水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

助かるユーモア短編集 (88)根回し

2019年09月14日 00時00分00秒 | #小説

 根回し・・世間で非常によく使われる言葉である。
『なにとぞ、よしなに…』
 何げなく出された菓子鉢。その菓子鉢の中を、何げなくチラ見する代官。上げ底の菓子の下には金25両の包み金が並ぶ。
『! フフフ…◎◎屋、そちもなかなかの悪(ワル)よのう』
『そう申されますお代官様も…』
『こやつ、言いよるわっ! フッフッフッ…』
『フフフ…』
 などという会話が交わされたであろう時代から現代に至るまで、根回しの必要性がなくなった試(ため)しはない。^^ もちろん、いい意味の根回しもある訳で、事前工作で物事を成功へと導(みちび)き、大いに助かる行為ともなる。
 とある中学校の体育館である。
「監督! 僕、どうなんですかっ!?」
「お前なぁ~。…お前は補欠とレギュラーの際どいとこだっ!」
「…ってことは、出られる可能性も?」
「ああ、まあなっ! ははは…なくはないっ!」
「先生、これ、うちの店の特上品の試供品ですっ! どうぞ…」
「ははは…根回しかっ? 試供品ならいいか…。いや、悪いなっ! まっ! 考えておこう!」
 部員は、これで出られるっ!…と、監督に一礼すると体育館を後(あと)にした。
 大会当日、その生徒は今か今かと出番を待っていたが、残念ながらついに試合には出られなかった。
 このように、根回しをしたからといって、必ずしも助かる結果にはならない・・ということになる。^^

                                


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