中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

花織帯と着物

2020年03月13日 | 着姿・作品
昨年3月のこまもの玖さんでの「帯揚げ百彩」の時のトークイベントに参加してくださった方が、紬塾にも参加してくださいました。また、その際に帯もお求め頂いたのですが、その帯を締めて通ってくださいました。

ご本人から2回目の参加の時に「この帯を6回締め続けて来ます」と伺い、本当にびっくりしました。他にもいろいろお持ちでしょうに、この帯としっかり向き合ってくださるというのです。
一枚の着物に帯を六本替えて過ごしたことはありますが、一本の帯を六枚の着物で、意識的に連続して着用する経験はないのでハッとさせられました。こういう帯との出会い方をしているだろうか?

モッコク染のピンクとグレー、桜染めのピンクベージュなどを中心に使って織った『御身衣』と題した花織の帯です。

紬塾の最終回を終え、コメントも頂きました。
「桜と木斛(もっこく)で染められた美しい桜色の帯を、一年間6回にわたる紬塾に毎回締めていくことに決めました。
先生が染めて織られた草木染めの色が、さまざまな季節や気候、いろいろな紬のきものと合わせることで、毎回どのように違って見えるのか、実際に見てみたい、と思ったのです。
一見淡いピンクの無地と見えていた帯は、季節ごとの日差しの下で見てみると、じつにさまざまな色の糸の折り重なりでできていて、光の加減によって多様に美しい表情を見せてくれます。一本一本の糸に滑らかな光沢があることも、日の光の下で見て気づきました。」

生木の草木染の色は季節や天候、戸外、室内、光源、取り合わせなどによって、違って見えますので、それを実体験してくださったのです。この決断に敬意を表します。

六枚の着物は、木綿、紬、お召しなどですが、風合い、質感、色合いは様々でした。

『御身衣』は、経糸、緯糸共にサラッとした生糸に近い節の少ない玉糸を使った紬です。
紬ではありますが、真綿と違って光沢感が出ます。紬とはいえドレッシーな着こなしにも使える帯です。
山茶花に『御身(美)衣』という品種があり、白の花に縁だけピンクの可憐で優しい花が咲きます。工房にも植えてあります。公園などにも見かけるポピュラーな品種です。その清楚なイメージで糸を選びました。

モッコクのピンクとグレーを1本交互に経糸に配し、グレイッシュピンクを織りだしましたが、角度や光線で色の印象が様々に変わります。グレーが潜んでいることが大きいと思います。

身近な植物の多くは、赤と黄色と黒味を含んでいます。生木で扱う場合、その混ざり具合と媒染材によって発色が異なりますが、更には染める時期や染め方、染液の時間の経過でかなり色の違いがあります。それは実体験として日々経験していることです。
ただ、それをデータに取る気も写真に収める気もしません。その時々に生き生きした色が染まるよう、そのことに神経を集中させます。
もちろんある程度の経験の集積はありますが、私の仕事は一回に賭けることしかできません。よく観察はするけれど、マニュアル化はできないのです。

それよりも、その色をどんな風に生かせるかそのことだけを考えて、デザインを決めたり、隣り合う糸選びに大半の時間を費やしているように思います。

そうして織った着物や帯を使う方がどう使ってくださるか、私はバトンを渡して見守らせてもらうだけです。
ものを通して、ものともののいのちのやり取りがあることは確かです。今までにも、たくさんのそういう現場に立ち会わせていただきました。今回もその一つの端的なかたちです。

取り合わされた着物も小物も、上質で帯を引き立てよく合っていました。
お手持ちの着物を駆使してお使いいただき、本当に作り手冥利に尽きます。

帯締めもどれも質の良さが手に取るようにわかります。手組の紐の力ですね。
色や柄の合わせというだけではない、ものの力と力の取り合わせだと思います。

力というのは、“誰か”の着こなしに静かに何らかの役目を果たし、名もないけれど上質な自然体のものに宿っているのではないでしょうか。

やり尽くした完璧はすぐに不完璧の始まり。その先にあるものを深く見据え、何を切り取り、何を見出し、しばし人のこころを安らげる仕事になりえるのか。
ものの不足を見立てで補う侘びのこころにも通じるものが、着物の創作にも、着る世界にもあります。見立ては自由を内包する豊かな世界です。

