中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第12期「染織実習コース」無事修了

2021年04月11日 | 紬きもの塾’17~’20
第12期の染織実習コースも4月の初旬に無事終えることが出来ました。
コロナ関連のこともあり、日程が大きくずれ込みました。
最終回は大阪からの方が感染拡大の中、大事をとり欠席で、3名で麻(ヘンプ)の伊達締めを縫いました。

何しろ、(^-^; 運針に時間を掛けましたので、みなさんその成果を発揮して下さいまして、、針が指に刺さったり、、もありましたが、兎にも角にも、無事に時間内に縫いあげました。(´∀`)

博多の伊達締めが一般的ですが、麻は吸湿性と放湿性に優れ、長襦袢の上に使うと汗取りの役目もしてくれます。洗うこともできますし、私は愛用しています。皺になりますが、霧を掛けるだけで皺は取れます。すぐ乾きます。掌を濡らして叩くようにしても大丈夫です。

一人分、生地の長さが足りず、接ぎ合わせて縫うことになりました。接ぐことの練習にもなり、赤い糸で、縫い代を落ち着かせるために二目落としもやりました。6尺の長さが必要ですが、3尺しかなかったので、着尺巾をたてに切り、真ん中でハギ合わせました。接ぐ手間はかかりますが、前中心がわかりやすいと喜んでおられました。


本来は古布を使って、自分で伊達締めにふさわしい生地を見繕い縫いあげるものなのですが、今は家に古着の着物や襦袢もなく、新しい麻生地を買って作りました。
何でもない直線縫いの仕事ですが、それでも自分で縫うと愛着が湧いてきます。

運針をやってもらうことの意味は、よくものを観ること、指先の感覚を磨くことなのです。
上手い下手というよりも、素材に合った針の太さや、糸の太さ、何を縫うのかによる針目の大きさなどを瞬時に判断できるかにあるのです。
何とか丁寧に、細かく縫えばいいというものではなく、幸田あや著『きもの』でも出てきましたが、大針で飛ぶように縫えばよい箇所もあるのです。
着ることが、生き死にをかけた仕事だった時代から、今は考えられないくらい豊かな衣の時代なのかもしれませんが、私には何かうすら寒い、寂しい時代にも思えるのです。

運針で身の回りのものを作ってみてください。和裁教室に行って着物まで縫えるようにならなくてもよいのです。
腰紐一本でもうまく縫えるでしょうか?素材は何がいいですか?針の長さや太さはどうですか?
いえ、雑巾でもいいです。縫えますか?台布巾はどんなサイズ、素材が良いですか?
考えたり、工夫することがたくさんあります。

それは創作活動です。残り糸や色糸を使えばより楽しいです。
紬も屑繭から糸を引き出すことから始まったと言われます。
工夫することは着物を着る上でも役に立ちます。
そしてそれは日々の暮らしの中でも同じことが言えるのではないでしょうか?

これからも運針を活用して、古布などを使って身近なものを縫ってほしいと思います。世界が広がり楽しいですよ。(^^♪

最後に皆さんから染織実習の学びのレポートを送ってもらいました。
紬塾に関心を寄せてくださる方は、是非参考になさってください。

単に織り物を織るだけでもなく、また着物を着るだけでもなく、創ること、着ることの根本を見つめながら、現代社会に活かしていきたいと思っています。
今期の方もみなさん本当に真面目に取り組んで下さいましたが、特に連携が強くて素晴らしいメンバーだったと思います。ありがとうございました。

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紬塾実習コースでは、念願の糸紡ぎから草木染め、機織りまでを体験させていただきました。
糸は風合いを殺さないよう丁寧に扱うこと、染める前に糸本来のウェーブを蘇らせること、草木の適正な季節を見定めて本来の色を引き出すこと、植物から抽出され染液をガラス瓶などに入れ、色素や糸の状態をよく観察し、糸に馴染ませていくこと、そして糸の持ち味をいかに無理なく織り込んでいくか、などなど。
作業に向かう先生の、一瞬一瞬の真剣な眼差しが印象的でした。
「理屈じゃないのよ」と先生は何度もおっしゃり、適時の判断で素材の命を最大に引き出そうとする意気込みが伝わってきました。
最後の授業では麻の伊達締めを縫いましたが、布に添わせて針を運ぶ事で、布を痛めずいつでも解いて再利用できる事を学びました。どの授業も一つも無駄はなく、自然の恵みをいただきながら生きる知恵の数々を教えていただき、一生の宝物のような貴重な経験をさせていただきました。本当にありがとうございました。 I.K.

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染織実習では、一枚の布を織り出すために、真綿から糸をつむぎ、染め、そして織るという一連の工程を教わりました。
先生のお庭の木の枝を落とし、それを細かく切ってチップにし、煮だして白い糸や布を染め、乾かしてはまた重ねて染めるという工程を通して、染めるということは、折々の自然の恵みを享受し、感じとり、四季を愛でること、そして無駄なく生活に活かすことであるということを学びました。また、自分の望みの色を得ようとするのではなく、自然がどんな色をもたらしてくれるのかということを期待し、楽しみに待つのだという謙虚さが根底に流れているように感じられました。経済至上主義、効率主義…そんなものに踊らされない、自然物である人間としての謙虚さと自然の恵みを大切にする不動の強さ、そしてほんものの美しい生きかたとはなにかを学び、考えさせられました。これからも教えていただいたことを大切に思い出しながらきものに関わっていきたいと思います。 U.M.

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昨年の学びから、日々好きなものに囲まれて暮らしたいと願って、ささやかながら季節の流れに応じて部屋を整えていると、いつの間にか、心和ませてくれるものは自然の色や素材でした。
時間が経てば経つ程にじわじわと良さを感じさせてくれます。
なかでも天然の色はどこにあっても周りと調和し、今回の実習でも、草木の色馴染みの良さにすっかり魅せられてしまいました。

初回の糸紡ぎから楽しくて時間の過ぎるのが早かったこと!
糸繰りも、憧れていた機織りもあっという間でした。
糸染めは工程が多く、繊細な作業が予想を超える難しさで緊張しました。

一緒に染めた半衿が素敵な色に仕上がりました。柿の小枝を煮出した染液で染めましたが、肌に馴染むのを見て、これが自然のもつ力なのだと感じました。

今ある物で暮らしを彩る「足るを知る」という言葉を以前よりも感じるようになりました。
着物を通じて広がった世界を今後も楽しんでいきたいと思います。
もうこれでおしまいかと思うととても寂しいです。
2年間、ありがとうございました。 K.Y.
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参加者のお一人は、基礎コースの時にも毎回拙作の帯を締めて来てくださったのですが、最後の回にも花織の帯に着物や小物を替えて参加してくださいました。
着こなしもとても自然で美しかったです。
帯揚も私が染めたものを使ってくださっているのですが、リンゴの黄色を下染めし、あとから化学染料を少しずつ染重ねたペパーミントグリーンのような色です。  
帯締めも春の若葉を彷彿とさせるチョイスですね!
使うことは創ることです。毎回、ありがとうございました。 

床の間には一重の山吹と雪柳を活けてお迎えしました。
三角の蕾も可愛いです!

                     



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