推進させる。民主党政権は期待外れであった。子ども手当ばらまきと郵政民営化見直しに問題がある。と言うことのようです。立場は財界と同じで、経営者の発想です。中谷さんの『資本主義はなぜ自壊したか』の反論のようで、参議院選挙を前にしたプロパガンダの匂いがしました。
1章、2章は概ね同意すべき現状分析、歴史ですが、3章の小泉改革の評価、5章の「呪縛」は前章までと論旨が飛躍し、短絡的に企業の法人税減税でGDPが良くなるという発想です。経済学というより、政治的な詭弁すら感じます。気分、感情を捉え、すらすら読んだら惑わされる本でもあります。日本の財政は借金が増えて崩壊するという危機意識ですが、小泉さんも借金を200兆円近く増やしてきました。GDPも増えていません。借金を増やしてきた原因と責任の分析がありません。法人税を下げる財源が不明です。消費税増税では庶民の財布はきつくなり、成長はとまります。「成長」とは大企業の利益が伸びることだけではないはずです。2000年代の「いざなぎ景気超え」を見れば、大企業は儲かっても中小企業の利益や労働者の所得は増えなかったのです。つまりトリクルダウンはなかったのです。グローバル化と言いながら2008年の世界経済危機の問題、この間の派遣切り、福祉の後退など格差と貧困の増大にも触れていません。
世界の経済・金融・財政危機の中で、日本の国債が一時的に買われていますが、GDP比180%の借金は解決の道筋を示さなくてはなりません。国民生活が豊かになる真の成長戦略、社会保障と消費税、正社員の増大やオランダ型のワークシェアリング、日米安保と基地及び軍事費など日本の将来に問題は山積しています。民主党の単独政権を選ばなかったため、多様な意見が国会で十分に議論され、国民も学ぶことが求められます。
<時の話題>
 広島の平和式典に国連事務総長、米、英、仏が参加しました。広島秋葉市長の非核三原則の法制化と核の傘からの離脱を求める挨拶に対し、菅総理の非核三原則厳守と核の抑止力論では、被爆国日本のどちらが総理か疑わしくなります。
コメント (2)
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