中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第12期「紬きもの塾'20基礎コース」修了しました

2021年04月05日 | 紬きもの塾’17~’20
紬塾受講生のレポートを追記しました。4/5

コロナの影響で会期の延期などがありましたが、昨日無事修了しホッとしました。

最終回は着物の寸法について、最低限把握しておきたい箇所について、自分の着ている着物の寸法が、本当にいいのか、着方、着物の種類などでも違うことも話しました。
一人一人チェックしました。裄、身丈が必要以上に大きい方、多いですね。


あとは半巾帯結びの練習、名古屋に慣れている人にはかえって難しいかもしれませんが、慣れれば楽です。コツをつかんで練習あるのみ!
割り角出し、吉弥、文庫をしました。写真は割り角出しの外巻き?をしているところです。

幸田文「きもの」のまとめをして、紬塾が目指していることなど話して締めくくりました。
着物を着るということは、突き詰めると自然環境を大事に守ることです。

終わって感想なども伺いましたが、終わるのが寂しいとおっしゃっていただきました。
今期の方はみなさん一応一人で着物は着られる方でしたが、半衿の付け方や、名古屋帯が前のやり方より早くなったなど、それぞれに得るものがあったようでよかったです。(*^^)v

参加の皆さんからのレポートは以下の通りです。

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私が紬塾を受講するきっかけは、祖母からゆずり受けた一枚の紬です。40年以上前に織られたものですが、着やすさに魅せられ、紬をもっと知りたいと思いました。

講座は、紬の「過去・現在・未来」を俯瞰する,多岐にわたるものでした。ホームページの案内から想像していたものを超えた、本当に盛りだくさんの内容でした。

毎回、幸田文の「きもの」の読後感想発表と各回のテーマに沿ったレクチャー(時に実習)が行われました。

「きもの」は初読ではありませんでしたが、着物と登場人物の描写から,当時の人々の暮らし方や時代の空気も感じることが出来ました。また、毎回の皆さんの感想を聞くことで,新たな視点をもって,着物を見つめる事が出来ました。

レクチャーでは,布地としての紬の基礎知識からはじまって、糸をよる体験(難しかったです)、着物を着るのに役立つ運針(これも難しかったです)、着物と帯・小物の取り合わせ(楽しかったです)、着物を楽に着るための寸法指南と半幅帯の結び方講座(是非チャレンジしたいです)まで、紬を核に、時には着物の枠を超え、日々の生活で実践すべき事項など、生きていく事の考察にも及びました。

コロナウイルスによる緊急事態宣言等の影響で,気楽な外出や,友人達と会う事が出来ない一年だった事もあり、書籍やウェブ検索で得られる知識も沢山ありますが、実際に集い話を聞き、着物に触れる事は、比べものにならない刺激となりました。中野先生の染め織られた着物や帯から感じられた,自然の懐の深さも強く心に刻まれました。

一年間学んだ事を,ノートを見返しながら理解を深めていきたいと思います。教えていただいた帯結びと、アドバイスいただいた寸法で着物を仕立てて着る機会も持てればと思います。(また、是非運針をマスターして半襟つけの時間も短縮したいと思います!)

貴重な時間をいただき、ありがとうございました。 I.M.

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紬塾を終えて…
私は、色鉛筆で絵本の挿絵を描く仕事をしております。
最近はパソコンで絵を描く方がとても多くて、私のような時間がかかり印刷に出すと発色も落ちる手描きの技法は、描いているときは本当に満ち足りているのですが、この忙しい社会にやっていけるのだろうか、と不安がよぎることもあります。

そんな中で、初めて先生の帯を目にした瞬間、その彩りの美しさ、儚いようで力強い手触り、模様のモダンさ、全てに惹かれました。
その帯をお持ちの方から、その時に紬塾のことを教えてもらい、さっそく受講させてもらいました。

先生は手つむぎの糸の風合いを大事に自然の姿を残しながら制作されています。そうすると均一でない風合いのある織物ができていきます。
その様子を間近に見て、先述の不安はいつの間にか消え、むしろこの時代に丁寧に物を創ることへの誇りを感じるようになりました。
安価にいろいろなものが手に入り、安易に捨てられていく現代に、先生の姿勢は、机上の論理よりも力強く真っ直ぐに心に響きます。
どこにもない唯一無二のものを生み出すことは並大抵のことではありません。
ですが、自分の人生を楽しんで、自分にとって価値あるものにするもしないも、自分の日々の積み重ねからなのだと気づかされました。

