Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「シビルウォー/キャプテンアメリカ」

2016年05月05日 09時34分42秒 | 映画(2016)
それでも人生は続く。


マーベルコミックシリーズでまず思うのは、これだけの俳優陣をよく継続して押さえ続けられるものだということ。

H.ジャックマンはいよいよウルヴァリン役を降りるようだが、15年以上を経て大スターになった彼に同じ時間を拘束するオファーを出すことは相当難しいだろう。

しかし今回もR.ダウニーJr.は出るし(ほとんど主役級として)、S.ヨハンソンJ.レナー、昨年「アントマン」が公開されたばかりのP.ラッドも顔を揃える。長期的な視野に立った企画を作りそれを実現させる組織力には敬服するばかりだ。

そして今回は、その企画戦略がきっちりと作品本体にも表れていることを評価したい。

Civil War:内戦らしいが、アベンジャーズの内部で争いが起きるというのがメインの内容になっている。

スーパーヒーローの強大過ぎる力は世界を平和に導くどころか、新たな敵を生み、罪なき犠牲者を増やすだけである。力は適正にコントロールされる必要がある。

最近の「バットマンVSスーパーマン」や、以前の「Mr.インクレディブル」でも描かれたいわば普遍のテーマであるが、本作はマーベルの歴史を生かし、主役級のヒーローたちを分断し戦わせる展開に持っていく。

それぞれがヒーローだけにいずれの意見も正しい。しかも向いている方向は同じはずなのに戦わなければいけない不条理。序盤こそカメラのブレで見づらいアクションが気になるものの、物語の軸がはっきりするに従って戦闘シーンも分かりやすくなっていく。

もともとアベンジャーズは、強い個性が集まるというよりぶつかり合うところに魅力があった集団だと思うので、多くのヒーローが異なる組み合わせで激突する対決は、まさにシリーズの真骨頂が映像化されたと言える。

それにしても悲しいのは、劇中の戦いのすべてが個人的な恨みによるものだということ。世界征服でも愉快犯でもない。大切な人を失う苦しみは誰もが理解できるだけに、扱いに注意を払わなければ次の悲劇につながってしまう。

便利になったはずなのに満足度が低くなる社会。持続的な発展を目指しながら増え続ける貧困と、そこに起因するテロや犯罪。いずれも元を辿れば私怨へと行き着く。

マーベル作品は、必ず最後にシリーズ次作へ繋がるおまけ映像が入る。一応のエンディングを迎えても決して戦いが終わらないのがマーベルヒーローの宿命である。

特に今回は、キャプテンアメリカにもアイアンマンにも笑顔なき終わり方であり、矛盾に苦しみながら前へ進む選択肢しか取り得ないヒーローたちにどうしても現代社会を重ねたくなってしまった。

(85点)
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「スポットライト 世紀のスクープ」

2016年05月05日 09時02分01秒 | 映画(2016)
黙々と裏を取り積み重ねる。


アカデミー作品賞受賞作という堂々たる冠が付いたが、内容は実に淡々としている。

聖職者によるスキャンダルという事実があまりにも大きく、余計な脚色が必要ないのはその通りであろう。

保守的になりがちな歴史ある町の「システム」に風穴を開けたのは、よその地から地元ボストングローブ紙へやって来た新局長であった。

局長が数ある報道の中からいかにしてこのニュースに注目したのかは明かされない。しかし、就任直後からトップダウンでグローブ紙の看板である"Spotlight"欄を担当する記者たちへの総力取材を命じる。

局長の慧眼と、忠実で正義感に満ち行動力に溢れる有能な部下たち。与えられたノルマ、取材対象との厳しい交渉、メディアに携わる人たちの並々ならぬ苦労が伝わってくる。

社内の人間、教会関係者、被害者に弁護士と、関係者がめまぐるしく登場するため、ただでさえ記憶力の衰えが見え始めている身にとって、話を追っていくのに相当骨を折る。

ひたすら取材して事実の裏付けをするのがメインになるためか話の抑揚に乏しい一方で、作品のポイントとなるべき意外な展開も、裁判の資料が公表されるなど専門的な面が大きく、直接感情に響いてこないことが多くなっている。

その中で印象的だったのは、取材を続ける中で、同じグローブ紙が過去にも同事件を扱っていながら記事がおざなりにされてしまっていた事実を知る場面である。

これだけ有能な社員が集まっていたとしてもこぼれ落ちてしまう。メディアに限らず、仕事に家庭に、常に謙虚に向き合わなければいけないことを改めて感じさせられる。

興味深い話ではあるが、作品賞受賞と聞くと正直「ふ~ん」と思ってしまう。俳優陣も魅力的な顔触れだが、分かりやすい賞取りの演技ではない。ただ、R.マクアダムスのキャリアに箔が付いたのは正直うれしい。

(70点)
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