Con Gas, Sin Hielo

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「キャピタリズム~マネーは踊る」

2010年01月15日 00時01分40秒 | 映画(2010)
闘いに疲れたって、笑うところですか?


M.ムーアの映画がおもしろい理由は勧善懲悪にある。矛先を向ける先に関して徹底して負の印象を植え付け痛快に斬って捨てる。観客は大喜びだ。

何より共和党の指導者はボロかすである。今回はレーガンもやり玉に上がった。米国の嘆くべき現状は共和党政権の負の遺産であり、その印象を一層強めるためには少なからず事実を捻じ曲げる。

「シッコ」では米国の医療制度の問題を際立たせるために、フランス等他国が天国のような描き方をした。でも本当にフランス国民が満足しているかどうかは不明である。

今回は短い場面ではあったが、わが国が幸せな制度の下にあるように話していた。我々はうなずくことができたかな。

もちろん彼は他国の方が優れていて幸せだと信じ切っているわけではない。そう描くことが表現として鮮烈に伝わるからそうしているのにほかならない。

嘘を流しているわけではなく、自分が伝えようとすることを鈍らせる要素を削っているだけであって、エンターテインメントとしてはまったく間違っていないのである。

そうした意味では、おなじみのアポなし取材も同じ観点に立った表現であることが分かる。装甲車で悪徳企業に乗り込むなんて、はじめからオチを想定して演じている三文芝居に過ぎない。

つまり、彼は社会の問題を素材にエンターテインメントを作っているに過ぎず、問題を解決する方向に進もうとしているのでは決してないと言えるのである。

そんな彼が独白する。

「もう一人で闘うのは疲れた」

前述の確信的な三文芝居に比べると、中途半端にリアリティがあっておもしろくない。

原題の副題にある"Love Story"というのも、そういう意味では洒落っ気が足りない。邦題の平板な響きに比べれば遥かにマシではあるが。

加えて。

彼が思い描く理想像は民主主義だそうだ。しかも社会主義に近い、社会民主主義とでも言うのが適当だろうか。

でも、残念ながらそれではおそらく国民全てが幸せになるより先に、国がまとめてゆっくりと沈んでいくだろう。

なにしろ現代は独善的な新興国が主導権を握っているのだから。

国同士のパワーゲームを考えたときに最も効率が良いのは、環境も人権も考えずに突っ走れること。これは、まさに民主主義の対極なのである。由々しきことながら。

(65点)
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4 コメント

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中国経済はV字回復だとか (クラム)
2010-01-22 06:27:53
mezzotintさん、おはようございます。

まさしく考えるきっかけになればいいことだと思います。
ただ次々に現れる問題をすべて解決する方法は難しい、
というか、おそらく存在しないでしょう。

そもそも人間が増え過ぎなんです。
食糧や富を無尽蔵に生み出すなんて無理なんですから、
どこかで均衡をとらなければいけない。
でも、膨大な数の貧困者を生みながら世界を蹴散らす国が
瞬間的には主導権を握ってしまうから、
それに負けじと追随せざるを得なくなって新たな歪みを生み出す悪循環。
極論ですが、少子化は問題どころかある程度は推進するべき話だと思います。
返信する
クラムさんへ。。。 (mezzotint)
2010-01-17 11:26:56
こんにちは。
gooへようこそ♪
これからも宜しくお願い致します。
う~んなるほど。おっしゃるように
解決の方向には進んでいませんよね。
しかしこういう事態だという事を
少しでも多くの人に理解してもらい、
考えてもらうにはいいのではないか?
と思います。中国の経済はめまぐるしい
発展を遂げていますが。地方の農村部など
は貧困層の人が凄い数を占めているわけです
から。。。。アメリカの状況以上に酷い格差
ですよね。う~ん難しい話です。
返信する
当面の課題 (クラム)
2010-01-17 04:54:57
その昔「ニュースステーション」は「中学生にも理解できるニュース」を掲げていましたが、
エンタテインメント性を加えることで、理解まで行かずとも関心を引くという点で
M.ムーアの貢献度は大きいと思います。

ただ医療制度もそうですが、オバマも万能ではないところに
彼の映画が抱える課題があります。
本作でブッシュ(子)の顔が出てきても、今更感が拭えませんでしたから。
返信する
正直、、、、 (mig)
2010-01-16 21:22:57
ちょっと難しかったです、わたしには★

でも相変わらずムーア、エンタメ映画として見せる切り口と体当たり精神は素晴らしいです~。

そうそう、「アバター」の爆発ヒットにはわたしもかなり驚きました、
そこまで面白いかなぁって思っちゃいますね。
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