講義では、着物の楽な着方から、手入れの仕方、作り替えについて、自分の知恵を働かせて、次の時代にも繋いでいけるように着物を大切にすることを教えていただきました。

それまで、私は着付けというと何回も着付け教室に行ったもののうまく着ることが出来ず、出かけるときは崩れるのが怖くてぎゅうぎゅう巻きにし、帰宅するとがっくり疲れていました。
先生は、着物は紐2本で着れるのよ、と笑って、楽で自然な着付けを教えてくださいました。
これで私も着物を怖がらずに日常に取り入れていく事ができるでしょう。

また紬塾を知る少し前に、叔母から山ほど着物を形見で譲り受け、これをどうしていったらいいのだろう、と途方に暮れていました。
叔母の着物も大事に着れそうな気がします。 O.T.

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上質なものを長く、先生の丁寧な生活への考え方に感動しております。
また着物はきちっと綺麗に着なければと考えておりました。
半襟を衿芯に先につけておくこととか、補正をしないで楽に帯を結ぶ方法などを学び、
着物を着ることに対して解放された気分です。
紬塾に参加させて頂き有難うございました。S.H.

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着物が大好きで、実際に着物を織る方から学べるいい機会だと思って受講しましたが、予想以上の収穫がありました。

着物や帯が織られる糸は繭からとられた絹糸。それは知っていましたが、実際に真綿から糸を紡ぐ体験をし、中野先生が実際に織る糸を見せていただき、蚕がどのように繭をつくってゆくかの話を伺ったことが、私にとっては新鮮な発見であり新たな知識でもありました。

蚕が8の字を描くように繭をつくること、繭からとられた糸はその8の字が残す縮みがあること、人の手でつむがれる糸と機械で紡がれる糸では手触りが違うこと・・・当たり前のことですが、「人の手」でつむがれる糸を身にまとうことの重みを感じました。

普段私たちが見る着物は既にできあがってあとは着るばかりの状態です。華やかなデザインや色合いばかりに目をとられがちで、最初に見て「素敵だな」「着てみたいな」と思って手に取ることが多いでしょう。
人の手で染められ、織られたもの、そういう認識はあっても、あくまでも「着るもの」としての着物でした。

中野先生の紬塾を終えた後、1枚の布ができあがる過程を考える機会を与えられ、蚕の繭から人の手で糸がつむがれ、植物から採られた色で染められ、人の手で織られ、仕立てられることの流れを思い、どの過程でも自然の手がはいるため二度と同じものはできないことを実感し、「一期一会」ということばが浮かび上がりました。

そして、人の手も含めてすべてが「自然からいただいたものを生かしている」ことを、今更ながらに理解し、先生が常に環境問題を念願において毎日を過ごされていることにも納得いたしました。
着物と環境がここで結びつくとは思わず、奥が深い・・・!と着物や布に対する見方が変わって自分でも驚いています。

また、幸田文さんの「きもの」の読み合わせで、先生のコメントを伺い、まだ自分が着物を特別視している点があったことにも気づかされました。
やはり、洋服とは動き方や着こなしが違いますし、着た時の意識や気分の持ちようも変わってきますから、幸田文さんのように生きることに根ざし、自然にさらっと着こなすにはまだまだなのかもしれません。

晩年の幸田文さんは、着物がなくなるかもしれないという危機感を抱いていたようです。ですが、彼女の着物に対する思いは娘さんからお孫さんに引き継がれ、着物も残っています。
「一期一会」のおもいが詰まった布は消えてなくなることはないでしょう。
最後の中野先生のお言葉のように、着物を引き継ぐというところまではいかずとも、自分が大好きで楽しいという思いそのままに、私はできる限り着物を着続け、最後の1枚まで愛おしんでゆきたいと思いました。 I.K.

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4月1日(木)から13期紬塾の募集受付がはじまります。
不明な点はお問い合わせください。
コロナの状況を見ながらの開催となりますので、今年も延期などあるかもしれませんが、一応お申し込みの受け付けはします。
詳細はこちらの記事を参照ください。

この日は花曇りで、三分咲きの工房の桜も少し寂し気でした。
桃の花も桜と一緒に満開になっていますが、帯は燕子花と桃の刺繡が施された御所解き文様の帯を締めました。こちらは賑やかです。(*^-^*)




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