中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

丹波の縞帳が語り掛けてくるもの

2019年09月14日 | 工芸・アート


上の写真は丹波木綿の縞帳で、記載されている住所の桑田郡は「1879年(明治12年)まで京都府(丹波国)にあった郡」ということで、それから推測すると、江戸末期から明治にかけて作成された縞帳と思われます。前回の記事にも書きましたアシスタントが入手したものですが、良いお買い物、グッジョブ!でした。(^^)v

 

 

薄口の反古紙に貼られていて、紙がいかに貴重で、大切にされていたかもわかります。また、トップの写真左隅は紙を手拭いのような型染め晒しと、浅葱色の晒し2枚で補修されています。“小豆3粒包めたら布は捨ててはいけない――”です。

兵庫県の地場産業のサイトによれば、

[  丹波地域では、宝永年間(1704~1710)頃に良質の綿が盛んに生産され、手織りの木綿が製造されていました。しかし、明治以降、機械化による大量生産が進み、家庭では手織り木綿も作られていたものの、産業としては徐々に衰退していきました。戦後に至っては、家庭内においてもほとんど木綿を手織りすることは無くなりましたが、昭和49年にそれを惜しむ人々が集まり、昔ながらの製法による手織り木綿を復活し、現在に至っています。 ]

とのことで、古くから上質の綿織物が織り継がれてきたのですね。

私も修業に入る直前と終えてしばらくして丹波地方へは2度旅をしたことがあります。丹波布を復興された足立康子さんを訪ねたこともあります。丹波立杭焼の窯元を訪ねたりしました。食べ物も、工芸も滋味豊かな土地だと思いました。

 

桑田郡(現在の亀岡あたり)という地名からもわかるように、養蚕も盛んな地域だったようで、少し、紬や木綿との交織の布もあります。絹は虫食いになっています。


糸はほとんどは木綿の手紡ぎですが、細番手の糸、杢糸、若干ですが、明治以降のものなのでしょう、化学染料の濃いピンクや青、緑が入ったものもあります。

紺、青、茶、白と限られた色数の中で糸一本一本を見つめながら工夫を凝らしいい縞を作り出そうとしていることがとてもよくわかります。とても上質の、おしゃれな洗練された縞、格子が多いです。

貼られている小さな布はかなりの高レベルな織り物と思います。縞帳に詳しいわけではありませんが、自家用で織ったものを貼り集めたというより、どこかの工房で織られた布のように思います。

自家用に機を織る家々には、参考にするための縞帳が宝物として保管されていたということですから、切手大の小さな布が行商などで、束で売られていて、それを反古紙に張り付けていたのかもしれません。この縞帳とよく似たものを織り物の本の中の写真で見たこともありますし、同じような布が貼られた縞帳も見たことがあります。誰かと分け合ったり、交換したり、いろいろ想像が膨らみます。。

昔の庶民も着ることにはこだわりがあったのです。他の人と違う感じのものを作りたいとか、着たいとか、流行もあったでしょうし、いろいろ思いを巡らせ、縞帳を参考にして、縞割りを考えたのでしょう。作り手の生き生きとした表情まで浮かんできます。

紬塾の染織実習で織る3寸ほどの布も、このようなシンプルな仕事をベースに考えているのです。

限られた色数で、糸を細かく混ぜながら設計してもらっているのはこの縞帳にあるような、シンプルだけれど、糸の形を生かした奥行きのあるものを作ってもらいたいからです。実習では経糸は無地系で用意されていますので、ヨコの段だけでそれをしてもらいます。

布をキャンバスに見立てて、絵を描くような表現をしたいのではありません。

紬と木綿、時代の隔たり、着こなしの違いなど、そのまま真似できるものではありませんが、その土地、暮らしのなかにあるものづくりの精神や、真摯な姿勢は大事にしたいと思います。

ちなみに私の縞帳は作ったことがありません。もう2度同じものは織らないので振り返ることは少ないのです。ただ、修業時代に織らせて頂いた布の端っこを少し頂いたので、それを工房の他の人と分けたものを、和綴じ帳に貼ったものは今も持っています。下の写真がそれです。







真似て織ることはありませんでしたが、糸一本の見え方、糸使いなど参考にすることはありました。

人工知能がこれから時代、暮らしの中にも幅をきかせてくるでしょうけれど、人の手でなければ生み出せないもの、人が生み出すべき手仕事は残し、伝えていかなければ、人は何のために生きるのかわからなくなりそうです。

この縞帳はただ美しいだけではなく、なぜ美しいのか、また人がなすべきことは何か、まで語り掛けてくれているように思います。

 

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