写真をHPやブログで紹介させていただける了解を得て、撮らせていただきました。塾が始まる前のあわただしいわずかな時間の中で、何しろカメラマンがいいもので、、、(*_*;上手には撮れませんでしたが、自然光のみで撮影したものを一挙、公開!

では、私のコメントと共にご紹介させていただきます。(^ヮ^


5月の初回の取り合わせ。ラオスの滑らかでシンプルな縞木綿の単衣と合わせてくださいました。
写真では分かりづらいのですが、帯山のあたりをご覧頂くと、花織の浮いたところがピンクとグレー2色あるのがお分かりいただけると思います。一本調子の無地ではありません。

2回目の6月、たて絣のアイボリー地の結城縮に、全体を白系の小物で合わせた中に、帯揚げの黄色と帯締めの黄味のブルーがアクセントとになり、梅雨時に爽やかさをプラスした取り合わせ。
曇り日の北西の戸外で撮影。

3回目の9月末。暑さが残る中で、ダークな単衣の塩沢お召しと、濃厚な組みの帯締めを主役に、涼し気な白地にブルーグレーのぼかしのある単衣向きの帯揚げで、夏と秋のはざまの季節らしい取り合わせ。
室内の13時過ぎの障子を少し開けた自然光で撮りましたが、明るすぎて白っぽく色飛びしてしましいました。(>_<)

4回目の11月上旬の装い。シンプルでモダンな絣の大島に、シックな色合いの帯締めで秋の深まりを演出しています。
きりっとした黒の大島にグレイッシュピンクの帯を合わせることで、洗練された大人の充実感や優しい女性の表情がありました。北側の日陰のカーポートで撮影。



5回目の12月。洒落紋の入った結城の淡いグリーンがかったグレーの無地にもとてもよく合っています。このままパーティーへ行きたいですね。。
薄い色同士ですが、マットな結城にほどよい光沢感のある帯、寒色と暖色が互いを引き立てあって、なんとも上品な洗練の極みのような取り合わせ。
障子越しの柔らかな自然光のみで撮影。


トップの画像は6回目、2月初旬にこちらも障子越しの光で撮ってみました。
着物は草木染。着物の暖色は今までは、少し難しい…と、お召しにならなかったようですが、グレイッシュピンクの帯を暖色同士でも、もたつかせずに落ち着つきと、華やぎもある取り合わせです。

帯揚げはしだれ梅で染めたグレーです。私の方で選ばせていただきましたが、時にフワッと薄紫のような色をのぞかせます。「自分では選ばなかった色・・」とおっしゃられていましたが、お気に召していただき、6回の取り合わせに4回もお使いいただきました。
帯締めは、真っ白ではなく、片方が淡いピンクのぼかしになっています。左右使い分けられます。上の画像ではメインの左側に白を使われています。
暖色の取り合わせの中に、小物のグレー、白がクールダウンの絶妙な効果になっています。

着物歴は8年位だそうですが、佳きものをはじめから揃え、仕事がオフの日に、着物を楽しんでいらっしゃるようです。
このスリーシーズン使えて、カジュアルにもドレスアップにも取り合わせ次第で幅広く使える『御身衣』を長くご愛用いただければ大変嬉しく思います。
染小紋にも合うと思います。

こちらの着姿ページにももう少し写真がありますのでご覧ください。

黒、白、グレー系の着物に、柔らかな温かみを加える草木染のピンクの帯。
「御身衣」は、色は同じようなピンク系で、花織のパターンを少し変えたものが、あと1本あります。ご希望の方はHPからお問合せ下さい。(^^)/





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