Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「いぬやしき」

2018年05月03日 16時24分50秒 | 映画(2018)
実写版・逆襲のロボとーちゃん。


もう気付いたら退職までのカウントダウンが始まっていたという立場にとっては見過ごせない設定の作品。

会社でも家庭でもお荷物扱いの冴えない中年男性がヒーローになる。そしてそのジジイ役を演じるのが木梨憲武というのだから時代の流れは恐ろしい。

彼は器用だし、「みなさんのおかげです」のコントでも冴えない役をよく演じていた印象があるから、観る前からハマり役という想像はついた。

あとはアクションや演出でどれだけ楽しませてくれるかというところが焦点であり、結果から言えばまあ面白かった。

娯楽作品であまり重箱の隅をほじくっても仕方がないので、残念だった点は簡潔に記録しておく。

・ヒーローとなった犬屋敷さんだが、彼自身の中身も変わったという描写が最後に欲しかった。獅子神に勝ったのは、能力を超えた家族を想う気持ちだったはずだから。

・脇キャラの使い方、特に二階堂ふみがもったいなかった。おそらく原作ではもっと物語に絡んでいるのではないか。

父親を邪険に扱う家族って、わが国では普通のこととして描かれるけど海外ではどうなのかと思う。

ヒーローになるときのギャップということで徹底的に冴えない姿にすることを否定はしないが、度が過ぎると家族に感情移入できなくなってしまいそうになる。

今回は娘役が三吉彩花だったからよかったが、「サバイバルファミリー」のときはそれも減点対象だった記憶がある。

本作の売りであった新宿の街を飛び回るアクションは良かったと思う。都庁が目立つが、損保ジャパンビルの特徴ある形を巧く画として取り入れた場面も印象的だった。

(70点)
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「君の名前で僕を呼んで」

2018年05月03日 15時27分10秒 | 映画(2018)
時代は退廃的に成長する。


全体的に観ると、繊細な文学作品の香りに満ちた佇まいの映画なのだが、何かしっくりこないところが多いとも感じた。

主人公のエリオと、彼の家に短期ステイでやって来たオリバー。避暑地の独特な空気の中で二人の心が触れ合っていく様子が描かれるのだが、彼らの態度や行動がなかなか理解しづらかった。

反発したり仲良くなったりという以上に、彼らは、振り回されていたかと思えば、すぐに逆の立場になって相手を翻弄するような、そんな攻守交代が目まぐるしく変化する関係を続ける。

エリオはいつからオリバーを恋愛対象として見るようになったのか。そもそも彼は自分が同性愛者であることを知っていたのか。

オリバーの気持ちが分からないエリオは、同年代の女の子と関係を持つ。思春期の悩み故の過ちと言ってしまえばそれまでだが、相手にとってはとんでもない話だ。

オリバーはいつからエリオの気持ちに気付いていたのか。ついには「大人になれ。真夜中に待ってる」とメモを渡して二人の関係は成就する。

同性愛がどうのと言うのではなく、ここまでまわりくどくなることに違和感を覚えていたのだが、ここで気付いた。

この映画の舞台は1983年なのだ。

LGBTなどという言葉は当然なく、同性愛者は素性を隠して暮らすことを余儀なくされていたであろう時代。簡単に人と人が繋がれるツールもなく、彼らが自分の思いを伝えることは容易ではなかった。

そこに気付くと、本作への印象は大きく変わる。まわりくどいのではなく、彼らの行動の選択肢は限られていたのだ。

そして同じように、時代として彼らの結末は決められていて、17歳のエリオにはあまりにも辛い経験となるのであった。

冬になり、遠く離れたオリバーからの知らせを受けたエリオが声を殺して泣くのをこらえる場面で映画は幕を閉じる。バックには暖炉にくべられた薪が燃える音だけ。強烈な印象を残す名場面であり、このワンカットでアカデミーノミネートになったと言っても納得する。

ただ、作品として味わい深いのは理解するが、最愛のひとと結ばれない時代の悲しさは簡単には片付けられない。

最愛のひとは別にいたと親に告げられた時に子供はどう思うのかとどうしても考えてしまう。時代的にみてもあまりにも理解のある人が周りに多くて、ちょっときれいごとに偏っている点が否めなかった。

(70点)
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